弁護士登録後、大手法律事務所に入所。企業法務、一般民事、刑事事件等の幅広い分野の案件に携わる。パートナー弁護士に就任後、企業法務、不動産法務、相続法務に注力し、顧問業務、法務デューディリジェンス業務に携わるとともに、多くの企業訴訟、不動産訴訟、相続紛争を解決に導く。クライアントによりマッチした法的サービスを提供すべく、善利法律事務所を開所し、代表弁護士に就任。 2017年からは、上場企業及び上場を目指す企業の社外監査役に就任し、弁護士としての経験を活かし、コーポレート・ガバナンスの一翼を担う。 2019年、株式会社すばるの社外監査役に就任し、現在に至る。
合併契約による効力が生じたら、速やかに登記手続きを行わなければなりません。しかし、登記手続きを一から調べるには手間がかかるため、何から手をつければよいか分からないという方もいるのではないでしょうか。
この記事では吸収合併の登記手続き方法に加えて、必要な費用や書類などを分かりやすくご紹介します。登記手続きの手順を図にまとめているため、視覚的な理解が可能です。この記事を読んでスムーズな手続きを目指しましょう。
吸収合併を控えている場合、「どのタイミングで登記手続きをすればよいか分からない……」という方も多いのではないでしょうか。吸収合併の効力発生日から2週間以内に登記手続きをしなければならないため、しっかりとした準備と速やかな手続きが必要です。
登記には用意するべき書類がいくつかあります。登記手続きの準備のタイミングは、これらの書類が作成できるタイミングと合致すると考えてよいでしょう。吸収合併の流れの中で、どのタイミングで登記手続きのための書類を作成するのかご紹介します。
流れの中でその都度書類を作成し、吸収合併の効力が発生したら速やかに手続きに進むことが必要です。登記の手続きにはこれ以外にも株主のリストや登録免許税に関する証明書などを用意しなければなりません。存続会社側は、吸収合併に伴う登記手続き終了後に事後開示書類の備置も必要です。
実際に、吸収合併はどのようなスケジュールで各種手続きが進められるのかイメージしにくいかもしれません。ここでは、6月1日を効力が生じる日と仮定して吸収合併の手順をシミュレーションしてみましょう。
日程 | 存続会社 | 消滅会社 |
---|---|---|
3月中旬 | ・吸収合併契約内容の話し合いと作成 ・債権者の確認 |
・吸収合併契約内容の話し合いと作成 ・債権者の確認 |
4月1日 | ・取締役会決議 (契約内容の承認、株主総会の招集決定) ・官報公告の申し込み |
・取締役会決議 (契約内容の承認、株主総会の招集決定) ・官報公告の申し込み |
4月10日 | ・吸収合併契約の締結 | ・吸収合併契約の締結 |
4月25日 | ・官報で合併公告 ・債権者への個別催告 ・契約書等の事前備置 |
・官報で合併公告 ・債権者への個別催告 ・契約書等の事前備置 |
5月1日 | ・株主総会招集通知 ・株式買収請求権に関する通知 |
・株主総会招集通知 ・株式買収請求権に関する通知 |
5月25日 | ・株主総会で吸収合併契約承認 | ・株主総会で吸収合併契約承認 |
5月30日 | ・債権者異議申述期間満了 | ・債権者異議申述期間満了 |
6月1日 | ・合併の効力発生 | ・合併の効力発生 |
6月1日以降 | ・合併の登記申請(2週間) ・合併に関する書類の事後備置 |
合併の登記申請(2週間) |
吸収合併に向けた準備を本格化させてから登記手続きまでの期間は2か月半程度が目安です。存続会社と消滅会社では日程に大きな違いはありませんが、合併契約による効力が生じた後の手続きが異なります。
吸収合併の準備から登記手続きまでを滞りなく進めていくためには、各ステップでやらなければならないことをきちんと把握しておく必要があります。ここでは、吸収合併の登記手続きまでにするべきことを順に紹介していきます。
合併契約による効力が生じて無事に登記手続きを終えるためには、存続会社と消滅会社による合併契約の締結が大前提です。合併契約の締結前に、まずは両社で次のような項目の検討や交渉を行います。
各項目の検討や交渉が終了したら、会社法749条に基づいた合併契約を締結します。合併契約は、取締役会設置会社では取締役会決議、取締役会を設置していない会社では取締役の過半数の決定をしたうえで、当事会社の代表取締役が会社を代表して締結します。
合併契約の締結後は、債権者保護手続きをしなければなりません。債権者に対して官報公告と個別催告の2種類の方法を用いて、会社が吸収合併する旨を通知します。存続会社と消滅会社のいずれについても、債権者が異議を申し立てる期間として1か月以上を設けなければならないので注意しましょう。
公告を、官報に加え、定款に定めた時事に関する事項を掲載する日刊新聞または電子公告によってもするときは、個別催告を省略できます。この方法は郵送にかかる手間を省けるため、催告者への通知漏れを防ぐのに効果的です。
吸収合併を進める際の手順は、存続会社も消滅会社もほとんど同じです。しかし、登記申請における必要書類や細かい手続きが異なるため、吸収合併を決断した段階で確認しておくのがよいでしょう。ここでは吸収合併における登記手続きの流れについて、存続会社側の観点で紹介します。
存続会社は管轄の法務局で登記手続きを済ませる必要があるため、自社の管轄を確認しておきましょう。法務局に書類を提出し、税金の支払いも行います。
手続きの期限は吸収合併による効力が生じた日から2週間以内と決まっています。期限内に手続きできなかった場合、ペナルティとして過料を請求されることもあるので注意しましょう。
管轄の法務局では、次のような項目が記載された変更登記申請書の提出が必要です。
記入漏れや記入誤りといった不備がある場合は受理されないため、提出前には記入内容をきちんと確認するとよいでしょう。変更登記申請書に必要事項を記入した後は、収入印紙を貼付して添付書類とともに提出します。
変更登記には多くの書類を提出する必要があるため、吸収合併と同時進行で準備をしておきましょう。
必要書類 | 内容 |
---|---|
変更登記申請書 | 吸収合併による登記手続きに必要な書類 |
吸収合併契約書 | 法定記載事項(全当事会社の表示、合併条件、存続会社の組織・体制、効力発生日など)を記載した書類 |
登録免許税 | 吸収合併で発生した資本金に対する課税 |
吸収合併に関する株主総会議事録 | 合併契約承認の株主総会の議事録 |
債権者保護手続きに関する書類 (公告及び催告をしたことを証する書面) |
合併公告が掲載された官報や個別催告書の控え。 |
消滅会社の登記事項証明書 | 消滅会社の本店所在地の管轄登記所と合併会社の本店所在地の管轄登記所が異なる場合に必要 |
吸収合併に関する取締役会議事録 | 略式合併又は簡易合併を行う場合には、取締役会を設置する会社では取締役会議事録、取締役会を設置していない会社では取締役の過半数の一致があったことを証する書面 |
資本金額の計上に関する証明書 | 合併会社の資本金の額の証明書。額が増加する場合に必要 |
登記を代理人に依頼する場合の委任状 | 司法書士などに依頼する場合に必要 |
必要書類や手続き内容が多い存続会社に比べると、消滅会社の登記手続きは少なめです。それでも準備しなければならない書類はいくつかあるため、必要な書類は早めにそろえておきましょう。ここでは、消滅会社側の吸収合併における登記手続きの流れを紹介します。
存続会社は登記手続きのときに変更登記申請書が必要です。しかし、消滅会社は変更登記申請書でなく、解散登記申請書の提出が必要です。
消滅会社による解散登記申請書は、存続会社が提出する変更登記申請書と同様に吸収合併による効力が生じた日から2週間以内が提出期限です。申請書には、理由と共に次のような項目を記入します。
記入内容に不備があると受理されないこともあるため、内容を確認した上で解散登記申請書を提出するようにしましょう。
次のように、消滅会社は解散登記申請書を提出して登録手続きを行います。一方、存続会社が登記に必要となる書類には消滅会社が用意しなければならないものもあるので確認しましょう。
必要書類 | 内容 |
---|---|
消滅会社の登記事項証明書 | 消滅会社の本店所在地の管轄登記所と合併会社の本店所在地の管轄登記所が異なる場合に必要 |
株主総会議事録 | 合併契約の承認機関の議事録やその他の承認を証する書類 |
債権者保護手続き書面 (公告及び催告をしたことを証する書面) |
合併公告が掲載された官報や個別催告書の控え |
登記を代理人に依頼する場合の委任状 | 司法書士などに依頼する場合に必要 |
消滅会社の登記手続きに必要な書類は存続会社よりも少なく済みますが、司法書士といった代理人に手続きを依頼する場合は委任状が必要です。
吸収合併に伴う登記手続きには、費用がかかります。想像以上に費用がかかる可能性もあるため、自社の場合どのくらいの費用がかかるかをあらかじめ把握しておくことが大切です。ここでは、吸収合併における登記手続きで必要な費用をご紹介します。
吸収合併では、存続会社と消滅会社が契約書を交わさなければなりません。そのため、吸収合併契約書の作成が求められます。合併契約書の作成を司法書士に依頼する場合、別途費用が必要です。また、合併契約書は印紙税の課税対象であるため、1通につき4万円の収入印紙を貼付しなければなりません。
そのため、合併する会社の数が多いほど印紙税は増額します。なお、収入印紙は原本に貼付するだけであるため、写しを利用する場合には印紙代は必要ありません。
登記手続きに伴う登録免許税の金額は、資本金の増加がなければ一律3万円、増加した場合は増加分に0.0015を乗じた金額です。消滅会社の資本金を増加分がオーバーする場合、その差額に0.007を乗じた金額を納めます。
また、資本金が増加した場合に0.0015を乗じた額が3万円に満たない場合も、登録免許税は3万円です。登録免許税は、吸収合併によって増加する資本金額によって税率が異なります。なお、資本金の増加分に応じて税率が異なる存続会社と異なり、消滅会社の登録免許税は3万円です。
合併契約の締結後は、債権者や株主に対して会社が吸収合併する旨を通知しなければなりません。官報公告や日刊新聞などの媒体を用いて通知されるのが一般的ですが、最低でも5万円程度の費用が必要です。通知に用いる媒体や掲載する期間が費用に影響し、場合によっては数十万円かかることもあります。
全ての債権者や株主への通知が求められるため、場合によっては高額になることもあります。官報公告と定款で規定している公告を併用することで個別催告は省略できるものの、郵送で個別に通知する場合は郵送料も必要です。
吸収合併は存続会社が消滅会社を自社の組織の中に取り込むため、消滅会社は解散して保有している資産は全て存続会社に移されます。
一方で、新設合併とは合併に伴って全ての会社が解散した上で新たに会社を設立することです。この2つの合併は手続きこそ変わりないですが、内容は大きく異なります。なお、有限会社は、吸収合併存続会社となることはできません。
吸収合併では、存続会社と消滅会社の両社でさまざまな項目の検討や交渉、さらには契約や登記といった手続きも必要です。特に登記手続きは短期間で行わなければならない上に、必要書類が多く手続きも複雑なため負担が大きいでしょう。
このような複雑な手続きこそ、専門家に依頼するのがおすすめです。株式会社すばるでは、M&Aや事業承継での実績を豊富に持っています。吸収合併などのM&Aの手続きでお悩みなら、株式会社すばるにぜひご相談ください。
吸収合併の準備が始まってから登記手続きを終えるまでの期間は最低でも2か月半程度を要しますが、合併契約による効力が生じた日から2週間以内には登記手続きを完了しなければなりません。そのため、必要書類などは早めに準備しておくことをおすすめします。
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