残余利益とは?企業価値の評価方法について解説

会計士 村瀬達彦

新卒で有限責任監査法人トーマツに入所。主に製造業、卸売業、小売業を中心とした様々な企業の法定監査業務及びIPO支援業務に携わる。監査業務を遂行する中で企業が抱える様々な課題を目の当たりにし、監査業務とは異なった視点から世の中の企業の力になるべく、幅広いサービスラインを備える株式会社M&A DXに入所。現在に至る。

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残余利益とはどのようなものなのでしょうか。
残余利益とは、企業価値を評価する際に、使われる指標でその数値が高いとその企業は優良企業ということになります。
この記事では残余利益についてわかりやすく解説します。

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残余利益とは

企業価値を評価するときに使われることの多い残余利益とは、どのようなものでしょうか。
残余利益を計算するには様々な指標を使って計算するので、少し計算方法は複雑です。
ここではできるだけわかりやすく残余利益についてわかりやすく解説します。

残余利益はどんな指標なのか

残余利益とは会社の当期純利益から株主の期待収益を引くことで表される数字です。
株主の期待収益とは、株の配当金や株の価値が上がることで得ることのできる将来的な利益のことを指しています。
株主への配当金や、銀行から融資を受けた際の利子の返済金などは資本を得るためのコストなので資本コストと呼ばれています。
つまり残余利益は会社が経済活動によって出した利益から、資本コストを引いた数字です。
残余利益は、中小企業やベンチャー企業であっても大企業に匹敵する数字が出ることがあります。

残余利益が高いということは、自分たちの経済活動で株主の期待を上回る大きな収益を得ているということになります。
残余利益は黒字経営であってもマイナスになる場合があります。
例えば昨年の業績が好調で、今年はその数字を超える利益を出すことができるだろうと株主が予想していたとします。
会社側も調子がよかったので配当金を上げることにしました。
しかし実際のその年の純利益は黒字ではあったものの昨年ほどではありませんでした。
このような場合、黒字経営ではあるものの、株主の期待値を下回っていたので残余利益はマイナスとなってしまうことが考えられます。

残余利益の計算

残余利益の計算は当期純利益から株主の期待収益を引いた数字です。
まず純利益とは売り上げからすべての経費を引いた数字で、純利益の数字は実際に会社が経済活動によって得た利益ということになります。計算式で表すと以下となります。

計算式
残余利益(円) = (ROE – 株主資本コスト) × 自己資本

株主の期待収益とは株主資本コストのことを指します。
株主資本とは会社の持っている資産のうち株主が所有している資産のことを指します。
具体的には発行した株式の簿価と、会社が創業されてから今まで蓄えてきた利益、つまり内部留保を加えた価格のことを株主資本といいます。

実際に会社が株主資本を利用し純利益を上げた比率(ROE)が株主資本コストを上回っていると株主の期待を超過しているということであり、この数字が良いとその企業は優良な企業ということになります。

残余利益を使うメリット

残余利益を使うメリットはどのようなところにあるのでしょうか。
ここでは残余利益を使うメリットと活用方法について紹介します。

四つのメリット

残余利益を使うメリットは主に4つあり、以下の4つです。

残余利益のメリット①会計数値をそのまま使えて、資料作成の手間が省ける
残余利益のメリット②すべての利害関係者を包括した指標で全員に説明ができる
残余利益のメリット③一見違いそうな業績向上のための経営管理と企業価値向上の2つの観点を、一つの指標で一貫して説明できる
残余利益のメリット④全ての利害関係者にわかりやすく説明できる

それでは順番に説明をしていきます。

残余利益のメリット①会計数値をそのまま使えて、資料作成の手間が省ける

1番目の会計数値をそのまま使えて、資料作成の手間が省けるというのは、会社の財務状況を評価するために新たな計算や数字を出さなくても良いということです。
残余利益の計算は当期純利益から株主の期待収益を引いたもので、株主の期待収益として配当金などの資本コストを引いた数字で計算ができます。

残余利益のメリット②すべての利害関係者を包括した指標で全員に説明ができる

2番目のすべての利害関係者を包括した指標で全員に説明ができるというのは、残余利益はすべての利害関係者を包括しているということです。
会社の利害関係者は株主や社員、取引先など様々な立場の人がいます。
例えば株主にとっては会社の株価が上がり、配当金が増えることで利益を得ることができます。
社員にとっては、会社の業績が上がり、給料が増えたりボーナスなどをもらえたりすることで利益を得ることができます。
また取引先にとっては、業種にもよるものの、安定した経営を続けている会社であれば安心して取引をすることができます。

例えば身近な飲食店の例を考えてみましょう。
繁盛している飲食店には、多くの食材や、酒類を仕入れなければなりません。
飲食店にお酒をおろしている酒屋からすると、繁盛している飲食店ほど、酒をたくさん購入してもらえるので良い取引先ということになります。
このように会社が発展することにより社内外で利益を得る人が多くいます。

つまり、どのような立場であっても会社の利益が上がり、残余利益が多いというのは大きなメリットがあるということです。
残余利益の数字は、その会社に余裕がどのくらいあるかを知れる指標なので、会社の利害関係者は誰もが知っておきたい情報ということになります。

残余利益のメリット③一見違いそうな業績向上のための経営管理と企業価値向上の2つの観点を、一つの指標で一貫して説明できる

3番目の経営管理と企業価値向上の2つの観点を1つの指標で一貫して説明できるということです。
企業価値を決めるアプローチの仕方として大きく分けて3つあり、インカムアプローチとマーケットアプローチとコストアプローチです。
インカムアプローチは会社の売上などをもとに算定するので、会社が生み出す利益を算定する点に優れています。

マーケットアプローチは他の企業と比較することになるため、その会社の売り上げは他の会社と比べてどうなのかという比較性に優れています。
コストアプローチは現在の会社の実態はどのようなものなのかを把握することができます。
M&Aなどで売買する際は、これらの様々なアプローチを組み合わせて評価をします。
その中で残余利益とは将来性を評価するのでインカムアプローチの1つとされているものの、純資産も構成要素の1つとなっているためコストアプローチの要素も含んでいます。

このように本来は別で考えなければならなかったことを統合して考えられるのは大きなメリットです。

残余利益のメリット④全ての利害関係者にわかりやすく説明できる

4つ目のメリットとしてはすべての利害関係者にわかりやすく説明できるということです。
会社の価値を説明する際それぞれの利害関係者にとって求められている内容が異なります。
例えば先程の飲食店の例によると、飲食店の取引先である酒屋は飲食店に対して何を求めているのかというと、どのくらい酒を買ってもらえるのかという点です。
また、株主にとっては株価がどのくらい上がるのか、配当金はどのくらいもらえるのかということが重要視されています。
残余利益を使って説明すると、実際にその会社はどのような状況なのかがわかるので、すべての利害関係者に対して説明をすることができます。
例えば純利益が良くても、株主への配当金が高く、配当金を払うとほとんど会社には残らないという場合は会社の経営状態はあまり良いとはいえません。
株主にとっても配当金が高いことは一時的には良いことかもしれませんが、万が一会社が倒産してしまうと株の価値はなくなってしまいます。
取引先にとっても、利益が多くある優良企業とは安心して今後も取引を続けることができます。
このようにすべての利害関係者にわかりやすく説明できるというのが残余利益のメリットです。

残余利益を活用するためには

残余利益を活用することのメリットの一つは、会社を売却する際です。
残余利益が高いと企業価値が高まるので、売却時も高値で売却することができます。
残余利益が高い会社というのは、しっかりと事業で収益を上げているのはもちろんのこと、株主との関係も良好で、会社の利益との適切なバランスで配当金も支出しているということになります。
このような会社を買い取った企業は、経営陣が変わっても順調に毎年利益を上げることができるでしょう。

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日本企業における残余利益の問題点と可能性

残余利益はすべての利害関係者にわかりやすく説明できる数値ですが、日本企業では残余利益に対して問題点があるのでしょうか。
また残余利益にはどのような可能性があるのでしょうか。
ここでは日本企業における残余利益の問題点と可能性について紹介します。

残余利益の問題点

日本企業は戦後の高度成長の中で、株主の利益を中心に考えるのではなく、売上を伸ばすことや、マーケットを拡大することを中心に考えて成長してきました。
そのため日本から昔からある企業は株主の利益や、資本コスト等を業績評価に利用してきませんでした。
最近になり、日本でも、配当金をできるだけ多くして、株主重視の経営をする企業が増えてきました。
このように株主に対して充実したサービスを提供していると、その企業の株を求める人が増え、株価は上がる可能性があります。
その結果、本来その企業が持っている価値よりも、高い評価がされることもあります。
つまり残余利益を計算する上で必要な株主の期待収益が増えるのです。
その結果、残余利益を計算すると、純利益はよくても残余利益は安くなるということになります。

残余利益の可能性

残余利益は株主利益を最優先する企業が増えた時において、株主と良好な関係を持っているのかどうかを見極める1つの目安となります。
例えば有名な話で、地方自治体がふるさと納税でかなり価値のある返礼品を用意していることで、その地方自治体にふるさと納税が集中したということがありました。
この場合、実際に地方自治体に入ってきたお金を純利益とすると、返礼品としてふるさと納税をしてもらった人に送った商品を株主の期待収益とします。
ふるさと納税の額から返礼品として負担をしたものを計算すると、納税額の割にはあまりプラスになってないということがあります。
企業に当てはめて残余利益を用いて計算すると、このバランスがいいのか悪いのかを見極めることが可能です。
株主へのサービスに力を入れ始めている日本企業にとって、そのサービスが利益にあった適切な内容なのかを見極めることのできる数値といえるでしょう。

残余利益による株主価値の求め方

残余利益による株主価値の求め方として、残余利益法があります。
残余利益法の計算式は、次のとおりです。

株主価値 = 簿価純資産 + 残余利益の現在価値

残余利益法では、まず、企業の将来の残余利益を計算します。残余利益は、税引後営業利益から加重平均資本コストを乗じた金額を控除した金額で計算されます。加重平均資本コストとは、企業が調達する資金の平均的なコストです。
残余利益を計算したら、それを現在価値に割り引いて算出し、簿価純資産を加算します。
残余利益法は、企業の将来の成長性を反映した株主価値を算出できるため、企業の価値を評価する際によく用いられる方法です。しかし、残余利益法は、企業の将来の成長性を正確に予測することが難しいため、算出した株主価値はあくまでも参考値となります。

まとめ

残余利益について解説しました。
残余利益は会社の評価額を決める上で重要な数字です。
純利益の割には残余利益が低い場合は、残余利益を高めるために株主への配当が適切なのかしっかりと検討してみましょう。

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