負債比率とは?計算方法と経営の指標となる適正水準を詳しく紹介

会計士 牧田彰俊

有限責任監査法人トーマツ入所、各種業務の法定監査、IPO支援に携わる。その後、ファイナンシャルアドバイザリーサービス部門にてM&A アドバイザリー業務・財務デューディリジェンス業務・企業価値評価業務等に従事。組織再編によりデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社に異動し、主に国内ミドルキャップ案件のM&Aアドバイザリーとして、豊富な成約実績を収める。2018年、これまで以上に柔軟に迅速に各種ニーズに応えるべく株式会社M&A DXを設立し、現在に至る。

本記事の監修を務める。メンバーの紹介はこちら

この記事は約12分で読めます。

会社を経営する場合、自社の財務状況を把握しておくことは必要不可欠です。経営状況を測る指標にはさまざまなものがありますが、負債比率もその1つです。

本記事では、自己資本や他人資本といった財務の基本的な知識を踏まえながら、会社経営を測る上での負債比率の目安を紹介します。M&Aを行う上でも、負債比率は重要な指標となるため、自社の安定性を測る1つの知識としてしっかりと理解しておきましょう。

  目次  【閉じる】

相談先を迷っている方はM&A DXへ!
資料ダウンロード
M&A DXのメルマガ登録する
セカンド オピニオン

負債比率とは

負債比率とは

負債比率とは、ひと言でいうと、自己資本に対して負債(他人資本)がどの程度あるかを示す比率です。ここでは、自己資本や他人資本、また会社の資産という財務における基本的な知識から説明していきましょう。

返済義務のない自己資本

自己資本とは、株主から調達した資金と経営活動により生じた利益の留保額から構成されます。銀行などからの借入金は含まれないため、返済義務のない資本といえるでしょう。

自己資本は、貸借対照表において純資産と表記されています。貸借対照表とは、財務諸表の一つで、決算期時点における会社の財産を表しています。で、貸借対照表は左右に分かれた構造になっており、左右の数値が必ず一致することから「バランスシート(B/S)」とも呼ばれます。

返済義務のない自己資本

返済義務のある他人資本

一方、他人資本とは、買掛金や銀行からの借入金など、返済義務のある資本のことを指します。。他人資本は、固定負債と流動負債に区分されます。固定負債とは1年後以降に支払い義務が発生する等の負債のことをいい、流動負債とは1年以内に支払う必要のあるものです。

先述した貸借対照表において、他人資本である負債の占める割合が多いということは、返済等の必要がある資本が多いということになります。

会社の資産の定義

会社の資産とは、会社が保有する全財産のことをいいます。例えば、現金、預金、株式、自社ビル、土地、社用車、設備などはすべて資産に該当します。この資産は、大きく流動資産、固定資産、繰延資産の3つに分けられ、貸借対照法においては左側に記載されています。

負債比率の計算式とは

負債比率は、次の計算式で表されます。

・負債比率=(他人資本÷自己資本)✕100

たとえば、他人資本(負債)が10億円あり自己資本が20億円であれば、(10億円÷20億円)✕100=50となり、負債比率は50%となります。通常、負債比率が100%以下であると、自己資本で他人資本(負債)のすべてを返済できるため経営は安定していると考えられます。

このように、負債比率は自己資本における他人資本の割合なので、会社の返済能力や安定性をみることができます。負債比率が低いほど、返済能力が高く安定しているとみなされます。

経営の安定性を測る理想の負債比率とは

経営の安定性を測る理想の負債比率とは

負債比率の計算式を紹介しましたが、負債比率が何%であれば経営が安定しているといえるのでしょうか。

負債比率は高い・低い、どちらが適正?

上述したように、負債比率が低いほど経営が安定しているとみなされます。以下に、負債比率の目安を紹介しましょう。

まずは、以下にある負債比率の数値が意味するところをざっくりと把握してください。

・負債比率50%:他人資本(負債)が自己資本の半分しかない
・負債比率100%:他人資本(負債)が自己資本と同じだけある
・負債比率200%:他人資本(負債)が自己資本の2倍ある

以上を踏まえて、実務では次のような目安で判断されます。

・負債比率が100%以下
自己資本ですべての負債を返済することが可能なため、返済余力は問題なく、優良な水準と言えます。

・負債比率が101〜300%
この水準であれば、比較的経営が安定しているとみなされます。他人資本(負債)が自己資本より大きいですが、このくらいの水準であれば、無理のない返済計画を立てることができます。

・負債比率が301〜600%
この水準にあると、すぐに問題が生じるというわけではありませんが、経営上の改善を求められます。

・負債比率が601〜900%
この水準にあると、返済が滞ることもあり得るため早急な改善が必要です。この水準以上になると、倒産する可能性も高まります。

ただし、会社が起業間もない場合や、成長段階、成熟段階のいずれかで、負債比率の数値が意味するところも異なるため、一概にこの目安のみで財務の安定性を判断することは難しいでしょう。また、設備投資が多い会社など、他人資本に頼らなくてはならない業種もあるため、この数値を用いて財務状況を判断する場合は、同業他社や自社の定点観測が欠かせません。

M&Aの買取価格に与える影響とは

M&Aを行う際に、負債比率の数値は交渉を進める上で大きく影響します。当然のことですが、負債比率が高いと会社の資金繰りが厳しいと判断され、譲渡金額の減額に繋がる可能性があります。反対に負債比率が低いと、財務状況が高く評価され、譲渡価格に反映されます。

将来M&Aによる売却や事業承継などを検討している場合は、負債比率を下げる努力が求められます。

負債比率の業界別平均

ここでは負債比率の業界別平均を見ていきます。下表を見ると、業種によって負債比率が大きく異なっていることがわかります。

 負債比率
建設業139.53%
製造業114.83%
情報通信業68.48%
運輸業・郵便業184.05%
卸売業152.53%
小売業200.00%
不動産業,物品賃貸業179.65%
学術研究専門・技術サービス業31.03%
宿泊業,飲食サービス業510.53%
生活関連サービス業,娯楽業160.47%
サービス業(他に分類されないもの)113.95%

一般的に、自己資本を蓄積しずらい=薄利な業界や、設備投資が必要=借入等行わざるを得ない業界は、負債比率が高くなります。
上記二つの要素を含む宿泊業や飲食サービス業は上表からわかる通り、他業界に比べて圧倒的に負債比率が高くなっています。

反対に、利益率が高く、設備投資も必要のない学術研究専門・技術サービス業は負債比率が圧倒的に低くなっています。
コンサルティング会社等が上記業種に該当しますが、基本的には商材や設備等を必要としないビジネスモデルです。
コンサルティング会社は人件費が主な費用となり、大きな借入を行う必要がないことから、負債比率が低くなっていると言えるでしょう。

M&A DXのサービスはこちら
相談先を迷っている方はM&A DXへ!
資料ダウンロード
M&A DXのメルマガ登録する
セカンド オピニオン

有利子負債比率とは

有利子負債比率とは

有利子負債とは、利息を含めて返済しなければならない負債のことです。具体的には、銀行からの借入金や社債などです。有利子負債が多すぎると、利息の返済が大きな負担となることから、財務体質の健全性を測る上で重要な指標の一つです。

有利子負債比率を計算するときの注意点

有利子負債比率とは、自己資本に対して有利子負債がどの程度あるかを示す比率です。多くの中小企業は社債を発行していないため、中小企業にとって有利子負債とは、殆どの場合、短期借入金と長期借入金の合計のことを指します。有利子負債比率の場合も、数値が低いほど経営が安定しているとみなされます。

有利子負債比率を計算する場合は、利息の支払義務のない負債は除きます。例えば、買掛金、支払手形、未払金、預り金、前受金などです。このような無利子負債を除くことでより正確な比率を算出できます。

有利子負債比率の計算式

有利子負債比率の計算式は次のとおりです。

・有利子負債比率=(有利子負債÷自己資本)✕100

たとえば、有利子負債が15億円、自己資本が30億円の場合は、(15億円÷30億円)✕100=50となり、有利子負債比率は50%となります。

有利子負債比率の適正水準は?

有利子負債比率の適正水準は、一般的な中小企業であれば100%以下と考えられています。実際のところ、中小企業の有利子負債比率の平均はいくらくらいでしょうか。

少し古いデータになりますが、2013年に一般財団法人商工総合研究所が発表した数値があります。この数値によると、中小企業の有利子負債比率の平均は190%程度です。中小企業より大企業のほうが有利子負債比率は高い傾向にあり、中小企業のほうが借金を抱えていることがわかります。

参考:一般財団法人商工総合研究所「中小企業の借入構造」

しかし、適正水準以下であっても一概に返済能力がないとは言い切れません。新規事業や事業拡大のために借金をして、有利子負債比率が一時的に悪化することもあるからです。その事業で順調に利益を生み出すことが出来れば、借入金の返済に問題はありません。

自己資本比率と有利子負債比率の違い

自己資本比率とは、総資産に対して自己資本がどの程度あるかを示す比率のことで、この数値が高いほど経営は安定しているとみなされます。

一方、有利子負債比率は、自己資本に対して有利子負債がどの程度あるかを示す比率のことです。こちらは数値が低いほど、経営が安定していると考えられます。

どちらも、企業の財務状況を測る指標ですが、どちらか一方を手掛かりとして経営の安定性を測ればいいとは限りません。なぜなら、例えば有利子負債は銀行からの借入金なため、少ないほうがより良いと思われがちですが、逆の観点からみると、企業の発展のために借入をしているとも考えられるのです。

もちろん、少ないに越したことはないのですが、経営の安定を測る場合には、ほかのさまざまな指標も参考にすべきといえます。

M&Aの買収価格算出における負債比率

M&Aにおいて譲渡価格を算出する際には、「株式価値=(事業価値+非事業用資産)-純有利子負債」の計算式を用いることが多く、事業価値が高くても負債比率が高いと株式価値は低くなってしまいます。また、上記の算式以外でも負債比率が譲渡価格に影響を及ぼすことがあります。例えば負債比率が極めて高い場合、倒産リスクが高いとして、買収する側は買収価格を引き下げようとすることも想定されます。

まとめ

まとめ

負債比率は、会社経営の安定性を測る指標の1つです。この数値が低いほど経営が安定しているとみなされます。しかし、起業間もない会社や成長段階の会社の場合は、どうしても銀行からの借り入れが多くなるため、負債比率も高くなる傾向にあります。

どのような指標を活用するにしても、その企業が属する業種の特徴や企業の成長段階を考慮すべきといえるでしょう。

M&A DXのM&Aサービスでは、大手会計系M&Aファーム出身の公認会計士や金融機関出身者等が多数在籍しています。会社経営や事業承継でお悩みの方は、まずはお気軽にM&A DXの無料相談をご活用下さい。

関連記事はこちら「流動比率の目安は何%?活用方法や改善案を解説」

株式会社M&A DXについて

M&A DXのM&Aサービスでは、大手会計系M&Aファーム出身の公認会計士、 M&A経験豊富な金融機関出身者や弁護士が、豊富なサービスラインに基づき、最適なM&Aをサポートしております。セカンドオピニオンサービスも提供しておりますので、M&Aでお悩みの方は、お気軽にM&A DXの無料相談をご活用下さい。 無料相談はお電話またはWebより随時お受けしておりますので、M&Aをご検討の際はどうぞお気軽にお問い合わせください。


相談先を迷っている方はM&A DXへ!
資料ダウンロード
M&A DXのメルマガ登録する
セカンド オピニオン

SHARE

M&Aセカンドオピニオン

セカンドオピニオンとは、M&Aを検討する中で生じる不安や迷い・懸念を第三者視点で全体を俯瞰しながら、個々の状況に寄り添ってアドバイスするサービスです。
こんなお悩みの方におすすめです。

✓ M&A業者が進めるスキームで適切なのか知りたい
✓ M&A業者と契約したが連絡が途絶えがちで不安だ
✓ 相手から提示された株価が妥当なものか疑問に感じる
✓ 契約書に問題がないか確認したい
✓ M&A業者が頼りなく感じる

どんな細かいことでも、ぜひ【M&A DXセカンドオピニオンサービス】にご相談ください。
漠然とした不安や疑問を解消できます。

無料会員登録

会員の皆様向けに週1回、M&A・事業承継・相続に関わるお役立ち記事、動画などをお知らせするメールマガジンを配信させていただきます。
お役立ち記事はこちらからピックアップしてお届けいたします。
動画はM&A DXチャンネルからピックアップしてお届けします。
配信を希望される方はメールアドレスをご登録の上、お申し込みください。登録料は無料です。

LINE登録

LINE友達登録で、M&A・事業承継・相続に関わることを気軽に専門家に相談できます。
その他にも、友達の皆様向けに、動画などをお知らせするメールマガジンを配信させていただきます。
相談を希望される方は、ぜひお気軽にLINE友達登録へお申し込みください。

M&A用語集

M&A DX用語集では、M&Aに関する専門用語についての意味や内容についてご紹介しております。
M&Aや事業承継は英語を使うケースが多く、初めて聞くと意味が分からないまま会話が進み、後で急いで意味を調べるような経験がある方もいらっしゃると思います。M&Aの用語に関しては、一度理解してしまえばその後の会話で使えるようになるため、辞書代わりにご利用下さい。
※会計士の当社代表牧田が、動画で解説している用語もあります。

まんがでわかる事業承継

すべての人を幸せにするM&Aを、まんがでわかりやすく解説します。
「事業承継は乗っ取りではないのか?」と不安に思う社長に対し、友好的事業承継のコンセプトをわかりやすく解説します。

~あらすじ~
社長は悩んでいた。
創業して40年、生涯かけて取り組んだ技術も途絶えてしまうことに。
何より、社員を裏切る訳にもいかない…

そんな折、真っ直ぐな瞳の男が社長を訪ねてきた。
内に秘めた熱い心を持つ彼は、会計士でもある。
「いかがなさいましたか?」
この青年が声をかけたことにより、社長の運命が劇的に変わっていく。

資料請求

あなたの会社が【M&Aで売れる会社になるための秘訣】を徹底解説した資料を無料で提供しております。
下記のお悩みをお持ちの方は一読ください。

✓ M&Aを検討するための参考にしたい
✓ 売れる会社になるための足りない部分が知りたい
✓ 買手企業が高く買ってくれる評価基準が知りたい

【売れる会社になるためのコツを徹底解説】一部ご紹介します。

✓ 解説 1 定性的ポイント

業種、人材、マネジメント体制などの6つの焦点

✓ 解説 2 定量的ポイント

財務的に価値がある会社かどうか、BS・PLの評価基準

✓ 解説 3 総合的リスト

売れる会社と売れない会社を表にまとめて解説

詳細は無料ダウンロード資料「M&Aで売れる会社と売れない会社の違い」にてご確認ください。