30代・40代・50代オーナー社長の意識の変化
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最近のM&Aでは、従来多かった事業承継に伴うM&Aに加えて、30代・40代・50代のオーナー社長によるM&Aを利用した会社売却が増加しております。
事業承継系のM&Aでは、オーナー社長は70歳前後の団塊の世代が主役です。事業承継系のM&Aでは、長年に渡り会社を運営してきたオーナー社長が、主に後継者不在により会社を譲渡するというパターンが一般的です。
一方、30代・40代・50代のオーナー社長はまだまだお体が元気な場合がほとんどで、今M&Aにより会社を譲渡しなくてもいいという考え方もあります。それにも関わらず30代・40代・50代のオーナー社長による、M&Aを利用した会社売却が増加しているのは、なぜでしょうか。
30代・40代・50代オーナー社長の会社に対する考え方
オーナー社長の、自身の会社に対する考え方も年代によってマチマチです。
オーナー社長にとって、自身の会社は自分の分身のように感じている方が多く、その結果、会社を譲渡・売却することに抵抗感がある方も多く存在します。この傾向は、特に60代より上のオーナー社長に多く、そもそも会社は譲渡をしたり売却をしたりする対象ではないという考えが根強いです。
一方、30代・40代・50代のオーナー社長は、60代以上のオーナー社長よりドライな方が多い印象です。
もちろんご自身の会社を大事に思う気持ちはありますが、会社というのものを良くも悪くも分身ではなく、独立した一つのものとして捉えているよう感じます。そのため、30代・40代・50代のオーナー社長は、M&Aに積極的です。
独立した一つのものとして会社を捉えているので、自身の会社が譲受側(買い手側)となる場合でも、浪花節ではなく合理的にドライな判断・決断する方が多い印象を受けています。
30代・40代・50代のオーナー社長は、同じく合理的な判断・決断により、自身の会社ですら譲渡側(売り手側)にまわることに大きな抵抗感がないオーナー社長がいらっしゃいます。
また、M&Aというのが世間に認知され、友人の経営者もM&Aをしている機会が増え、M&Aに抵抗感が減っているのかもしれません。
このように30代・40代・50代のオーナー社長の意識は、その上の世代と比べるとかなり変わっております。
30代・40代・50代オーナー社長が会社を譲渡(売却)する理由
このように30代・40代・50代オーナー社長の、自身の会社に対する意識は、その上の世代よりも良い意味でドライな方が増えております。
とはいえ、30代・40代・50代のオーナー社長が会社を譲渡(売却)するというと、必ずと言っていいほど買い手候補から「まだまだ社長も若いのに何で会社を売却してしまうの?」と聞かれます。
特に会社がしっかりと利益を出していると、なおさら「なんで売却するの?」と何回も聞かれます。
ここでは、30代・40代・50代のオーナー社長が会社を譲渡(売却)するに至るのか、実例を紹介します。
IPOを検討していたものの断念したケース
IPOとは「Initial Public Offering」の略称で、非上場会社が新規に証券取引所に株式を公開し、株式を売り出すことをいいます。IPOによりオーナー社長は自身の株式を売り出すことにより、創業者利潤を獲得することや、IPO後も保有する一部株式の価値を高めるために、会社の業容を拡大させていきます。
創業してしばらくして会社が順調に成長すると、オーナー社長はIPOを検討しますが、IPOは会社の業績だけではなく、社内の管理体制、加えて自身ではコントロール出来ないマーケット環境にも左右されることから、誰でもIPO出来るものではありません。そのため、IPOを目指していたものの、途中で様々な理由によりIPOを断念する会社も少なくありません。
ただし、IPOを断念した場合、前述の創業者利潤の確保をする機会を逸してしまうため、IPOではなくM&Aによる創業者利潤の確保を試みるケースがあります。
このようにして、IPOを断念して、会社を譲渡(売却)するケースがあります。
アーリーリタイアを希望するケース
M&Aをして会社を譲渡(売却)することによって、多額の金銭を入手するケースがあります。
もちろん会社の状態次第ですが、数千万円どころか数億円、場合によっては数十億円の金銭をM&Aにより入手するケースも珍しくありません。これだけ金銭があると、仮に30代であったとしてもアーリーリタイアもしくはセミリタイアするには十分な金銭を得ることが出来ます。
このようにして、アーリーリタイアを希望して、会社を譲渡(売却)するケースがあります。
既存事業を切り離して新規事業に進むケース
会社を経営していると、事業の多角化により複数の事業を営むこととなる場合や、実際には新規事業はしていないもののそちらに進みたい場合があります。
複数の事業をしている場合は、ノンコア事業や端的に興味が薄れた事業を譲渡(売却)し、部分的な創業者利潤の確保や譲渡(売却)対象ではない事業への投資を見越して、会社を譲渡(売却)するケースがあります。
また、新規事業に進出するために既存事業を切り離す場合も同様に、創業者利潤の確保と新規事業への初期投資にするために、会社を譲渡(売却)するケースがあります。
会社の更なる発展を考えるケース
会社を経営していると、創業から順調に右肩上がりで業績が拡大しているケースもあれば、多くは波があったり、どこかで壁に当たったりするケースがあります。
よく売上高10億円の壁なんて言いますが、壁が長く続いた場合に、どうしたら壁を突破出来るか誰しも考えます。
壁を突破する一つの手段として、M&Aにより大手資本の傘下に入り、大手のヒト・モノ・カネを利用して会社を更に発展させるということを祈念するケースがあります。
この場合、オーナー社長による創業者利潤の確保も成し得ることから、オーナー社長としても有力な選択肢の一つとなります。
健康上の理由によるケース
これはポジティブな理由ではありませんが、いくら30代・40代・50代とまだまだ若いとはいえ、健康面で不安を抱えるオーナー社長もおります。
30代・40代・50代というとお子様がいらっしゃったとしても、まだ会社を引き継げる年齢ではないケースがほとんどです。そのため、まだ元気なうちに会社を譲渡(売却)することで、会社を託すケースがあります。
以上のように5つ程例示を出しました。
実際には、このどれかというよりは、様々な要因が絡み合って、30代・40代・50代のオーナー社長が会社を譲渡(売却)するに至ります。そのため、30代・40代・50代のオーナー社長が会社を譲渡(売却)することは、決して珍しいことではありません。
30代・40代・50代オーナー社長が会社を譲渡(売却)するために心掛けておく4つのこと
30代・40代・50代オーナー社長に限らずという話ではありますが、会社を譲渡(売却)するために心掛けておく、大切な4つのことを記載いたします。
30代・40代・50代オーナー社長の会社を譲渡(売却)する際に、私からこの手の話をさせていただきますが、社長の皆様に「これは仮に会社を譲渡(売却)しなかったとしても頭に入れておくといいね」と仰っていただけます。IPOを検討されている方にとっても、留意すべき事項です。
01. まずはとにかく業績を向上させること
これはどのオーナー社長でも強く願い実践している部分になりますが、あえて記載します。
というのも、会社のフェーズで右肩上がりの状態でM&Aに臨むのと、右肩下がりでM&Aに臨むのでは、創業者利潤であるM&A価格は大きく変わってきます。
当然、右肩上がりの状態でM&Aに臨んだ方がM&A価格(株価)は高くなる傾向にあり、反対に悪くなってからM&Aに臨んだ場合は、あまりM&A価格(株価)はつかないと考えていただいた方がよろしいかと思います。
02. オーナーコストを把握しておくこと
オーナーコストとは、オーナーが自身や家族のため、もしくは節税のために費やしているコストをいいます。
これを把握しておくことが必要な理由としては、非上場企業では必ずといっていい程、事業に関連しないコストがあるためです。つまり見掛け上のP/L(損益計算書)での利益が50百万円だったとしても、オーナーコストを除くと、実質的な利益が200百万円あるケースもあります。
このようにオーナーコストがいくらか把握しておくと会社の正常収益力がいくらなのか把握することが出来ますし、M&A目的でなかったとしても会社の業績管理目的にも非常に有用であります。
以下は代表的なオーナーコストを例示列挙します。
✓ 非常勤のオーナー親族への役員報酬(実質的には会社運営に関与していない)
✓ オーナー社長及びオーナー親族への役員保険
✓ オーナー社長及びオーナー親族の旅費交通費・交際費・支払家賃など(事業に関連しない部分)
✓ オーナー社長及びオーナー親族の趣味に係る固定資産(事業に関連しない車両や住居など)に伴う減価償却費
✓ その他節税目的で発生している費用(航空機等のリース商品など)
03. 社長がいなくても会社がまわるようにしておくこと
余程大きな会社でない限り、大なり小なり会社運営や営業等を社長に依存している会社が多いと思います。
M&A成立後は様々なパターンがあるものの、社長はいずれいなくなるケースが多いことを考えると、M&A成立後も会社運営に支障をきたさない状態を構築しておくことが重要です。
会社運営を社長に過度に依存している状態では、なかなか譲受側(買い手側)が見付からないという事態が生じます。特に営業面で社長に過度に依存している場合は、社長退任後は売上高の低下が懸念され、どうしても高値が付きづらい状態になります。
このような事態を避けるためにも、社長がいなくても会社がまわるような状態を構築しておくことは非常に有用といえます。
04. 社内の管理体制を整えておくこと
M&Aプロセスにおいては、様々な資料を譲受側(買い手側)から請求されます。
その際に自社をアピールする資料がなかったり、あまりに他の資料との整合性が取れない資料が出てくると、譲受側(買い手側)としては正しく会社を理解出来ない状態になってしまいます。
また、このような資料の作成・管理体制構築のための人材確保などへのコストのかけ方が、営業に比べて後回しになりがちです。
しっかりと会社の良い点を理解してもらうためにも、また日々のオペレーションを効率的に実施するためにも、社内の管理体制を整えることは非常に重要です。
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30代・40代・50代オーナー社長が今後の方向性に悩まれた場合
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