相続放棄とは?期限や必要書類・手続き方法・注意点などを解説

安江一将

税理士 安江一将

会計コンサルティング会社・税理士法人及びベンチャー企業2社に勤務。会計コンサルティング会社・税理士法人では税務顧問・税務申告のほかに、事業承継支援業務、組織再編業務、IPO支援業務、M&A業務を数多く実行。ベンチャー企業では管理部長・経営企画室を歴任し、上場のための体制構築・実行支援を推進する。大手コンサルティング会社名古屋支社副支社長を経て2019年8月に安江一将税理士事務所として開業した後、さらにM&A業務を推進することを目的として相続・M&A大学に参画し、現在に至る。本記事の監修を務める。メンバーの詳細はこちら

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「相続」と聞くとなんだか面倒くさそう、厄介なもめごとが起きそうという負のイメージを抱く人が多いのではないでしょうか。テレビやラジオで相続を巡ったトラブルや相談などを見聞きすると、あまり自分の身には関わってほしくないと感じてしまいますよね。
相続は私たちの生活においては非日常的な事柄であり、金銭や人間関係が絡むデリケートな問題です。多くの人は相続について経験も知識も持ち得ていないこともあり、よけいに牽制してしまいます。ここでは、いざ相続が発生した時に少しでも困らないように、よく聞く「相続放棄」を中心に相続に関連する事柄について紹介します。

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相続放棄とは

相続に関する手続きの種類の一つに「相続放棄」と言う言葉があります。「放棄」という言葉は面倒なことから逃れるという印象があるので、相続放棄は「私は故人の遺産は何もいらないです」「私は相続問題に関与しません、お任せします」という意思表示をして終わりと、漠然と考えている人も多いでしょう。

しかし、相続放棄をするにしてもその言葉の意味や内容を知らないと後悔したり、思いかけず他の人に負担をかけるなど複雑な問題を抱えることになりかねません。相続放棄は確かに相続そのものをしない、ということではありますが、その内容を熟知しておく必要があります。

相続放棄について理解するためには民法に定められている相続に関する3つの方法について合わせて知る必要がありますので以下に説明していきます。

相続の種類

相続には3つの種類があります。
相続が発生すると「相続放棄」「限定放棄」「単純放棄」の中から相続人は1つを選択することになります。相続の種類について、それぞれを解説していきます。

相続放棄

相続法=最初から相続人にならなかったことになる
相続放棄は、相続人が被相続人の財産を一切相続したくない場合に行います。
相続放棄の手続きは家庭裁判所で行います。期限は相続があることを知ってから3カ月以内とされています。被相続人(亡くなった人)の財産をある程度把握していて、借金などの負債が多いと分かっている場合や、家庭内で揉めたくないので相続放棄を生前にしたいという方もいますが、相続は被相続人が亡くなった後に発生することなので、法律において生前に相続放棄をするということは認められていません。このことは相続の3つの種類のどれにも言えることで、どれも被相続人が亡くなった後に手続きを開始することになります。

単純承認

単純承認=全ての財産を相続する
単純承認は「全て相続する」ということになります。即ち、被相続人が残したプラスの財産もマイナスの財産も全て相続人が無条件で相続するということです。通常、単純承認は相続開始を知った日から3カ月以内にその他の相続の手続きをしなければ、単純承認したことになります。単純承認には特別な手続きはありません。
単純承認の注意点としては熟考期間である3カ月以内であっても、相続すべき財産を処分したり、遺産分割するなど何かしら相続する財産に手をかけてしまうと、単純承認したことになってしまうことです。単純承認とみなされる行為については相続財産の一部もしくは全てを処分してしまった、熟考期間である3カ月の間に「相続放棄」や「限定承認」の手続きをしなかったという他に、相続財産の一部または全部において意図的に隠匿したり、財産目録に未掲載であった場合なども該当します。相続人は相続の手続きには3種類あるということを頭に置き、特にマイナスの財産がある時は慌てずにどのような方法を選択するのかを熟考しましょう。また、財産がプラスになるのかマイナスになるのかがはっきりわからない場合でも単純承認以外の相続の方法も検討してみましょう。その際、自分一人ではなく他の相続人と話し合うことができるとお互いに負債を引き継ぐリスクや金銭や人間関係のトラブルを未然に回避できるでしょう。

限定承認

限定承認=相続する財産の範囲を限定する
限定承認とは、相続人が相続する相続財産がマイナスにならないようにする方法です。相続財産が合計でプラスになった場合や、相続財産がマイナスになってもプラスの分だけを相続する手続きです。限定承認についての例や条件は詳しく後述しますが、財産がプラスかマイナスかわからない時にも最終的に相続人が損をしない方法なので限定承認は有効な相続の手続といえます。

以上の3つの相続の種類をまとめると以下のようになります。

★相続放棄

相続の全てを放棄する。個人で決めて手続きができるが債権の移動に注意が必要。相続放棄は代襲相続(本来相続人となる被相続人の子又は兄弟姉妹がすでに死亡していた場合等に、その者の子が代わって相続すること)にはならない。

★単純承認

全ての財産を相続する。何らかの手続きをしなければ単純承認に決まる。プラスの財産もマイナスの財産も全て相続することになる。財産の一部にでも手をつけてしまうと他の相続方法を検討していても単純承認したこととみなされる。

★限定承認

マイナスにならない範囲で相続する方法。財産状況がよくわからない場合やマイナスの財産を相続しないという場合に選択されることが多い。財産目録をそろえることや相続人全員が共同で申述する必要がある。

相続放棄を判断する場合のポイント

相続放棄をする場合、その判断は相続人が個人で行うことができます。後述しますが限定承認の場合は相続者全員が共同で家庭裁判所に申し立てをする必要がありますが、相続放棄は全員共同である必要はありません。相続放棄は個人で判断も手続きもでき、手続きが完了したらその相続人は最初から相続人として存在しなかったものとして扱われることになります。

相続放棄をするか否かの判断基準としては財産調査を行い、結果的に債務超過になるのか否かが大きなポイントになります。負債の方が多いことが確定的な場合は相続放棄をして借金などの負債を負わないということが望ましいです。

注意点としては他の相続人の動向に注意を払っていないと、知らないうちに単純承認が成立してしまっていたというようなことが起きる場合があります。相続は誰しも慣れていることではないので、何も問題がないだろうと思ってしたことが他の相続人に影響を与えることがあります。

相続放棄をするにしても財産の内容や、相続の協議がどこまで進んでいるかを捉えておくことが相続人同士の人間関係に悪い影響を及ぼさないためにも大切なことです。

相続放棄をしない場合

相続放棄をしない場合は、単純相続か限定承認を選択することになります。判断基準としては、相続することで損益が生じないという点や、仮に相続することでマイナスになるとしても家族として引き継いでいきたい建物や土地、あるいは事業などがあるという場合は相続放棄以外の方法を検討することになるでしょう。

限定承認とは(条件)

ここまで相続放棄について主に見てきました。相続には3つの選択肢があり、相続を放棄して相続人という立場をないものにする相続放棄、特別な申し立てをしないで進んでいく単純相続については理解が深まったことでしょう。では、残りの限定承認についてみていきましょう。

限定承認とは、先に少し触れましたがプラスの財産とマイナスの財産の両方がある場合に被相続人(亡くなった人)が有していたプラスの財産の範囲でマイナスの財産を相続することです。つまり、マイナス分は相続しないことで、相続人が損をしないように相続する手続きです。

限定承認を行うために必要な条件は、①他の相続と同様に相続開始を知った日から3ヵ月以内に申し立てること  ②相続人全員が共同で申し立てをすること の2つです。

また、限定承認の申し立てをする際には財産の目録を提出することになるので他の相続手続きよりも内容が複雑になります。限定承認においては、限られた期間内で財産調査をし、その結果を相続人皆が理解し相続の内容決めるということをしなくてはいけません。相続人全員の足並みがそろい、意思確認や一連の手続きがスピーディーにできることを意識した方が良いでしょう。

結果的にどの相続人もマイナスの相続にはならないので、作業が煩雑ではありますがメリットが多くデメリットが少ない方法だといえます。

相続放棄と限定承認の違い

相続放棄と限定承認の大きな違いは、前者は一個人で判断して手続きを進めることが出来るということに対し、後者の限定承認では相続人全員の意思の統一が必要になる点です。

相続人全員が共同で申し立てを行わないといけないのです。限定承認は限られた期間で必要書類をそろえ、相続人全員が共同して申し立てをしなければならないので3カ月の熟考期間にしないといけないことが他の相続の手続きに比べて多く、ストレスもかかります。準備に時間がかかりすぎる場合や相続人全員の意思統一や同意が得られない場合は、限定承認か相続放棄を選択することになるでしょう。

また、相続放棄と限定承認の違いとしては相続放棄ではプラスの財産も一切相続しないという点で、大きく異なっています。

相続放棄の手続きと必要書類

相続放棄についての理解が深まってきたところで、次に具体的にその手続きの方法についてみていきましょう。相続放棄は他の相続人と協議することなく、個人で判断し、手続きを進めることができます。

煩わしいやり取りがないので自分のペースで難なく進めていくことが出来そうにも感じます。しかし、一人で判断し手続きを進めることができるがゆえに先走って損をしたり、マイペースに構えすぎて予想していた結果にならなかったなどの危険性をはらんでいるとも言えます。

相続放棄の手続きが確実にできるように、その手順と必要書類の準備、進捗予想、他の相続人の意思はどうかをよく理解し、計画的に手続きをしましょう。

相続放棄の必要書類

相続放棄をするために必要な書類は以下のようになっています。

【相続放棄に必要な書類】

1.相続放棄申述書
2.亡くなられた方(被相続人)の住民票の除票または戸籍の附票
3.相続人(申述人:相続放棄をする人)の戸籍謄本
4.収入印紙 (※手続き費用として、申述人1人につき800円。)
5.郵便切手(※家庭裁判所によって概ね数百円~1,000円くらい。)
※また、上記1~5に加え、以下の書類が必要になりますが申述人が被相続人とどのような立場(関係)かによって準備する書類の種類が異なります。該当するものについて準備をしましょう。

【相続放棄に必要な書類~それぞれの立場を確認して揃えましょう~】

★申述人(相続放棄する人)が被相続人の配偶者である場合
・被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

★申述人(相続放棄する人)が被相続人の子、また孫、ひ孫等(第一順位相続人)の場合
※被相続者の子が亡くなっている場合などでは第一位相続人が申述人になる場合がため
・被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・申述人が代襲相続人(孫、ひ孫等)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

★申述人(相続放棄する人)が被相続人の父母・祖父母等(直系尊属、第二順位相続人)の場合に必要なもの

・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している人がいる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・被相続人の直系尊属に死亡している人(相続人より下の代の直系尊属に限る(例えば、相続人が祖母の場合の父母のこと言います。))がいる場合、その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

★申述人(相続放棄する人)が、被相続人の兄弟姉妹及びその代襲者(甥、姪)(第三順位相続人)の場合

・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している人がいる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
申述人が代襲相続人(甥、姪)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
備考:先順位の相続人から同様のものが提出済みである場合に重ねての添付は不要となる書類もあるので都度確認しながら手続きを進めていくと良いでしょう。

相続放棄の手続きの流れ

次に、相続放棄の手続きの流れをみてみましょう。
1. 相続放棄をするかどうかを検討します
2. 相続放棄の手続きに必要な書類をそろえます。※弁護士や行政書士に一連の手続きを依頼することもできます。
3. 相続放棄申述書の作成をします。
4. 家庭裁判所に必要書類を添付して提出します。
5. 提出後に家庭裁判所から送付されてくる「相続放棄照会書」に回答します。(相続放棄照会書は、相続放棄の申述が申述人の意思で行ったかの確認をする照会です。)
6. 相続放棄照会書の内容を確認し回答書に記入居し、家庭裁判所に返送します。
7. 相続放棄が受理されると家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が送付されてきます。この通知書を受け取って相続放棄の手続きが完了します。

◎相続放棄の申告方法と期限

相続放棄の申告は亡くなられた被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。それ以外の家庭裁判所に申告をすることは出来ません。

提出期限は相続の開始を知った日から3カ月以内に行います。ただし、相続財産の調査に想像以上に時間がかかってしまった場合などは家庭裁判所に「相続放棄の期間の伸長の申し立て」を行うことができます。この申し立てに対して、家庭裁判所が内容を個別に精査し認められれば期間が伸長される場合があります。

また、相続の開始を知った日から提出期限である3カ月のスタートがカウントされますが、遠方にいる人や関りが疎遠であった人などは、被相続人の逝去を一定期間あとに知ることもありますので、相続の開始を知ること自体が遅くなった場合も家庭裁判所や弁護士に相談してみましょう。

・相続放棄申述書の作成方法

相続放棄手続きをするには、相続放棄申述書を作成しなくてはいけません。相続放棄申述書の用紙は裁判所のホームページからダウンロードできます。また、家庭裁判所でも入手できます。必要事項が過不足なく記載されていれば自分で作成しても構いませんが、取りこぼしがないように裁判所から示されている様式を使用した方が安心でしょう。

相続放棄手続きにかかる作業を弁護士や行政書士に依頼することもできます。申述人については成人している人であれば本人で構いませんが、未成年の場合は法定代理人である父親か母親が代理します。ただし、法定代理人自体も相続人となっている場合は別途特別代理人の選任が必要になります。

・相続放棄申述書の書き方

【印紙貼り付け欄】
相続放棄申述書の先頭部分に収入印紙の貼り付け欄があります。収入印紙については自分の認印を押印する必要はありません。押印せずに収入印紙を貼った状態で提出するようにしてください。

【宛先と申述人の欄】
成人の申述人が相続放棄申述書を記入する場合には、本人の名前を記名し押印します。
ここでの押印については認め印で構いません。役所への提出書類への印鑑はシャチハタ以外が望ましいです。ただし、近年では公的な書類において印鑑を省略する傾向もあり、各自治体や機関、部署によって異なっています。印鑑省略化に向けて過渡期にあるので、都度の確認をしましょう。相続放棄申述書の宛先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所を記載し、日付については作成年月日を記入してください。

【添付書類の欄】
添付書類の欄については、提出のために作成、添付した書類にチェックをしましょう。添付した枚数も記入しましょう。
書類不備があると限られた期間内で再提出などの手間が発生してしまうので不備がないように提出書類については再三確認し、確実にチェックマークを付けましょう。また、各種証明書類を提出する際には、一番下のチェック欄の右側が空欄になっています。ここに具体的な書類の名前を記載したうえで、チェックを付けましょう。

【申述人の欄】
申述人の欄には申述人(相続放棄をする人)の本籍、住所、氏名、被相続人との関係などについて記載します。特に記載に迷うような複雑なことはありませんが、提出した書類の内容の確認や書類不備などで裁判所から連絡が来る場合もありますので住所と電話番号は正確に記載しましょう。電話番号は連絡が付きやすい電話番号を記載しましょう。自宅の固定電話を記載しても日中家人が不在なことが多いという方は、裁判所の業務時間を意識して平日の日中に確実に連絡のつく番号を記載してください。連絡のつきやすい人の個人の携帯電話の番号でも構いません。

【被相続人の欄】
被相続人の欄には亡くなった人の情報を記載します。本籍、最後の住所、死亡当時の職業、氏名、死亡の日付を記載する欄があります。
家族や親せき付き合いが疎遠になっている場合、被相続人のこれまでの生活や所有している財産、正確な住所や本籍が分かる人がいないという可能性もあります。被相続者が孤独な暮らしをしていたとしても相続が発生し、相続人が相続放棄を行う例も多くあります。

生前にはあまり交流をしてこなかった間柄では財産調査をするにしても基本的な情報からわからないということもあるので、最後の住所や職業に至るまでの経緯も予め情報を整理しておくことができると良いでしょう。財産調査では多くの時間を有することも考えられるので、予め知っている情報、曖昧な情報、分からない情報を仕分けしておくと更に良いでしょう。

【申述の趣旨】
相続放棄申述書における申述の主旨については、「相続の放棄をする」と記載します。家庭裁判所には相続に関する申請書が、相続放棄申述書の他にも似たような様式の書類が沢山あります。間違って異なる様式を使用することのないように、申述の趣旨の欄を確実に記載してください。

【申述の理由の欄】
申述の理由の欄には、相続の開始を知った日、放棄の理由、相続財産の概略について記入します。特に重要なのは相続の開始を知った日の記載になります。
先にも少し触れましたが、誰しも被相続人が死亡した日に直ちに相続の開始を知るというわけではありません。単に関係性が疎遠だったから知るのが遅れたということだけではなく、場合によっては相続の先順位の人が相続放棄をしたことで予想外に自分に相続が起きてしまい、かなり後になって相続の開始を知ったという場合もあります。自分自身が相続開始を知った日をしっかりと確認したうえで、相続放棄申述書の提出が、その日から3か月以内の提出であることを確認しましょう。

相続の理由については、家庭裁判所の様式では選択式になっています。もし、選択項目の中に該当する理由が見当たらない場合には、「その他」として具体的な理由を記載しましょう。相続放棄の場合、放棄の理由や内容で放棄が認められるかが判断されることは基本的にはありません。

【相続財産の概略について記載する項目】
相続放棄を考えている人は財産の詳細を細部まで知らないという人も多いでしょう。そのような場合は大まかな金額を記入しましょう。財産の金額についてプラスの財産だけではなく、マイナスの財産についても記載します。
相続放棄申述書の中で財産の内容は記載しませんが、マイナスの財産についても合計金額を記載する必要があります。

【提出方法】
相続放棄の書類の提出方法は家庭裁判所に直接出向いて提出する方法と郵送する方法があります。

【提出後の発行される相続放棄受理証明書】
相続放棄の手続きをし、相続放棄したという事実が認められると「相続放棄受理証明書」が発行されます。この証明書は、被相続人に借金があった場合などに突如返済を求められたときなどに示してみましょう。証明書によって財産を放棄していることがわかると借金の請求をそれ以上受けなくて済むのです。

相続放棄の費用

相続放棄に係る費用はどのくらいかかるのかを見ておきましょう。相続放棄は自分で一連の手続きをすることも出来ますし、弁護士や司法書士などの専門家に依頼することもできます。相続放棄の手続きについて、どのような場合に専門家にお願いを方が良いかも合わせて紹介します。

相続放棄を自分で行う場合と専門家にお願いする場合でがそれぞれに係る費用が異なりますので押さえておきましょう。

【自分で相続放棄の手続きを行う場合】

・印紙代 800円
・郵便切手代 500円
・戸籍謄本 450円
・除籍謄本、改製原戸籍謄本 750円
・住民票 300円
・交通費や郵送費 2,000~3,000円
合計 5,000円前後

【専門家に依頼した場合】

・印紙代 800円
・郵便切手代 500円
・戸籍謄本 450円
・除籍謄本、改製原戸籍謄本 750円
・住民票 300円
・交通費や郵送費 2,000~3,000円
・代行手数料として
 相続放棄申述期間内の場合:20,000~40,000円
相続放棄申述期間外の場合:30,000~60,000円
合計 約30,000~40,000円前後

相続放棄について弁護士や司法書士にお願いした方が良いと思われる場合

・時間がなく本人では3カ月の熟考期限内に手続きができそうにない場合
・申述書の作成や戸籍謄本など収拾等必要書類の作成、収集が時間的にも動き的にも出来ない場合
・被相続人の最後の住所地が遠方であり、他に支援者もいないため郵送での手続きは不備があったときなどの対応が困難なので避けたいと考える場合
・土地や不動産、貴金属や美術品など財産の評価や査定が難しい場合
・相続放棄と限定承認のどちらにするべきか相続人では、判断がつかない場合
・借金の存在は承知しているが、借入先や金額が正確に調べられる宛や見込みがない場合

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相続放棄のメリットとデメリット

相続放棄をすることで得られるメリットが大きいということもあります。相続放棄をすることによるメリットとデメリットを知って、後で後悔しないようにしましょう。
相続放棄をすることのメリットは大きく分けて2つあります。

相続放棄のメリット

・メリット1…マイナスの財産を相続しなくてすむ

相続放棄をすることのメリットとしては借金のなどのマイナスの財産を引き継がないとうことが最大のメリットといえるでしょう。

・メリット2…相続人同士や親戚縁者との揉め事を回避できる

また、相続で発生しがちな人間関係においてこれまでの良好な関係が崩れてしまう危険があります。財産相続では相続人同士が遺産分割協議をする必要があるので財産の配分で揉めてしまうことやわだかまりが残ってしまうこともあります。相続放棄することでそれらを回避できることもメリットのひとつです。

相続放棄のデメリット

相続放棄のデメリットとしては、相続放棄をすることで最初から相続人として存在しなかったことになるので、以下のようなデメリットがあると考えられます。

・デメリット1…プラスになる財産があったとしても一切相続できなくなります。

・デメリット2…マイナス財産がある場合、ほかの人に負担がいくことがある。

相続放棄をすると、相続権が相続順位の低い人へ移動していくことになるので自分が遺産放棄したことで被相続人(亡くなった方)の借金などの債務を他の人が負担することになる可能性があります。相続放棄は一個人で決めることができ、手続きも一人で進めることができますが思いがけず他の人に借金が移っていき迷惑をかけるということもあります。一人で全てを進めるのではなく他の相続人と相談しお互いに意思確認をしながら進めていくほうが安心です。

・デメリット3…相続放棄は通常は撤回できない

一度相続放棄が承認されてしてしまうと、その後でプラスの財産があるとわかっても撤回できません。後戻りはできないので慎重に考えて決めることが大切です。

・デメリット4…代襲相続はできない

「代襲相続」とは、被相続人の死亡時に本来相続人となるはずだった人がすでに死亡していたなどの場合に、その子などが代わって相続する制度のことです。亡くなった祖父の遺産を相続の権利がある父親が自分は相続放棄して息子に相続させたいという場合、それは出来るでしょうか。

答えは、相続放棄による代襲相続はできないため、不可となります。祖父の遺産の相続を父親が放棄して、孫に相続させるなどの代襲相続はできません。考え方としては、相続放棄した人は最初からいなかったという扱いになるので、その人の子(この例では孫)も存在しないことになるのです。

相続放棄の判断ポイント

相続放棄の判断ポイントはいくつかありますが、金銭的な面ではマイナスの財産はあるものの、プラスの財産と自身の持ち出しで最終的に収支の結果がプラスになる場合もあるのか否かの見極めを行うことが大事です。

また、マイナスの財産や借金について自分が財産放棄をすることでその相続権が誰に移動していくかを把握することが大切です。思いがけない人に負債が回っていったということになりかねないように財産放棄の前によく調べ、誰かに迷惑がかからないという確信をもつことができると良いでしょう。

また、財産放棄を一度したら戻ることはできないという点にも注意が必要です。後になってプラスの財産があるので相続放棄を取り消したいということはできません。

これらの点に注意して後で自分が後悔しないという決心できるかが、財産放棄をするポイントになるといえます。

また、予備知識として相続放棄しても権利として残るものとして、遺族年金や遺族厚生年金、年金一時金、死亡保険などがあります。これらは相続財産ではないので相続放棄の手続きとは関係なく受け取ることができます。

参考までに、相続財産におけるプラスの財産とマイナスの財産とはどのようなものが含まれるのかを以下にまとめておきました。

【プラスの財産】

預貯金、不動産(住宅、マンション、店舗、工場、駐車場、貸家など)、有価証券、借地権・借家権、財産価値のある貴金属、美術品、自動車、著作権、意匠権、商標権、特許などの知的財産権
第三者へ貸付債権や未収報酬債権、税金の還付金債権などもプラスの財産といえます。

【マイナスの財産】

借金、債務、税金、未払金、保証債務、連帯債務
また、被相続人の葬儀に係る費用は債務ではありませんが相続開始に伴って必要不可欠な支出であるため、相続税上は被相続人の債務として扱われ債務控除の対象になります。

【遺産分割前に処分された遺産があった場合】

遺産相続前に処分されてしまった相続財産があった場合はどうでしょう。
例えば、3人の相続人のうちの一人が亡くなった被相続人との口約束で遺産のうちの一部を他の相続人に相談なく処分し金銭を得たとします。遺産分割前に処分されてしまった遺産に属する財産は、本来遺産分割の対象にはならないのですが、それでは他の相続人と比べると不公平ということになってしまいます。

そこで、平成30年の相続法改正で民法第906条の2が新設されました。その内容は「相続人全員の同意がある場合にはもちろん、処分をした相続人が反対しているときにも、処分された相続財産が遺産分割時点で遺産として存在しているとみなすことができる」ということでした。

つまり、相続人のうちの1人が遺産分割前に500万円の利益を得た場合、他の相続人(先の例に当てはめると相続人2名)が同意すれば、処分された500万円も遺産として存在しているとみなされることになります。そのため、すでに500万円を得た相続人は既に500万円分の遺産は取得済みとして、その分を差し引いて遺産相続の話をすすめていくという方法です。

 この法律は2019年7月1日から施行されており、その日以降に開始した相続については、相続開始後遺産分割前に処分された遺産についても、処分者以外の相続人が処分された遺産で得た利益を遺産として現に存在しているとみなすことに同意すれば、他の残っている遺産に含んだ上で処分者から得た利益を差し引いて遺産分割を行うことが可能になっています。

相続放棄の注意点

相続放棄の注意点を説明します。まずは最初に、相続権の移動について説明します。相続放棄による相続権の移動の注意点としては以下のような例が挙げられます。

相続放棄の注意点の一例

500万円の借金(負債)をもっていた夫(被相続人)が死亡し、妻と子どもが相続人となりました。妻は残された家族が借金を相続したくないという気持ちから自分と子どもの相続放棄をしました。この場合、法的な順位として夫の借金は夫の父母に相続されることになります。

しかし、突然借金を背負うことになると誰しも困ってしまうので夫の父母も相続放棄をしました。その次は夫の兄弟姉妹が借金を相続することになってしまいました。このように、自分が相続放棄をすることで相続権が法定相続人(相続放棄による相続権の移動は法定相続人の兄弟姉妹まで)の範囲で移動していくのです。

この場合、500万円の借金がどんどん移動していくことになってしまいました。ただし、兄弟姉妹がすでに死亡している場合は兄弟姉妹の子(甥姪)まで相続権が移ります。
自分が相続放棄することで親や兄弟、場合によっては甥や姪に影響が及ぶこともあるので相続放棄をする際はよく考えて選択し、手続きを進めていかなければいけません。

補足:相続財産管理人とは

補足として、相続人全員が相続放棄をした場合は借金や負債はどうなるかというと、もしも被相続人にプラスの財産もあり、一部であっても返済が見込めると考えた場合には、被相続人にお金を貸した債権者が家庭裁判所に「相続財産管理人」を申し立てることが可能です。

相続財産管理人は、家庭裁判所が亡くなった被相続人との利害関係などを考慮して適任とされる人を選任します。相続財産管理人の選任には弁護士か司法書士が選ばれることが多いです。

相続財産管理人は被相続人の財産を精査し、不動産などの資産を清算して、債権者に支払います。債権者が複数いる場合には平等に分配します。

相続財産管理人の報酬は相続財産から支払われますが、財産が少なくて報酬を支払うことができない時は申立人が報酬を家庭裁判所に納めることになります。

次に、相続放棄の主な注意点として「相続放棄の期限が過ぎてしまった場合」と「相続放棄の撤回」について説明します。

・相続放棄の期限が過ぎると?

相続放棄の期限は相続が発生してから3か月以内と決められています。この3か月間の期間のことを「熟慮期間」とよびます。

もし、熟慮期間である3カ月を過ぎてしまった場合には、遺産を相続することに同意したことになります。相続対象の中に借金が含まれている場合でもその借金も含めて引き継ぐことになります。

プラスの財産だけでなくマイナスの財産も相続の中に含まれている可能性がある場合や何らかの事情で遺産相続をしたくないという意思を持っている場合には、3カ月間の熟慮期間のうちに財産調査や他の相続人との相談、意思確認を行い相続放棄や限定承認などの手続きを期間内に行いましょう。

ただし、どうしても財産調査に時間をかかってしまうケースではその理由を家庭裁判所に相談し「相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立書」という書類を提出することで家庭裁判所に熟慮期間延長を認めてもらえるケースがあります。

注意点として、熟慮期間の延長が認められるか否かの決定までには熟慮期間延長の申し立てを行ってから1週間~2週間かかります。

また、認められるかは裁判所の判断次第なので、熟考期間延長の申し立ての結果が決まる期間も加味して相続に関する手続きは、どの方法を選択しても早め早めに行うという意識を持ちましょう。

・相続放棄後の撤回について

相続放棄の撤回は一旦手続きが受理されると法律上できないとされています。しかし、裁判所に認められる「取消原因」がある場合、取り消しが認められる場合があります。また、相続放棄の書類を提出後に家庭裁判所で受理されるまでの間であれば「取下書」を提出することで取り下げが可能になります。

相続放棄の取り消しでは、あくまでも撤回ではなく「取り消し」という扱いになりますので、厳密に言えば撤回は「過去になされた行為の効果を将来に向かって消失させること」であり、取り消しは「相続放棄した時点で問題のある法律行為の効力を当初に遡って失わせこと」という意味を持ちます。

取消原因の具体例としては、未成年者が法定代理人の同意なしでした場合、脅迫や詐欺行為でした場合、判断能力がないまま単独でした場合などです。また、成年被後見人や被保佐人、被補助人など本人に代わる人がであっても定められた方法以外でおこなった場合なども取り消しが認められる場合もあります。

取り消しする場合は相続放棄をした人が、家庭裁判所に「相続放棄取消申述書」を提出することになります。

以上のことをまとめると以下のようになります。
★相続放棄が受理されると撤回はできない。
★相続放棄の書類を提出後、受理前であれば「取下げ」ができる。
★相続放棄受理後は撤回は出来ないが相応の理由がれば「相続放棄取消申述書」の提出で取消を申述できる。裁判所に認められれば取消が認められる。

相続放棄に関する例外

相続放棄の熟考期間である3カ月が過ぎてしまっても例外的に相続放棄が認められることがあります。例外が認められる代表的なケースは2つあります。

1つ目は相続の発生に気がつかなかった場合、2つ目は自分が相続できる財産があるとは知らなかった場合です。これらのケースにすいて具体的な例をそれぞれ紹介します。

相続の発生に気がつかなかった場合

相続放棄の手続き期間は相続があることを知った日から3カ月以内です。つまり、3カ月という熟慮期間の計算は「相続が生じたことを知った時点」からスタートします。

そのため、相続が発生したことに気がつかなかった、知らなかったというような時期は、熟考期間に含まれないので3か月という期間の計算がまだスタートしていないということになります。

例えば、相続人が長く遠方に暮らしている場合、亡くなった被相続人と普段からあまり関わっていなかったとします。病気やその他の事案で入院や危篤状態にあることも知る由もない関係にあって亡くなったこともすぐには知らなかったとします。

亡くなった後に遺族の1人から相続が生じたことを葉書や手紙等の文書で知らされたのが文書の届いた日が4月1日だったとしたら、その翌日の4月2日に熟慮期間(3か月)の起算がスタートしますので、相続放棄の期限は7月1日ということになります。(4月1日から起算して6月30日まで、ではないということに注意が必要です)

 相続の発生に気がつかなかったケースでは、もしも消費者金融などが意図して3カ月の熟考期間が過ぎたタイミングで借金の存在を相続人に知らせるなどした場合の救済の意味もあり過去の判例からも相続放棄の例外として法律上の解釈が緩和されています。

例)自分が相続できる財産があると知らなかった場合

被相続人が亡くなったことは知っていても、自分が相続できる相続される遺産はないと思い込んでいたことで、何もせずに3カ月が経過しその後に相続できる財産があったと知った場合には救済措置があります。

このような場合には、自分が相続できる権利がある遺産の存在を知った時から3カ月以内に相続放棄の申述を行えば相続放棄を行うことができます。

ただし、救済措置が認められるためには、相続できる遺産が何もないとなぜ思い込んでしまったのか、その理由について家庭裁判所に判断してもらわなければなりません。どのような合理的な理由があって、自分には相続できる財産がないと思い込んでいたのかが重要です。

合理的な理由の具体的な例としては、生前に亡くなった人(被相続人)の財産や借金の存在を知らされていなかった場合や、日ごろから疎遠な関係にあって知る由もなかった場合などが考えられます。

それらの理由や事情を家庭裁判所が鑑み相続放棄の熟考期間の延長が認められる可能性があります。もしも熟慮期間が経過してしまったと後で気がついた場合でも、家庭裁判所や弁護士、司法書士や行政書士などの専門家に相談してみましょう。救済措置を受ける手段を見いだせる可能性があります。

まとめ

相続放棄を主として相続に関する手続きについてみてきました。相続は周りにあまり熟知している人がいないという状況の人が多いと思われます。限られた時間で手続きを進めなくてはならないので心身にストレスもかかります。

誰しもある日突然相続人になるということは全く想像も出来ないことですが、その時になって慌てたり、不正確な情報に惑わされないためにも、相続の種類と手続きについて知り、ある程度頭の中でシミュレーションできるくらいの情報を普段から得ておくことをお勧めします。

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