管工事業界の動向は?M&Aで得られる効果や売買費用相場を解説

公認会計士 牧田彰俊

会計士 牧田彰俊

有限責任監査法人トーマツ入所、各種業務の法定監査、IPO支援に携わる。 その後、ファイナンシャルアドバイザリーサービス部門にてM&A アドバイザリー業務・財務デューディリジェンス業務・企業価値評価業務等に従事。 組織再編によりデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社に異動し、主に国内ミドルキャップ案件のM&Aアドバイザリーとして、豊富な成約実績を収める。 2018年、これまで以上に柔軟に迅速に各種ニーズに応えるべく牧田公認会計士事務所を設立し、現在に至る。本記事の監修を務める。メンバーの詳細はこちら

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中古住宅のリフォーム・リノベーションの浸透や老朽化施設の更新などにより需要が高まる管工事業界。しかし、仕事が増える一方で人材不足や後継者問題に悩む企業は多く、場合によっては倒産や廃業に追い込まれる企業もあります。このような状況下で、M&Aに踏み切る企業が増加傾向にあるのが現状です。そこで今回は、管工事業界でM&Aを選択するメリットや参考になる事例を紹介します。

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本記事のポイント

  1. 管工事業界の動向について知りたい方向けの記事です。
  2. 管工事業界のM&Aで得られる効果を丁寧に解説しています。
  3. 管工事業界のM&A事例も解説しているので、M&Aを実施するか悩んでいる方にも参考になる記事となっています。

そもそも管工事とは?

そもそも管工事とは?

冷暖房設備や空気調和設備、ガス管配管工事など、私たちが生活するうえで欠かせない管工事。管の配置をする工事のことで、仕事の受注形式は「元請け・下請け」「自己建設」に大きく分かれます。それぞれの特性を理解できればM&Aをするうえで役立つはずです。まずは、管工事業界の特徴や特性から見ていきましょう。

管工事は「管」を設置する工事のこと

管工事は、水やガス、水蒸気などを配送するための管を設置する工事のことで、例えば、冷暖房設備や空気調和設備、ガスの配管、給排水設備、給湯設備などの工事を行います。管工事以外の設備工事業として挙げられる有名な業種には、送配電線の工事や発電所の設備工事を行う電気工事や、プラント設備やエレベーターなどの昇降設備の設置工事を行う機械器具設置工事があります。

管工事の特性は2種類

管工事で仕事を受注する方法は、「元請け・下請け」「自己建設」の2種類があります。管工事業界では大半が「元請け・下請け」を採用しているのが現状です。しかし、なかには計画の立案から品質管理まですべての作業を自社で行う「自己建設」を採用する会社もあります。それぞれの違いを理解してM&Aに役立てましょう。

1.元請け・下請け

管工事業界では、大半の会社が元請けや下請けの方法を採用しています。総合建設業者であるゼネコンが工事依頼者から発注を受け、実際の工事はゼネコンから依頼を受けた管工事会社が請け負う流れになるのが一般的です。工事依頼者から発注を受けるゼネコンが元請け、実際に工事を行う管工事会社が下請けの関係になります。

2.自己建設

管工事業界のなかには、元請けや下請けの形を取らない会社もあります。自己建設と呼ばれる方法で、工事依頼者から直接発注を受けて工事の計画立案から工程管理、品質管理など一連の工程を自社で請け負うのが特徴です。一連の作業を自社で行うことにより、安定したサービスを提供できるとともに、全工程におけるノウハウを蓄積できるメリットがあります。

管工事業界の動向

管工事業界の動向

管工事業界全体では需要が高まっているのが現状ですが、業界全体の下請け化が進んでいたり若年層の人材不足が慢性化していたりするなど、様々な問題を抱える企業も少なくありません。また、少子化問題により後継ぎが見つからず、最終的に廃業に追い込まれる企業もあります。ここからは、管工事業界の動向を詳しく見ていきましょう。

ベテラン職人の高齢化

管工事業界全体は、熟練した職人の高齢化が急速に進んでいます。長年にわたって培ってきた熟練の技を誰にも引き継がれずに引退を迎えてしまう職人も少なくありません。また、業界柄、ベテランの職人が丁寧に若手に技術を教えるということが一般的ではないため、いかにして若手にスムーズな技術伝承を行うかが課題と言えます。

慢性的な若手人材不足

管工事業界に限ったことではありませんが、若手の人材不足が慢性化しています。日本は少子高齢化が進んでいるうえに、管工事は大変そうな印象が強く、若者の入社志望者は多くありません。人材確保が困難になると会社の存続も危うくなり、廃業に追い込まれるケースもあります。人材不足をどう解決するかが管工事業界の課題になっているといえるでしょう。

多重下請け構造の加速

管工事業界全体で問題視されているのは、業者の下請け化が加速していることです。建設業のビジネスモデルは、ゼネコンなどの大手企業が受注し、下請けに発注、その下請けがさらに別の会社に発注するといった多重下請け構造となっています。上層に中抜きをされ続けた結果、現場で作業を行うこととなる下層の会社ほど、大変なうえに取り分が減ってしまいます。

後継者不足の企業の増加

若手人材が不足していることとも関係していますが、管工事業界全体では後継者問題が大きな課題となっているのが現状です。特に中小企業ほど後継者が見つからず、会社や事業を残す手段としてM&Aを選択する企業が増加しています。一方、大企業の場合は人材獲得を目的に管工事業者の買収に踏み切るケースが増えています。

管工事業界のM&Aで得られる効果

管工事業界のM&Aで得られる効果

管工事業界のM&Aにおいては、売手側と買手側で得られる効果が異なります。例えば売手側の場合は、従業員の雇用を守れたり経営を安定させたりするなどの効果が得られます。一方、買手側は新規顧客を獲得できたり優秀な人材を確保できたりすることが可能です。ここからは、売手と買手それぞれにおいて、得られる効果の違いを確認していきましょう。

売手側の得られる効果

売手がM&Aを実施することで得られる効果は、従業員の雇用を守れたり経営が安定したり、廃業における手間や時間を削減できたりするなど、様々なメリットがあります。また、経営者にとっては、M&Aによって手にした資金により、引退後の安定した生活を手に入れることが可能となるでしょう。ここからは、売手側の管工事業者が得られる効果について解説します。

従業員の雇用維持

管工事会社がM&Aの実施で得られる効果は、従業員の雇用を維持できることです。特に株式譲渡した場合は労働契約の変更なく、従業員は引き続き籍を置くことができます。後継者不足が深刻な当業界では、M&Aを選択すれば会社は廃業を避けられることはもちろん、従業員の雇用を守ることができるのはM&Aで得られる売手側の大きなメリットです。

経営の安定化

同業種の会社に売却する場合、経営を安定化できるのも売手側の大きなメリットです。自社の人材や技術だけでは実現できなかったことも、買手側のサポートを受けて顧客に対してより良いサービスを提供することが可能になります。多重下請け構造である当業界では、大手企業は案件のマネジメントを行うのがメインであるため、現場のきめ細かい技術を知っている人材が不足している場合があります。一方、中小企業の人材は、現場の技術には詳しくても、大規模な案件の経験が不足していたりする場合があります。大手の傘下に入り、互いの強みを活かしあう経営ができるようになれば、収益の向上も期待できるでしょう。

創業者利益の獲得

M&Aを実施して株式譲渡や事業譲渡すれば、多額の現金を得ることができます。例えば、創業者が資本金1,000万円で会社を設立し、株式を3億円で売却した場合、2億9,000万円が創業者利益となり、所得税等を支払っても約2億5,000万円が手元に残ります。会社規模や経営状況によっては巨額の利益を得られるため、引退後に安定した生活を送ることができるでしょう。

廃業の手間や諸費用の削減

管工事業界では後継者不足が課題となっていますが、事業継承が進まず廃業に追い込まれるケースもあります。もし廃業に至った場合は、廃業手続きを行わなければなりません。廃業手続きは手間がかかるだけでなく、各種登記や証明書をはじめ設備処分や在庫の売り切りなど、多くの費用がかかることもあります。M&Aを選択すれば、廃業手続きにかかる手間や費用を省くことが可能です。
また、廃業する場合とM&Aの場合では税率が変わってくる場合があります。ここでは簡単な説明に留めますが、会社清算時の残余財産の配当はみなし配当と呼ばれ、総合課税として所得税率が計算されるため、残余財産額が大きい場合だと税率が50%を超えることもあります。一方、M&Aの場合は売却益に対して20%程度の税率で済むため、純資産が蓄積されている会社ほどM&Aの方が有利となります。

買手側の得られる効果

管工事会社を買収する買手側が得られる効果には、新規の顧客を獲得できたり新規の事業に参入できたりなど、さまざまなメリットがあります。また同業種による買収であれば、人材不足で頭を悩ませる管工事会社が多いなか、優秀な職人や若年層の人材を確保できる可能性もあります。買手側の得られる効果を確認していきましょう。

新規顧客の獲得

M&Aを実施することで、買手側は新規顧客を獲得できるメリットがあります。特に、地場のゼネコンと関係が強固であるなど、自社にはないネットワークを買収先が持っていた場合、時間をかけずに新しい顧客を獲得することが可能です。

新規事業への参入

管工事事業の新規立ち上げを検討している場合、M&Aで企業を買収すれば労力を押さえて新規参入することが可能です。工事業は国からの建設業許可が必要なため、事業を行うためには一定の要件を満たさなければいけません。加えて、ただでさえ人材不足と言われている当業界で、新たに実務経験者や施工管理技士などの有資格者を確保するのは相当労力がかかります。しかし、管工事の分野における豊富な経験とノウハウを持つ企業を買収すれば、新規参入にかかる労力や費用をできる限り抑えることができます。

優秀な人材を確保できる

管工事会社を買収することで、優秀な人材を確保することが可能です。特に同業の場合は、管工事業界全体で問題視されている人材不足の問題を解決できます。近年は若者が自ら入社を希望する人も減少しているため、ゼロから人材を確保しようと考えると多くの時間と費用がかかる場合があります。買収する企業を選ぶ際は、在籍する人材をしっかり確認しましょう。

管工事業界におけるM&A事例3選

管工事業界におけるM&A事例3選

管工事業界では人材不足や後継者の問題により、M&Aを選択する企業が増えています。タイミングを見誤ると廃業に追い込まれる可能性もあるため、M&Aを検討しているなら早めに準備を進めましょう。ここでは、管工事業界におけるM&Aの事例を3つ紹介します。管工事業界のM&A事例を参考にして、計画を立てましょう。

1.杉山管工設備と中電工の事例

2016年8月、首都圏を中心に配管工事を行っている杉山管工設備株式会社は、電気設備工事業をメインで行っている株式会社中電工に株式譲渡し、子会社となりました。株式会社中電工は総合設備エンジニアリング企業で、屋内電気工事や空調管工事、情報通信工事など幅広く展開しているのが特徴です。空調管工事において高い専門性と技術力がある杉山管工設備株式会社を子会社化することにより、優秀な人材や優良顧客の獲得を実現できました。

2.東海管工とイシイ設備工業の事例

東海管工株式会社は、群馬県を中心に事業展開する管工事業者の株式会社イシイ設備工業に株式譲渡し、子会社となりました。創業60年の老舗管工事業者の東海管工株式会社は、後継者問題に悩んだ末、従業員が安心して働ける環境確保を目的にM&Aを選択しました。株式会社イシイ設備工業は経営資源が拡充され、事業エリアの拡大を実現できました。

3.朝日設備工業とコムシスホールディングスの事例

2020年10月、管工事や水道施設工事を運営する朝日設備工業株式会社は、情報通信工事事業や電気設備工事事業を手がけるコムシスホールディングス株式会社と株式交換したことにより、子会社となりました。1960年に設立された朝日設備工業株式会社は、岐阜県内トップクラスの実績を備えているのが特徴です。このM&Aにより、コムシスホールディングス株式会社は、東海地域での営業基盤をより強固なものにすることができました。

管工事業界のM&Aにおける売買価格

管工事業界のM&Aにおける売買価格

対象企業の規模や資産価値などにより、M&Aの売買価格は大きく異なります。しかし、工場などの目に見える資産を保有する製造業などと違い、管工事業の場合は人材の質が売買価格に影響すると言っても過言ではありません。従業員の年齢構成や資格保有者の数などがポイントとなります。弊社ホームページでは簡易的な売却価格の算定を行っているので、気になる方はお気軽に問い合わせください。

まずは会社の価値を知りましょう

まとめ

まとめ

中古住宅のリフォーム・リノベーションの浸透や老朽化施設の更新などにより需要が高まる管工事業界ですが、人材不足や後継者問題を抱える企業が存在します。問題を放置すると、そのまま廃業に追い込まれることもあるため、早めの対策がカギとなってきます。M&Aも実際に契約が成立するまで時間を要することもあるので、判断に迷うときは専門家に相談するといいでしょう。

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