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事業譲渡で社員・従業員との雇用契約 予備知識とトラブル回避の方法

公認会計士 牧田彰俊

公認会計士 牧田彰俊

有限責任監査法人トーマツ入所、各種業務の法定監査、IPO支援に携わる。 その後、ファイナンシャルアドバイザリーサービス部門にてM&A アドバイザリー業務・財務デューディリジェンス業務・企業価値評価業務等に従事。 組織再編によりデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社に異動し、主に国内ミドルキャップ案件のM&Aアドバイザリーとして、豊富な成約実績を収める。 2018年、これまで以上に柔軟に迅速に各種ニーズに応えるべく牧田公認会計士事務所を設立し、現在に至る。本記事の監修を務める。

事業譲渡を検討しているものの、従業員とのトラブルが心配だという方もいるのではないでしょうか。従業員とトラブルになるケースを把握しておけば、未然に防ぐことも可能です。

そこでこの記事では、事業譲渡の際のトラブルを防ぐために知っておきたい従業員待遇の種類や具体的なトラブル事例についてご紹介します。トラブルの原因を知り、スムーズに手続きを進めましょう。

事業譲渡での従業員待遇は3種類

事業を譲渡する場合、従業員は承継先の企業でも働くかどうかを選択できます。事業を譲渡しても、労働契約は勝手に引き継げないからです。

ここでは、事業を譲渡した際に従業員が受けられる待遇について3種類をご紹介します。従業員とのトラブルを避け、従業員が納得して会社で働ける環境を作るために以下の内容を確認しておきましょう。

事業譲渡日から事業継承先で業務をする

事業を譲渡した日から事業継承先で従業員が働くためには「雇用契約を新たに結びなおす」もしくは「再雇用」の2つの方法があります。前提として、どちらも事業譲渡に関わる2つの会社間の同意と従業員の同意がある場合に実施可能です。

新たに雇用契約を結ぶためには、2社間で労働契約を承継することを合意している必要があります。加えて、従業員もその旨を拒否していない場合に限られます。誰かが拒否すれば成り立ちません。労働契約を承継し、全ての合意が揃った場合にのみ新たに雇用契約を結べます。

再雇用とは、従業員が売り手の会社を退職もしくは解雇となった場合に継承先の企業で再び採用してもらうケースです。ただし、継承の対象外となった従業員が買い手の会社に再雇用を希望しても採用されない場合があります。継承先の企業には採用の自由が与えられるからです。

事業譲渡日に事業継承元内で配置換えをする

従業員が継承先の企業ではなくもとの会社で働き続けることを希望した場合、配置換えをすることがあります。別の部署で雇用できるなら、希望に沿った働き方ができるでしょう。

ただし、従業員が新しい配置先でのポジションに納得がいくかどうかはケースバイケースとなります。長期に渡って働いてきた人ほど、新しい配置先での待遇に満足しない傾向があるからです。特に給与面に不満が残る場合が多いため、しっかりと話し合った上で決めることが重要になります。

事業譲渡日で退職する

事業譲渡日に退職することも考えられます。自主退職に見えるため、企業にとっては問題がないように思えるかもしれません。しかし、譲渡対象となる事業で働いていた従業員が退職する場合、退職しか選択肢がないと判断される可能性があります。

実質的な解雇とみなされると、解雇予告手当といった退職にかかる費用を支払わなければならず、譲渡する側の会社にとって不利になります。譲渡時期に対象事業の従業員が退職するときは注意が必要です。

事業譲渡日で転籍する従業員への対処

事業譲渡日に売り手の会社から買い手の会社へ転籍する従業員への対処は簡単ではありません。一人一人と細かい部分を話し合った上でスムーズに転籍を完了させる必要があるからです。

従業員が転籍する際に注意すべきポイントは、「雇用契約の結びなおし」「給与や退職金の対応」「労働時間や有給休暇の取り扱い」と3つあります。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

雇用契約を結びなおす必要がある

雇用契約を結びなおす際、従業員と会社側の間で揉める原因のひとつとして、引渡企業と引受企業の労働条件の違いが挙げられます。給与、労働時間、休暇取得、残業に関する取り決めは、従業員が働く上で重要視する部分です。引受企業が欲しい人材でも、労働条件で合意を得られないと雇用できないおそれがあります。

その後の事業のためにも雇用契約の内容についてはしっかりと検討することが必要です。また、退職日、再雇用契約日は事業譲渡日と同じ日になることも覚えておきましょう。

給与・退職金の対応を決める必要がある

事業譲渡で従業員が転籍する場合、給与や退職金に関してしっかりと対応することが大切です。特に転籍した従業員については、給与の額次第で退職につながる場合もあります。とはいえ、多くの場合、給与の額は引き継がれます。また、転籍後に退職した場合、退職金は一般的に引受企業が支払います。

退職金の控除額に注意

退職金の所得税控除額は従業員の勤続年数によって異なります。金額が変わる基準となる勤続年数は20年です。

20年以下であれば「40万円×勤続年数」で計算します。ただし、80万円に満たない場合は80万円が退職金の所得税控除金額です。20年を超えた場合は「800万円+70万円×(勤続年数-20)」で計算した額になります。

労働時間や有給休暇の取り扱いを決める必要がある

労働時間や有給休暇の取り扱いについても譲渡の際に決める必要があります。基本的に、労働時間は引受企業の条件に準ずることが多いため、従業員にもその旨を伝えておくことが大切です。ただし、労働時間が大きく異なると従業員が退職してしまうケースがあることも覚えておきましょう。

新しい雇用契約で必要な人材を失ったり作業の効率が下がったりしては、引受企業のメリットが小さくなります。そのため、有給休暇は契約次第でそのまま引き継げる場合があるようです。

事業譲渡日で配置換えをする従業員への対応で注意すること

事業譲渡日に引渡企業内で配置換えをする従業員への対応で注意すべきなのは、譲渡前と同じ条件で雇えない場合、トラブルに発展するおそれがあることです。従業員が希望する条件に合った配置換えができれば特に問題はありません。しかし、配置換えによって職位や給与が変わるときは注意が必要です。

条件が合わずに退職となった場合、そうせざるを得なかったと見なされ、自己都合ではなく実質的な解雇と判断されるケースも考えられます。

事業譲渡日で退職する従業員への対応と手続き

事業譲渡日で退職する従業員への対応や手続きの内容には、退職日の設定、退職金の支払い、業務の引き継ぎの有無を確認することがあります。滞りなく従業員の退職手続きを進められるように詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

事業譲渡による退職は「会社都合退職」扱い

事業譲渡による退職は会社都合退職扱いになるため「解雇」となります。そのため30日前に解雇予告が必要なので注意しましょう。

退職日は自ら設定することがほとんどです。従業員が希望して退職する場合、本人と相談した上で退職日を決めます。本人の希望でも会社都合の退職となることがあり、会社都合か本人の都合かを曖昧にするとトラブルの原因になるおそれがあります。どちらの都合なのか明確にすることが大切です。

業務の引き継ぎをするかどうか

事業譲渡による退職では、仕事の引き継ぎ相手が自社内の人間の場合と引渡先の企業の人の場合があります。同じ会社の中での引き継ぎであれば、一般的な退職時の引き継ぎと何ら変わりはありません。

一方、事業の譲渡先の社員に仕事を引き継ぐ場合、事業譲渡日よりも前に引き継ぎ作業を始める必要があります。譲渡日を過ぎると自社の従業員ではなくなるため、早めに引き継ぎを進めましょう。

退職金の支払いは事業譲渡元の仕事

事業譲渡が原因で従業員が退職する場合、退職金を支払う企業は事業譲渡元になります。通常の退職金を支払うときと同じように対応しましょう。譲渡先に転籍する場合、退職金の支払をどこが行うかは事業譲渡契約の条件次第となります。支払う権利も譲渡した場合、譲渡先の企業が支払うことになります。一方、事業譲渡の際に事業譲渡元で一旦その時点での退職金を精算する場合、譲渡元の企業が支払うことになります。

事業譲渡での従業員とのトラブル事例

事業譲渡の際、従業員とトラブルに発展してしまったケースも存在します。事前にコミュニケーションを取っていなかったり必要な説明を怠ったりすると、トラブルが発生しやすくなるようです。

ここでは、トラブルの事例を4つご紹介します。事業譲渡を行うときには以下のケースに該当しないように注意して話を進めましょう。

主要な人材が相次いで転籍拒否したケース

事業譲渡で優秀な人材が転籍することなく辞めてしまう場合があります。社内で活躍していた主要な人材が相次いで転籍を拒否して退職すると、その後の事業の継続が難しい状況に陥るかもしれません。

事業を続けるに当たって主要な人材が退職するのを防ぐには、事業譲渡の前に事業譲渡元及び事業譲渡先双方が協力することで同意書を交わしておくことが有効です。書面で同意を取っておけば、優秀な人材が譲渡の際にいなくなるリスクを避けやすくなります。

同意を取る時期は早いほうがいいでしょう。事業譲渡の話が出たらすぐに相談するのもひとつの方法です。時期が遅くなって譲渡直前になると、同意が取れなかったときに対策できなくなります。事業譲渡が確定する前にコミュニケーションを取って、確定する頃には同意が取れているのが理想です。

経営理念・企業文化の違いについていけず転籍後の退職が相次いだケース

その時々の経営者によって変化しやすいのが経営理念、創業当初から引き継いでいるのが企業文化というのが一般的な考え方です。

経営理念や企業文化は会社によって異なるため、元々いた会社と転籍先の企業の経営理念や企業文化の違いについていけず退職するケースがあります。特に古くからある企業の場合、企業文化は創業当初から従業員に浸透し続けているため、その変化に戸惑う方も多いようです。

従業員が退職ではなく転籍を選択するとき、またはどちらにするか悩んでいるときには、譲渡先の企業文化や経営理念についてしっかりと伝えることが必要になります。あまりにギャップが大きいと、転籍した後で退職を余儀なくされる可能性が高くなってしまいます。

給与・福利厚生に納得がいかず優秀な人材を失ったケース

給与や福利厚生の面で合意を得られずに、優秀な人材を失うケースはたくさんあります。給与や福利厚生は従業員が働く上で重要視しているポイントだからです。

優秀な人材が給与や福利厚生の条件を理由に退職しないようにするには、少なくとも同等の給与、同等の福利厚生になるように交渉しておくことが必要です。また、事業譲渡をきっかけに他の企業に移ることを検討する従業員も出てくるかもしれません。その場合、給与を上げることも検討する必要があるでしょう。

譲渡後の事業を発展させるためには、優秀な人材にできるだけ残ってもらうことが重要になります。給与や福利厚生面で辞められることのないように、細かい条件についてもしっかりと話し合いましょう。

統合時の事業融合が急すぎたため社員がついていけなくなったケース

事業譲渡による統合時の事業融合が急すぎると、社員がついていけずに大きな負担となりトラブルが発生するおそれがあります。特に人事面や経理面といったシステム部分は、急に統合すると混乱が生じやすくなります。しっかりと計画を立ててスケジュール調整を行いながら慎重に進めていくことが重要です。

また、人材や理念といった部分も徐々に融合させていく必要があります。統合の過程を性急に進めると、従業員同士の関係が悪くなり事業の業績向上に悪影響を与えることにもなりかねません。

短期的に統合しようとするとリスクが伴うため、状況を見つつ臨機応変に進めていくことを意識しましょう。事業譲渡によるメリットを最大限に享受するためにも大切なポイントです。

事業譲渡を機にリストラ人事ができるか

会社の経営状況の効率化を目的としてリストラ人事を行いたい場合、事業譲渡をきっかけにすることも可能です。事業譲渡は従業員の解雇の理由として受け入れられやすいため、社内の人員を整理したいときに活用するのもひとつの方法といえるでしょう。

ただし、事業譲渡による解雇は「会社都合退職」となるので注意が必要です。退職金の支払いはもちろん、従業員とのトラブルに発展したときにも膨大な費用が発生するため、そういったことも念頭に置いて検討しましょう。

事業譲渡とは

事業譲渡とは、事業を譲渡することによって経営の効率化を図ったり事業を再生させたりすることが目的です。会社の財政が悪化して経営状況を立て直したい場合、事業譲渡することで資金を集められます。また事業の規模が大きく、多くの人に貢献しているものの、後継者がいないため事業を継続できない場合に事業譲渡を行うこともあります。

このように、経営の財務状況や後継者といった問題を解決するのに役立つ方法のひとつが事業譲渡です。ただし、従業員の対応によってはトラブルが発生しやすいのも特徴で、慎重に進めることが重要になります。

事業譲渡のトラブルは契約書で解決することも多い

事業譲渡をするときに当事者同士でトラブルに発展するケースがあります。トラブルの原因は、契約書に明確な記載がなかったりコミュニケーションを取っていなかったりする場合が多いようです。

「誰がいつまでに何をするのか」「もしも○○のようなケースの場合はどう対処すればいいのか」といったことを細かく想定して契約書に明記しておけば、トラブルを未然に防げるでしょう。

まとめ

事業譲渡の際は継承先の企業とのコミュニケーションや従業員との綿密な話し合い、または契約書を交わすことによってトラブルを防ぐことが可能です。事業継承の経験がなく手探りで始める場合はトラブルを招くリスクも大きいでしょう。大きな問題が発生すると、膨大な費用が必要になる場合もあります。

トラブルなく事業譲渡を成立させられるかどうか心配なときは、事業継承やM&Aの知識を備えているプロの力を借りることがベストです。

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