出口戦略ならM&AとIPOはどちらがよいのか
これまでは出口戦略といえばIPOが一般的でした。IPOは会社を上場させて市場で株取引を行えるようにすることです。そのため、上場を目標にする経営者も多く見受けられました。
しかし現在では、出口戦略にはIPOよりもM&Aが主流になりつつあるといえるでしょう。アメリカにおいては、2015年時点ですでに出口戦略の80%近くがM&Aで行われています。日本でもM&Aが増加傾向にあり、2017年には3,000件を超えるM&Aが行われるという、過去最高の件数を記録しました。
今後の出口戦略は日本でもM&Aがますます増えていくと予想されます。しかし、それぞれにメリットやデメリットがあるため、どちらがよいかはケースバイケースです。特徴を理解し、状況に合った方法を選べるようにしておきましょう。
(参考: 『M&Aの現状-中小企業庁-経済産業省』)
そもそも出口戦略(EXIT戦略)とは?
ビジネス業界では、起業家が自分で育て上げたベンチャー企業などで「いかに創業者利潤を得るかの戦略」という意味で使われる用語です。もとは軍事用語で、困難な局面から被害を最小限に抑えて戦線から撤退するという意味で使われていました。
しかし、ビジネス業界ではポジティブな意味でも用いられています。企業が出口戦略を実現してより成長するためには、IPOやM&Aなどを行うことが重要です。
M&AやIPOの特徴とは?
M&AとIPOには「企業を成長させるための方法」という共通点があります。しかし、それぞれの特徴や仕組みは大きく異なるため、しっかりと把握することが重要です。
どちらかの方法が優れているというわけではありません。大切なのは自社の状況に適した方法を選択することです。それぞれの特徴を理解して、どちらが自社に合っているか考えてみましょう。
M&Aの特徴と仕組み
M&Aは「Mergers and Acquisitions(合併と買収)」の略であり、資本の移動が生じる企業の合併や買収を指します。企業の出口戦略においては、会社の経営権や事業を売却して資金を得ることを目的とすることも多いでしょう。これにとどまらず、売り手企業が買い手企業の技術や顧客網を取り入れることを目的とするケースもあるようです。
経営権を売却しても、元の経営者が残留して企業のかじ取りを引き続き行うケースもあります。しかし、基本的にはM&Aが実行されたら経営方針や意思決定権などは買い手企業がもつと考えたほうがよいでしょう。
【関連記事】M&Aとは?メリットや注意点をわかりやすく解説!
IPOの特徴と仕組み
IPOとは「Initial Public Offering(新規株式公開)」を略した用語で、企業が上場して新たに株式公開を行うことです。それまでは不可能だった「金融市場からの直接の資金調達」ができるようになり、多くの投資家から資金を集められるようになります。
一方で不特定多数の方が株主となり、株主のリターンの期待が大きくなることを忘れてはいけません。投資家の期待や思いに応えるという責任が生じます。また上場することで、企業の知名度が一気に上がるのも特徴です。知名度が上がれば社会的な信用性が増し、経営で有利に働く場面もあるでしょう。
M&AとIPOの違いとは?
資金調達という視点でみると、「M&Aは企業や事業の売却」「IPOは株式公開」と、それぞれの仕組みは大きく異なります。経営者・従業員・取引先・株主などの立場によっても、「違い」の見え方は異なるでしょう。では、それぞれの立場からM&AとIPOを見ると、どのような違いが見えるのでしょうか。
経営者にとっての違い
経営者は、M&AとIPOの違いが最も大きく見える立場だといってもよいでしょう。M&Aは企業そのものや事業を売却するため、売り手であれば経営権を失うのが一般的です。M&Aが実行されれば、今まであった経営者としての地位が消滅したり、子会社となって親会社の指示に従ったりすることになるでしょう。
IPOの場合は上場して多くの投資家から資金調達することなので、経営権を失うことはありません。ただし、その分投資家からの期待に応えねばならず、それまで以上に企業や経営者の社会的責任が増えます。
従業員にとっての違い
M&Aが行われると、職場の環境が大きく変わる可能性があります。働く場所や労働条件、社風などが一変する場合もあります。待遇はよくなるケースもありますが、悪化するケースもあります。その結果、新しい環境に馴染めない従業員はモチベーションが低下したり、退職を希望したりすることも考えられます。
IPOの場合は資金調達が行われることで企業規模が拡大し、従業員の活躍の場がさらに広がるかもしれません。環境の変化があったとしても、ポジティブな変化が起こりやすいのがポイントです。ただし、IPO後はこれまで社内にいなかったような優秀な社員が入社することがあり、IPO前からの社員と軋轢が生じるケースもあります。
取引先にとっての違い
取引先には、M&AよりもIPOのほうが好まれる傾向にあります。M&Aの場合、経営権の移転によって企業の経営方針が大きく変わるかもしれません。取引先にしてみれば、今までの取引内容が変更されるおそれがあります。取引量が減少したり、最悪の場合は契約解消になったりすることもあるでしょう。
IPOの場合は基本的に経営者が変わることはありません。急に取引内容が変更になったり、契約解消になったりする可能性は低いと考えられます。IPOで企業規模が大きくなることは、ブランド力が増すなど取引先にとってもメリットがあります。
株主にとっての違い
株主にはM&Aのほうが好まれる傾向にあります。上場して資金調達をするIPOの場合、株主が保有している株式を売却できる保証はありません。企業がIPOを行って株価に相場が出来ると、株価が上昇することもあれば大きく下落することがある点も注意が必要です。
M&Aが行われれば、保有している株式はほぼ売却できるでしょう。より確実にキャピタルゲインを得られるM&Aのほうが好まれるというわけです。
M&Aのメリットとデメリット
M&Aはスタートアップ企業やベンチャー企業の出口戦略として、近年注目を集めている手法です。IPOにはないメリットがありますが、同時にデメリットもあります。どちらもきちんと把握しなければ、正しい判断はできません。ここでは、M&Aのメリットとデメリットを解説します。
メリット
M&A を行うことの大きなメリットのひとつは、株式をすぐに現金にできることです。持ち株のすべてを売却できることが多いため、経営者が多くの株を保有する創業者だった場合は創業者利益を手にできます。
IPOよりもM&Aのほうが、事前準備の負担が少なくて済むのもメリットでしょう。IPOを実行しようと考えた場合、短く見積もっても3年ほどの準備期間が必要になるともいわれています。M&Aの場合は数か月で売却することも可能です。
IPOに適した社内体制の構築にコストをかける必要がないので、人材や資金・時間などの経営資源をほかのことに効率よく投下することもできます。
M&Aによって他社のノウハウを得られたり、シナジー効果を得られたりすればよりいっそうの規模拡大を目指せるかもしれません。大手企業とのM&Aが成立すれば、ブランド力や信用力が向上して新たな取引先の開拓や、銀行借入などの資金調達力のアップも見込めます。
デメリット
M&Aのデメリットとしては、買い手企業との交渉に手間がかかることが挙げられます。M&A成立後に買い手が望まない関わり方(買い手は引き続き関与してほしいのにオーナーは辞めたい等)や相場より高い価格での譲渡を希望する場合は、買い手企業とハードな交渉をしなくてはいけません。そのほかにもさまざまな項目について細かく取り決めをしなくてはなりません。
M&Aを行うと社風が一変するおそれもあります。慣れ親しんだ社風や職場環境でなくなることで、従業員への負担が増加する可能性も把握しておきましょう。買い手企業が取引先の競合会社だった場合は、取引先を失うこともありえます。M&Aの前には、取引先との関係性などへの配慮も重要です。
【関連記事】M&Aを行うメリット・デメリットとは?売り手側・買い手側目線で解説!
IPOのメリットとデメリット
IPOは、起業した方にとって、いつかは叶えたいという目標かもしれません。企業規模を大きくできるほか、起業家や経営者としてのステータスを上げることにもつながるでしょう。IPOを行うと大きなメリットを享受できますが、その分デメリットもあります。メリットもデメリットも把握して、自社にはIPOとM&Aのどちらが適しているのかを考えてみましょう。
メリット
IPOのメリットは、市場から多くの資金を調達できることです。M&Aと異なり、経営の自由度も一定程度確保出来ます。経営者の手腕によって、投資家から多くの資金を調達できる可能性があります。
上場するとブランド力や社会的信用度が高まるため、新たな取引先の開拓や金融機関からの資金調達がしやすくなるのもメリットです。高まったブランド力に魅力を感じ優秀な人材が集まりやすくなったり、自社商品が売れやすくなったりする可能性もあります。経営がうまくいけば、いっそう拡大路線につなげられるのが魅力でしょう。
デメリット
事前準備に手間やコストがかかることは、IPOの大きなデメリットです。IPOの準備には、短くとも3年ほどはかかるといわれています。既存の取引会社との関係性の見直しや、IPOに関わる各種体制の構築や資料作成などが必要です。
数年の準備期間のなかで、市場は大きな変化を遂げるかもしれません。市場が変化すれば、自社の方向性も変わるおそれがあります。その場合、計画してきたことが中止となり、それまでの手間やコストが報われない結果となることもあります。
IPOが成し遂げられたとしても、上場を維持するためには毎年多くのコストをかける必要があり、市場から厳しい目線にさらされるという点もあります。
M&AとIPOで注意すべきポイント
M&AとIPOはメリットやデメリットは異なりますが、ともに出口戦略として利益を得られる重要な方法です。成功させるためには、注意するポイントをしっかり押さえておきましょう。注意するポイントを把握していないと、思わぬことで企業経営がネガティブな方向に向かってしまうかもしれません。
M&Aで注意すべきこと
M&Aを行う際に注意するポイントは、情報漏洩や従業員のストレスです。M&Aを行う場合、買い手企業やM&Aアドバイザリーへ機密情報の開示が必要になります。
この開示が適切なタイミングで行われなかったり、関係のない第三者に行われてしまったりすると、大切な情報や企業秘密が漏洩してしまう可能性があります。すると企業の存続を揺るがす事態に発展しかねません。
またM&Aを行うと、経営理念や社風・人事評価制度などを買い手企業に合わせて変更しなくてはならない可能性があります。その結果、従業員は慣れ親しんだ環境から、異なる環境へ移らねばなりません。職場環境が変化することによる負担やストレスが生まれ、優秀な従業員の離職が進む可能性があるでしょう。
IPOで注意すべきこと
IPOで注意するポイントは、IPOの前後で経営方法が変わることです。IPOを行うと、株主が経営に参画します。IPO前であれば、基本的には中長期的な視点で利益を得る経営計画を立てますが、IPO後は株主に配慮した短期的な利益も追及する必要が出てくるかもしれません。
また上場したあとは、情報開示が義務化されます。そのため、有価証券報告書によって、自社の情報を外部に開示しなくてはなりません。戦略的に知られたくないことでも、開示しなくてはならないことも出てくるでしょう。上場した場合、これまでのような自由が利かないこともあります。
IPOの流れ
ここからは、IPOを実際に行う際の流れを解説していきます。ここでは上場承認がおりてからの流れを記載します。上場承認がおりてからの流れは比較的簡素ですが、実際には業績向上は当然のこととして、証券会社や監査法人等と協業しながら各種体制の構築や必要書類の準備に膨大な時間を要します。IPOを目指してから上場承認がおりるまでには早くても約3年、通常はもっと長期間のプロジェクトとなると覚えておきましょう。
1.上場の承認
上場の申請を行った企業が、証券取引所から上場を認められるのが上場の承認です。証券取引所には東証(東京証券取引所)や名証(名古屋証券取引所)などがあります。
経営の健全性や成長性などをみる「実質基準」、流通株式数や時価総額などをみる「形式基準」が設定されており、これらの条件を満たさなければなりません。
各証券取引所のホームページには、上場承認の情報が掲載されるのが一般的です。投資家はその情報をもとにIPOの銘柄を把握します。
2.仮条件の決定
上場する企業が機関投資家などに自社の説明を行い、ブックビルディングで投資家へ提示するIPO株の価格帯が決定されます。通常は、1,000円~1,500円のように一定の幅をもたせた価格です。
仮条件で決定する価格は公開価格の基礎となります。そのため、上場する企業はさまざまなデータなどを使って、自社の価値をアピールすることが大切です。上場する会社による説明を受けた機関投資家は価格についての意見を主幹事証券会社に伝え、主幹事証券会社が仮条件を決定します。
3.ブックビルディング(需要申告)
ブックビルディングは、仮条件の決定で設定された価格の範囲内で投資家が株式の購入を申し込み、その価格をもとに上場する企業の公開価格を決める方法です。ブックビルディングは「需要申告」とも呼ばれるので覚えておきましょう。
これには個人投資家も参加可能です。ブックビルディングで投資家は、申込期間内に「株数」と「価格」の2つの要素を決定し申し込みを行います。
4.公開価格の決定
ブックビルディングにもとづいて、公開価格の決定が行われます。株式を発行して売り出す際の株価が公開価格です。IPO株の購入権をもつ方は、この価格で購入することになります。
この公開価格が「仮条件の上限価格だったかそれに満たなかったか」は、上場する企業にとってとても重要なポイントなのできちんと確認しましょう。上限価格に満たなかった場合、上場時の初値も公開価格に届かない場合が多いからです。初値が公開価格よりも低くなることを「公募割れ」といいます。
5.抽選の実施
IPO株は売り出す企業が多くないうえに、近年注目を集めている投資方法です。そのため、申込者の希望する株数が売り出された株数を上回るケースも多いでしょう。その場合は、購入者を抽選で選びます。
抽選は申込者のいる各証券会社が完全平等抽選などの独自の方法で行うので、上場する企業がこの工程で行うことはありません。
6.当選・購入申し込み
抽選の結果、当選した方は証券会社に購入申し込みを行います。抽選の結果は、公開価格が決定した日を基準に証券会社の翌営業日、または2営業日後に判明するでしょう。抽選結果の通知は、証券会社から申込者に行われます。購入の手続きも購入者と証券会社の間で行われるので、ここでも上場する企業が行うことはないでしょう。
7.上場
上場日には証券取引所で上場セレモニーが行われ、市場においてIPO銘柄が自由に売買できるようになります。上場の承認から実際に上場するまでは1,2か月程度を要するでしょう。
IPOは、上場の承認までにも多くの歳月が必要です。初値がいくらになるのか注視する必要はありますが、上場までたどり着ければ喜びはひとしおでしょう。上場後は市場で資金を調達し、よりいっそうの事業拡大を目指していくことになります。
(参考: 『日本取引所グループ』)
M&Aの流れ
ここではM&Aの流れを把握していきましょう。M&Aの流れは、多くの工程があるため手間がかかり複雑です。中堅中小企業の場合、M&Aの仲介会社などと契約をしてから成立まで、6か月~1年かかることもあるでしょう。場合によっては2年以上かかる場合もあるため、簡単なことではありません。
【関連記事】M&Aの流れをどこよりもわかりやすく解説!手続きにおける注意点とは?
1.戦略の策定
まず行うことは戦略の策定です。M&Aはあくまでも目的を達成するための手段です。企業経営にとってM&Aがゴールではありません。「なぜM&Aを実行するのか」「目的は何か」などを明確にしましょう。
M&Aの目的や戦略は、M&Aに携わる部署全体で共有することも重要です。誰かが違う方向を向いていると、企業にとって最善のM&Aができなくなる恐れがあります。
2.仲介会社の選定
仲介会社の選定は、M&Aを行う上で重要な工程です。仲介会社によって、効率的でよいM&Aができるかが左右されることもあるので慎重に選びましょう。
会社のつながりだけでなく、広い視野をもって探すことがポイントです。実績が不足していたり、コミュニケーションが取れなかったりすると期待する成果が得られないばかりか、自社の担当者の負担が増えてしまうこともあるでしょう。自社に最も大きな利益をもたらす、信頼のおける仲介会社を選ぶことが重要です。
3.企業評価の算定
M&Aにおける自社の価格を判断する「企業価値」を算定しましょう。企業価値を算定する指標としては、「財務状態」「成長性」「同業種の上場企業の株価」などがあります。
企業評価の方法はさまざまですが、「時価純資産法」や「年買法」を用いるケースが多いでしょう。この方法は多くの金融機関や日本M&Aセンターが採用しており、信頼性が高い方法といえます。ただし、会社のフェーズや業種によっては、これらの評価方法が馴染まないケースもあるので、適切な評価方法を選定できる仲介会社か見極めることも重要です。
企業評価で算出された価格は、最終的な移動総資産額(株式価格+負債総額)ではありません。しかし、M&Aの交渉においての基準価格となるので合理的な算出が求められます。
4.相手先の選定
企業の評価や業界の動向などをもとに、買い手となる企業を選定します。先に選定したM&A仲介会社やM&Aアドバイザリーとともに、「データベース」「金融機関等の推薦」「過去のM&A実績」などを参考に絞り込んでいきましょう。
いくつかの企業に絞れたら、M&Aを提案する優先順位をつけます。「シナジー効果がどれだけ得られるか」「マッチングのしやすさ」などを考慮して検討しましょう。
提案資料なども整ったら作成した優先順位をもとに、「ノンネームシート」を用いて買い手となる企業に打診をします。買い手企業がM&Aに興味を示したら「秘密保持契約」を締結し、作成した「企業概要書」や「IM(Information Memorandum)」を開示し、更に詳細検討していただきましょう。
5.トップ面談
トップ面談とは、その名のとおり売り手企業と買い手企業の経営者が顔を合わせることです。大企業同士のM&Aではセレモニー的な要素もありますが、この場合でも実務者レベルでの協議が何回か行われます。中小企業の場合はお互いの価値観やこれからの目標などを確認し合う重要な工程です。トップ面談や開示資料の詳細検討を経て、両企業のM&Aへの意思が固まったら本格的な交渉に進みます。
6.交渉・調整
諸条件に関する交渉や調整を行い、買い手企業は買収スキームや買収価格などを記載した「意向表明書」を提出します。売り手企業が意向表明書を確認し問題なければ、両社の合意条件が記載された「基本合意契約書」を結びます。
基本合意契約書を結んだ時点で、一定期間契約を結んだ相手とだけM&Aの交渉が可能となる「独占交渉権」が明記されるケースがほとんどです。ここからしばらくはほかの企業とはM&Aに関しての交渉ができないので注意しましょう。
8.デューデリジェンス(DD)の実施
デューデリジェンス(DD)とは、買い手企業が売り手企業の経営成績・財政状態・法令遵守の状況等を適正に評価することです。財務状況や法務関連など、買い手企業がこれまでの交渉で得た情報が正しいものなのかを判断するため、調査や評価をする対象は多岐にわたります。
非常に大切な工程なので、弁護士・公認会計士・税理士等の専門家などに依頼することが一般的です。ここで問題を見逃すと、買い手企業がM&A成立後に大きな損失を被る可能性があるため、綿密に行われます。
【関連記事】デューデリジェンスとは?意味や目的、実行のポイント
9.譲渡契約の締結・資金決済
デューデリジェンス(DD)が問題なく完了し、両社合意のもとM&Aの実行が決まったら、「最終譲渡契約書」や「株式譲渡契約書」を結びます。その後、M&Aの対価が支払われて資産や権利の移転などが行われるとM&Aの手続きは終了です。
M&Aの手法によっては、債権者保護や株主総会特別決議などが必要なことがあります。その場合、最終譲渡契約書の締結からすべての手続きが完了するまで、時間が必要となることがあるので注意しましょう。
10.従業員・取引先への公表
契約の手続きは完了しても、2社を統合するためには必要な作業はまだまだたくさんあります。そのひとつが従業員や取引先への公表です。最終譲渡契約書の締結後、まずは幹部に極秘事項として公表し、その後に一般の従業員と取引先へと話すのがよいでしょう。
従業員へは、できるかぎり詳細かつ丁寧に説明します。「今後も従業員の協力が必要である」と伝え、不安を取り除くように努めましょう。主要な取引先への公表は経営者自らが出向き、そのほかの取引先には経営者交代などのお知らせと合わせて書面で報告するのが一般的です。
11.引継ぎの開始
経営者の引継ぎも統合のために大切な工程です。一般的に6か月~3年程度をかけて行うことが多いでしょう。実務の引継ぎなども重要ですが、従業員との懇親会の段取りといった社内コミュニケーションも重要です。
実務の引継ぎについては、「段取りの整理」と「勤務日数や出勤頻度の調整」などが重要です。懇親会の段取りでは「開催時期の決定」や「出席者のリストアップ」などを行いましょう。
M&Aをスムーズに進めるためのポイント
M&Aは多くの工程を経て実行しなければなりません。どこかでつまずくと対応が滞り、タイミングを逸してしまう可能性があります。そこで重要になるのが、「理想の取引相手を見つけること」と「M&Aのプロに依頼すること」の2つです。2つのポイントをクリアできれば、複雑な工程もスムーズに進められるでしょう。
理想の取引相手を見つける
M&Aをスムーズに進めるためには、理想の取引相手を見つけることが重要です。理想の相手を見つけるには、納得するまで調査を行ってできるかぎりの情報を集めます。付き合いのある経営者仲間や信頼できる方などに状況を伝え、買い手企業の情報を得るのもひとつの手です。
買い手企業に不安や不満があるままでは、前向きに話を進めることは困難です。すると進む話もどこかで滞ってしまいます。
M&Aのプロに依頼をする
M&Aを実行するまでには多くの工程が必要であり、分からないことがあるとスムーズな進行ができなくなります。専門知識をもつM&Aアドバイザリーに依頼すれば、豊富な経験やノウハウによってM&Aを手助けしてくれるでしょう。
M&A DXには、大手監査法人系M&Aファーム出身の公認会計士や税理士などが多数在籍しています。お客様のM&Aを強力にサポートし、時間的負担や精神的負担を軽減しながらスムーズなM&Aの実行が可能です。
まとめ
出口戦略を行う場合、M&AとIPOの2つの方法で迷う方が多いでしょう。これまではIPOが一般的でしたが、現在ではM&Aが主流になりつつあります。合併や買収を行うM&Aと株式公開を行うIPOの各特徴やメリット・デメリットを把握して、どちらが自社に合っているのか判断しましょう。
特にM&Aはその工程が複雑です。初めての場合は分からないことが多く発生するかもしれません。そのようなときは、プロに相談するのが安心です。信頼できるM&Aアドバイザリーをお探しなら、M&A DXの仲介サービスをご利用ください。