相対取引とは?
M&Aや株式などの取引シーンでは、相対取引が行われることがあります。相対取引とはどのようなもので、一般的な市場取引と何が異なるのか、ここで確認しておきましょう。
相対取引の意味
相対取引とは、市場を介さずに当事者同士が直接取引を行う方法です。銀行や不動産業者と顧客の取引、非上場企業の株式を取得する場合などが、相対取引に該当します。
相対取引と市場取引の違い
相対取引と市場取引では、価格決定の仕組みが異なります。
市場取引は、買手が多くなるほど価格が上昇し、売手が多いほど価格が下落する仕組みです。取引の流動性が高いため、一定の均衡価格が生まれる特徴があります。
対して相対取引は市場の価格変動に影響されることなく、当事者同士で価格を決定できるのが大きな特徴です。
異なる点は価格決定の仕組みだけではありません。取り扱う資産もそれぞれ異なります。上場株式や通貨などの同種の資産が数多く存在する場合は市場取引、土地や不動産など同種の商品数が少ないケース、もしくは稀少性の高い資産を売買する場合は相対取引が用いられるのが一般的です。
相対取引のメリット
市場があるにもかかわらず、あえて市場で取引せずに相対取引を利用するケースは少なくありません。なぜなら、相対取引には市場取引にはないメリットがあるからです。
価格や決済方法を自由に決定できる
相対取引では、価格や決済方法などを当事者同士が自由に決定できます。売手と買手が合意すれば売買が成立するため、お互いが納得する価格で取引できるメリットがあるのです。
また相対取引の場合、市場取引と比較して、短期的な景気や政治などの影響を受けづらい場合が多いです。
市場の相場に左右されない
市場取引の場合、需要と供給のバランスによって価格が自動的に決定されますが、相対取引は市場の受給に左右されることなく、売買価格を自由に決定できます。
市場取引で大量の株式を集めようとすると、株価が上昇して、あらかじめ用意した資金では予定株数を取得できなくなる恐れがあります。相対取引なら市場価格に関係なく価格を決めることができるため、事前に予算が立てやすくなります。
ただし、相場に左右されない分、当事者間の交渉が大きなポイントとなります。
株式市場に影響しない
市場取引の場合、大量の買い・売りの注文が入ると、株価が大きく変動してほかの投資家がパニックに陥る恐れがあります。そのようなリスクを避けるために、大口投資家が相対取引を行うこともあるのです。
相対取引なら当事者同士で取引できるため、その取引が直接的に株式市場に影響を及ぼすことはありません。そのため、大きな価格変動のリスクを抑えて、取引を成立できます。
相対取引のデメリット
相対取引は当事者同士で交渉して価格などを決めていくため、少なからずデメリットも存在します。
詐欺に遭うリスクがある
不特定多数の投資家の売買によって価格が決まる市場取引と異なり、相対取引では取引相手との交渉次第となってしまいます。価格や決済方法も当事者同士が自由に決められるため、慎重に判断しないと詐欺に遇う等の可能性があるのです。
例えば、株式を渡した後で対価を支払う決済方法にした場合、対価を支払わずに株式だけ受け取って逃げられることも考えられます。
相対取引は市場の相場に左右されないメリットがある一方で、不当に高い価格で買わされるリスクがあることを考慮しておかなければなりません。
取引完了までに時間がかかる
相対取引では当事者同士が直接交渉して価格などを決めるため、交渉が難航すれば取引成立に時間がかかる恐れがあります。市場取引なら短期間で成立する取引でも、相対取引だと取引が完了するまでに数ヶ月かかることも珍しくありません。
取引に時間がかかると資金面や精神面での負担がかかったり、状況の変化等により取引が不成立となる可能性もあります。
不公正な取引が成立する可能性がある
相対取引は相場の影響を受けない分、不当な価格で取引が成立するリスクがあります。買手と売手に情報の非対称性が存在している場合、不当に高い価格で買わされるといったトラブルが起きる恐れがあるのです。
その点、市場取引なら需要供給のバランスによる合理的な価格での取引が可能になります。
相対取引vsオークション方式
M&Aを行うにあたり、相対取引とオークション方式のどちらを選択しようか迷うこともあるのではないでしょうか。両者の違いを把握しておくと、取引内容や状況に応じてより良い選択ができるようになります。
オークション方式とは?
オークション方式とは、売却案件に対して複数の企業が入札を行い、最も良い条件を提示した企業が交渉権を得るM&Aの一つの進行方法です。
オークションと比較した場合のメリット・デメリット
オークション方式で提示する条件には、買収金額だけでなく、買収後の経営方針やスキームなども含まれる場合があります。そのため、最高価額を提示した企業が必ずしも落札できるわけではありません。
しかし、相対方式と比べて高い価額で決まる場合が多いです。業績の良い企業をより良い条件で売却したいなら、オークション方式を選択したほうが良いでしょう。
一方で事業の価値の説明がしにくい場合や、特定の買手と短期間で交渉したい場合は、相対取引のほうが向いています。取引相手次第では、交渉時間を節約することも可能です。
M&Aで相対取引を行う方法
M&Aにおける相対取引には、取引者同士による直接取引とOTC取引の2種類の方法があります。どちらの方法にもメリット・デメリットが存在するため、慎重に判断しましょう。
取引者同士が直接取引する
仲介業者を一切介さずに実施する場合は、当事者同士が取引の場所や時間を自由に設定可能ですが、現物の引き渡しや代金の振り込みなどの手続きはすべて取引者が行います。
当事者同士で取引を行う場合、仲介会社への手数料を節約できるメリットがある一方で、思わぬトラブルが起こりやすいデメリットも。リスクをどう回避するかが、大きなポイントです。
専門業者を介して取引する
専門業者を介して取引する場合、一定の手数料が発生しますが、多数の相手と安全に交渉・取引が可能です。相対取引でのトラブルのリスクを軽減するため、多くの場合、専門業者を介入させる方法が採用されています。
より安全でリスクの少ない取引を実現したい場合は、多少のコストがかかっても、専門業者を介して取引したほうがいいでしょう。
まとめ
相対取引は少しアナログな取引方法ですが、市場の相場に左右されず、価格や決済方法を自由に決められるメリットがあります。。実際のM&Aでも相対取引が用いられるケースも多く、覚えておくと役に立ちます。市場取引、相対取引、オークション方式をうまく使い分け、納得いく取引を実現させましょう。
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