事業承継5カ年計画について!概要や内容、策定された理由を徹底解説

清水淳史

MBA 清水淳史

阪和興業株式会社、株式会社紀陽銀行を経て、2018年フロンティア・マネジメント㈱に入社。紀陽銀行では、法人営業業務を経て、本部部署にて、事業承継・M&A業務を担当。フロンティア・マネジメントでは中堅・中小企業向けの事業承継型M&A業務、事業承継支援業務、組織再編業務に従事。製造業、飲食業、卸売業、小売業、不動産業など幅広い業界の事業承継型M&Aを多数経験。メンバーの詳細はこちら

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中小企業における経営者の高齢化や後継者不足の問題に直面していることを踏まえ、中小企業庁が策定したのが事業承継5カ年計画です。中小企業が積極的に事業承継できる環境を整え、廃業を回避する様々な施策を行っているのが特徴です。そこで今回は、事業承継5カ年計画の概要や策定された背景について分かりやすく解説します。

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本記事のポイント

  1. 事業承継5カ年計画について知りたい方向けの記事です。
  2. 事業承継5カ年計画で取り組む内容を丁寧に解説しています。
  3. 事業承継の相談ができる場所も紹介しているので、事業承継について悩んでいる方向けの記事にもなっています。

中小企業庁が策定した事業承継5カ年計画とは

中小企業庁が策定した事業承継5カ年計画とは

事業承継5カ年計画とは、 跡継ぎ問題を抱える中小企業を対象に事業承継を支援する為、中小企業庁が策定した施策です。 策定から5年間で集中的に支援され、中小企業が積極的に事業承継の解決に向けて取り組みやすい環境を整えています。

事業承継5カ年計画を策定した中小企業庁とは、中小企業の育成や発展、中小企業の支援を図るための企画や立案など行う行政機関のことです。

出典:中小企業庁:「事業承継5ヶ年計画」を策定しました
出典:中小企業庁の任務

事業承継5カ年計画が策定された理由

事業承継5カ年計画が策定された理由

中小企業庁が事業承継5カ年計画を策定した理由は、 中小企業の経営者の高齢化や後継者問題 などがあります。また、中小企業によっては事業承継を進めているものの、準備が思うように進まないなどの問題を抱える企業も存在します。そのような中小企業が抱える問題を解決すべく、事業承継5カ年計画が策定されました。ここからは、事業承継5カ年計画を策定した理由について解説します。

経営者の平均年齢が高くなっている

中小企業における経営者の平均年齢は、年々高くなっているのが現状です。

中小企業庁によると、1995年の経営者年齢のピークが47歳だったことに対し、2015年には66歳となっています。中小企業経営者の引退平均年齢は70歳前後なので、早めに事業承継の準備を進めることが求められるでしょう。

後継者不足で廃業が相次いでいる

経営者に子どもがおらず後継者として適任な人材が見つからなかったり、たとえ子どもがいても会社を継ぐ意思がなかったりなど、 様々な理由で後継者不足に頭を悩ます企業 も多いです。後継者が不在である半数の中小企業は廃業を予定していることも明らかになっています。

一方で、 後継者が見つかれば事業は存続できると考える廃業予定の中小企業は4割も存在する ことが判明しています。後継者不足で廃業以外の選択肢がないと考える中小企業の経営者が多いことがわかります。

事業承継への準備が遅れている

後継者不足などの問題により、どの世代においても半数以上の中小企業の経営者が事業承継の準備を計画していない状態です。後継者を育成する時間を踏まえると、 事業承継にはおよそ5年~10年 かかります。経営者の引退時期を踏まえると、遅くとも60歳前後には始めたいところです。

また後継者がいない場合は、適任の人材を確保しなければいけません。たとえ子どもがいても会社を継ぐ意思がないこともあるため早い段階から子どもの意思を確認することが必要です。子どもに継ぐ意思がないのであれば、後継者問題を解決できる施策の検討が求められます。

出典:中小企業の事業承継に関する 集中実施期間について/経済産業省

事業承継5カ年計画における5つの概要

事業承継5カ年計画における5つの概要

中小企業庁により策定された事業承継5カ年計画では、5つの項目を掲げています。5つの項目とは、「経営者の気付きの提供」や「後継者が継ぎたくなる環境の整備」、「後継者マッチング支援の強化」「事業退出・事業統合等をしやすい環境の整備」「経営人材の活用」です。これらの観点から、支援対策や施策を強化してくれます。事業承継5カ年計画が掲げる5つの項目について見ていきましょう。

1.経営者の「気付き」の提供

70代の経営者であっても事業承継に向けた具体的な準備を進める中小企業はそう多くありません。ここまで事業承継の準備が遅れているのは、日々の業務に追われていたり事業承継の準備の大変さに気づいていなかったりする経営者が多く、事業承継への取り組みを先送りにしていることが主な理由です。

先ほども少し触れましたが、事業承継には5年~10年ほどかかります。 事業承継の準備を後回しにすると、経営者の引退まで間に合わない こともあるかもしれません。この項目では、まず事業承継を先送りにする中小企業の経営者に向けて早めに取り組むことへの大事さを理解してもらい、具体的な行動へと促します。

2.後継者が継ぎたくなる環境を整備

国税庁が公表した国税庁統計法人税表によると、2018年度に赤字だった企業は66.1%です。8年連続で赤字率は改善傾向にあるものの、多くの企業が赤字経営をしている状態となります。経理上が赤字でも経営不振というわけではありません。

しかし赤字率の数字だけ見ると企業の後継者になりたいと前向きに考える人は少なく、むしろ躊躇する人が多いのが現状です。このような状況下では、後継者問題を解決することはできません。この項目では、後継者が安心して事業を継げるような経営改善や環境整備の支援を行います。

出典:2020年都道府県別「赤字法人率」調査 赤字法人率66.1%、8年連続で改善/東京商工リサーチ

3.後継者マッチング支援の強化

従来の事業承継は親族への承継が大半を占めていたため、M&Aを検討する中小企業は多くありませんでした。しかし最近はM&Aを前向きに考える経営者が増加傾向にあります。ただM&A全体の件数は増えているものの、小規模企業のM&Aの実績数はわずかです。

小規模企業のM&Aの実績数が少ない為、事業承継5カ年計画では売手と買手のマッチングの促進を強化しています。具体的には、 事業引継ぎ支援センターの支援体制の強化や、民間企業との連携により、小規模M&Aマーケットを形成しようと しています。これにより、小規模企業がM&Aを行いやすい環境を整えています。

4.事業退出や事業統合等をしやすい環境の整備

中小企業が廃業に追い込まれると、打撃を受けるのは経営者や従業員だけではありません。取引先や地域経済にも大きな影響を及ぼします。例えば、日本を代表する伝統工芸品を製作する企業が廃業した場合、熟練した技や職人、その地域の独自文化が消滅することになるかもしれません。

このように中小企業の廃業を回避するために取引会社が事業を統合したり、地域企業の協力を得たりなど、事業統合や共同化の支援を行います。関わり合う企業や地域で助け合いをすれば、廃業予定の中小企業も事業の存続が現実化できます。

5.経営人材の活用

後継者問題を解決し事業承継によって事業が引き継がれたとしても、その後も様々な問題に直面することとなります。例えば、後継者の能力不足で経営やマネジメントに支障が出たり、顧客や取引先離れなどの問題がおきたりするかもしれません。後継者が問題解決できずにいると、業績にまで影響して従業員の士気が下がることもあります。

事業承継の5カ年計画では、事業承継によって事業が引き継がれたあとの課題を解決すべく、経営に関する経験が豊富な人材を送り込んだりアドバイザーを活用できる環境を整備したりなど様々な支援を実施しています。後継者が課題を解決してうまく経営できる環境を整えていきます。

事業承継5カ年計画で取り組む内容

事業承継5カ年計画で取り組む内容

事業承継5カ年計画が掲げる5つの項目に対し、具体的にどのようなことが取り組まれるのか、さらに深掘りしていきましょう。事業承継5カ年計画には、地域型プラットフォームの構築や早期承継のインセンティブ強化、小規模M&Aマーケットの環境整備など事業承継支援に関する施策が細かく記載されています。それぞれの項目を確認していきましょう。

1.地域型プラットフォームの構築

円滑な事業承継を促すために地域の商工会や商工会議所、金融機関などのネットワークを図るのが地域型プラットフォームの構築です。実は、地域密着型の支援機関である事業引継ぎ支援センターもありますが、これまでは受け身の支援でした。

しかし事業承継5カ年計画では、支援機関から積極的に事業承継を推進する体制を整えています。資金面や専門家育成のサポート、事業承継診断などを実施するとしています。事業承継診断に関しては、2022年までに25万~30万件の中小企業を対象に実施することを目標としています。

2.早期承継のインセンティブ強化

多くの中小企業では、事業承継への取り組みが遅れています。事業承継に取り組む時期が遅れていることもありますが、そもそも事業を承継したいと考える人材が減少していることも多いです。これは事業承継することにインセンティブを感じていないことが考えられます。

事業承継5カ年計画では、事業承継をきっかけに新事業への取り組みを支援する事業承継補助金を新設しました。経済が必ずしも良好でない事業に対して経営改善や事業再生を支援したり生前贈与の税制優遇をしたりなど、様々な角度から早期承継へのインセンティブ強化を図ります。

3.小規模M&Aマーケットの環境整備

事業承継5カ年計画では事業引継ぎ支援センターにおけるデータを公開することで、小規模なM&A案件を取り扱いやすい環境整備を行っています。また、国内だけでなく国外の事例も紹介され、特定の国に関する情報もインターネットで検索できるようになっています。

特にアメリカでは、小規模から大規模までM&Aが積極的に行われています。このような事例を見ることで、より知識を深めることが可能です。また情報やデータの公開以外にも民間のM&Aプレイヤーの育成や創業者や経営人材とのマッチングを促進し、多方面から環境を整えています。

4.サプライチェーンの環境整備

中小企業庁は下請中小企業の体質を強化し、独立性のある企業への成長を促すために下請中小企業振興法を策定しました。

これを受けて地域におけるサプライチェーンを環境整備し、中小企業の自主的な協力体制を促す支援を行っています。例えば、奈良県の自動車整備会社を事業承継した後継者が赤字の中小企業だった自動車整備業や板金塗装業をM&Aで買収。その後、サプライチェーン化してビジネスを成功させている事例もあります。

5.経営スキルがある人材の支援

事業承継を行った後継者が直面する様々な問題を解決するために、事業承継5カ年計画では後継者が抱える課題を解決できる環境を整えています。中小企業庁では、 経営スキルの高い人材を事業承継支援に送り込むために人材紹介会社との連携 を推進しています。

また経営者OBによるセミナーを開催して、マネジメントや経営における知識、問題解決能力の向上などビジネスに関する様々なことを習得できる場を提供しています。後継者のマネジメントや経営の知識やスキルが高まれば、会社の存続はもちろん新規事業に挑戦することも可能になります。

事業承継を相談できる場所はある?

事業承継を相談できる場所はある?

実際に事業承継への取り組みを検討したとき、何から始めればいいのか、どんな取り組みをすればいいのかなど、様々な悩みを抱える企業は少なくありません。実は事業承継に関する悩みは、中小企業庁が設置する相談機関や弁護士、行政書士、公認会計士、税理士、M&Aを専門に取り扱う民間機関で相談することが可能です。ここからは、事業承継の悩みを相談できる場所を紹介します。

中小企業庁が設置する相談機関

事業承継の悩みは、中小企業庁が設置する相談機関で相談できます。事業引継ぎ相談窓口は全国47都道府県に認定支援機関が設置されており、事業承継における悩みや情報提供を受けることが可能です。また、より専門的な支援を受けられる事業引継ぎ支援センターも、47都道府県に設置されているため中小企業の事業承継に関するあらゆることを相談できます。

出典:事業承継・引継ぎ支援センター

法律専門家である弁護士や行政書士

事業承継の悩みは、法律専門家である弁護士や行政書士にも相談できます。弁護士や行政書士はM&Aに関する専門的な知識を持っているだけでなく、家族の相続対策の相談も可能です。M&Aと合わせて相続対策に関する問題を解決できるのはメリットだといえます。

中小企業を支援する公認会計士や税理士

長期にわたり取引する公認会計士や税理士がいるなら、事業承継の相談先として最適です。公認会計士や税理士は多くの中小企業の支援を行っており、その業務の一環としてM&Aに関する悩みを各企業の経営者から受けていることもあります。

M&Aを専門に取り扱う民間機関

より専門的な情報を得られるのが、M&Aの仲介業者やコンサルティング会社です。M&Aにおける専門的な知識があるだけでなく実績も豊富なので、悩みの相談はもちろん実際に売買対象になる相性の良い企業を探してくれます。M&Aを実際に行うとなると専門家の知識や経験を要する場面も多いため、頼もしい存在になってくれるでしょう。

まとめ

まとめ

中小企業庁により策定された事業承継5カ年計画は、中小企業が抱える経営者の高齢化や後継者問題を解決するための施策を行っています。事業承継の取り組みが遅れると、場合によっては廃業に追い込まれることもあるかもしれません。

そのような最悪の事態を避けるために、経営者が早いうちから後継者の選定から、育成、財産の引継ぎに取り組む必要があります。また事業承継にはM&Aの選択肢があり、事業を次世代に承継する手法として注目が高まっているのが現状です。ただ、M&Aを行うには専門的な知識を要します。M&Aを検討するなら、まずは専門家に相談するようにしましょう。

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