M&Aファイナンスとは?概要・手法・手順を知って適切な方法を選ぶ!

山下正太郎

メガバンクに入行し、M&Aを含む各種ファイナンス業務に従事した後、大手M&Aブティックに入社。中小企業の事業承継問題に対するソリューションとしてのM&A取引を推進。その後、上場企業および大手コンサルティング会社の企画部門にて投資責任者を歴任。キャリアを通じて多数のM&A案件の成約に携わった他、PMI担当として買収先とのスムーズな経営承継を実現した経験を多数持つ。

この記事は約13分で読めます。

M&Aを成立させるために、資金調達の方法として「M&Aファイナンス」の利用を検討している方もいるのではないでしょうか。「初めて利用する」という方は、その概要や手法、手順の把握がはじめの重要なステップです。

そこでこの記事では、M&Aファイナンスの概要や手法、手順について詳しく解説します。複数あるM&Aファイナンスの手法から、自社に適切な方法を選択できるようになると良いでしょう。後半ではM&Aを実施する際に重要なM&A仲介会社の選び方も紹介しています。

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M&Aの流れを最適化!「M&Aファイナンス」とは?

M&Aの流れを最適化!「M&Aファイナンス」とは?

M&AファイナンスとはM&Aにおける買収資金を金融機関などの外部から調達する方法のことです。ここではM&Aファイナンスについての概要を解説します。まずはファイナンスの基礎知識をおさえましょう。資金調達の主体によって分けられる、「コーポレート・ファイナンス」と「ノンリコース・ファイナンス」の特徴もここで解説します。

「ファイナンス」とは?

ファイナンスには「資金調達」という意味があります。ビジネスシーンでは、ほかに「財政や財務」「財源や資金」という意味でも登場する言葉です。

ファイナンスは「企業が自身の価値を高めるために行う資金活動業」とも捉えられます。資金調達に始まり、事業計画・利益・分配といった資金の流れを作るための方法といえるでしょう。企業が事業の拡大を図る際に重要な要素です。

「M&Aファイナンス」の概要

M&Aファインナンスは「買収ファイナンス」ともいわれ、M&Aに必要な買収資金を調達する方法を指します。調達先として挙げられるのは、銀行をはじめとする金融機関や投資家です。

M&Aとは「合併と買収」を意味します。買収はそれぞれの企業が消滅することなく存続するのが特徴です。買収企業(買い手)が買収対象企業の議決権の過半数を取得することで、経営権を獲得して子会社化できます。特定の事業のみを獲得することも買収といいます。

コーポレート・ファイナンスとノンリコース・ファイナンス

資金を調達する主体によって「コーポレート・ファイナンス」と「ノンリコース・ファイナンス」に分けられます。

【コーポレート・ファイナンス】

資金調達の主体は買収企業です。買収企業の与信を使用して資金調達がなされます。一般的な設備投資等で行われる資金調達と変わらないイメージでしょう。

【ノンリコース・ファイナンス】

資金調達の主体となるのは、買収が目的で設立された特別目的会社(SPC)です。買収対象企業の今後の収益力を担保とした資金調達方法であり、企業の買収方法のひとつであるLBO(Leveraged Buyout)はノンリコース・ファイナンスの代表例です。

【M&Aファイナンスの手法1】シニア・ローン(シニア・ファイナンス)

【M&Aファイナンスの手法1】シニア・ローン(シニア・ファイナンス)

シニア・ローン(シニア・ファイナンス)はM&Aファイナンスにおいて選ばれることの多い手法です。低金利というメリットだけでなく、金融機関の審査が厳しいというデメリットについても知っておくとよいでしょう。ここでは、シニア・ローンについて詳しく説明します。

シニア・ローン(シニア・ファイナンス)とは?

シニア・ローンは、通常の融資の際に利用するローンと同様の仕組みです。厳しい与信審査と担保の設定が求められます。M&Aファイナンスの中でも多く活用されています。

返済は、普通株式よりも負債のほうが優先されることがポイントです。ほかの債権より返済の優先度が高いため返済期間が短い傾向にあることも特徴といえるでしょう。審査の結果によっては、調達資金の目標額を満たせないことがあります。

メリット:金利負担が少ない

シニア・ローンの大きなメリットは、金利負担が比較的少ないという点です。「シニア・ローンは優先的に返済される」という貸し手側のメリットもあり、金利が低く抑えられます。ほかの債権者よりも優先的に回収できるため、貸し手側にとっては返済が滞るといったリスク回避がしやすいといえるでしょう。

デメリット:審査が厳しい

シニア・ローンは、借り手側(買収企業)の信用度が貸付に大きく影響することも特徴です。主に以下のような内容を審査されます。

・買収企業の信用力

・担保の価値

・買収対象企業の価値

・買収金額の妥当性

・買収額に対する自己資金率

審査の結果が出るまでに時間がかかることも留意しましょう。審査が厳しく、不受理または融資希望額に満たない結果もあり得ます。

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【M&Aファイナンスの手法2】メザニン・ローン(メザニン・ファイナンス)

【M&Aファイナンスの手法2】メザニン・ローン(メザニン・ファイナンス)

M&Aファイナンスでは、メザニン・ローン(メザニン・ファイナンス)もよく用いられる方法の一つです。ここでは、一般的にシニア・ローンの資金不足を補うために利用されることが多いメザニン・ローンについて、詳しく解説します。資金調達がしやすいということや金利が高いという留意点も押さえておきましょう。

メザニン・ローン(メザニン・ファイナンス)とは?

多くは、シニア・ローンでの調達資金に不足が発生したときにそれを補填する目的で利用されます。

メザニンとは「中2階」の意味です。メザニン・ローンは「劣後ローン」ともいわれ、返済において株式よりも優先されるものの、シニア・ローンよりも返済順位が劣後します。借入期間はシニア・ローンよりも長く設定されることが多いのが特徴のひとつです。

メリット:資金調達がしやすい

メザニン・ローンは、シニア・ローンと比較すると審査はやや緩和される傾向にあり、資金調達がしやすいというメリットがあります。

その分、金利が高く設定されていることがポイントです。貸し手側にとっては、担保や保証による回収が難しい場合でも、それまで支払われた金利で一定程度カバーできることがメリットといえます。

デメリット:金利が高い

メザニン・ローンは、貸し手側からすると返済順位が劣後することにより、貸付金の全額を回収できないケースもあり得ることがリスクです。そのため金利が高く設定されることになり、この点は借り手側からすればデメリットといえるでしょう。

メザニン・ローンは、借入期間が長く設定される傾向にあります。返済期間が長くなると利息負担も大きくなる可能性に留意しましょう。

M&Aファイナンスを利用する際の手順

M&Aファイナンスを利用する際の手順

ここからは、M&Aファイナンスを利用する際の手順を紹介します。M&Aファイナンスではシニア・ローンの利用が一般的です。実際にシニア・ローンを利用する際の流れを把握して、スムーズな利用につなげましょう。5つの手順に分けて詳しく解説します。

インディケーション・レターを取得する

インディケーション・レターとは、金融機関から提案される融資金額・金利条件などが記載された参考資料のことです。効力のある契約書や合意書とは性質が異なる点に注意しましょう。インディケーション・レターは以下の手順で取得します。

1. 金融機関と守秘義務契約を交わす

2. 買収対象企業についての資料を提出する

3. 金融機関が分析・検討を開始する

4. 金融機関との間でなされた主要条件の検証・交渉内容を金融機関側がまとめる

コミットメントレターを取得し、タームシートの合意を行う

コミットメントレターは、金融機関から発行される融資の意思を表明する文書です。融資の意思のほかにも次のような内容が記されます。

・ローンの締結や融資実行の条件

・コミットメントの有効期限

コミットメントレターの取得後は、タームシートの作成と合意のステップへと進みます。タームシートの内容を反映させる形で最終的な融資契約が結ばれます。記載する主な内容は以下の通りです。

・融資の前提条件や表明保証など

・融資金額や金利など、細かな融資の条件

買収企業と金融機関の間で交渉が行われ、合意した内容がタームシートに記載されると認識しておきましょう。

買収契約・ローン契約を締結する

タームシートに記載された条件に合意後、シニア・ローンの契約を正式に締結します。契約書に記載される条項の一例は以下の通りです。

・資金使途や前提条件

・弁済に関する事項

・誓約事項

・表明保証

・期限の利益喪失事由

一般的に、融資に関する契約締結とほぼ同じタイミングで買収契約も締結されます。買収取引に関する契約内容がシニア・ローンの契約に影響を与えるため、金融機関とは買収取引の契約内容を共有する必要がある点に注意しましょう。

担保・保証の差し入れ

金融機関は、買収企業が取得した買収対象企業の株式についての担保設定や買収企業による保証差し入れ、その他、不動産をはじめとした資産の担保設定を求める場合や、買収対象企業が保有している資産を担保として求められるケースも見られます。

担保・保証の差し入れは、融資をする金融機関にとっては、債権を回収できない場合に備えた保全策といえます。担保・保証に関する内容は融資条件に含まれているものであり、当該条件に沿って手続きを進めていくことになります。

ローン返済・債務の管理を行う

融資を受けた後は、ローン返済の開始です。金融機関は融資した資金が買収活動に使用されたかなど、買収企業のモニタリング(調査)を行います。

モニタリングは、合意されたローン契約に沿って行われます。具体的には、財務制限条項を含んだ誓約事項や財務諸表などの提出、報告義務などが挙げられます。これらの情報をもとに継続したモニタリングが実施されることを覚えておきましょう。利息の支払いや元本の返済は、債務の管理を適切に行いながら定められた最終期限までに完了させます。

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M&Aファイナンスを利用する際の注意点

M&Aファイナンスを利用する際の注意点

現在、「M&Aファイナンスの利用を検討中である」という方もいるでしょう。ここでは、M&Aファイナンスを利用する際の注意点を解説します。利用する際には、自社の利益になるかの見極めが大切です。重要な役割を果たすM&A仲介会社の選び方についても紹介します。

自社の利益になるM&Aファイナンスか?

利用する前にまず「自社の利益となるM&Aファイナンスであるか」を精査しましょう。M&Aファイナンスの利用は、買収企業がその必要性を判断するほか、金融機関から提案されるケースもあります。

金融機関から提案されたM&Aファイナンスは、場合によっては、買収企業の利益よりも金融機関の利益を優先されたものである可能性がある点を考慮しましょう。「自社の利益につながるか」という観点から冷静に分析をし、状況に合った資金調達方法を選択する意識が大切です。

M&Aの仲介会社選びは慎重に!

M&Aには専門的な知識が求められます。信頼できるM&Aの仲介業者に相談して、M&Aの成功につなげましょう。M&Aファイナンスを利用する金融機関から仲介会社を紹介されるケースもありますが、慎重に選んだほうがよいといえます。

仲介会社の実績や報酬体系なども考慮し総合的に判断しましょう。また、仲介会社との相性も重要な要素です。信頼できる担当者からは、M&Aファイナンスについても適切なアドバイスを受けられるでしょう。仲介会社選びは、自社の利益に直結する重要な選択です。吟味して選ぶことをおすすめします。

まとめ

まとめ

M&Aを実施する際に、買収資金を外部から資金調達をすることの総称をM&Aファイナンスといいます。M&Aファイナンスを利用するときは、いくつか存在する手法それぞれの商品性についての理解を深め、自社に最も適したものを選ぶ必要があります。専門的な知識が必要となるため、信頼性できるM&A専門会社に相談できると安心です。

株式会社M&A DXには、大手監査法人系M&Aファーム出身の公認会計士や税理士、金融機関出身者が多数在籍し、M&Aを力強くサポートします。M&Aファイナンスをご検討中の方は株式会社M&A DXへお問合わせください。相談料は無料です。

(参考:『株式会社M&A DX|お問合わせ』)

(参考:『株式会社M&A DX』)

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