弁護士登録後、大手法律事務所に入所。企業法務、一般民事、刑事事件等の幅広い分野の案件に携わる。パートナー弁護士に就任後、企業法務、不動産法務、相続法務に注力し、顧問業務、法務デューディリジェンス業務に携わるとともに、多くの企業訴訟、不動産訴訟、相続紛争を解決に導く。クライアントによりマッチした法的サービスを提供すべく、善利法律事務所を開所し、代表弁護士に就任。 2017年からは、上場企業及び上場を目指す企業の社外監査役に就任し、弁護士としての経験を活かし、コーポレート・ガバナンスの一翼を担う。 2019年、株式会社すばるの社外監査役に就任し、現在に至る。
M&Aの手法の1つでもある合併は、十分な資金がなくても行えることが魅力の一つです。経営戦略の実現に向けた手段としてM&Aが一般的なものと認識されてきた昨今、合併を検討する企業が増えてきました。合併の際には合併契約書を作成しますが、その内容や作成方法を含め、よくわからないという方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、合併を行う際に作成される合併契約書とはどのような書類なのか、特徴や作成方法を交えて解説します。合併後の円滑な経営を目指す上でも、合併契約書に記載する内容や作成方法を事前に把握しておきましょう。
合併とは、2つ以上の企業がまとまって1つの企業になることです。買収の場合はそれぞれの企業が存続しますが、合併の場合は消滅する企業が出ます。
合併の手法には、「吸収合併」と「新設合併」の2パターンあります。合併すると、消滅する企業の債務や取引先との契約などはすべて、存続する企業や新設する企業に承継されます。「新設合併」は手続きが煩雑であることもあり、実務上は「吸収合併」のほうが多く活用されているようです。
合併契約書とは、合併契約を結ぶ際に作成する契約書のことです。合併契約書には、会社法上必ず記載しなければならない事項があります。
必要な記載事項が抜け落ちていたり違法な内容が記載されていたりすると、契約が無効になるので注意しましょう。
「吸収合併」と「新設合併」とでは必要な記載事項は異なるため、正確に把握することが重要です。合併後の円滑な経営を目指すうえでは、会社法で定めない任意の記載事項についても必要に応じて書き記すとよいでしょう。
合併契約書は、おおまかな骨組みを守りながら作成します。どの項目に何を書くのかを把握し、書き方や注意すべきポイントについて丁寧に確認しながら進めるとよいでしょう。不備のない合併契約書が作成できれば、後のトラブル防止にもつながります。「吸収合併」と「新設合併」とでは必要な記載事項は異なりますが、今回は、実務上多く活用される吸収合併契約書を作る前提で解説します。
会社法では、タイトルの詳細までは定められていません。「契約書」「合意書」「覚書」など、合併当事会社間の話し合いで自由に決められます。株主などに対する情報開示も踏まえ、取引内容がはっきりとイメージできるタイトルを選定するとよいでしょう。「吸収合併契約書」など、誰が見ても分かりやすいタイトルがおすすめです。
前文には、どの企業が合併契約を結ぶのか、社名を記載しましょう。吸収合併では、存続会社と消滅会社が存在しますが、ここではそれぞれの社名を記載します。存続会社を甲、消滅会社を乙と記載するのが一般的です。
本文では、会社法が定める事項等について定めます。契約内容を書き記すときは、条文形式を用いるのが一般的です。条文形式とは「第1条、第2条、第3条……」と書き記す形式をいいます。
合併の方式や合併契約の効力発生日・従業員の処遇など、合併後の円滑な経営を左右する重要な項目です。ひとつひとつ確認しながら、慎重に作成しましょう。
合併契約書において、会社法上で必ず記載しなければならない事項については纏めて後述します。
結びの項目は、合併契約の締結を証明する重要なものです。合併契約書の作成部数と、保管する場所について明確に記載します。存続会社と消滅会社が1部ずつ保管することを記載すれば、特に問題ないでしょう。
最後に、合併契約書の作成日を書き記し、続けて下に存続会社と消滅会社それぞれの住所・企業名・代表者名を記載して捺印しましょう。
合併の最終的な手続きとして、存続会社の登記が必要となります。登記を行うにあたっては、合併契約書の他にも必要な書類が複数あります。合併契約書の準備とあわせ、これらの書類も準備するようにしましょう。準備を要する書類が複数あり、抜け漏れも発生しやすいので、専門家の指示を仰ぐことをお勧めします。必要な書類のうち主要なものを下記に記載します。
(参考:『商業・法人登記の申請書類:法務局』)
合併契約書を作成するうえで必要な項目は、どのようなものがあるでしょうか。項目の中には、「契約を有効にするために欠かせない項目」と「任意で記載する項目」があります。ここからは、どのような内容で吸収合併契約書を作成するかについて確認しましょう。
合併契約を有効にするために欠かさず記載すべき項目が会社法で定められています。漏れがないよう把握しておきましょう。
合併契約書へ任意で記載する項目についても確認しましょう。必要に応じて下記のような項目を記載すれば、スムーズに手続きを進めることができ、トラブル防止にも繋がります。
存続する企業の定款を変える場合に、変更後の定款を掲載しておきましょう。
吸収合併に伴い新たに存続会社の取締役となるべき者の選任方法について記載します。例えば合併承認株主総会において選任する旨を書き記します。
消滅会社の資産に変化があった場合に、存続会社へ報告する旨を書き記します。
消滅会社の取締役や従業員の処遇について記載することがあります。
官公庁や株主総会から承認が得られない場合、契約が失効することを記載しましょう。
効力発生日に消滅会社の全ての財産を、存続会社が承継する旨を書き記します。
存続会社と消滅会社が協議を行ったうえで、合併に必要となった事項を記載するとよいでしょう。
合併契約書を作成する際には、会社法が定めていない事項でも書き記したほうがよい内容があります。ここでは、合併契約書を作成するうえで役立つポイントを解説します。
合併の手法には、「吸収合併」と「新設合併」の2つのパターンがあります。どちらも複数の企業が1つの企業になるという点では同じです。しかし、「合併後にどちらかの企業が存続するのか」と「対価への規定があるのか」については異なります。それぞれどのような特徴があるのでしょうか。
「吸収合併」とは、存続する企業の中に消滅する企業を取り入れる形で合併することです。会社法では存続する企業と消滅する企業が契約を結ぶうえで対価を規定すれば、株式以外であっても対価とできる旨を定めています。対価として現金を受け取ることができる手法はこちらの「吸収合併」です。
「新設合併」とは、2つ以上の企業がすでにある企業とは別に新たな企業を立ち上げることです。合併しようとするいずれの企業も消滅し、すべての権利義務が新しい会社に承継されます。会社法では「新設合併」での対価に対し、「株・社債・新株予約権ほか」と規定を設けているのが特徴です。対価として現金を受け取ることは出来ません。
権利義務の承継は会社法が定めるものであり、合併契約書に明記しなくても契約が無効になることはありません。
しかし、権利義務や財産などを承継するタイミングが不明瞭であることが原因で、企業間でトラブルが発生することがあります。どの日から権利義務の承継を行うのかを明確にするうえで、合併契約書に権利義務の承継について明記したほうがよいでしょう。
合併契約書には、1部につき4万円分の印紙税が必要です<。存続会社と消滅会社とで合併契約書を計2通作成する場合、それぞれに4万円の印紙税が必要です。印紙税にかかる費用を抑えたい場合は、原本1通のみ作成し、その他必要部数を写しで対応することで対応すると良いでしょう。この場合、原本にのみ4万円の印紙税が必要ですが、写しには印紙税は発生せず、印紙税を総額で抑えることが可能です。
合併の場合、消滅会社が過去に締結済みの契約について再締結を行う必要はありません。
合併にあたり、消滅会社のすべての権利義務は、存続会社や新設会社に承継されます。消滅会社が取引先と締結していた契約についても、同様に承継の対象です。消滅会社の商号で契約が結ばれていますが、そのままで問題はありません。
ただし、契約に「チェンジオブコントロール条項」が付いている場合などは、契約再締結が必要になることがあります。消滅会社がどのような契約を結んでいたのか、合併契約締結前に予め内容を確認し、対応を協議しておきましょう。
吸収合併契約の締結は、株主総会の前に行いましょう。なぜなら、吸収合併契約は「株主総会の承認を停止条件とする契約」と位置付けられており、株主総会の特別決議で承認を得る必要があるためです。
取締役会を設けている企業の場合は、取締役会決議を行った後に吸収合併契約を締結します。その後備置したうえで、株主総会の決議を行うのが一般的な流れです。
一方、取締役会を設けていない企業の場合は、取締役の過半数による決定が下された後に吸収合併契約を結びます。略式合併や簡易合併では、株主総会の承認が省略可能です。ただし、存続会社や株主にとって不利益が生じる場合は株主総会の決議が必要になる可能性もあります。
合併について自分で情報収集はできても、確実性の高い情報を抽出して活かすことは十分な経験がなければなかなかできません。不明点を解消してスムーズに合併を成立させるなら、すばるの仲介サービスがおすすめです。
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「吸収合併」や「新設合併」するときに作成する合併契約書には、会社法が定めるさまざまな項目を記載します。項目によっては明記されていないと合併契約が無効になるものもあるため注意が必要です。また合併後の円滑な経営のためには、必要に応じて任意の項目も書き記すとよいでしょう。
すばるの仲介サービスは、合併に関する疑問点や不安を解消し、一括対応できるのが魅力です。合併を考えている方はぜひ一度、すばるの仲介サービスへご相談ください。
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