電気工事業界の業界動向やM&Aの事例をご紹介!

会計士 牧田彰俊

有限責任監査法人トーマツ入所、各種業務の法定監査、IPO支援に携わる。その後、ファイナンシャルアドバイザリーサービス部門にてM&A アドバイザリー業務・財務デューディリジェンス業務・企業価値評価業務等に従事。組織再編によりデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社に異動し、主に国内ミドルキャップ案件のM&Aアドバイザリーとして、豊富な成約実績を収める。2018年、これまで以上に柔軟に迅速に各種ニーズに応えるべく株式会社M&A DXを設立し、現在に至る。

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生活する上でなくてはならない存在の電気ですが、電力関係工事や鉄道関係電気工事、内線工事といった設備に関する工事を請け負うのが電気工事業界の役目です。生活に欠かせないことで市場規模も大きなものだと考えるでしょう。そこで、今回は電気工事業界の特徴やM&Aの傾向などをご紹介すると共に、M&Aの事例やM&Aを行う目的などについて解説していきます。

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電気工事業界の特徴

電気工事業界の特徴

まずは、電気工事の内容について解説します。電気工事では、発電や送電、変遷や配電、地中線工事を行う電力関係工事、ビルや工場などの受変電設備工事や引込線工事などの構内電気工事に加え、鉄道関係電気工事やトンネル照明、街路灯、交通信号、ネオン工事などを行います。

発注形態は「一括発注」と「分離発注」に分けられます。一括発注は施工全体の管理業務を行うゼネコンと呼ばれる事業者が受注先となるケースが多く、排給水工事や空調工事などを行う専門工事業者のサブコンが下請けとなり、工事を進めていきます。電気工事は下請けとなるサブコンに含まれています。

分離発注に関しては、専門工事ごとに工事を発注する形態です。業界全体を見ると、一括発注が約65%で分離発注が約30%となります。そして、電気業界の売上は建設業界の売上に左右されます。

次に電気工事業界の市場規模について見ていきましょう。市場規模は完成工事高ベースで現状は約9兆円弱となっています。建設投資が縮小されたことで1990年代からは減少傾向にありましたが、2004年以降に民間の設備投資が増加したことで回復を見せていました。

しかし、2009年になると金融危機により世界的に経済が停滞し、完成工事額は前年と比べると7.6%も減少しています。その後、2012年には東日本大震災が起こり、前年比7.2%増となり回復を見せていきました。

2014年には8兆5442億円となり、それ以降は緩やかに減少しています。近年は建設の需要が高く、再生エネルギーが注目を集めていることからさらなる需要増が考えられるのですが、大きな拡大は見込めないと言われています。

その理由としては、2020年に開催される東京オリンピックが関係しています。現在は新しい建設が増えているのですが、オリンピック以降は受注の減少が見込まれます。それに加えて人口減少も見込まれるため、業績が落ち込むことが予想されています。

また、後継者や人手不足問題も影響の一つです。2017年に経済産業省が発表した「電気保安人材の将来的な確保に向けた検討について」によれば、電気主任技術者の二種と三種、電気工事士の一種と二種を持つ人材が減少していくと予測されています。

若い世代の技術者が増えていったとしても、定年を迎えて退職する高い技術を持った人材が減ることで2021年には第一種電気工事士が約4万人不足すると考えられており、第二種電気工事士に関しては、2020年から不足していき、2045年には約1万人の人材不足が起きる2021年には約4万人もの人手が不足し、2045年には約1万人もの人材不足が起こると予測されています。

しかし、人々が安心して暮らしていくために電気は欠かせない存在です。再生可能エネルギーの需要が増えていることから、現在抱えている問題が解決することで業績向上は見込めるのではないでしょうか。電気工事業界が拡大していくためにも、人材の確保や業界再編が課題となるでしょう。

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電気工事業界のM&A傾向

電気工事業界のM&A傾向

業績の悪化や人材不足などの問題を解決するために、電気工事業界ではM&Aが活発化しています。そこで、M&Aの傾向を解説していきましょう。

代表的なのが事業領域の拡大を図るM&A

電気工事業界の代表的なM&Aとしては、事業領域の拡大でしょう。例えば、首都圏にある企業が地方の企業を買収することで、今まで提供していなかった地方にまでサービスを提供できるので、業績の拡大を見込めます。

異業種や他業種とのM&Aが増えてきている

近年は、様々な業種でM&Aが活発化していますが、異業種とのM&Aも増えてきています。電気工事業界もその一つで、実際に風力発電事業に参入した企業が散見され、今後増えていくことが予想されます。新たな事業を行うことで業績拡大が期待できるでしょう。

海外企業とのM&Aも注目されている

2020年に開催される東京オリンピックが終わると、国内需要が減少していくと言われています。そのため、国内需要の低下を見越して海外市場で収入減を確保しようとする動きが活発化しています。海外企業をM&Aで買収し、海外進出を図ることで新しい収入減を確保していくことを企図しています。

後継者不足のためのM&A

前述したように、電気工事業界では人手不足に悩まされています。若い人材が増えたとしても、技術力のある人材が定年によって退職してしまうため人手不足は解消されません。

その結果、後継者問題まで浮上しています。後継者がいなければ会社がなくなってしまうだけではなく、電気工事業界のさらなる人手不足や業績の悪化が見込まれます。

こうした状況を回避するためにもM&Aによって事業継承を行い、後継者不足の回避だけではなく、人材を確保する動きが高まっています。大手企業であれば人材の確保ができるでしょうが、中小企業や知名度の低い企業は人材確保が難しい場合があります。

経営状況の悪化を招く危険もあるため、会社を残すためにもM&Aによる対策を図ります。今後、事業継承のためにM&Aを行う企業はますます増えていくことが予想されるでしょう。

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電気工事業界のM&A事例

電気工事業界のM&A事例

実際に行われている電気工事業界のM&Aの事例を見ていきましょう。

コムシスホールディングス株式会社によるNDS株式会社のM&A

NTTグループ向けに通信インフラネットワークの構築や電線の構築、さらにはライフラインの設備やICT事業などを行っているコムシスホールディングス株式会社が2018年10月にNDS株式会社を完全子会社化しました。

NDS株式会社では、東海や北陸地方でNTTグループ向けのサービスを行っていたほか、首都圏や関西地方で電気や土木、通信設備の工事請負事業を展開していた企業です。そのため、M&Aを行うことでコムシスホールディングス株式会社は、対応エリアを拡大することができ、事業分野の拡大も同時に行うことができたと言えるでしょう。

北海道エアウォーターによる丸電三浦電気のM&A

北海道エアウォーターは、札幌を中心に電気通信工事を行っていた丸電三浦電機を子会社化しました。北海道エアウォーターは、北海道のモノづくりをサポートする企業で、産業ガス事業や医療機器事業を行っています。病院設備の総合監視業務や設備工事受注の範囲を広げることを目的としてM&Aを行いました。

株式会社ミライト・テクノロジーズによる西日本電工株式会社のM&A

NTTグループ向けの通信インフラネットワーク構築などを行っている企業の株式会社ミライト・テクノロジーズは、2017年に西日本電工株式会社を子会社化しました。西日本電工株式会社は電気設備工事や空調設備工事、太陽光発電設備工事を行っており、株式会社ミライト・テクノロジーズは新規事業の展開ができるようになりました。通信事業だけには留まらない事業展開となり、業績アップを図ることができました。

株式会社中電工による杉山管工設備株式会社のM&A

2016年に行われたM&Aです。ビルや工場、公共施設において空調管工事や防災設備工事を東京都や神奈川県で行っていた杉山管工設備を株式会社中電工が子会社化することで、首都圏での電気工事や管工事事業の拡大を図ることが目的です。株式会社中電工においては、以前から首都圏に向けて営業を行っていましたが、杉山管工設備が同じ地域に強みを持っていたことで営業基盤の拡充を行いました。

株式会社協和エクシオによるLengAik Engineering Pte Ltd グループのM&A

2018年に株式会社協和エクシオがシンガポールで電気や総合設備の工事を行っているLengAik Engineering Pte Ltdグループを完全子会社化しました。シンガポール国内で高い技術力と品質を誇っていた企業で、株式会社協和エクシオを子会社とすることで事業拡大を図りました。株式会社協和エクシオにおいては、フィリピンやタイで事業を展開していたので、シンガポール市場に参入したことでアジアのシステムソリューション事業の拡大を加速しようと計画し、M&Aが行われました。

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電気工事業界のM&Aを行う目的

電気工事業界のM&Aを行う目的

電気工事業界でM&Aを行う目的について解説していきます。

売り手側から見たM&Aを行う目的

・雇用の安定

後継者問題が深刻化している電気工事業界においては、事業継承が進まないことで廃業に追い込まれてしまう企業も存在します。廃業してしまえば、企業で働いていた従業員は職を失ってしまいます。

従業員の生活まで成り立たなくなってしまう可能性があるため、M&Aを行うことで会社を廃業せずに事業を続けていくことができます。雇用を安定させることを目的としたM&Aは年々増えています。

・サービスの充実

隣接業界に会社(事業)を譲渡すると、顧客に対してさらに充実したサービスを提供することができます。新しい試みが行うことでリピート率は上がっていきます。

そのため、M&Aを行うことで新しい事業が増えれば様々なサービスを提供し、企業価値を向上させていくことができるでしょう。経営状況の改善につながります。

・廃業に掛かるコストを削減できる

人材不足や後継者問題によって廃業寸前になる企業もいるでしょうが、廃業には大きな手間が掛かってしまいます。コストも掛かるので面倒に感じる方は多いでしょう。しかし、M&Aを実施して株式譲渡や事業譲渡を行うことができれば、廃業する必要はないので手間やコストを削減することができます。

買い手側から見たM&Aを行う目的

・新規事業への参入を低コストかつスピード感をもって実現できる

新規事業を行うには資金が必要です。新しい知識や能力も必要になるため、時間も掛かってしまうでしょう。しかし、異業種や他業種とM&Aを行うことでコストを抑えて、かつスピード感をもって新しい事業を展開することができます。そのため、能力を持った企業を子会社化することが大切となるでしょう。

・エリアを拡大できる

今まで展開していなかったエリアで事業を行いたい場合でも、M&Aを活用することで事業エリアを拡大することができます。例えば、首都圏でしか事業を行っていなかった企業では、地方を中心に事業を行っている企業を子会社化することでエリアの拡大を図れます。

・人材を確保できる

人手不足に悩む企業は多いです。従業員が高齢化することで最終的には廃業まで追い込まれてしまう可能性があります。しかし、M&Aで同じように電気事業を行う企業を子会社化することで、若い人材や有資格者を確保することができます。

資格を持っていない人材だとしても、資格取得制度を見直すことで結果的に有資格者の確保を目指せるでしょう。優秀な人材を確保できれば企業の発展を見込めます。

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電気工事業界のM&Aを成功裏に進めるために

電気工事業界のM&Aを成功裏に進めるために

電気工事業界のM&Aを成功裏に進めるためのポイントを解説していきましょう。

関連性の高い建設事業とのM&A

M&Aに消極的でも、関連性の高い建設事業とM&Aを図ることで成功する可能性が高まります。電気業界においては建設事業との関連性・相関性が非常に高いです。M&Aを行うことでシナジー効果が生まれやすいので、事業拡大を目指せるでしょう。

シナジー効果とは相乗効果を意味します。買収した企業のサービス・人材等が自社の経営資源と一緒になることで単体では得られなかった更なる成果を生み出す可能性があります。

M&Aの専門家に相談する

M&Aに関しては理解をしていない部分も多いでしょう。価格やプロセスなど知らない部分も多いと思うので、しっかりとした知識や能力を持った専門家によるアドバイスが必要となります。M&Aを成功させるためには経験豊富な専門家を起用しましょう。

まとめ

まとめ

電気工事業界では、後継者不足や若い人材、優秀な人材不足が懸念されています。問題が深刻化していくことで廃業する企業が増えてしまえば、働いている従業員の職が無くなるだけではなく、業績が悪化し最悪の場合は電気業界全体の危機に陥ってしまいます。

問題を解決するためにも、M&Aを行うことで電気工事業界が抱えている問題を解決できるのではないでしょうか。一口にM&Aと言っても異業種や他業種とのM&Aや海外企業のM&A、隣接業界とのM&Aなど、様々なタイプがあります。従業員や企業の将来のことをしっかりと見考え最善策を見つけていきましょう。

今回ご紹介した事例やポイントを参考にしつつ、M&Aについての知識を高めていくことが必要です。電気工事業界内でM&Aを実施し成功を目指しましょう。

株式会社M&A DXには、大手監査法人系M& Aファーム出身の公認会計士や税理士等が多数在籍しています。電気工事業界のM&Aをお考えの方は、株式会社M&A DXの仲介サービスの利用をぜひご検討ください。

関連記事はこちら「通信工事業界の業界動向やM&A事例をご紹介!」
関連記事はこちら「【2022年最新】電設業界とは?今後の動向やランキングも紹介」

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