健康食品業界の業界動向やM&A事例をご紹介!

会計士 加藤大典

大手自動車メーカーに入社、生産技術部にて製造工程設計業務に携わる。その後、デロイトトーマツコンサルティングに入社し、組織再編により有限責任監査法人トーマツのアドバイザリー部門に異動。製造業の法定監査業務及びIFRS導入支援、組織再編支援、事業再生支援、内部統制構築支援、決算早期化支援、経営管理体制強化支援等の様々なプロジェクトに従事。

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健康食品業界は、健康指向が高まると共に需要が高まっている業界です。健康食品やサプリメントなどの栄養補助食品などの開発や販売を行うことで、健康維持や健康増進のサポートを行っています。業界の中でも、会社によって異なる製品を開発・販売していることもあり、お互いに差別化できているという点は、健康食品業界ならではの特徴だと言えるでしょう。

今回は、そんな健康食品業界がどのような特徴を持っているのか、M&Aの傾向や事例はどのようになっているのか、健康食品業界のM&Aはどのような目的で行われるのか解説していきます。健康食品業界のM&Aについて詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

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健康食品業界の特徴

健康食品業界の特徴

健康食品業界は、健康食品やサプリメントなどの栄養補助食品の開発や販売を行うことによって、健康の維持や増進などをサポートしている企業をまとめた業界となっています。さらに、美容をサポートするための食品や機能性清涼飲料を開発・販売している企業も含まれます。一般用の医薬品は原則として除かれていますが、中に区別が難しいドリンク類を開発・販売している企業も含まれるケースがあるので知っておくと良いでしょう。

そんな健康食品業界は、成長を続けている業界です。富士経済の調べによると機能志向食品の市場規模は2018年でおよそ9,399億円にも上っていることが分かりました。なぜ市場規模が拡大しているのかというと、高齢者の増加や健康志向の高まり、若者の需要拡大、様々な制度の充実など、社会全体の考え方が変化しているためです。そして、今後も成長の見込みがある業界だと考えられています。

成長の見込みがある健康食品業界ですが、企画力やブランド力が重要になる業界であり、製造は委託可能であるため、新規参入の障壁はかなり低くなっています。もちろん魅力的な健康食品の開発を行うことも重要ですが、メディアなどを活用してトレンドを把握したり、消費者にアプローチする方法を変えたりしなければ、いくら需要が高まっている業界であっても生き残っていくことは難しいでしょう。どのような年代にアプローチするかによっても開発する商品のコンセプトなどが変わってきます。

健康食品業界の主要顧客は中高年層がメインになっていますが、若者向けの健康食品のニーズもかなり高まっています。中高年層をターゲットにするのであれば健康の維持や改善を目的としたもの、若者をターゲットにするのであれば美容やダイエットを意識したものの需要が高いです。そのため、それぞれの健康食品関連企業は独自の強みを活かした健康食品の開発・販売を行っています。

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健康食品業界のM&A傾向

健康食品業界のM&A傾向

近年、様々な業界でM&Aを積極的に行うケースが多くなっています。それは、健康食品業界も例外ではなく、M&Aを行う企業は増えています。

M&Aを成功させるためには、どのような傾向があるのか知っておいた方が良いでしょう。続いては、健康食品業界のM&Aがどのような傾向になっているのか確認してみましょう。

健康食品業界は、数ある業界の中でも競争が激化している業界だと言われています。競争が激化しているということは、それだけ周りと差別化する必要があるでしょう。そのため、海外に拠点を構えている健康食品関連企業を買収するというケースも増えています。

海外の企業を買収することによって、グローバル市場へ販路を拡大できたり、高い技術力を獲得できたりといったメリットを得られるためです。日本国内での需要のみで売上規模の拡大が難しい場合には、海外の企業を買収する方向へと転換していくケースが多いと考えられます。

M&Aは事業拡大のために行われるケースが少なくありません。それは、健康食品業界も例外ではありません。特に健康食品の開発や販売を行っている大手メーカーは、事業を拡大することで競争率が高い業界の中で勝ち残っていくための方法を常に考えています。

M&Aを行って事業拡大に成功すれば、企業の付加価値を高めることもできます。それは企業にとって大きなメリットになると考えられるので、事業拡大のためにM&Aを行い、より魅力的な健康食品メーカーへと成長していこうとしています。実力や将来性のある中堅企業をM&Aで買収することによって、新しいブランドを生み出したり、販売チャネルを拡大したりできるという魅力もあるため、大手メーカーが積極的にM&Aを行っていると言えるでしょう。

また、中小企業の技術力や開発力、販売力は大手企業に及びません。しかしM&Aで大手メーカーによる買収によって、技術力や開発力、販売力を統合させればこれまでに培ったものが無駄になることはありません。競争力が激しい業界だからこそ、M&Aによる買収で新しいブランドを生み出したり、販売チャネルを拡大したりする重要性は大きくなっていると考えられます。

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健康食品業界のM&A事例

健康食品業界のM&A事例

健康食品業界におけるM&Aは、これまでに行われてきた様々な事例があります。
実際の事例を見ながら健康食品業界のM&Aに関する理解を深めていきましょう。

キリンホールディングスと協和発酵バイオのM&A事例

キリンホールディングスは、取得価額およそ1,280億円の株式譲渡によって協和発酵バイオを子会社化しました。キリンホールディングスと協和発酵バイオは、子会社化する前から健康食品の共同開発を行っています。そのような中で子会社化した目的は、両者の関係性をより高めることによって、企業価値の最大化が見込めたためです。

雪国まいたけとタカラバイオのM&A事例

雪国まいたけは、宝ホールディングスの子会社・タカラバイオからきのこ事業の事業譲渡を行うことによって買収しました。タカラバイオでもきのこ事業を行っていたのですが、その割合は少ないものでした。そのため、事業の選択と集中のために売却するに至りました。

長瀬産業と健康食品素材を扱うアメリカの企業のM&A事例

長瀬産業は、健康食品の輸出や輸入、販売を行っている企業です。アメリカで健康食品素材を取り扱っているプリノバ・グループを子会社化することによって健康食品用の食品添加物事業を取得し、今後需要が高まっていく健康食品業界における販路拡大を目指しています。特にアジアにおいての健康食品やサプリメントの販路拡大に力を入れる方向へ動いています。

キリンホールディングスとヤクルトヘルスフーズのM&A事例

キリンホールディングスは、ヤクルトヘルスフーズから乳酸菌サプリメントを開発しているノアレ事業の事業譲渡を行いました。キリンホールディングス自体も乳酸菌事業へ力を入れているため、ノアレを商品のラインナップに追加することによるシェア拡大を図ろうとしています。

小林製薬と梅丹本舗のM&A事例

小林製薬は、およそ10億円の株式譲渡を行うことによって、梅丹本舗を完全に子会社化しました。梅丹本舗では、梅を使用した健康食品の開発や販売を行っているため、小林製薬が買収することでより充実した品揃えにしようと考えたのです。品揃えを増やすことにより、健康食品業界におけるシェアの拡大も期待されています。

健康食品業界のM&Aを行う目的

健康食品業界のM&Aを行う目的

私たちの健康をサポートしてくれる商品の開発や販売を行っている健康食品業界でM&Aが行われる目的は様々です。続いては、売り手と買い手の双方にどのような目的やメリットがあるのかご紹介しましょう。

売り手側の目的やメリット

・後継者問題を解決へと導く

後継者問題は、どの業界においても問題となっています。健康食品業界の中小企業でも同じことが言えます。中には、人材不足や経営者の高齢化を理由に廃業してしまう健康食品関連企業もあるため、M&Aで後継者問題を解決へと導けるメリットは非常に大きいでしょう。

・従業員の雇用を確保する

近年、健康食品業界の競争率がかなり激しくなっていて、大手企業よりも力がない中小企業が廃業に追い込まれてしまうケースもあります。廃業してしまうと従業員の仕事がなくなってしまうため、M&Aで売却して従業員を引き継ぐことができれば、従業員の雇用も確保できるというメリットがあります。

・大きな資本の下で経営を安定させられる

どの業界でも中小企業の経営は不安定な側面がありますが、そのままでは不安を募らせたままになってしまいます。M&Aを行って大企業に売却すれば、経営改善も可能になるでしょう。特に、経営資源が少なく、収益がなかなか挙げられなかった中小企業の場合は、このメリットの恩恵を大きく感じられます。

・個人保証などを解消できる

M&Aでは、買い手と調整することにより、個人保証などを解消することが可能です。企業が抱えている債務や負債、経営者が抱えている個人保証などを買い手側の企業が引き継いでくれるためです。そのため、M&Aを行うことで個人保証や債務といった悩みから解放されます。

買い手側の目的やメリット

・新しい事業にスピーディーに参入できる

M&Aを行うことで、新しい事業に関するノウハウや知識を持つ従業員を獲得できます。また、設備投資など多額のコストがかかる部分も引き継げるため、スピーディーに新しい事業に参入できるのです。

・事業エリアの拡大や強化ができる

M&Aを行って健康食品業界の企業を買収すると、その業界で販路の拡大や事業強化を図ることができます。これまでに持っていなかったノウハウや技術を持つ企業の買収をすれば、既存の事業とのシナジー効果も期待できるでしょう。

・従業員や研究者を確保できる

M&Aを行い、従業員や研究者を引き継ぐこともできます。技術や能力を持つ研究者の採用は簡単なことではないため、引き継げるメリットは非常に大きいと言えます。また、従業員や研究者を引き継ぐことで、事業の拡大や新しいブランドの開発など、より魅力的な企業へと成長できる可能性が高まります。

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健康食品業界のM&Aを成功裏に進めるために

健康食品業界のM&Aを成功裏に進めるために

健康食品業界におけるM&Aには様々なメリットがあります。そのため、成功させたいと考える企業も少なくありません。最後に、健康食品業界のM&Aを成功させるためのポイントをご紹介しましょう。

相乗効果を第一に考える

M&Aを行うことで相乗効果が期待できます。しかし、どのような相乗効果が発揮できるか見極めることも重要なポイントだと言えます。M&Aを行う目的を明確にしておけば相乗効果についても考えられるので、目的は明確にしましょう。

簿外債務などを把握しておく

M&Aを行う際に、簿外債務や多額の負債は買い手側にとって大きなリスクとなります。このようなリスクを抱えないためには、事前に売り手企業の価値やリスクを調査するデューデリジェンスを徹底するようにしましょう。

M&Aの専門家に相談する

M&Aを成功させるためには、M&Aの専門家に相談することも視野に入れてみてください。M&Aの仲介業者を利用すれば、交渉相手をスムーズに見つけることができたり、デューデリジェンスを徹底できたりといったメリットが得られます。せっかく行うM&Aを成功させるためにも、専門家への相談はおすすめです。

まとめ

まとめ

健康指向が高まると共に需要が高まっている健康食品業界は、競争が激しくなっている業界だと言われています。中小企業は大手企業の力に圧倒されてしまい、経営が傾いてしまう可能性もゼロではありません。場合によっては廃業を余儀なくされてしまうケースもあります。

そのような健康食品業界では、M&Aが積極的に行われるようになり始めました。M&Aを行うことによって、後継者問題の解決や従業員の雇用確保、経営の安定、事業エリアの拡大、新規事業にスピーディーに参入できるといったメリットが得られます。これらのメリットは売り手側と買い手側の双方にとって嬉しいものであり、将来的には相乗効果によってさらなる成長も見込めます。

成功させるために押さえておきたいポイントもありますが、それも把握していればM&Aで結果を出すことができるでしょう。M&Aの専門家などに相談し、将来のことを考えたM&Aを進めていくためにはどうすべきなのかぜひ検討してみてください。

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