エクイティファイナンスで資金調達!仕組みや成功のポイントまとめ

会計士 牧田彰俊

有限責任監査法人トーマツ入所、各種業務の法定監査、IPO支援に携わる。その後、ファイナンシャルアドバイザリーサービス部門にてM&A アドバイザリー業務・財務デューディリジェンス業務・企業価値評価業務等に従事。組織再編によりデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社に異動し、主に国内ミドルキャップ案件のM&Aアドバイザリーとして、豊富な成約実績を収める。2018年、これまで以上に柔軟に迅速に各種ニーズに応えるべく株式会社M&A DXを設立し、現在に至る。

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事業の継続や拡大をするために外部から資金調達を検討する方がいます。一方で、資金の詳しい調達方法を知らない方も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、エクイティファイナンスについて紹介します。エクイティファイナンスとは、株式を投資家に発行等して資金を集める方法です。エクイティファイナンスの特徴や仕組みを理解すれば、状況に応じた資金調達ができるでしょう。合わせて、具体的な資金調達の例も詳しく解説します。

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資金調達に悩んだら「エクイティファイナンス」

資金調達に悩んだら「エクイティファイナンス」

一般的な資金の調達方法として、金融機関や日本政策金融公庫からの融資があります。リスクを軽減するためにも状況に合わせた資金調達の方法を選択しましょう。ここでは、エクイティファイナンスの特徴や向いている状況を紹介します。表を用いて分かりやすく解説しますので、基本的な仕組みを理解しましょう。

企業の資金調達は2パターン

資金調達の主な方法は、エクイティファイナンスとデットファイナンスです。「エクイティ」とは株式資本や株式のことで、株式を発行して資金調達をします。一方で「デット」とは負債のことです。融資によって資金調達をします。それぞれの特徴を表にしましたのでチェックしましょう。

 エクイティファイナンスデットファイナンス
返済義務の有無なしあり
資金提供者におけるインカムゲイン配当金利息
資金提供者の回収予定額決まっていない決まっている
出資する側が考えること将来性安定性
主な出資者投資家やベンチャーキャピタル金融機関
資金提供者の経営への参加の有無ありなし

エクイティファイナンスは株価が予想と異なるケースもあり、調達できる資金は株価に応じて変わります。

エクイティファイナンスに向いている状況

エクイティファイナンスは、適切な状況のときに利用するのがおすすめです。主な状況として以下の3つがあります。

・利益の拡大を見込めるとき

エクイティファイナンスは株式の発行等によって事業資金を調達する方法です。利益の拡大が見込める企業として認知されれば株価上昇や配当金を期待できるため投資家による株式の引き受けを期待できますが、投資家からの評判が悪ければ資金調達が困難でしょう。

・企業の財務体質を強化したいとき

株式を発行するので原則として返済が不要な資金が増加して資本が増えます。そのため、財務体質の改善や強化を図りたいときにおすすめです。

・事業発展が必要なとき

資金を提供する株主は、企業の事業発展を願って原則として返済不要の資金を企業に提供してくれます。短期的な収益ではなく、中長期的な投資計画を持っているときに有効でしょう。

エクイティファイナンスの仕組み

エクイティファイナンスは、企業が新株を発行して資金を獲得する手法です。資金調達と聞くとお金を借りるイメージがありますが、対価として株式を発行しているので返済の義務がありません。

エクイティファイナンスを計画する際には、最初に事業計画を作成します。事業を推し進めることでどのような成果が得られるのかをまとめましょう。株式を発行する際には、株式総会や取締役会で承認を得ます。

承認を得た後は、発行する量と株主の決定です。あらかじめ作成した事業計画書を用いて、投資家と交渉を進めます。魅力的な事業内容であれば多くの投資家を集められますし、事業に不安があれば交渉が難航する恐れもあるでしょう。将来的なシミュレーションをしながら慎重に決めるのがポイントです。最後に株式の価格を決定します。

エクイティファイナンスによる株価への影響

株式を発行すると株式が市場に出回るので、株価に影響がでる場合があります。資金が増えると企業のサービスが拡大します。状況によっては売上のアップを期待できるでしょう。株主にとっては配当が増えるチャンスなので、メリットが高く感じられます。

しかし、企業が増資をした場合、従前からの株主の立場からすると株式が希薄化してしまう点には注意しましょう。既に発行されている株式の一株当たりの価値が下がるので、状況によっては株価が大きく下落するケースもあります。資金調達を成功させるには、一時的に株式は希薄化するものの、将来的には大きく成長する魅力を伝えなければなりません。

エクイティファイナンスとデットファイナンスの3つの違い

エクイティファイナンスとデットファイナンスの3つの違い

エクイティファイナンス以外の資金調達の方法として、デットファイナンスがあります。エクイティファイナンスとの違いが分からない方もいるのではないでしょうか。どちらも企業の成長に大きな効果がありますが、資金の調達までの過程は異なります。状況に合わせた正しい選択をするためにも、きちんと理解しておきましょう。

返済義務があるかが異なる

エクイティファイナンスは、株式を譲渡する代わりとして資金を受け取ります。大きな資金が必要なケースでも、新株の発行が可能ならば返済不要な資金の獲得が可能です。現状の返済能力を超えた資金の調達を希望する際には有効でしょう。

支配権への影響度が異なる

エクイティファイナンスで新株を発行すると、企業の支配権に影響が出ることもあります。議決権のバランスが変わることが原因です。経営に異議を唱えたい株主によって現経営陣の影響力が低下する恐れもあるでしょう。

一方、デットファイナンスは株式の発行がないので、支配権への影響度は変わりません。株主の影響を気にせずに経営を続けられます。

貸借対照表や資本上の扱いが異なる

どちらも資金調達を目的としていますが、賃借対照表での扱いは異なります。エクイティファイナンスで自己資本ですが、デットファイナンスは負債です。経営が悪化してさらなる資金調達が必要なとき、負債が多いと追加の融資を受けられない場合もあるでしょう。

エクイティファイナンスなら資本比率を高められるので、安定した経営を続けている印象を与えられます。一般的に自己資本比率40%以上が安定した経営をしている企業、70%以上が理想の企業です。

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エクイティファイナンスの4つのメリット

エクイティファイナンスの4つのメリット

エクイティファイナンスでは、財政体質や資金調達の面でのメリットがあります。財務状況が脆弱なままでは売上を伸ばしても、財務体質は改善しません。財政体質のリスクを抱えずに資金調達が可能なので、状況によっては有効な方法でしょう。ここでは、エクイティファイナンスの4つのメリットを分かりやすく解説します。

担保なしや赤字でも資金調達ができる

経営における担保のリスクとは、経営の悪化や倒産のときに個人資産を失うことです。資金調達は必要なものの、リスクはできるだけ回避したい経営者も多くいるでしょう。エクイティファイナンスなら担保がない状況でも資金調達が可能です。赤字でも企業の将来性や成長性が高いと見なされれば、資金を獲得できる可能性は高まります。

返済期限が定められていない

金融機関からの一般的な融資は、返済期限を決めなければなりません。景気の変動により、売上が予定よりも少ない場合でも返済は求められます。毎月の返済金額によっては、企業に大きな負担が伴うでしょう。

しかし、エクイティファイナンスでは、原則的に返済期限は定められません。返済による経営の圧迫がないので、経営者は安心して経営に集中できます。

財務体質を強化できる

財務体質とは貸借対照表をベースに捉えた企業の資産・負債・純資産のバランスのことです。一般的には負債がない、もしくは少なく自己資本比率が高い企業が良いとされています。

エクイティファイナンスは負債を抱えずに資金調達ができるだけではなく、自己資本比率を上昇させます。財務体質を強化したい場合にも有効です。また、経営の悪化により融資が必要になったときでも借り入れがしやすいでしょう。

利息の支払いがない

融資を受けると利息が発生します。借主である企業が貸主である金融機関に、返済額と利息を付けて返済しなければなりません。財務体質や融資内容(返済期限・融資額等)によっては、多くの利息が発生するケースもあるでしょう。エクイティファイナンスなら利息が発生しないので、資金繰りが厳しい状況での資金流出を防ぐことができます。

エクイティファイナンスによる4つの資金調達

エクイティファイナンスによる4つの資金調達

エクイティファイナンスの資金調達の方法は大きく分けて4種類です。それぞれの特徴は異なるので、企業の経営状況や資金調達の目的に合わせて決定するのが良いでしょう。第三者割当融資が一般的ですが、既存の株主による理解を得られれば株主割当増資などの選択も可能です。

公募による資金調達

株式市場で取引されている時価をベースにした価格で、新株を発行する資金調達の方法です。最初に市場価格に近い価格を決めておき、新株を発行した後に不特定多数の投資家に株式を引き受けてもらいます。公募による資金調達は厳格な要件があるので、上場企業が用いるのが一般的でしょう。

公募による資金調達の特徴は、株式の時価が高くなれば発行株数が少なくても多くの資金を得られることです。将来性のある企業としての魅力があれば、時価が高くても引き受けてもらえるでしょう。一方で、一般の投資家が購入するので、株主構成が変動するリスクがあります。

株主割当増資による資金調達

既存の株主に、新しい株式を引き受けてもらう資金調達の方法もあります。株主は既存の株式保有数に応じて、新しい株式を割り当ててもらう仕組みです。株式の引き受けは強制ではないので、断ることもできます。

例えば企業の創業者が70%、親族が30%の株式を保有していると仮定しましょう。その場合、2,000万円の増資をするには1,400万円を創業者が用意します。

株主割当増資の特徴は、既存の株主構成が保たれた状態で資金調達ができることです。経営の支配権を奪われるリスクを回避できます。資金調達をする際には株主に事前の承諾を得なければなりません。

第三者割当増資による資金調達

ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家など、第三者に新しい株式を引き受けてもらう方法です。M&Aによる手法で企業の子会社化を進める際にもこの方法が用いられるケースがあります。

第三者割当増資の特徴は、信頼のおける企業や投資家に依頼するので安心して資金調達ができることです。しっかりとした計画を立てておけば、スムーズな資金調達が可能でしょう。状況によっては株主構成の変化により、議決権に大きな影響を与えるケースもあります。

転換社債型新株予約権付社債(CB)による資金調達

株式に転換できる債券を発行して資金調達をする方法です。株式に転換をするのか、社債を持ったままにするのかは購入者が決められます。

転換社債の場合、あらかじめ決定した価格での株式への転換が可能です。株価が上昇した場合には大きな利益を得られるでしょう。一方で、価格が下がっているときにはそのまま持ち続けられるので便利です。なお、転換社債には転換可能な期限を設けており、期限を過ぎた場合は社債として持ち続けます。

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エクイティファイナンスのデメリットや注意点

エクイティファイナンスのデメリットや注意点

エクイティファイナンスは、他の資金調達の方法と比較すると時間がかかります。他の株主への理解も求められるので、計画的に実行しなければなりません。ここでは、デメリットを3つ紹介するとともにそれぞれの対処法を解説します。

株主の理解を得る必要がある

株式を増やすと1株の価値が薄まり、持ち株比率が変動するケースもあります。既存の株主側からすると、株式の新たな発行による株価の下落は避けたいでしょう。既存株主が納得できる十分な説明を怠れば、企業と株主の信頼関係は損なわれます。そのため、企業は臨時株主総会などを開いて株主の理解を得なければなりません。

会社の支配権や配当方針への影響がある

新株の多くを第三者が握ったときには、会社の支配権や配当方針への影響があります。例えば、ベンチャーキャピタルの場合には出資契約の際に上場を目指さないといけない、社長が辞められない、勝手に売ったり担保に入れたりできないなどの制約がつくこともあるでしょう。株式を発行する際には、持ち株比率のチェックが求められます。

手続きに手間や時間を要する

エクイティファイナンスは、会社法に基づいて実行しなければなりません。基本的に、取締役会や株主総会で投資の条件や内容などに関する決議をしてから入金を受けます。

企業は株式発行の対価として資金を受け取りますが、資本金を増やしたときは法務局で資本変更登記をしなければなりません。正式に手続きを踏むために、時間や手間がかかるでしょう。

エクイティファイナンスで資金調達した事例紹介

エクイティファイナンスで資金調達した事例紹介

事業の継続や拡大を検討している企業にとって、資金調達は悩みの種です。エクイティファイナンスを検討する際には、資金調達ラウンドを意識しましょう。

資金調達ラウンドとは、企業に投資をする際に用いるラウンド分けをした指標のことです。シードからシリーズCまでの5つに分かれており、投資家は企業の成長度をチェックする際に用います。それぞれの時期は以下の通りです。

名称時期
シード大枠のビジネスが決定した時期
アーリー起業してから間もない時期
シリーズA(エクスパンション)事業が本格的にスタートした時期
シリーズB(グロース)収益が伸びて起動に乗った時期
シリーズC(レイター)企業が着実に利益を上げている時期

投資家は企業の状態を判断してから投資に踏み切ります。ここでは、それぞれのラウンドに分けて資金調達の事例をまとめました。

スタンダードキャピタルの事例

シードやアーリーの事例としてスタンダードキャピタルがあります。スタンダードキャピタルは2018年11月に創業した会社です。各国の法規制に対応したデジタルIDの発行や管理に関する業務の提供、ブロックチェーンに関する情報管理システムの提供、セキュリティトークの発行や管理を主な業務としています。

スタンダードキャピタルは、2020年1月に開設予定のセキュリティトークン取引所「ALLEX」のシステム開発や人材確保の資金獲得を検討しました。2019年11月に第三者割当投資を実施して、3億2,890万円の資金調達に成功しています。新しい事業を立ち上げるための資金調達をした実例です。

Alpaca Japanの事例

シリーズB(グロース)の事例としてAlpaca Japanがあります。Alpaca Japanは2016年11月に創業した会社です。金融システムにおけるAIと人間を結ぶプラットフォームの開発を主な業務としています。

Alpaca Japanは、金融商品仲介業者向けの新たなプラットフォーム・ビジネスを立ち上げるための資金調達を検討しました。2020年6月に第三者割当投資を実施して、10億円の資金調達に成功しています。コロナウイルス感染症の被害が拡大している中ですが、これまでの実績と将来性が評価されました。

Alpaca JapanではシリーズAのときも10億円の資金調達を実施しており、企業の成長に比例して資金の獲得に成功しています。

麻田製薬の事例

麻田製薬は2020年1月に創業した製薬会社で、カンナビジオールを用いた製品開発や製造が主な業務です。イスラエルの企業との提携によるカンナビス研究や、研究機関との提携による医薬品の開発などにも積極的に取り組んでいます。

麻田製薬は2020年11月に海外在住の個人投資家による第三者割当投資で、資金調達に成功しました。株式の発行で得た調達資金は、自社ブランドである「THE CBD」の製造や販売、法律事務所との顧問契約に充てられています。

今後のビジネス展開によっては新たな資金調達も検討しており、シリーズC(レイター)でも綿密な計画を立てれば資金調達が可能です。

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資金調達方法のひとつであるエクイティファイナンスは、M&Aと比較されることがあります。M&Aのメリットは財務基盤の強化が期待できることです。大企業による買収が実現すれば、経営を軌道に乗せるための資金調達が容易になるでしょう。

M&A DXではM&Aによるアウトソーシング事業や、企業提携によるFA・仲介事業などを提供しています。資金調達に関する専門的な知識や経験を有しており、お客様の目的や希望に合わせた丁寧なサポートが可能です。

まとめ

まとめ

エクイティファイナンスとは、株式の発行により資金調達をする方法です。金融機関による融資とは異なり、基本的に利息が発生しないメリットがあります。ただし、自社の支配権に影響を与えることもあるので、最善の資金調達方法であるのかを慎重に検討しなければなりません。

資金調達方法で悩んでいる企業や経営者は、プロの専門家への相談がおすすめです。M&A DXは大手監査法人M&Aファーム出身の公認会計や税理士等が多数在籍しており、経営者や企業の希望に沿った資金調達のサポートをします。初回相談は無料なので、資金調達に不安がある方は、お気軽にM&A DXにお問い合わせください。

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