専用Eコマース(BtoC)業界の特徴
まずは専用Eコマース(BtoC)業界の特徴から解説していきましょう。この業界は他の業界とは異なり、様々な産業が関連していると言えます。主にIT産業に分類できますが、様々な業界に属している企業がEコマースを利用することで、商品の販売を楽に行えるということもあり、多くの産業・企業がEコマースを活用しているのです。
専用Eコマース業界は3つに分類することができます。1つは企業や店舗から消費者に商品を販売するBtoC、企業や店舗で作った商品を違う企業・店舗に販売するBtoB、そして消費者同士で売買取引をするCtoCです。今回取り上げる業界はBtoCになるので、有名なEコマース業者を挙げてみるとZOZOやオイシックス、シュッピンなどになります。
専用Eコマース(BtoC)業界の市場規模がどれくらい上がっているのかと言うと、2010年には既に約7兆円を超えていました。すべての商取引市場規模に対するEC市場規模の割合を示すEC化率は低く2.84%であるにも関わらず、多くの人が利用していることが分かったのです。
そこからどんどん利用者が増え始めてきて、2018年度には市場規模が約17兆、EC化率は6.22%まで上昇しています。年間1兆円以上の規模で成長しているので、恐らく将来的にもさらなる市場規模の拡大が期待できるでしょう。
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【専用Eコマース(BtoC)業界が今後も市場を拡大させていく理由】
年間1兆円ベースで市場規模が拡大している専用Eコマース(BtoC)業界ですが、なぜ市場規模は年々拡大し、将来的にも市場規模はさらに拡大する可能性を秘めているのでしょうか?理由として挙げられるのは以下の2点です。
・スマートフォンが普及し、ECサイトの利用が一般的となってきた
日本では90年代後半から携帯電話(フィーチャーフォン)が使用され始め、docomoがiモードを提供したことによって電話からメールを送ったり、Webサイトが見られるようになったりしました。2008年頃になるとソフトバンクからiPhoneが発売されるようになります。この頃はまだ「スマートフォン」という名称すらありませんでしたが、じわじわと人気を集めていき、2011年にdocomoから「スマートフォン」という名前でリリースされたことがきっかけで多くの人がスマートフォンを利用するようになりました。
スマートフォンではパソコンとほとんど変わらない高画質で様々なWebサイトを見ることができます。スマートフォンからの閲覧者が増えたことで専用Eコマース(BtoC)業者はスマートフォン専用サイトやアプリをリリースするようになりました。これがきっかけとなり、スマートフォンから簡単に物が買える時代へと変わってきたのです。
スマートフォンを経由して商品を購入する市場規模は、年間5,000億円~6,000億円増加しています。スマートフォン比率も同じように推移しており、多くの消費者がスマートフォンからEコマースサイトを利用していることが分かります。
・国内外の大手企業が業界を牽引
もう1つの理由は、国内外の大手企業が専用Eコマース(BtoC)業界を牽引していることが挙げられます。例えば様々な商品を取り扱うAmazonは海外で誕生した企業で、日本にも拠点が設けられています。
90年代からECモールの運営を行っていた楽天も、大手のIT企業でECサイトの楽天市場を運営しています。
これらを活用したことがある方は多いのではないでしょうか?このように、専用Eコマース(BtoC)業界には国内外の大手企業が存在し、それぞれで市場規模の拡大を図っているため、将来的に市場規模は拡大するのではないかと考えられます。
専用Eコマース(BtoC)業界のM&A傾向
将来的にも市場規模の拡大が期待できる専用Eコマース(BtoC)業界ですが、M&Aは実施されているのでしょうか?ここからは業界のM&A傾向について解説していきましょう。
まず近年の専用Eコマース業界には、これまで店舗経営を行ってきた企業が参入し始めるようになってきました。店舗を経営するためにはコストがかなり掛かってきてしまいますが、Eコマースに参入すれば店舗経営のコストを抑えて全国の消費者に商品を届けることができます。
ただ、Eコマースサイトを作成・運営する場合、それなりの技術や知識は必要です。元々専用Eコマースサイトを運営していた会社をM&Aで買収すれば、買い手側の企業は自社の商品を売り手側が運営しているサイトを使って販売できます。
また、最近では「越境EC」が注目されてきています。越境ECとは日本で作った商品を海外の消費者に向けて販売するサイトなどを指します。
MADE IN JAPANの商品は品質が良いと海外の人からも人気を集めています。以前は中国に向けた越境ECが多く見られましたが、最近だと特に中国に限らず世界各国に向けて商品を販売するサイトは多いようです。
これまでEコマースを運営してきた企業でも越境ECのノウハウや技術、販売経路の確保は重要となります。これらの理由からEコマースを運営してきた企業が越境ECを運営していた企業を買収し、子会社化する傾向が多くなってきています。
専用Eコマース(BtoC)業界のM&A事例
専用Eコマース(BtoC)業界のM&A事例は多岐にわたります。その中からいくつか成功事例をご紹介していきましょう。
株式会社エディオンとフォーレストのM&A事例
家電量販店を運営しているエディオンでは、2017年に事務用品・日用品を中心に取り扱うEコマースを運営するフォーレストのM&Aに成功しました。今回のM&AでフォーレストのEコマース運営に関するノウハウがエディオンに吸収される形となります。
エディオンでは2015年の中期経営計画の中でEコマース事業に力を入れていく方針を固めています。フォーレストを買収することでさらなる事業強化を図ろうと考えていたことは明らかです。
京王百貨店とセレクチュアーのM&A事例
料理レシピ投稿サイトを運営するクックパッドは、子会社で通販サイト・アンジェを運営していたセレクチュアーの全株式を京王百貨店に売却することを発表しました。このM&Aによってセレクチュアーは京王百貨店の完全子会社となります。
京王百貨店は全国各地で百貨店運営を行っていますが、将来的には小型サテライト事業や婦人服アパレル事業の展開を考えていました。中期経営計画では客層と販路それぞれの拡大を営業方針として掲げており、今回のM&Aでは営業方針に従った形で行われたものと考えられます。
クルーズ株式会社とCandleのM&A事例
ファッション通販サイトのSHOPLISTを運営するクルーズは、2016年にWebメディアの運営などを行っていたCandleとM&Aを成立させました。Candleでは様々なキュレーションメディアや動画メディアを運営しており、中でも月間ユニーク訪問者数を突破したファッションキュレーションメディア・MARBLEを運営していることでも知られています。
クルーズは元々ゲーム事業をメインに展開していましたが、ゲームからEコマース事業へと変革していき、今ではSHOPLISTを含むコマース事業を担っています。CandleとM&Aを成立させたのは、SHOPLISTをメインにコマース事業のさらなる飛躍を目指すためだと考えられます。
専用Eコマース(BtoC)業界のM&Aを行う目的
専用Eコマース(BtoC)業界でM&Aが行われるのには売り手側と買い手側、それぞれに違う目的を持っています。どのような目的があるのかご紹介していきましょう。
【売り手側がM&Aを行う目的】
・投資資金を回収できる
売り手側の目的としてまず挙げられるのは、投資資金を回収できるという点です。ECサイトやアプリというのは開発までに手間と資金が掛かってきます。
開発が完了し後は運営するだけになればそれほど資金は掛からないのですが、開発に掛けていた投資資金を回収するまでには時間が掛かってしまいます。M&Aならサイトの将来的な価値・展望も見据えた上で開発に掛かった投資資金を素早く回収できるので、売り手側のメリットとなります。
・サイトやアプリの開発・運営に注力できる
いくら良質なECサイトやアプリが開発できても、会社経営が上手く行かなければ閉鎖に追いやられてしまう場合があります。中にはサイト・アプリの開発自体は得意だが、経営に関しては得意でないというオーナーも存在します。ECサイト・アプリの開発は実際個人でも可能なので、経営に慣れていない方は多いです。
事業は続けていきたいものの、経営は他の企業に譲渡したいという場合にM&Aはメリットになります。また、会社を売却すると創業者利益が得られる可能性もあります。得た資金を使って新しい事業を始められるでしょう。
・事業承継・後継者問題を解決できる
現在、多くの業界で事業承継や後継者問題に悩んでいる企業は多いです。専用Eコマース(BtoC)業界は比較的新しい業界なので、事業承継や後継者問題に悩んでいる企業は少ないかと思いますが、例えば老舗のIT企業でEコマースを手掛けている場合には事業承継や後継者を見つける時期に差し掛かっているのではないでしょうか?
事業承継や後継者問題は非常にデリケートな問題であり、なかなか解決の糸口が見えないケースがあります。中小企業庁によると全体の半数にも及ぶ中小企業が成長できる可能性が高かったにも関わらず、事業承継・後継者問題で廃業に至るという結果が出ています。もしも事業承継・後継者問題に悩んでいるのであればM&Aを検討してみましょう。
【買い手側がM&Aを行う目的】
・販売チャネルを拡大できる
買い手側の企業がECサイトを運営する企業を買収した場合、販売チャネルの拡大が目指せます。元々買い手側の企業がECサイトを運営しているケースがありますが、それでも自社が運営するサイトとターゲットや取り扱う商品に違いがあれば、販売チャネルの拡大につながるでしょう。
・ECサイトやアプリを一から開発する必要がない
先程も少し触れたように、サイトを構築させ開発するのは多くの手間とコストを掛けなくてはなりません。買い手側で既にサイトがオープンしており、事業強化のためにM&Aを実施する場合には大きな影響はありませんが、初めて専用Eコマースを作る場合にはM&Aによって手間とコストの削減につながります。新規事業への参入がしやすいという点は買い手側にとって大きなメリットです。
専用Eコマース(BtoC)業界のM&Aを成功裏に進めるために
専用Eコマース(BtoC)業界では続々とM&A案件が増えてきています。確実に成功させるためにはどのように動けば良いのでしょうか?
M&Aの相場を調査する
京王百貨店がセレクチュアーとM&Aを行い、全株式を取得した時の譲渡価格は10億4000万円でした。基本的に譲渡価格というのはそれぞれの会社によって異なり、必ず譲渡価格が10億円前後になるわけではありません。
しかし、相場はある程度把握した方が良いと言えます。相場を調べないままM&Aを行ってしまうと交渉が上手くまとまらず、結果的に失敗するリスクがあるためです。相場の調査は売り手側と買い手側、双方に言えることなので、まずは相場の調査から始めてみましょう。
M&Aの専門家と一緒に交渉を進めていく
M&Aでは買い手側と売り手側で条件が異なってしまい、どちらかが譲歩しなくてはならないケースは多く見られます。しかし、お互いにどうしても譲れない条件だった場合には、交渉が決裂してしまうかもしれません。そんな時に相談してもらいたいのが、M&Aの専門家です。
M&Aの専門家であれば交渉を上手くまとめてくれて、双方の架け橋になってくれるでしょう。M&Aを検討している方はまず専門家に相談してみることをおすすめします。
まとめ
専用Eコマース(BtoC)業界の業界動向やM&A事例についてご紹介してきましたが、専用Eコマース(BtoC)は将来的に市場規模が拡大する可能性は大いにあり、なおかつM&A案件も増加していくことでしょう。今後、専用Eコマース(BtoC)業界でM&Aを検討しているのであれば、上記でご紹介したポイントを踏まえた上でM&Aを行ってみてください。特に、M&Aの専門家へあらかじめ相談しておくとスムーズな流れでM&Aを実行できます。
株式会社M&A DXには、大手会計系M& Aファーム出身の公認会計士や税理士等が多数在籍しています。専用Eコマース(BtoC)業界のM& Aをお考えの方は、株式会社M&A DXの仲介サービスの利用をぜひご検討ください。