キャピタルゲインとは?インカムゲインとの違い、M&Aとの関係、税金を解説

会計士 山田武弥

有限責任監査法人トーマツ入所。金融業及び卸売業を中心とした各種業務の法定監査業務に携わる。 その後、大手税理士法人及びコンサルティング会社にて事業承継・事業再生・法人顧問業務に従事。 組織再編税制を活用した事業承継スキームの構築や株価対策、事業再生計画の立案やその後のモニタリング及び金融機関対応等に豊富な経験を有する。 山田武弥公認会計士・税理士事務所として独立後、株式会社M&A DXに参画し、現在に至る。

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保有資産を活用して利益を得るには、「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」という性質の異なる2種類の手法がありますが、会社の経営戦略を検討する際には重要な要素となります。そこで、本稿では「キャピタルゲイン」にフォーカスして、インカムゲインとの違いやメリット・デメリット、さらにはM&Aとの関係やM&Aのスキームによる税金(税率)の違い、節税対策などについて分かりやすく解説します。

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キャピタルゲインとは?

英語のCapitalには「資本」「資産」、Gainには「得る」「儲ける」という意味があるように、キャピタルゲイン(Capital Gain)とは、有価証券や不動産等の保有資産を売却することで得られる利益のことです。資産を購入した後に価格が上昇し購入価格よりも高額で売却できた場合に生じるのがキャピタルゲインで、例え資産の価格が向上しても保有したままではキャピタルゲインは得られません。また、キャピタルゲインとは逆に、資産を購入した後に価格が低下し購入価格よりも低い価格で資産を売却した場合に生じる損失を「キャピタルロス」と言います。

キャピタルゲインとインカムゲインの違い

前述したように、キャピタルゲインは保有している資産を売却して得た売買差益のことですが、これに対しインカムゲインは保有している資産から得られる利益のことです。具体的には、株式の配当金、銀行預金の利息、不動産の賃貸収入などが該当します。

キャピタルゲインとインカムゲインの主な違いを整理すると次の様になります。

 キャピタルゲインインカムゲイン
主な資産株式、FX、不動産、暗号資産等株式、不動産、銀行預金等
発生タイミング資産を売却した時に発生する継続的に発生する
利益の大きさ短期的に大きな利益が得られる可能性がある短期的に大きな利益の獲得は見込めない
リスクハイリスクの傾向があるローリスクの傾向がある
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キャピタルゲインの具体的な事例

キャピタルゲインは、投資手法によっていくつかの種類に分類されますが、具体的な事例として「株式投資」「FX投資」「不動産投資」「暗号資産投資」の特徴やキャピタルゲインが得られるタイミングなどを解説します。

株式投資によるキャピタルゲイン

株式投資は、株式市場において企業の成長や収益の向上等によって株価が上昇することを期待し株式を購入するものです。株式投資の利益は企業が株主に支払う配当金(インカムゲイン)と、株価が上昇した後に売却して得る売買差益(キャピタルゲイン)がありますが、株価は市場の需給や経済情勢によって変動するため大きなリターンを得られる可能性もありますが、株価が下落してキャピタルロスとなるリスクがあります。

FX投資によるキャピタルゲイン

FX(Foreign Exchange)投資は、世界最大の金融市場の1つで、外国為替市場で異なる通貨間の相対的な価値の上昇や下落を予測し利益を追求するものです。例えば、ドル/円の場合では、将来のドル高を予測し円で購入した後、実際にドルの価格が上昇すれば売却し売買差益(キャピタルゲイン)を得ることができます。しかし、FX市場は短期的な価格変動が頻繁に起こるため、株式投資と同様にキャピタルロスとなる可能性もあります。

不動産投資によるキャピタルゲイン

不動産投資とは、不動産の所有または売買によって利益を得る投資手法です。例えば、住居用の賃貸物件や商業用の不動産を購入し貸し出すことで得る賃料収入(インカムゲイン)や、不動産の価格が上昇した後に売却して得る売買差益(キャピタルゲイン)などがあります。不動産投資には資金調達、需要や都市計画などの調査、関係法令のチェック、不動産の適正管理などが求められ、一般的には長期的な視点で行う投資形態と言えます。

暗号資産投資によるキャピタルゲイン

暗号資産投資とは、ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨(暗号資産)を売買することで利益を得る投資手法です。例えば、1BTC(ビットコイン)を200万円で購入し400万円に値上した後に売却すると、手数料や関連費用を考慮しなければ200万円のキャピタルゲインが得られます。ただし、暗号資産は値動きが激しいためハイリスク・ハイリターン投資の1つになります。

創業者利益もキャピタルゲインの一種

創業者利益とは、会社の創業者が創業した会社の株式を譲渡して得た利益のことで、広義ではキャピタルゲインの一種ですが、厳密には、すでに存在している会社を売買して得るキャピタルゲインとは異なります。具体的には、創業者は自身が用意した「元手(資本)」と株主からの「出資(株式資本)」によって会社を立ち上げ企業価値を高めるので、売却額(株価)から「資本+株式資本」を差し引いた額が創業者利益となります。

関連記事:「創業者利益を得る最大の目的とは?概要や注意すべきポイントを解説!

キャピタルゲインとM&Aの関係

キャピタルゲインは、M&Aにおける株式譲渡や事業譲渡によっても発生しますが、株主が得る場合と会社が得る場合があります。

株式譲渡によるキャピタルゲイン

M&Aにおける株式譲渡は、株主が保有する対象会社の株式を譲渡することで、経営権(支配権)を譲受企業に承継する手法で、事業譲渡とともによく選択されるスキームです。創業者が株式譲渡を行う場合には「創業者利益」、株主が買収した会社の株式を譲渡する場合には「キャピタルゲイン」となり、創業した会社や買収した会社の企業価値を高めてから株式譲渡すると大きなキャピタルゲインが得られます。また、株式を譲渡する場合、個人と法人では税率や課税方式が異なるので注意が必要です。

事業譲渡によるキャピタルゲイン

M&Aにおける事業譲渡は、自社の事業の全部又は一部を第三者に譲渡することで、株式譲渡などと比べ譲受企業が事業に関する資産や負債を選択できるメリットがありますが、手続きが複雑で時間がかかるなどのデメリットもあります。事業譲渡によるキャピタルゲインは、譲渡価格から資産及び負債の合計を差し引いた金額となり、税金は株主ではなく事業を譲渡した企業に課せられます。

企業買収によるキャピタルゲイン

買収した企業が、買収後に成長しその企業の株価や企業価値が向上した場合にも、潜在的なキャピタルゲインが生じます。しかし、キャピタルゲインは資産などの売却によって得られる売買差益なので、株価や企業価値の向上はキャピタルゲインをもたらす要素の一つとなり得ますが、それ自体がキャピタルゲインではなく、実際に対象企業を売却した段階でキャピタルゲインは生じます。

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キャピタルゲインのメリット

キャピタルゲインのメリットは、キャピタルゲインを獲得するまでの時間の短さと、獲得できる金額の大きさにあります。

短期間で利益を獲得できる可能性がある

キャピタルゲインは資産の売却で得た売買差益のことですから、株式を購入した後値上がりを待って売却する際に、株価の値動きが早いほど短期間でキャピタルゲインを獲得することが可能になります。また、M&Aでベンチャー企業などを買収した場合でも、その企業の事業活動を通じて利益を獲得するのに比べて、技術開発などで企業価値を高め売却すれば黒字化していなくても短期間でキャピタルゲインの獲得が可能になります。

多額の利益を獲得できる可能性がある

キャピタルゲインはインカムゲインと比べて、資産の値動きによって大きな売買差益を獲得できる可能性があります。かつてのビットコインのように数年で100万倍以上になるケースは稀ですが、現在でもAIや半導体のように成長期待が大きい分野の株式は大きな値上がりを見せており、銘柄と投資時期によっては膨大なキャピタルゲインが得られる可能性があります。

キャピタルゲインのデメリット

キャピタルゲインのデメリットは、投資に失敗した場合の多額の損失(キャピタルロス)リスクと、資産を失うことから継続的な利益が得られない点にあります。

多額の損失を被るリスクがある

キャピタルゲインは、資産の値上がりによって大きなリターンを獲得できる反面、資産が大きく値下がりした場合には多額の損失を被るリスクがあります。M&Aの場合でも、買収した会社が業績不振に陥り、最悪の場合には倒産する可能性もゼロではありません。このように、キャピタルゲインには大きな利益が得られる可能性とともに、大きな損失を被るリスクがある点がデメリットの一つになります。

資産を失いが減少し継続的な利益取得ができない

キャピタルゲインには、資産を売却して売買差益を獲得する引換えに保有していた資産を失うため、インカムゲインのように資産を活用して継続的な利益を得ることができなくなるデメリットがあります。

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キャピタルゲインの算出方法

ここまで、キャピタルゲインは保有資産の売買差益と説明してきましたが、厳密には次の計算式で算出します。

キャピタルゲイン = 売買差益 − 税金
=【売却価格 −(購入価格 + 手数料等)】− 税金
=【売却価格 −(購入価格 + 手数料等)】−(売買差益 × 税率)

資産の売却には、手数料等や売買差益にかかる税金も発生するため、売買差益からそれらを差引いた金額がキャピタルゲインとなります。資産の取得に要した経費などは購入価格(原価)に算入されます。また、キャピタルロスとなった場合には上記計算式の税金は0となります。

キャピタルゲインに対する税金

M&Aにおけるキャピタルゲインは、主に不動産、株式、不動産以外の課税資産に分類することができ、それぞれに対する課税方式や税率についてのポイントは以下の通りです。

投資に対する税金

投資資産の売却によって得た譲渡所得に対する税金の扱いは、個人と法人では異なります。個人の場合、株式・FX・不動産の譲渡所得は給与などの所得とは分けて課税(申告分離課税)され、長期保有の不動産に対しては次のような軽減税率があります。

区分保有期間税率
長期譲渡所得5年超所得税15%+復興特別所得税0.315%(※)+住民税5%
合計 20.315%
短期譲渡所得5年以下所得税30%+復興特別所得税0.63%(※)+住民税9%
合計 39.630%

2013年〜2037年は、所得税率に2.1%を乗じた復興特別所得税が加算されます。

暗号資産(仮想通貨)の取引で獲得した利益は雑所得に分類され、給与所得などと合計した金額に課税(総合課税)されるので、金額が大きければ累進課税によって最大約55%(住民税を含む)の税率になる点は注意が必要です。

法人の場合は、資産の種類に関わらず譲渡所得は本業の収益と合計した金額に対して課税(総合課税)され、法人の種類、資本金額、年間所得金額、登記している地方自治体などで各種税金の税率が変化します。また、不動産の譲渡所得の場合には購入価格から減価償却費を差し引いた金額(簿価)を用いるところが個人とは大きく異なります。

株式譲渡に対する税金

M&Aにおける株式譲渡に対する税金も前項で解説したように、創業者などの個人と法人では扱いが異なります。また、土地・有価証券・債権等は非課税資産に該当するので株式譲渡に対して消費税は課せられません。

事業譲渡に対する税金

M&Aにおける事業譲渡の場合、株主ではなく事業を譲渡した法人に対して税金が課せられます。また、株式譲渡には消費税は課せられませんが、事業譲渡の場合には法人税・事業税・地方法人税・法人住民税以外に、譲渡対象に含まれる課税資産(無形固定資産、土地を除く有形固定資産、棚卸資産、営業権等)に対して消費税が課せられるので、M&Aのスキームによって税金の負担額が変わる点にも注意が必要です。また、課税資産の譲渡所得の計算には不動産と同様に減価償却費を差し引いた簿価が用いられます。

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キャピタルゲインの節税対策

株式の場合には、購入した株式が値上がりし含み益が出ていても売却しなければ課税されないため、他の株式で損失が出たときに合わせて売却することで利益と損失が相殺(利益通算)され税金を減らすことができます。同様に法人の場合には、総合課税法方式なのでキャピタルゲインと事業などの損失と利益通算することによって課税対象額を軽減することができます。

個人が不動産を売却する場合には、軽減税率の適用を受けるために5年経過後に売却することも節税対策の1つです。また、キャピタルロスが生じた場合、確定申告をしておくと損失額の繰越控除が可能になるので翌年以降の節税対策となります。この他に、一定の要件を満たすベンチャー企業に投資した個人に対しては、キャピタルゲインの節税に有効な税制上の優遇措置(エンジェル税制)があります。

エンジェル税制

まとめ

ここまで、キャピタルゲインの意味、インカムゲインとの違い、具体的な事例、M&Aとの関係、メリット・デメリット、算出方法、M&Aのスキームによる税金(税率)の違い、節税対策などについて解説してきました。M&Aによって得るキャピタルゲインは大きな金額が予想されるので、キャピタルゲインだけに注目するのではなく、キャピタルロスのリスクやM&Aのスキームによる税金の違いなどを総合的に判断しなければなりません。失敗を避けるためには、自社だけで判断するのではなく専門知識や経験が豊富な専門家のアドバイスを受けながら進めることをおすすめします。

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