事業承継特別保証制度とは?要件と利用方法をまとめて解説

公認会計士・税理士 山田武弥

会計士・税理士 山田武弥

有限責任監査法人トーマツ入所。金融業及び卸売業を中心とした各種業務の法定監査業務に携わる。 その後、大手税理士法人及びコンサルティング会社にて事業承継・事業再生・法人顧問業務に従事。 組織再編税制を活用した事業承継スキームの構築や株価対策、事業再生計画の立案やその後のモニタリング及び金融機関対応等に豊富な経験を有する。 山田武弥公認会計士・税理士事務所として独立後、相続・M&A大学に参画し、現在に至る。本記事の監修を務める。メンバーの詳細はこちら

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中小企業の事業承継において大きな課題となるのが経営者保証です。後継者候補が会社を継ぎたいと考えていても、経営者保証を負いたくないために事業承継を断念してしまうケースが多くみられます。そのような状況を打破するために新たに制定されたのが事業承継特別保証制度です。

ここでは経営者保証を回避できる制度の要件や利用方法を解説します。

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本記事のポイント

  1. 事業承継特別保証制度の利用を検討している方向けの記事です。
  2. 事業承継特別保証制度の概要や利用するメリットを解説しています。
  3. 事業承継特別保証制度の要件や利用方法も紹介しているので、経営者保証を解除したいと考えている経営者向けの記事にもなっています。

事業承継特別保証制度とは?利用するメリット

事業承継特別保証制度とは?利用するメリット

事業承継特別保証制度は2020年4月に開始したばかりなため、どのような制度なのか、その詳細を知らない人が多いかもしれません。ここでは、制度の特徴と事業承継時に利用するメリットを紹介します。

事業承継時に利用可能

事業承継特別保証制度(事業承継時に経営者保証を不要とする新たな信用保証制度)は、金融機関による更なる経営者保証の解除を後押しし、中小企業の事業承継を更に促進させることを目的に新たに始まった制度です。原則として3年以内に事業承継を予定する「事業承継計画」を有する法人が対象となりますが、令和2年1月1日から令和7年3月31日までに事業承継を実施した法人であって、承継日から3年を経過していない場合であれば事業承継後の適用もできます。

参考:中小企業庁

事業承継時の経営者保証が不要

事業承継特別保証制度は事業承継時に一定の要件の下で経営者保証を不要とする制度です。

経営者保証とは、企業が金融機関から融資を受ける際に経営者が保証人となることをいいます。万が一、会社が債務を返済できなくなった場合、経営者がその責務を背負わなければなりません。

参考:中小企業庁

金融機関にとって経営者保証は貸倒れが生じるリスクを抑える有効な手段となりますが、企業にとっては経営者自身の破綻につながる可能性があるため、事業承継時の大きな負担となっていました。その経営者保証を解除して後継者の負担を軽減するのが、事業承継特別保証制度の目的となります。

あらかじめ定められた要件さえ満たせば、事業承継時の大きな阻害である経営者保証を徴求されることがなくなり、後継者は保証に関する点での不安材料が解消され躊躇なく事業を引き継げるようになります。

また、経営者保証なしで融資を受けることができ、、事業承継計画の範囲内で積極的な経営方針を取ることも可能です。

専門家の確認を受けると保証料率が大幅に軽減される

保証料率については、経営者保証コーディネーターによる確認を受けない場合の保証料率は0.45%~1.90%ですが、確認を受けた場合は0.20%~1.15%の保証料率となります。

経営者保証コーディネーターとは、経済産業省の委託またはその委託を受けた者の再委託を受けて事業の承継に対する支援にかかる事業を行うものが雇用する専門家のことです。47都道府県の産業振興センターなどに配置されており、中小企業診断士や公認会計士の資格保有者が担当しています。

参考:一般社団法人 全国信用保証協会連合会

融資を受けようとする企業が事業承継特別保証制度の要件を満たしてしているかどうかを確認し、要件を満たしていると判断された企業は、保証料率を大幅に引き下げることが可能になります。

ただし、実際に経営者保証を解除できるかどうかは、金融機関との交渉次第です。経営者保証コーディネーターは金融機関との面談に同席して経営者にアドバイスを行い、交渉をスムーズに進めていくための手助けをします。

知識や交渉力に不安がある経営者にとって、専門家が味方についてくれることは大きなメリットでしょう。

経営者保証付きの既存の借入金でも借換できる

事業承継特別保証制度では、既存のプロパー借入金(個人保証あり、他行分)についても、借り換えも可能であり、経営者保証を外すことができます。

事業承継特別保証制度の要件

事業承継特別保証制度の要件

事業承継特別保証制度を利用するには、いくつか要件を満たさなければなりません。また、保証期間や保証される金額にも上限があるので注意しましょう。

申込み資格

事業承継特別保証制度を利用するには、以下4つの要件をすべて満たす必要があります。

・資産超過である
・EBITDA有利子負債倍率((借入金・社債-現預金)÷(営業利益+減価償却費))が10倍以内である
・法人と経営者個人の分離がなされている
・返済緩和している借入金に該当しない

EBITDA有利子負債倍率とは、実質的な借入金をキャッシュフローにより何年で返済できるのかを表す指標のことで、(借入金・社債-現預金) ÷(営業利益+減価償却費)で算出されます。

参考:中小企業庁

上記4つの要件に加えて、下記のいずれかに該当する中小企業者のみが事業承継特別保証制度を利用することが可能です。

・事業承継計画書を策定していて、3年以内に事業承継を予定する法人
・2020年1月1日から2025年3月31日までに事業承継を実施した法人で、事業承継日から3年を経過していないこと

保証できる金額・期間

融資限度額は2億8000万円となっています。対象となる資金は事業資金です。

また、保証期間については、一括返済の場合は1年以内での返済となりますが、分割返済の場合は10年以内(据置期間1年以内を含む)での返済が可能。期間設定が柔軟になっているところも、事業承継特別保証制度の特徴の一つです。

事業承継特別保証制度の利用方法

事業承継特別保証制度の利用方法

ここからは、事業承継特別保証制度を実際に利用する際の手順について説明します。

各都道府県の信用保証協会へ問い合わせをする

まずは、各都道府県または市町村にある信用保証協会へ問い合わせましょう。信用保証協会のサポートに従って具体的な手続きを進めていくことになりますが、実際は金融機関の事前相談を求められる場合が多いです。

申し込みできるのは、与信取引のある金融機関に限ります。

事業承継計画書などの書類を作成する

利用を申し込む際に、事業承継計画書などの書類の作成が義務づけられています。

・事業承継計画書
・財務要件等確認書
・借換債務等確認書(既住借入金の借り換えをする場合)
・他行借換依頼書兼確認書
・事業承継時判断材料チェックシート(経営保証コーディネーターによる確認を受け、0.20~1.15%の信用保証料率の適用を受ける場合)

実際にどの書類を作成するかは、申込内容や条件によって異なるので、信用保証協会や金融機関に問い合わせておくとスムーズに手続きを進めることができるでしょう。

事業承継特別保証制度の注意点

事業承継特別保証制度の注意点

事業承継特別保証制度は一見するとメリットばかりに見えますが、実際に利用する際は注意点があります。

適用されない会社もある

事業承継特別保証制度には、いくつか条件が設けられています。この条件をクリアしないと、事業承継特別保証制度は適用されません。

経営者保証を解除したいと考えているすべての企業が制度を利用できるわけではないので注意しましょう。

経営者保証が不要になるわけではない

事業承継特別保証制度は、事業承継を支援する目的で新たに開始した制度です。しかし、この制度があるからといって、必ずしも経営者保証が不要になるわけではありません。

融資の限度額が定められているほか、対象資金の制限などもあるため、事業承継時の負担を軽減することはできても、無制限に経営者保証を解除できるわけではありません。そのことをきちんと理解したうえで、制度を正しく活用しましょう。

まとめ

まとめ

事業承継特別保証制度は経営者保証なしに事業承継を実現できる非常に有効な手段です。実際に制度を活用する際はいくつか要件をクリアしなければなりませんが、経営者保証コーディネーターのサポートを得ながら金融機関との交渉を進めていくことができます。

これまで経営者保証が大きなネックとなり、事業承継を躊躇していた中小企業にとって、制度を利用するメリットは大きいです。事業承継特別保証制度を賢く活用して、中小企業の事業承継をスムーズに進めていきましょう。

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