いまさら聞けない吸収合併の基礎知識と社員に対する扱い方

税理士 安江一将

会計コンサルティング会社・税理士法人及びベンチャー企業2社に勤務。会計コンサルティング会社・税理士法人では税務顧問・税務申告のほかに、事業承継支援業務、組織再編業務、IPO支援業務、M&A業務を数多く実行。ベンチャー企業では管理部長・経営企画室を歴任し、上場のための体制構築・実行支援を推進する。大手コンサルティング会社名古屋支社副支社長を経て2019年8月に安江一将税理士事務所として開業した後、さらにM&A業務を推進することを目的として株式会社M&A DXに参画し、現在に至る。

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ビジネスにはさまざまな専門用語がありますが、その中でも、広く知られている言葉が吸収合併です。ポピュラーな言葉であるがゆえに聞いたことある方もいるかもしれませんが、具体的にどのようなものなのか説明できる方は少ないのではないでしょうか。

そこでこの記事では、吸収合併の基礎知識や社員に対する扱い方などを紹介します。吸収合併について改めて知りたい方は、ぜひ最後まで読んでみてください。

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吸収合併とはどのようなものなのか?

吸収合併とはどのようなものなのか?

吸収合併とは、ある会社が別の会社を取り込むこと形で行われる合併のことです。取り込まれた会社は解散となり、すべての資産・事業・社員が取り込んだ会社に移ります。大きな企業が小さな企業を取り込むケースが一般的であり、ニュースでの報道を目にした方もいるのではないでしょうか。ビジネスにおいて基本的な用語の1つであるため、あいまいに覚えていた方はこの機会にきちんと理解しておきましょう。

新設合併との違い

吸収合併と似ている言葉として新設合併がありますが、同じ意味ではありません。2つの会社が解散した上で、新しい会社を設立することを新設合併と呼びます。吸収合併とは違い、1つの会社に取り込まれるわけではないため、注意しましょう。

新設合併には、吸収合併と同じくコストの削減といった効果があります。しかし、吸収合併よりも手続きが多いことや新たに許認可や免許の申請が必要などのデメリットもあります。

吸収合併における社員の扱い方

吸収合併における社員の扱い方

吸収合併の際は、社員の扱い方に注意しなければなりません。なぜなら、告知や解雇といった点で気をつけなければいけないことが多いからです。そこでこの項目では、吸収合併における社員の扱い方をいくつか紹介します。

吸収合併の告知は社員にも必要か?

まず、吸収合併をする際は株主や債権者といった利害関係のある人には通知をしなければなりません。これは会社法にも記載されていることであり、もし通知していなければ合併の効力が発生しません。ただし、社員への通知は会社法に記載されている手続き上では必要ありません。そのため、必ず伝えないといけないわけではありませんが、組織が再編されて社員へ混乱やストレスを与えてしまう恐れがあります。法的に決められていないとはいえ、きちんと説明したほうが良いでしょう。

吸収合併を理由とした解雇・リストラはNG

会社法上、社員に通知する必要が無い理由は、解散した会社の雇用関係がそのまま存続している会社に引き継がれるためです。このことから、吸収合併を理由した解雇やリストラはできません。ただ、上記で述べたように組織が再編される可能性があることから、処遇に関することも伝えたほうが良いでしょう。

雇用契約や就業規則はそのまま

吸収合併では、解散した会社の雇用関係が存続している会社に引き継がれるため、雇用関係や就業規則もそのままです。雇用に関しては、わざわざ解散した会社の社員に許可を求めなくてもいいのです。ただし、吸収合併前に契約変更の同意を社員に求める可能性があります。理由は、存続した会社が用いている雇用契約へと合わせるためです。もし変更するのであれば、しっかりと社員に書面で説明して確認を得ましょう。

管理職の身分は変わる可能性がある

管理職に関しては、吸収合併によって変わってしまう恐れがあります。労働条件次第な部分もあるとはいえ、吸収合併で管理職の座が保証されているわけではありません。組織の再編によって変わるため、そのまま管理職の場合もあれば降格してしまう場合も考えられます。どちらにせよ、1つの会社に同じ部署は2ついらないため、どちらかの部署と管理職が消えてしまうでしょう。

退職金はどうなるのか?

退職金に関しても吸収合併によって影響を受けることがあります。ただし、勝手に会社が決めるのは勧められません。なぜなら、過去の最高裁で、退職金が変わった理由や社員が認めることになった経緯などを踏まえつつ、社員の自由意思で受け入れたという判決があったため。もしあなたの退職金が吸収合併によって減っているのであれば、経営陣にその理由をしっかりと説明してもらいましょう。

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吸収合併の手続き

吸収合併の手続き

吸収合併は簡単にできるものではなく、いくつかの手続きがあります。どのような流れで進められていくのか、この項目で簡単に見ていきましょう。

まずは合併契約を締結

1番目に行う作業、それは合併契約を締結することです。その際、会社法第749条によって効力の発生日や存続会社が消滅会社の株主に対して交付する対価といったことを定めなければなりません。また、あくまで任意ですが、商号変更や新役員の選任などもこの際に決めておきます。

株主や債権者への告知

合併契約を締結し終えたら、株主や債権者へ通知します。上記でも述べたように、株主や債権者といった利害関係者には必ず通知しなければなりません。これは彼らの利益を保護する意味があり、会社法にも記載されています。また、債権者は合併に対して異議を申し立てることが可能となっています。これも会社法の第789条や第799条に記載されていることです。

登記手続きはどうすればいいのか?

登記手続きに関しては、存続する会社が吸収合併の効力が発生する日から2週間以内に管轄の法務局で登記手続きを行い、対応する登録免許税を支払う必要があります。期限が決められているため、忘れずに行いましょう。

登記申請で必要な書類

登記申請では、さまざまな書類が必要です。具体的には、合併契約書や変更登記申請書、合併に関する株主総会議事録などが該当します。また、資本金次第では追加の登録免許税の支払いがあります。また、解散する会社は解散登記の手続きを行わなければなりません。この場合は、吸収合併契約書の費用や登録免許税が求められます。このように双方必要な書類があるため、何が必要なのか事前にチェックしてスムーズに手続きが行えるようにしましょう。

労務視点から見る人員整理方法

労務視点から見る人員整理方法

合併吸収における人員整理としては、主に「配転」「希望退職制度」「退職勧奨」という3つのポイントがあります。

1つ目の「配転」は、人員を求めている部署に社員を配置転換もしくは転勤させることです。就業規則に根拠があれば可能な方法ですが、給与が大きく変動したりリストラを誘導したりといった注意点もあるため、それらに気をつけながら行わなければなりません。

2つ目の「希望退職制度」は、名前どおり希望退職者を募る制度のことです。ただ募るのではなく、優遇条件を設けた上で実施。この際、最終的に会社の承認が必要になることを伝えておくことで、会社にとって価値のある社員がいきなりやめてしまうことを防ぎます。

3つ目は退職勧奨であり、会社から個別で社員に対して退職を勧めます。希望退職制度とは違い、こちらは全体的に呼びかけるわけではありません。個別に話し合って退職の有無を決めていきます。ただし、無理やり辞めさせるような行為は不法行為として扱われやすく、社員から損害賠償を請求されたりその効果が否定される可能性があるので避けましょう。

まとめ

まとめ

今回は、吸収合併における基本的な情報や手続きなどについて紹介しました。言葉自体は聞いたことあっても、ここまで深い内容だったとは知らなかった方もいるのではないでしょうか。今回紹介した内容はビジネスの基礎知識でもあるため、会社員として働く方はぜひ覚えておいてください。

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