グループ法人税制とは?適用取引や注意点などわかりやすく解説!

会計士 山田武弥

有限責任監査法人トーマツ入所。金融業及び卸売業を中心とした各種業務の法定監査業務に携わる。 その後、大手税理士法人及びコンサルティング会社にて事業承継・事業再生・法人顧問業務に従事。 組織再編税制を活用した事業承継スキームの構築や株価対策、事業再生計画の立案やその後のモニタリング及び金融機関対応等に豊富な経験を有する。 山田武弥公認会計士・税理士事務所として独立後、株式会社M&A DXに参画し、現在に至る。

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2010年度の税制改正により、完全支配関係にある企業グループ間において、一体とみなして課税する「グループ法人税制」が適用されることになりました。グループ法人税制とはどのような制度で、どのような取引に対して適用されるものなのでしょうか。

この記事では、グループ法人税制の概要や適用条件、適用取引、注意点を解説します。グループ法人税制について理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

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グループ法人税制とは

グループ法人税制とは、簡単に説明すると、複数の企業グループを1つの法人のように捉えて課税する制度です。具体的には、完全支配関係にある内国法人間で行なわれる一定の資産譲渡や寄附、配当などが、税務上損益を認識しない仕組みを指します。

グループ法人税制が適用されることで、完全支配関係の企業間において課税関係が生じず、税負担が軽減される利点があります。一方で、グループ法人税制における資産の譲渡において手続きが煩雑になったり、中小企業への優遇税制が適用除外になったりするデメリットもあるため、注意が必要です。

グループ法人税制は、2010年度の税制改革で導入されました。100%グループで運営が行われている企業グループが増加している事情を受け、実態に即した課税を行うために、グループ法人税制が導入されました。

「完全支配関係」とは何を指すのか

グループ法人税制は、完全支配権にあるグループ企業で成立します。完全支配関係とは、法人または個人(一の者)が、ほかの法人の発行済み株式などの100%を直接的または間接的に保有している関係を指します。

直接的に発行済み株式などを100%保有している状態とは、たとえばA社がB社の100%の株式を保有している関係を指します。これはわかりやすい例でしょう。

一方で、間接的に100%株式を保有している状態とは、たとえば以下のような状態を指します。

A社→B社の株式を100%保有し、C社の株式を30%保有している
B社→A社の完全子会社、C社の株式を70%保有している

この場合、A社はC社の株式の100%を、間接的に保有している状態であり、完全支配関係を指します。

グループ法人税制は強制適用

連結納税制度は任意で適用できる一方、完全支配関係にある場合、グループ法人税制は強制適用となります。規模の大小も関係なく、中小企業を含めたすべての企業に適用されます。

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グループ法人税制の適用取引

グループ法人税制によって、完全支配関係にある企業間で資金や資産に対して、譲渡損益が認識されず、課税されないようになりました。グループ法人税制が適用される5つの取引を紹介します。

①資産の譲渡取引など

固定資産や土地、有価証券などの「譲渡損益対象資産」により生じる譲渡損益については、対象のグループ内で譲渡損益調整資産に該当する取引をした場合に、譲渡損益を繰延べられます。

譲渡損益対象資産とは、次の5つの資産を指します。

土地
固定資産
有価証券(売買目的の有価証券を除く)
金銭債権
繰延資産

ただし、簿価が1,000万円未満の資産の譲渡については、繰り延べの対象外となります。たとえば、完全支配関係の企業間で1,000万円未満の土地を譲渡した場合、その譲渡損益については、認識されることになります。

②寄附金

完全支配関係の法人からの寄附金については、支出側の親会社は全額損益不算入、受取側の子会社が全額益金不算入となります。この寄附金については、拠出金や見舞金、法人が行った金銭その他の資産または経済的利益の贈与など、税務上寄附金と認められるものも含みます。つまり、キャッシュリッチな子会社から課税関係を生じさせることなく、別の子会社へ資金を移動させることができます。

③受取配当金

完全支配関係の法人から配当の受取があった場合、全額損益不算入となります。完全支配関係の企業間において資金移動を活性化させ、親会社の株主配当や設備投資原資を増加させることが狙いの一つとなっています。

④現物分配

現物分配とは、株主に対し、剰余金の配当などの理由により、金銭以外の資産を交付することです。完全支配関係の企業間で現物分配が行われた際、現物分配した法人に対し、資産の分配により生じた資産の譲渡損益を認識しないことになっています。

また、現物分配を受けた法人に対しても、帳簿価額をそのまま引き継ぎ、資産の受け取りによって生じた受取配当は益金不算入となります。

⑤株式の発行法人への譲渡

完全支配関係の企業間において、発行法人に対して株式を譲渡した場合、この譲渡にかかわる損益は認識しません。譲渡した法人の資本金等の額を調整することとなります。

グループ法人税制の注意点

グループ法人税制にかかわる注意点を2つ紹介します。

中小企業の特例が適用除外となる

グループ法人税制によって、特定の中小企業への特例が適用除外になってしまうケースがあります。具体的には、資本金1億円以下の法人が資本金5億円以上の法人と直接・間接的に完全支配関係にある場合、以下の優遇制度が適用除外となります。

軽減税率
法定繰入率による貸倒引当金計上
交際費等の損金不算入制度における定額控除制度
欠損金の繰戻しによる還付制度 など

場合によっては、税制面で不利になる場合があるので、資本金5億円以上の法人と完全支配関係になる場合は、税理士などの専門家に相談しましょう。

申告調整額が大きくなることも

グループ法人税制は、あくまでも法人税上の取り扱いになります。資産の譲渡などによって申告調整額が大きくなり、結果「会計上の利益」と「(税金算定用の)所得」との金額に差が生まれる恐れがあるので、注意しましょう。

グループ法人税制と、実際の会計処理は切り離して考えなくてはいけません。税理士などの専門家に相談するなどし、グループ法人税制における申告の調整額は事前に把握しておくようにしましょう。

まとめ

グループ法人税制とは、簡単に説明すると、複数の企業グループを1つの法人のように捉えて課税する制度です。100%グループ企業間において、譲渡損益対象資産や寄附金、配当の受け取りなどがあった場合でも、税務上の譲渡損益が認識されません。

一方で、中小企業への優遇税制が適用除外になったり、法人税制上と実際の会計処理に大きな差額が生まれたりする可能性があります。グループ法人税制は完全支配関係の企業間に強制適用されるものなので、100%グループ企業になる場合は、税務上の便益を考慮し税理士などの専門家に相談するようにしましょう。

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