相続順位と法定相続分の基本ルール
誰かが亡くなれば、必ず相続問題が出てきます。しかし、相続する人はすでに決められており、誰がどれだけもらえるのかも決まっています。
まず、民法で定められている相続する人、相続する割合などについて触れ、また基本的なルールから応用までを詳しく解説していきます。
法定相続人の範囲
法定相続人の範囲は民法において次のように定められています。
「死亡した人の配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の人は、順位により配偶者と一緒に相続人になります。」
ここで言う死亡した人のこととは「被相続人」のことです。
そもそも法定相続人とは、亡くなった人の遺産をもらう権利のある人のことです。
法定相続人になれるかは、それぞれの家族構成により違いますが、「配偶者」と「血族」と決まっています。要は、法定相続の場合は、遺産をもらえる人は決まっています。
また、法定相続人の範囲は戸籍謄本で確認することが出来ます。(下記で詳しく解説していきます)
「配偶者」:必ず法定相続人になります(法律婚をしている配偶者に限られる)※ただし内縁関係の時は遺言を書くことで相続人になることができます。
「血族」:優先順位により高い人が法定相続人になります
血族の中で同じ順位の人が複数人いる場合は、全員が法定相続人になることができます。
もし、法的に相続放棄をした人がいれば、初めからいないものとして、みなされます。
関連記事「被相続人とは?遺産相続の優先順位と相続割合について」
法定相続人の範囲にもいくつか注意点があります。それぞれ説明していきます。
1.内縁の妻との間に子供がいる場合
内縁の妻とは、法律上で婚姻関係にない妻のことで、内縁の妻は法定相続人になることはできませが、内縁の妻との間に子供がいて、尚且つ認知されていれば、その子は法定相続人になることができます。
しかし、連れ子は親子関係がないので、法定相続人になることができません。
2.養子縁組をおこなった場合
養子縁組とは、親子関係ではなかった者が、法律上で親子関係になることです。養子になると、遺産を相続することが可能です。
養子縁組には、特別養子縁組と普通養子縁組の2つの種類があります。
3.法定相続人が生死不明の場合
法定相続人になっても、生死が不明な場合は、法律上死亡したとみなす効果を生じさせる「失踪宣告」という制度があります。
遺産の分配は法定相続人全員で話し合って決める必要があるため、この「失踪宣告」の手続きをすることで、死亡したものとして取り扱われます。
よって、残りの相続人で遺産を分けることになります。
4.相続欠格や相続人廃除の対象者がいる場合
相続欠格とは、被相続人に対して、死に至らせる行為をしたり、遺言の妨げや強迫をすることにより、相続する権利を失うことです。
相続人廃除とは、被相続人を虐待したり暴力を振るっていた場合に家庭裁判所へ請求することにより、相続人の権利を失うことです。
相続欠格と相続人廃除は、どちらも法定相続人になることができません。
5.法定相続人がいない場合
法定相続人がいない場合とは、上記のような相続欠格や相続人廃除、全員相続放棄した場合、そして第1順位から第3順位まで誰もいないなどの場合が該当します。このような状態を「相続人不存在」といいます。
では、相続する人が誰もいない場合は遺産はどうなるのでしょうか。結論から申しますと、最終的には国庫になります。
家庭裁判所が相続財産管理人を選定して、管理人が相続人捜索を公示しても、一定期間相続人の対象者が現れなければ、国庫に帰属することになります。
以上5つのパターンの時は注意が必要になります。
法定相続分の割合
相続する割合も民法で決まっており、以下の通りです。
相続人 | 相続割合 | 相続割合 |
配偶者と子供 | 配偶者:1/2 | 子供:1/2(全員で) |
配偶者と直系尊属(父母や祖父母) | 配偶者:2/3 | 直系尊属:1/3(全員で) |
配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者:3/4 | 兄弟姉妹:1/4(全員で) |
子供、直系尊属、兄弟姉妹で2人以上いる場合は、原則として均等に配分します。
なお、民法に定める法定相続分は、相続人の間で遺産分割の合意ができなかった時の割合であり、必ずしもこの相続分で遺産の分割をしなければならない訳ではありません。
では、「配偶者」がいない場合はどうでしょうか。
配偶者がいない場合は、相続人の数で均等割りをしていきます。
例)法定相続人が「配偶者」不在、「子供」2人の場合
配偶者はいないので、「子供」2人では相続分は、1/2ずつになります。
「子供」が3人の場合は、1/3ずつになります。
このようにして、誰がどのくらい相続するのかは、定められています。
相続順位の基本ルール
では、相続するにあたって、相続順位が決められていますので、基本的なルールについて解説していきます。
相続順位とは、相続人となることができる優先順位のことです。
配偶者以外の相続人では誰が優先的に相続人になれるか民法で定められており、相続順位が決まっています。
上記でも説明しましたが、法定相続人には、「配偶者」と「血族」しかなれません。
そして、「配偶者」がいれば、必ず法定相続人になります。
その他の「血族」についての相続順位が以下の通りになります。
相続順位 | 相続人 | 補足 |
第1順位 | 死亡した人の子供 | *子供が既に死亡している場合はその子供の直系卑属(子供や孫)*子供も孫もいる時は、死亡した人に近い世代である子供が優先 |
第2順位 | 死亡した人の直系尊属(父母や祖父母) | *父母も祖父母もいる時は、死亡した人に近い世代である父母の方が優先*第2順位の人は、第1順位の人がいない場合、相続人になります |
第3順位 | 死亡した人の兄弟姉妹 | *兄弟姉妹が既に死亡している時は、その人の子供が相続人になります*第3順位の人は、第1順位、第2順位の人もいない場合、相続人になります |
このようにして、配偶者以外は民法で定められた順位で相続することになります。
相続順位の応用ルール
1.代襲相続について
相続順位については上記のような基本ルールの他にもいろいろなケースが考えられます。それぞれについてみていきます。
代襲相続とは、被相続人の遺産を相続する際、民法上の法定相続人とされる人が亡くなっている場合があります。こうした亡くなった相続人に代わって、その相続人である「子」(被相続人にとっては孫)が代わって相続したり、兄弟姉妹が死亡していれば代わって甥や姪が相続することを指します。
2.相続放棄した場合
相続を放棄すると次の順位で相続人に相続権が移ります。
例えば、子供が1人の場合
「子供」が相続を放棄した場合は、いなかったとみなされる為、第1順位の子供に代わり第2順位以降の者が相続人となります。
相続放棄とは、最初からいなかったとして扱われるため、放棄した「子供」の子(孫)へ代襲相続をすることは出来ません。
子供が2人の場合で、1人だけが相続放棄をした時は、「残りの子供」が1人で全ての遺産を相続することになります。
第2順位の父母が相続放棄する場合は、同じ第2順位の祖父母などの、より親等の近い直系尊属が相続人となります。祖父母がいない場合は、第3順位の兄弟姉妹に移ることとなります。
第3順位の兄弟姉妹が相続を放棄した場合は、先程と同じく最初からいなかったとみなされる為、兄弟姉妹の子である甥や姪には代襲相続は発生しません。
しかし、もし兄弟姉妹が死亡している場合は、甥や姪が代襲相続することが出来ます。
甥や姪も相続放棄した場合は、誰も相続する人がいなくなることから、家庭裁判所へ預けることになり、国庫になる場合もあります。
このように自分が相続放棄することにより、他の親族に移ることから負債がある場合は背負うこともあるので慎重にしなければなりません。
ちなみに「配偶者」が相続放棄した場合は、相続順位には関係ないので他の誰かに相続権が移ることはありません。
また、法的な相続放棄ではなく遺産協議での遺産放棄をした場合は、法的な効力はないため、相続順位が移ることはありません。
3.胎児がいる場合
相続が発生した時点で、胎児が生まれている場合と、生まれていなかった場合でも、同じように扱うことができます。
相続人は配偶者と、胎児が第1順位の子供として扱われ、法定相続人となります。
ただし、死産である場合などは、相続人ではなかったとして扱われますので、法定相続人になるのは、配偶者と別の順位の人が相続人になります。
よって、生まれてくるまでは、誰が相続人になるのか分からないため、生まれてから遺産分割協議に入るのが一般的です。
4.前妻(前夫)との子がいる場合
亡くなった人が、離婚や再婚をしていて、以前に婚姻関係のあった人との間に子供がいたが、現在は別の人と再婚している場合について説明します。
この場合は、子供の立場からみると、自分の実の親が亡くなったのであれば、再婚に関係なく相続人となる権利が生じます。
つまり、親の離婚・再婚によって相続権を失うことはないということです。
しかし、子供が親の再婚後に特別養子縁組を行っている場合などは、亡くなったのが実の親であろうと、自分は特別養子縁組になったので相続関係が断ち切られ、相続権は無くなります。
もし、亡くなった人が特別養子縁組になった子に相続権を与えたい場合は、遺言により指定すれば、相続権の権利が与えられます。
相続順位のパターン
相続順位は先程説明した通り、法的に相続人になれる人が決まっていますが、同じ順位の人が複数いたり、遺言書の存在がある場合などは少し複雑になってきます。
まずは、通常よくあり得る場合から、少し複雑な関係の相続まで詳しく説明していきます。
また、実際に遺産の金額を設定して、それぞれのパターンで誰がどのくらい貰えるのかを計算してみたいと思います。
4つの分類と通常パターン
相続人について分類すると次の4つのパターンに分けることができます。
➀配偶者は必ず相続人となる
②配偶者以外の相続人には順位がある
③同じ順位の人は全員が相続人となり、相続割合は平等である
④遺言がある場合には遺言内容が優先する
それぞれ詳しく解説していきます。
➀配偶者は必ず相続人となる
1つ目は上述したように、民法で配偶者は必ず相続人になると決まっています。
法律上の夫婦のみに適用し、内縁関係にあたる関係では相続人にはなりません。しかし、遺言によりその旨の記載があれば、内縁関係でも相続することができます。
②配偶者以外の相続人には順位がある
2つ目はこちらも上述したように、配偶者以外の血族は法定相続人になることができ、相続順位により、誰が優先的に相続人になれるのか決まっています。
言い換えると、上の順位の人がいる場合は、下の順位の人は相続人にならないと決まっています。
法定相続人の順位は下記の通りです。
第1順位:死亡した人の子供
第2順位:死亡した人の直系尊属(父母や祖父母)
第3順位:死亡した人の兄弟姉妹
例えば以下の家族構成だった場合についてみていきます。
例1)夫、妻、子供、夫の父親の家族だった場合
夫が亡くなると、法定相続人になるのは、「妻」と「子供」の2人です。「子供」は第1順位である為に、「妻」である配偶者と共に、相続人となります。
「夫の父親」は、家族ではありますが、相続順位が第2順位となる為、第1順位の「子供」がいる場合は、相続人になることはできません。
例2)夫、妻、夫の弟、夫の母の家族だった場合
夫が亡くなると、法定相続人になるのは、「妻」と「夫の母」の2人です。第1順位の子供がいない為、第2順位の「夫の母」が配偶者と共に、相続人となります。
「夫の弟」は第3順位の為、第2順位の「夫の母」がいる場合は、相続人になることはできません。
③同じ順位の人は全員が相続人となり、相続割合は平等である
3つ目は相続順位により、同じ順位で法定相続人になった人が複数人いる場合は、全員が相続人になります。遺産は、平等に分けられます。
法定相続分は相続人の構成によって、次のようになります。
配偶者と子供の場合:配偶者1/2 子供1/2
配偶者と両親の場合:配偶者2/3 直系尊属1/3
配偶者と兄弟姉妹の場合:配偶者3/4 兄弟姉妹1/4
例)法定相続人が「配偶者」と「子供」2人の場合
上記の通り、配偶者:1/2、子供:1/2(全員で)のため、
「配偶者」そのまま:1/2
「子供1人目」:1/4
「子供2人目」:1/4
となります。子供は全員で1/2なので、2人いれば1/4ずつになります。
もし、3人いれば1人あたり1/3ずつとなります。
④遺言がある場合には遺言内容が優先する
4つ目は、遺言が残された場合です。上記の3つは遺言がない前提で、民法上の法定相続人でした。遺言が残された場合は、遺言の内容を優先して相続人を決めることになります。
例えば、亡くなった夫に妻と子供がいたとしても、遺言上で別の人を指定していれば、その指定された人が相続人になります。
その他に、先程説明した、内縁関係もこれにあたり、遺言に遺されていれば、相続人となります。
ただし、亡くなった人と近しい関係である人(配偶者、子供、父母など)には「遺留分」という権利が認められていますので、一定割合の遺産を受け取ることができます。
「遺留分」は最低限の金額を相続できる権利のことです。
なので、例えば、遺言書に「長男には相続させない」と記載されていても、「遺留分」の権利は主張することができるのです。
遺留分の割合は、「法定相続分の半分」となります。
では、次に民法で定められている相続順位について、それぞれ相続人となった場合を説明していきます。
子供が相続人になるパターン
被相続者がなくなると、第1順位の子供などが相続人になります。子供などが法定相続人となる場合は、以下の2通りがあります。
1.配偶者と子供がいる場合
配偶者がいる場合は、配偶者と子供の両方が法定相続人になるケースです。
例)遺産が300万円あり、配偶者と子供が3人で相続する場合
配偶者と子供の相続する割合は、配偶者1/2 子供1/2です。
配偶者:300万円×1/2=150万円
子供:300万円×1/2=150万円
全員で1/2になるため、子供が3人いる場合は、子供1人あたり「1/3」になります。
子供1人あたり:150万円×1/3=50万円/人
よって、配偶者:150万円 子供A 50万円、子供B50万円、子供 C50万円をそれぞれ相続することとなります。
2.配偶者が不在の場合
配偶者が死亡などによりいない場合は、子供のみが法定相続人になります。全ての遺産を子供のみで受け継ぐことになります。もし、複数人いるのなら、複数人で均等に分配します。(代襲相続人が複数いる場合は、人数で均等に分配しないこともあります。)
例)遺産が300万円あり、子供3人だけで相続する場合
配偶者がいない為、子供3人で300万円の遺産を均等に分けることになるので、
子供1人あたり:300万円×1/3=100万円/人
よって、子供A 100万円、子供B 100万円、子供C 100万円をそれぞれ相続することとなります。
親世代が相続人になるパターン
第1順位の法定相続人が不在な時は、第2順位の親世代(父母または祖父母)の直系尊属に相続権が移ります。
こちらも、親世代が法定相続人となる場合は、以下の2通りあります。
1.配偶者と親世代がいる場合
配偶者と親世代(父母または祖父母)の両方がいる時は、両方が法定相続人になります。
例)遺産が300万円あり、配偶者と親の父母両方の合計3人で相続する場合
配偶者と直系尊属の親世代が相続する割合は、配偶者2/3 直系尊属(父母など)1/3です。
配偶者:300万円×2/3=200万円
親世代:300万円×1/3=100万円
父母両方いるため
親世代1人あたり:100万円×1/2=50万円/人
よって、配偶者:200万円 親世代:父50万円、母50万円をそれぞれ相続することとなります。
2.配偶者が不在の場合
配偶者が死亡などによりいない場合は、親世代のみが法定相続人になります。全ての遺産を親世代のみで受け継ぐことになります。父、母ともにいる場合は、2人で均等に分配します。
例)遺産300万円あり、親世代(父、母)両方だけで相続する場合
配偶者がいない為、父、母2人で300万円の遺産を均等に分けることになるので、
親世代1人あたり:300万円×1/2=150万円/人
よって、父150万円、母150万円をそれぞれ相続することとなります。
兄弟姉妹が相続人になるパターン
第1順位、第2順位共に法定相続人が不在の時は、第3順位の兄弟姉妹に相続権が移ります。
こちらも、兄弟姉妹が法定相続人となる場合は、以下の2通りあります。
1.配偶者と兄弟姉妹がいる場合
配偶者と兄弟姉妹がいる時は、両方が法定相続人になります。
例)遺産が300万円あり、配偶者と弟1人、妹1人の合計3人で相続する場合
配偶者と兄弟姉妹が相続する割合は、配偶者3/4 兄弟姉妹1/4です。
配偶者:300万円×3/4=225万円
兄弟姉妹:300万円×1/4=75万円
弟1人と妹1人の2人いるため
1人あたり:75万円×1/2=37.5万円/人
よって、配偶者:225万円 弟37.5万円、妹37.5万円をそれぞれ相続することとなります。
2.配偶者が不在の場合
配偶者が死亡などによりいない場合は、兄弟姉妹のみが法定相続人になります。全ての遺産を兄弟姉妹のみで受け継ぐことになります。兄弟姉妹が複数人いる場合は、均等に分配します。
例)遺産300万円あり、弟1人、妹1人の2人だけで相続する場合
配偶者がいない為、弟と妹の2人で300万円の遺産を均等に分けることになるので、
1人あたり:300万円×1/2=150万円/人
よって、弟150万円、妹150万円をそれぞれ相続することとなります。
具体的なパターン
配偶者と離縁・死亡している場合
相続発生時に、配偶者が死亡している場合は、第1順位である子供が遺産の全てを相続することになります。その子供が亡くなっている場合は、孫へと代襲相続が生じます。
では、配偶者と離縁している場合は前配偶者は法定相続人になれるのでしょうか?
配偶者が法定相続人になれるのは以下の時です。
現在、婚姻関係にある
離婚後、同じ相手と再婚が成立し、婚姻関係が続いている
別居及び離婚調停中(未成立)
離婚が成立していたり、恋人関係・事実婚関係では法定相続人には該当しません。
要は、法的に婚姻関係にあるのかが重要になります。
離婚後、再度婚姻関係を結ぶ場合は法定相続人として該当します。しかし、法的に婚姻関係が成立している場合のみです。
離婚調停中で離婚する意思がたとえ固まっていたとしても、実際には法的に婚姻関係であれば、相続人になれる権利があります。
その為、法的に婚姻関係がない場合は、被相続人の遺産はそれ以外の人で分けることになります。その場合も、第1順位である子供がいれば全ての遺産を受け継ぐことになります。
婚姻外の嫡出子や非嫡出子がいる場合
婚姻外とは、法的な婚姻関係にないことで、その男女の間に生まれた子供のことを「非嫡出子」と言います。
逆に「嫡出子」とは法的な婚姻関係の元に生まれた子供です。
婚姻外の子供(非嫡出子)は父親が認知するかによって親子関係が確定します。母親とは、出産した事実があれば親子関係となります。
非嫡出子を認知するには、市区町村で認知届を提出しなければなりません。
また、認知することは、亡くなる前に遺言書などでもできます。
では、非嫡出子も遺産を相続できるのか説明していきます。
結論から申しますと、父親の遺産は嫡出子と同様に認知されていれば、非嫡出子も相続をすることはできます。そして母親の遺産は必ず相続することができます。
では、非嫡出子の相続割合はどのくらいなのかですが、これも嫡出子同様に均等で計算され分配されます。
以前は、非嫡出子は、嫡出子の半分とされていましたが、法律での平等に違反していた為、民法改正により、嫡出子と同様の扱いとなりました。
例)遺産300万円あり、配偶者、嫡出子(被相続人子供)1人、婚姻外の非嫡出子1人(認知済)の場合
配偶者と子供の相続する割合は、配偶者1/2 子供1/2なので、
配偶者:300万円×1/2=150万円
子供は、嫡出子と非嫡出子の2人で1/2の割合で、平等に均等で分けることができるので、1人あたり1/4になります。
嫡出子:300万円×1/4=75万円
非嫡出子:300万円×1/4=75万円
よって、配偶者:150万円 嫡出子:75万円、非嫡出子:75万円相続することになります。
このように婚姻外の子(非嫡出子)がいる場合は、他の相続人は相続分が変わる為に注意が必要です。また、婚姻外がいることで、相続金額が減ることがある為、トラブルも起こりやすくなります。
代襲相続する場合(子供世代・親世代・兄弟姉妹の別に)
代襲相続とは、上記でも少し触れましたが、配偶者以外に本来相続人になるべき人が既に死亡している場合などに、その者の子が代わって相続することをいいます。
例1)被相続人の「子供の子」が代襲相続する場合
被相続人には子供が1人いるが、既に死亡している為、その「子」(被相続人からみると孫にあたる)が相続人となる場合です。
配偶者がいる場合は、配偶者と「子」(=孫)の2人が相続人になります。
配偶者がいない場合は、その「子」のみが相続人となります。
例2)被相続人の「兄弟姉妹の子」が代襲相続する場合
第1順位、第2順位がいないため第3順位の兄弟姉妹も既に死亡しているはその「子」が代わりに相続人となる場合です。(被相続人からみると甥や姪にあたる)
配偶者がいる場合は、配偶者と「兄弟姉妹の子」、他の兄弟姉妹が相続人になります。
配偶者がいない場合は、「兄弟姉妹の子」、他の兄弟姉妹が相続人となります。
では、代襲相続は実際にはどこまで生じるのかについて説明します。
4つのパターンに分けてそれぞれ説明していきます。
1.子供や孫などの直系卑属が相続人の場合
被相続人の第1順位である子供が死亡している場合は、その「子」(被相続人からみたら「孫」にあたる)が代わりに相続人になることは説明しましたが、もし、その孫も死亡していた場合は、その孫の子(被相続人からみると「ひ孫」にあたる)が相続人になります。
このように、被相続人の「子」のような直系卑属が相続人になる場合は、孫やひ孫のように代襲相続が起こるので、連続する限り続くことになります。
2.兄弟姉妹が相続人の場合
次に、第3順位である兄弟姉妹が死亡している場合は、その「子」(被相続人からみたら「甥や姪」にあたる)が代わりに相続人になることは、上記でも説明しました。ではもし、その甥や姪も死亡している場合は、どうでしょう。この場合はそれ以上代襲相続が続くことはありません。
すなわち、もし甥や姪が死亡していたとしても、その子(甥や姪の子)が相続人になることはできません。
このように、兄弟姉妹が相続人になった場合は、第1順位の子供のように連続して引き継ぐことはできず、代襲相続でも生じる範囲が違うので注意が必要です。
3.被相続人が養子縁組していた場合
では、被相続人が養子縁組をしていた場合はどうでしょうか。その養子が既に死亡しており、その「養子の子」が代襲相続できるのでしょうか。
そのような場合には、養子の子が生まれた時期により異なってきます。
養子縁組の日より前に、養子の子として生まれた場合は、血族関係は生じず、代襲相続は生じません。しかし、養子縁組の日よりも後に生まれた場合は、血族関係が生じる為、その子に代襲相続が起きます。
4.相続欠格、相続人廃除された場合
代襲相続が起こるのは、必ずしも相続人になった人が死亡した時とは限りません。
本来相続人になるはずの人が「相続欠格や相続人廃除」とされた場合にも代襲相続は生じます。その場合は相続人の権利はなくなりますが、相続欠格や廃除された人の「子」が代襲相続人になります。
このように、相続人が亡くなっていなくても、なんらかの理由で権利が無くなった人の子は相続人の地位を失うことはないので、相続人となることができるのです。
代襲相続人の相続分についてですが、本来相続人であった人の配分と同じとされています。代襲相続人が複数いる場合は、その配分を全員で均等に分けることになります。
例)「配偶者」と「子供A」と「子供B(死亡)の子2人」がいる場合
「配偶者は1/2」
子供は1/2ですが、「子供A」と「子供B」2人分の合わせて1/2の配分なので、1人あたりは1/4ずつになります。
よって、「子供Aは1/4」「子供Bも1/4」です。
しかし、子供Bは既に死亡している為、代襲相続が生じ「子供Bの子2人」が相続人となります。相続割合は、「子供B」は1/4なので、「子供Bの子」は2人いるため、1人あたり1/8ずつになります。
実際に計算してみると次の通りです。
例)遺産400万円を相続する場合
配偶者は1/2なので:400万円×1/2=200万円
子供Aは1/4なので:400万円×1/4=100万円
子供Bの子1人目(代襲相続)は1/8なので:400万円×1/8=50万円
子供Bの子2人目(代襲相続)も1/8なので:400万円×1/8=50万円 となります。
もし、代襲相続人と連絡が取れない場合は、遺産分割協議を相続人全員で行う必要がある為、家庭裁判所に不在者財産管理人選任の申し立てなどの手続きを速やかに行った方がよいでしょう。
相続順位の注意点
最後に、相続の順位を確定するにあたって注意しておかなければならないこと、また戸籍謄本はいつどのような時に必要になり、どこで取得できるのかなどを解説していきます。
そして、相続の資格がない場合はどのような人なのか、相続資格がなくなると、誰が相続人になるのかについても説明していきます。
法定相続人の確認
相続が発生すると、法定相続人を把握する必要があります。その為にいくつか確認しておくことを紹介していきます。
1.戸籍謄本の確認
誰が法定相続人になるのか確定させるにあたって、まずは被相続人の出生から死亡するまでの連続した戸籍謄本を確認しなければなりません。
なぜなら、元配偶者との子供や認知した子供も法定相続人になるので、戸籍謄本を取り寄せることで、別に子供がいるかどうかといったことも確認します。取得については下記に詳しく説明しています。
2.遺言書の確認
遺言書の存在があるのかないのかによって、その後、遺産協議を行うのかが決まってきます。遺言書は、相続でのトラブルを回避するメリットや、協議によりなかなかまとまらない、何年も会っていない親族とのトラブルなどを避けることが出来る一方、遺言書の内容によっては、法定相続人以外も相続できるので、しっかり把握しておく必要があります。
このようにまず戸籍や遺言書などを確認してから、民法上の法定相続人は誰が該当するのか確定する必要があります。戸籍謄本などを確認しなかった為、後から相続人の権利の該当者がいたという事態にならないようにすることが大事です。
戸籍謄本の取得
先程も触れましたが、被相続人が亡くなり、相続が開始したら、すぐにするべきこととして「相続人の調査と相続人の範囲の確定」です。この手続きを早い段階で進めておく必要があります。
法定相続人は、身内のことなのですぐに分かりそうですが、実は知らなかった認知している子などの存在が明らかになることもあります。
その為、戸籍謄本を取得して確認することで、初めて知りうる情報があるケースも少なくありません。
転籍や結婚などにより戸籍は変わりますので、出生時から亡くなるまでの全ての期間の戸籍謄本を取得することが必要になります。戸籍謄本の原本とコピー、どちらが必要になるかは手続きによって違ってきます。
原本が必要になる場合は、手続きの度に役所に出向くことにならないように、なるべく1回の請求で必要な枚数が揃うように事前に調べておくと良いでしょう。また、原本が必要な手続きでは返却されないことも多いので、戸籍謄本の使いまわしは出来ないと考えた方がよいでしょう。
相続手続きによっては、住民票なども必要ですが、住民票の場合は発行から3ヶ月以内など有効期限が設定されています。しかし、戸籍謄本の場合は、有効期限がありません。ですので、早めから準備しておくことは可能です。
戸籍謄本は、戸籍のある市町村で入手することができます。郵送や窓口でも申請できます。
このように、戸籍謄本を入手して相続人の調査を早いうちに進め、相続人の範囲を確定しておく必要があります。
相続資格がない場合
相続資格がない場合も注意が必要です。相続資格がなくなるということは、相続人ではなくなるということです。では、どういった人が相続資格がなくなるのでしょうか。相続人の範囲のところでも少し説明しましたが、相続の資格がない人は次のような2つの場合です。
➀相続欠格
②相続人廃除
この2つに該当する場合は、相続人の権利を失うことになります。よって、相続順位も別の方へ移ることになります。相続欠格と相続人廃除について詳しくみていきます。
➀相続欠格
相続欠格とは、特定の相続人が民法第891条所定の相続欠格事由に当てはまる場合に相続権を失わせる制度のことです。
以下の相続人の行動などにより、法律によって遺産を相続することができなくなります。
つまり、相続欠格に当てはまると相続人となることができません。
では、具体的に相続欠格に該当する人とはどんな人なのか説明します。
民法891条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたため、刑に処せられた者
被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りではない
詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
以上の5つに1つでも当てはまると「相続欠格」となると民法で定められています。それぞれについて解説していきます。
1.故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたため、刑に処せられた者
故意に殺そうとしたり殺害すれば、殺人罪・殺人未遂罪にあたり、刑を受けます。当然のごとく最も悪質性があるため相続欠格になります。
この場合の相続欠格は「故意」に行った場合です。過失致死のように「故意」でない場合や正当防衛の為、死に至らせてしまったケースは相続欠格には該当せず、相続を行うことが可能です。
また、あくまでも刑に処せられた場合ですので、執行猶予期間中や、満了した場合は相続欠格の事由には当てはまりません。
2.被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りではない
被相続人が殺害されたのを知りながら、告発・告訴をしなかった場合も悪質な行為と考えられるため、相続欠格になります。
しかし、例外として殺害されたのを知っていた人が子供や精神疾患な状態で、是非の弁別をすることができない場合は、判断能力に欠ける可能性がある為、相続欠格にはなりません。
3.詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
4.詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
詐欺や強迫を行い、被相続人の遺言を妨げたりした場合は相続欠格になります。
また、妨げるだけでなく、遺言の取消や変更をさせた場合も相続欠格になります。
これは、相続人が自分に有利になるような遺言書を作らせたり、不利な内容があれば、強迫して変更させた場合です。
5.相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
遺言書を偽造したり、破棄や隠したりした場合も相続欠格になります。
遺言書を無断で作成したり、被相続人が作成した遺言書の内容を変更したり、破り捨てて焼いたり、遺言書をどこかに隠す行為すべてが相続欠格に該当します。
以上5つのような行動に当てはまると「相続失格」になり、ただちに相続権を失います。
相続欠格は、被相続人本人の意思に関係なく、自動的に相続権を失うのが特徴です。そして、後から取り消すことが不可能なのも特徴の一つです。
②相続人廃除
相続欠格と同様に、相続人としての資格を失うのが「相続人廃除」です。被相続人の自らの意思によって行うことが、相続欠格と大きく違う点です。つまり、申し立てができるのは、被相続人本人のみです。
相続人廃除も民法第892条により制定されています。
民法第892条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
「遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。」
被相続人に対して、虐待したり、重大な侮辱を加えたり、その他の著しい非行があった場合、被相続人が家庭裁判所に請求することによって、相続権を奪うことができます。ただし、遺言によるものでも良いとされています。
上記の条文に書かれているように「遺留分を有する推定相続人」に対してしか、相続人を廃除することはできません。兄弟姉妹は遺留分がないため、廃除の対象にはなりません。
このように、「相続人の廃除」をすることで、相続人から除外されます。遺留分の請求権も失うことになります。遺留分とは最低限の財産を相続できる権利のことです。
例えば、遺言書に「2人の子供のうち、長女に全て相続させる」という希望を遺していたとしても、次女が相続廃除されていなければ、遺留分を受け取ることはできます。
しかし、実際のところ相続人廃除が認められるケースは多くはありません。
相続権は、相続人にとって大切な権利であり、簡単には奪ってよいものではない為、家庭裁判所では、厳正に審査が行われているからです。
そして、相続欠格ともう一つ違う点は、相続人廃除は取り消すことが可能ということです。相続人廃除は相続する権利を剥奪するくらい重い手続きなのですが、実は後から取り消すことも出来ます。
何らかの理由により、やっぱり相続させたいという気持ちがあれば、家庭裁判所に「廃除の審判の取消し」の審判を申し立てることが出来ます。
相続人廃除は、生存中でも死後の遺言のどちらでも手続きをすることが出来ます。
生存中であれば、本人自ら家庭裁判所への申し立てをすることになります。
遺言による廃除の場合は、遺言執行者や相続廃除をしたいという意思、具体的な理由をきちんと遺しておく必要があります。
もちろん、被相続人本人以外が誰かを廃除することはできないので注意が必要です。
そして、このような相続欠格や相続人廃除は相続人ではないものとし、相続財産は他の相続人に分配されます。
相続資格がないものに、子や孫などの直系卑属がいる場合は、代襲相続をすることになります。すなわち、相続欠格や相続人廃除は、相続において死亡したものとみなされているのと同様の扱いになります。
相続開始前にこのようなことが発覚した場合、その時点から相続の資格を失います。
相続開始後に発覚した場合は、相続開始時に遡って資格を失ってしまいます。
遺言での優先順位の変化
遺言は法定相続に優先するので、有効な遺言書が遺されていれば遺言書の内容に従って相続されるのが原則です。たとえば、遺言書に「配偶者に全部相続させる」と書いてあれば、子どもや親、兄弟がいても配偶者がすべての遺産を相続できます。
すなわち、遺言書を作成すると、遺言者の希望によって相続の優先順位や相続分を変更できます。これは相続人たちが遺産分割協議をして相続方法を定める必要がないので、相続トラブルを避けやすくなるメリットがあります。
法定相続のとおりに相続させたくない方、将来の相続トラブルが心配な方は、ぜひ遺言書を作成しておきましょう。
まとめ
遺産相続の相続順位と法定相続分について説明してきましたが、相続順位は、民法により血族の順位が決まっていること、また配偶者は必ず相続人になれることが基本のルールです。
第1順位:死亡した人の子供
第2順位:死亡した人の直系尊属(父母や祖父母)
第3順位:死亡した人の兄弟姉妹
「配偶者」は必ず法定相続人
また、法定相続分についても割合が定められています。
配偶者と子供の場合:配偶者1/2 子供1/2
配偶者と両親の場合:配偶者2/3 直系尊属1/3
配偶者と兄弟姉妹の場合:配偶者3/4 兄弟姉妹1/4
相続資格がない場合や養子、離婚など様々なケースが出てくると思いますが、自分が相続の対象になるのか、またどのくらいの割合を相続するのかをしっかり理解し把握しておく必要があります。