事業承継対策としての生命保険は下火に!法人保険の活用法を解説

公認会計士 加藤大典

会計士 加藤大典

大手自動車メーカーに入社、生産技術部にて製造工程設計業務に携わる。 その後、デロイトトーマツコンサルティングに入社し、組織再編により有限責任監査法人トーマツのアドバイザリー部門に異動。 製造業の法定監査業務及びIFRS導入支援、組織再編支援、事業再生支援、内部統制構築支援、決算早期化支援、経営管理体制強化支援等の様々なプロジェクトに従事。本記事の監修を務める。メンバーの詳細はこちら

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事業承継対策として生命保険を活用する法人もありましたが、2019年の税制改正以後は下火になりました。しかし、かつてよりメリットは減ったものの、事業承継対策として法人保険の活用方法はまだあります。どのように利用できるのか見ていきましょう。

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本記事のポイント

  1. 事業承継において生命保険をどのように活用できるのか知りたい方向けの記事です。
  2. 生命保険を活用する際のポイントと利用する際の注意点を解説しています。

貯蓄性の高い全損型・半損型保険は販売停止に

貯蓄性の高い全損型・半損型保険は販売停止に

2019年7月に法人保険(法人向け生命保険)に関する税制が大きく変わりました。以前は解約返戻率が7割以上と高く、なおかつ保険料の半額以上を損金算入できる「全損型」や「半損型」と呼ばれる保険商品がありましたが、税制改正以後は全損型も半損型もすべて販売停止となっています。

新税制に基づいて販売されている法人保険は、最高解約返戻率によって損金算入できる保険料の割合が細かく定められている点が特徴です。(※①50%以下 ②50%超~70%以下 ③70%超~85%以下 ④85%超 の4段階)
例えば、最高解約返戻率が50%以下のときは保険料全額を損金に算入できますが、50%を超えると資産計上できる期間や保険料に上限が定められ、損金算入できる金額が制限されます。

契約中の保険に関しては変化なし

税制改正前(2019年7月8日よりも前)に契約した法人保険に関しては、損金算入できる金額に変化はありません。契約時のルールがそのまま適用されます。

しかし、税制改正後に販売された法人保険に関しては、損金算入できる保険料の割合が制限されるので注意しましょう。また、改正前に契約した法人保険であっても、契約を更新する際には新ルールが適用されるため、節税できる金額が変わることもあります。

生命保険を活用した事業承継は下火に

法人保険に関するルールが変わったことにより、保険商品によっては節税できる金額が大幅に減りました。そのため、法人保険で長期間の節税を行い、事業承継に活かすということが以前よりも難しくなっています。しかし、法人保険が事業承継に全く活用できなくなったわけではありません。新税制ではどのように活用できるのか見ていきましょう。

新税制における法人生命保険の活用法

新税制における法人生命保険の活用法

損金算入できる保険料の割合は、税制改正前と比べて制限がかかるようになりました。しかし、最高解約返戻率が50%以下であれば保険料全額を損金算入でき、また、保険金を事業承継時に発生する相続税の支払いに用いることも以前と同様に可能なので、上手に活用すれば事業承継をスムーズに行うことができます。

経営者の死亡時の経営資金として

経営者との個人的な関係で成立している取引先が多い場合は、経営者に万が一のことがあると、取引を打ち切られ、事業の継続が難しくなる可能性があります。そのような場合に備えて、経営者を被保険者とした法人保険に加入しておくことが考えられます。経営者が亡くなったり、高度障害になった場合でも保険金を受け取れるため、それを経営資金として活用できます。また、金融機関から融資を打ち切られ、手元のキャッシュが少なくなった場合にも、保険金を返済等の資金に充当できるでしょう。

役員や従業員の退職金として

役員や従業員が退職するときに備えて退職金を用意しておくと、福利厚生を充実させることができます。法人保険に加入しておくならば、保険料の一部あるいは全額を損金として算入しつつ、解約返戻金を退職金に充当できるでしょう。

ただし、新税制では解約返戻率が高い保険は保険料の損金算入できる割合が低いので、返戻率と損金算入率の割合を比較して、自社の目的に合った保険を選んでください。

役員や従業員の見舞金として

役員や従業員を被保険者として、医療保険に加入することもできます。
万が一、病気やけがをした場合には保険金を受け取れるので、入院費や手術費、見舞い金として支払うことができるでしょう。役員や従業員も安心して働くことができるので、福利厚生の充実にもつながります。

生命保険を事業承継に使用する際の注意点

生命保険を事業承継に使用する際の注意点

法人向け生命保険は、経営者に万が一のことがあったときの経営資金の確保などを目的として加入すれば事業承継に活用することができます。また、役員や従業員の退職金や見舞い金にすることを想定して加入すれば、福利厚生の充実に役立つでしょう。

しかし、メリットばかりというわけではありません。以下の点に注意して保険加入を検討しましょう。

● キャッシュフローを考慮して、無理のないプランで契約する
● 解約時期ごとの解約返戻金額を確認する
● 目的に合った保険の種類を選ぶ
● 保険の目的に合わせた規定を作成する

キャッシュフローを考慮して、無理のないプランで契約する

新税制下の法人保険では、解約返戻率が50%を超えると保険料を全額損金としては算入できません。また、そもそも保険料が高く、負担が大きくなる可能性もあります。
負担が大きくなればキャッシュフローが悪化する恐れもあるでしょう。万が一に備えて保険に加入することも大切ですが、会社の経営に影響を及ぼさない程度にすることも大切です。

解約時期ごとの解約返戻金額を確認する

解約返戻率は解約するタイミングによって変動します。解約時期によっては解約返戻金の額が支払った保険料の総額よりも大きく下回る可能性があるでしょう。役員や従業員の退職金を準備したい場合は、死亡保障は付かないないものの、定期預金などに加入するほうが解約時により多くの退職金の原資を作れるかも知れません。

なお、解約返戻率は一般的に一定期間を超えると徐々に低下します。加入から受取までの期間が長いと予想される場合は、生命保険以外の方法で退職金を備えることも検討できるでしょう。

目的に合った保険の種類を選ぶ

事業承継に備えるなら定期保険、役員や従業員の福利厚生なら養老保険や医療保険など、目的に合った保険を選ぶことも大切です。

例えば、「保険料が多少高くなったとしても、万が一の時と中長期的な退職金の支払い時のどちらにも備えられる保険に加入したい」という場合、養老保険では死亡保険金と満期保険金が同額なので、役員や従業員の定年時を満期として加入することもできます。もちろん保険料の一部も損金として算入できるので、ある程度の節税効果も得られるでしょう。

保険の目的に合わせた規定を作成する

福利厚生目的や退職金目的に保険に加入する場合は、社内規定を設けていない場合は損金算入が認められないことがあるので注意しましょう。例えば養老保険を福利厚生の充実に活用しようと考えている場合は、福利厚生の内容を定める社内規定がないと保険料を損金として算入できない恐れがあります。

保険に加入する前に、目的に合った契約が可能なのか専門家に相談してみましょう。

まとめ

まとめ

税制改正によって法人生命保険のルールが変わり、事業承継への活用が下火になりました。しかし、保険料を損金として算入できる割合は減少したものの、事業承継や福利厚生の充実に活かすことはできます。

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