プロパン分野におけるM&Aのポイントとは?国内事例も合わせて紹介

会計士 牧田彰俊

有限責任監査法人トーマツ入所、各種業務の法定監査、IPO支援に携わる。その後、ファイナンシャルアドバイザリーサービス部門にてM&A アドバイザリー業務・財務デューディリジェンス業務・企業価値評価業務等に従事。組織再編によりデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社に異動し、主に国内ミドルキャップ案件のM&Aアドバイザリーとして、豊富な成約実績を収める。2018年、これまで以上に柔軟に迅速に各種ニーズに応えるべく株式会社M&A DXを設立し、現在に至る。

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プロパン業界は、現在厳しい市場環境の中にいます。元々の同業他社との競争はもちろん、都市ガスの小売自由化や、オール電化、少子高齢化による需要の減少もあり、さらなる市場の縮小が予想されます。加えて、経営者の高齢化や後継者不足の課題もあり、事業を辞めることを検討する経営者も出てきております。

そこで、この問題を解消する方法として有効なのが、異業種からの参入も含めたM&Aです。プロパン業界でどのようなM&Aが行われているのか、そのポイントや事例を紹介します。

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プロパン分野の業界の特徴

プロパン分野の業界の特徴

プロパン分野の業界の概要やその現況、特徴を確認しましょう。

プロパン分野はLPガス業界に属する

一般の人にとってはプロパンガスとLPガスの違いがわかりづらいですが、LPガスとはLiquefied Petroleum Gas、つまり液化石油ガスの略称のこと。

この液化石油ガスの中には、プロパンやプタンが含まれているので、プロパン分野のことを知りたければ、LPガス業界の動向を知る必要があります。プロパンはLPガス業界に含まれているからです。

業界が抱える課題

日本LPガス業界によると、2017年のLPガス国内消費量は年間約1,420万トンです。国内最終消費エネルギーの約5%を占めており、半数近くが家庭業務用として使われています。

業界全体が抱えている課題として、LPガス需要の減少や人手不足、LPガスの安定供給の確保が挙げられます。また、電力自由化に伴い、ガスと電気をセットで販売できるようになったことも業界にとっては頭が痛い問題です。
同業他社のみならず、電力会社をはじめとする異業種他社も競争相手となってしまい、ますます厳しい状況に追い込まれています。

プロパンガス事業者の「M&A」の特徴

プロパンガス事業者の従来型の「M&A」の特徴としては、株式譲渡といった他の業種でよく行われるM&Aのスキームが採用されるというよりは、契約の譲渡として顧客が譲渡されるケースが一般的である点です。また、このようなM&Aを生業としているブローカーが多数いるのも特徴で、ブローカーが中心となって地域での事業者再編が行われるのも特徴的です。

この手法は一長一短で、メリットとしては手続きが簡易である点です。また、譲受側も契約のみ引き継ぐことになるため、株式譲渡等で論点となる簿外債務の引継ぎ等といった問題が生じる可能性をぐっと抑えることができます。一方、譲渡側からするとM&Aの対価次第では、株式譲渡と比べ多額の税金負担が生じることになります。また、契約のみを譲渡することになるため、有利子負債等の債務が引き続き会社に残るという点も譲渡側からするとデメリットの一つといえます。

M&Aを進める上でのポイント

M&Aを進める上でのポイント

M&Aを進めるならば、事前の準備が大切です。M&Aによるメリットやデメリット、注意点をしっかりおさえておきましょう。

メリット・デメリットを理解する

まず、買い手のメリット・デメリットについて説明します。
例えば、卸売業者が小売業者をM&Aで買うのであれば、今までかかったコストを圧縮したりグループ内で内製化することができるので、収益改善につながります。お互いのノウハウを共有することによって、営業力を向上させ、ライバル企業への牽制につなげられます。

デメリットとしては、資金に関するリスクが大きいことでしょう。リスク要因は主に2つあります。まず、買収資金として多額の現金が必要となることです。2つ目は、買収に成功しても、他社のさらなる攻勢で買収企業の顧客が離れていく可能性があることです。

次に売り手のメリット・デメリットを説明します。
メリットは、後継者問題を解決する手段となるだけでなく、従業員の雇用も維持でき、さらに多額の現金を得られることでしょう。一方デメリットは、長年経営した会社の経営権を失う寂しさを感じること、そして、今までの経営方針を大幅に変えられてしまう可能性があることではないでしょうか。経営方針や企業風土が変化することによって、従業員が離散してしまう可能性もあります。

M&Aの流れ

M&Aの流れは簡潔に表すと以下の通りです。

アドバイザーを決定し、今後の方針を決定
【売り手】対象企業に関する情報を詳細に記載したIMを作成
【買い手】そのIMを検証し、対価やスキーム等を検討
双方で条件面が折り合えば、基本合意を締結
専門家による財務・税務・法務面等での調査を実施
(デューデリジェンス)
デューデリジェンスの結果に基づき、最終的な条件交渉
最終合意(契約書)を締結
クロージング(資金決済等)

M&Aの際の注意点

M&Aを行うにあたって、いくつか注意しておくべき点があります。買い手・売り手それぞれの注意点を確認しておきましょう。

買い手の注意点

対象会社が自分の拠点から離れた場所にあると、うまく情報収集ができないことも多いです。情報不足が原因で割高で購入する羽目になる可能性もあります。最悪、簿外債務を見落とすことになりかねません。

どんなに手間がかかろうとも、対象企業やその地域の経済状況について、しっかり情報収集を行うことが必要です。不安を解消するためには、その地方の状況に精通したアドバイザーを選ぶことも大切なことでしょう。

売り手の注意点

売り手が最も注意すべきことは、秘密保持を徹底することです。何気なく話した情報が広まってしまい、顧客や従業員からの信頼を失い離散してしまえば、買い手もつかないという最悪の事態も起こりえます。情報管理にはくれぐれも注意しましょう。

また、売り手としてはスキーム次第で手取額が大きく異なってくる点も注意が必要です。従来行われてきたガス契約の譲渡(顧客との契約の譲渡)では、前述の通り税金負担が多額となったり、有利子負債等の債務が残ってしまうという論点があります。企業の実状に合わせて最適なスキームの提案を行うことが非常に重要となります。

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国内のM&A事例

国内のM&A事例

同業他社によるM&A事例、異業種によるM&A事例それぞれを紹介します。

同業他社によるM&A事例

静岡県の大手都市ガス会社である静岡ガス株式会社が、県内のLPガス会社、島田瓦斯株式会社の株式の過半数を取得し、子会社化しました。静岡ガスの技術力や提案力と島田瓦斯が地域からの得ている強い信頼の相乗効果によって、島田地域でより一層都市ガス・LPガスが普及することを期待し、M&Aにいたった事例です。

また、非公表案件にはなりますが、プロパンガス事業者同士のM&Aも非常に活発です。弊社で手掛けた案件では、隣県のプロパンガス事業者へのM&Aでした。対象会社の実状に合わせたスキーム提案を行い、結果として譲渡側のオーナー一族は手取額を最大化させることに成功しました。このようにスキーム次第で大きく手取額が増減することが、この業界でのM&Aの特徴ともいえます。

異業種によるM&A事例

LPガスの元売業者が海外進出を図るため、製造業者を買収した事例のように、LP関連企業が市場拡大を目指して異業種を買収するケースはいくつもあります。一方、異業種がLPガス業者を買収した事例はまだまだ少ないです。

しかし、シナジー効果を目的とした異業種との事業提携であれば、いくつかの事例があります。その一つが、食品物流をメインとする株式会社ギオンがLPガス配達企業である三ッ輪運輸株式会社と提携した例です。これは、双方の繁忙期が異なることに注目し、人手不足の解消を目的に行われた事例です。

まとめ

まとめ

プロパン関連の業界の現状や課題、M&Aの事例などを紹介しました。プロパン業界は、電力会社も競争相手となっている厳しい状況の中にいます。

そこで有効となる戦略がM&Aです。後継者不足を解消するだけでなく、シナジー効果も期待できます。M&A成功のためにも、経験豊富なアドバイザーのサポートを受けることが必要です。そのうえで業界や対象となる企業をしっかり分析しましょう。

M&A DXのM&Aサービスでは、大手会計系M&Aファーム出身の公認会計士や金融機関出身者等が多数在籍しています。事業承継でお悩みの方は、まずはお気軽にM&A DXの無料相談をご活用下さい。

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