電設業界とは?
電設業界は、電気を安定的に供給する電気事業、送られた電気を使用する電気機器や電気設備事業などを行う業界の総称です。電気を必要とするすべての場所に関わるため、海底から宇宙まで幅広い分野で業務を行っています。
まずはこの電設業界とはどんな業界なのか、業界の特徴や市場規模、M&Aの動向について詳しく紹介します。
専門性が必要なインフラに欠かせない業界
電設業界の企業が行う業務としては、送電網や電柱などの敷設工事、配線や器具・機器の取り付けなどの電気通信工事、保守点検・検査などが挙げられます。あらゆる分野でIT化が進む現代において生活に不可欠な業界と言えるでしょう。
また、工事の施工や監督には電気工事士や電気主任技術者などの国家資格が必要で、労働集約型の事業です。そのため、人件費の割合も高く、稼働率の管理や人材採用も重要となってきます。
電設業界の市場規模
2020~2021年の市場規模は4兆9708億円で、ここ数年は拡大傾向にあります。2007~2009年にかけては低迷していましたが、2011年以降は東日本大震災の復興にかかる設備投資の増加で好転しました。
さらに当時2020年に東京オリンピックの開催が決定したこともあり、建設需要が急増。これに合わせて電設業界の市場規模も拡大しました。しかし電設業界は景気に左右されやすい業界でもあるため、今後オリンピック関連の建設需要の反動による落ち込みや、アフターコロナにおける建設投資の変化に注意する必要があります。
電設業界のM&A動向
業界のM&A動向としては、2018~2019年にかけて電気通信工事の大手3社による業界再編が行われました。コムシスHD・ミライトHD・協和エクシオがそれぞれ3つの企業を買収し子会社化しています。
また、同じ業界内で既存事業の強化・拡大を狙った買収が起こっているほか、異業種の企業が本業界の企業を買収することで参入するなど、M&Aは活発に起こっています。
電設業界が抱える課題
インフラに深く関わる業界であり、安定した需要が見込まれる電設業界ですが、今後の業界発展に影響しかねない、深刻な課題も抱えています。そこで次に、電設業界が抱えている課題を詳しく紹介します。
またそこから今後業界がどのような動きになるかなど、M&Aの参考になる情報も紹介していますので、M&Aを検討している方はぜひ参考にしてください。
若者の人材不足
電設業界は建設業界との深い繋がりがあり、建設業界の動向が市場にもダイレクトに影響を与えます。建設業界では建設投資が1992年をピークに半分まで落ち込んだことから、電設業界でも規模縮小のため若者の採用を控えざるを得ませんでした。
国土交通省が発表した調査によれば、1992年から20%も就業者の数が減少しています。また電設業界は時間外労働や休日出勤なども多く、こういった労働環境の悪さも若者が敬遠する要因となっています。
就業者の高齢化
若者の人材不足が起こったことにより、電設業界では就業者の高齢化も進んでいます。電設業界は全産業の平均と比べても高齢者の割合が高く、29歳以下の割合が低いこともポイントです。今後、就業者の退職によりさらに人材不足が加速してくことが懸念されます。
また、オリンピック後は需要の減少が予想されているものの、業種の特性から考えて、極端に減ることはないと思われます。そのため、今後はスタッフの争奪戦が起こる可能性もあります。
電設業界でM&Aをするメリット
次に電設業界でM&Aをするメリットを、売手と買手に分けて詳しく紹介します。M&Aの利点はそれぞれが抱える問題を解消できるところにあります。
M&Aは悪いイメージを持つ方も多くいますが、企業の課題を解決することは、業界の発展にも繋がります。自社のメリットはもちろん、業界全体でのメリットも紹介していますのでぜひ参考にしてください。
売手が得られるメリット
まずは電設業界でM&Aをする場合に売手が得られるメリットを紹介します。売手のメリットは大きく分けて「後継者問題の解決」と「実績や技術の引継ぎ」の2つです。
売手のメリットは事業が継続できることにあります。これは将来の経営に不安がある企業にとっては大きなメリットになります。では、どのように事業が継続できるのか、詳しい内容について見ていきましょう。
後継者問題を解決できる
電設業界に限らず、日本では少子高齢化の影響を受け企業の後継者不足が大きな問題となっています。電設業界も例外ではなく、経営自体は良好にも関わらず、後継者が見つからず結果的に廃業を迫られるケースが少なくありません。
しかし、M&Aを行えば、買手の企業で後継者を選出するため、この後継者問題が解決できるでしょう。
実績や技術が引き継げる
電設業界は専門性の高い業種であり、長年事業に携わることでスタッフの技術力が高まるのはもちろん、企業としてのノウハウも蓄積できます。また、技術力のほか、それまで取引を行ってきた業界内での実績もあります。
しかし、廃業をしてしまうと、これらが全て失われます。この損失は業界にも大きなダメージとなりますが、M&Aを行えばその全てを未来へと引き継ぎ、人材の雇用も守っていけるでしょう。
買手が得られるメリット
次に電設業界でM&Aを行う場合に買手が得られるメリットを紹介します。買手のメリットとしては「安定的な経営」と「売上のシェア獲得」が挙げられます。
また、特に異業種でM&Aを行う場合にメリットが大きいのがポイントとなります。電設業界は新規参入がしづらい業界ですが、M&Aにより新規参入のハードルが大きく下げられます。では、なぜハードルが下げられるのか、メリットについて詳しく見ていきましょう。
安定的な受注や経営ができる
電設業界は安定的に工事の受注を受けている会社が多くあります。そのため、売上が急激に落ち込むということがなく、M&Aを行った後でも安定した経営が期待できるでしょう。
また、買手企業は技術や実績を引き継げることもメリットとなります。専門性の高い業界のため、経験と技術、またそれに由来する信頼を得るのに長い時間が必要となりますが、M&Aを行えばこれらを短時間で獲得でき、スムーズに業界へ参入できます。
売上シェアを獲得できる
電設業界の企業は、建設業に登録している企業数だけでも5.5万社以上あります。建設業許可を持っていない企業を含めると、その数倍にもなるため、業界のプレーヤーは飽和状態にあります。
この状態で新規参入により利益率の高い取引先を獲得することや、シェアを伸ばすことは極めて困難です。そのため、既存企業の取引先を引き継ぐことでスムーズにシェアが獲得できます。
電設業界でM&Aをする際の注意点
最後に電設業界でM&Aをする際に注意すべき点について紹介します。電設業界にも業界特有の事情などがあり、これらを把握していなければ後々トラブルに発生する可能性もあります。
買収した企業のスタッフとも遺恨が残らないよう、以下の注意点を確認し充分配慮しましょう。また、今後事業を発展させるための注意点も紹介していますので、あわせてチェックしてください。
会計面の整理を行う
業界の財政面での特徴としては、どんぶり勘定が多い点が挙げられます。各工事の収支を記録するのではなく、一定期間のお金の出入りしか記録していない、という場合もあります。
銀行などは現在どの程度儲けているかを指標として融資などを行うため、今後融資を受けるためにも財務状況を精査しながら慎重に整理を行いましょう。
許認可の引き継ぎに注意する
建設業の許可を得るには「経営管理責任者」と「専任技術者」の2名が必要です。さらに、経営管理責任者は5年の経営経験が必要となるため、条件を満たした状態で引継ぎが行えるかチェックしましょう。
また、子会社化によりグループが2社になると、「経営管理責任者」と「専任技術者」をそれぞれ2名ずつ立てなければいけません。経営経験が5年以上あるスタッフはめったにいないためM&Aの手法にも十分注意してください。
ICTやロボットの導入を検討
電設業界では、人手不足が深刻化していますが、これはICTやロボットなどの技術を導入することでも解決が目指せます。M&Aは業務の見直しをするいいチャンスにもなるため、技術導入で業務の効率化やコスト削減を図りましょう。
業界内でもICTやロボットの導入による効率化は推奨されており、導入を進める動きも加速しているため、今後の業界動向に注目です。
電材屋全国売上ランキングTOP10
電材屋とは電気設備資材の仕入販売を行う商社(卸売り)のことです。
電材屋の全国売上ランキングは次のようになっています。
順位 | 会社名 | 直近年度売上高(百万円) |
1位 | 因幡電機産業 | 289,071 |
2位 | 泉州電業 | 92,463 |
3位 | 福西電機 | 80,262 |
4位 | 藤井産業 | 74,929 |
5位 | フジクラ・ダイヤケーブル | 71,378 |
6位 | 高見澤 | 63,367 |
7位 | 東芝電材マーケティング | 49,055 |
8位 | トシン・グループ | 39,935 |
9位 | 杉本電機産業 | 36,563 |
10位 | 田中商事 | 33,083 |
まとめ
今回は電設業界の課題やM&Aの動向、M&Aを行う場合のメリットや注意点について紹介しました。電設業界は建設業界や景気に左右されやすい業界ではありますが、安定的な経営が期待できるため、ぜひM&Aを検討してはいかがでしょうか。
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