相対取引とは?市場取引との違いやメリット・デメリットを解説

会計士 加藤大典

大手自動車メーカーに入社、生産技術部にて製造工程設計業務に携わる。その後、デロイトトーマツコンサルティングに入社し、組織再編により有限責任監査法人トーマツのアドバイザリー部門に異動。製造業の法定監査業務及びIFRS導入支援、組織再編支援、事業再生支援、内部統制構築支援、決算早期化支援、経営管理体制強化支援等の様々なプロジェクトに従事。

本記事の監修を務める。メンバーの紹介はこちら

この記事は約7分で読めます。

上場企業の株式などの取引を行う際は市場を介して行うのが一般的ですが、M&Aでは市場を介さない相対取引を行うこともあります。

ここでは相対取引の特徴や注意点を紹介するとともに、オークションと比較した場合のメリット・デメリットについて解説します。概要を把握し、より満足のいく取引を実現しましょう。

  目次  【閉じる】

相談先を迷っている方はM&A DXへ!
資料ダウンロード
M&A DXのメルマガ登録する
セカンド オピニオン

本記事のポイント

  1. 相対取引の利用を検討している経営者向けの記事です。
  2. 相対取引の意味やメリットとデメリットを解説しています。
  3. 相対取引とオークションの比較も紹介しているので、どの取引方法を選ぶべきか悩んでいる経営者向けの記事にもなっています。

相対取引とは?

相対取引とは?

M&Aや株式などの取引シーンでは、相対取引が行われることがあります。相対取引とはどのようなもので、一般的な市場取引と何が異なるのか、ここで確認しておきましょう。

相対取引の意味

相対取引とは、市場を介さずに当事者同士が直接取引を行う方法です。銀行や不動産業者と顧客の取引、非上場企業の株式を取得する場合などが、相対取引に該当します。

参考:日本取引所グループ 用語集

相対取引と市場取引の違い

相対取引と市場取引では、価格決定の仕組みが異なります。

市場取引は、買手が多くなるほど価格が上昇し、売手が多いほど価格が下落する仕組みです。取引の流動性が高いため、一定の均衡価格が生まれる特徴があります。

対して相対取引は市場の価格変動に影響されることなく、当事者同士で価格を決定できるのが大きな特徴です。

異なる点は価格決定の仕組みだけではありません。取り扱う資産もそれぞれ異なります。上場株式や通貨などの同種の資産が数多く存在する場合は市場取引、土地や不動産など同種の商品数が少ないケース、もしくは稀少性の高い資産を売買する場合は相対取引が用いられるのが一般的です。

相対取引のメリット

相対取引のメリット

市場があるにもかかわらず、あえて市場で取引せずに相対取引を利用するケースは少なくありません。なぜなら、相対取引には市場取引にはないメリットがあるからです。

価格や決済方法を自由に決定できる

相対取引では、価格や決済方法などを当事者同士が自由に決定できます。売手と買手が合意すれば売買が成立するため、お互いが納得する価格で取引できるメリットがあるのです。

また相対取引の場合、市場取引と比較して、短期的な景気や政治などの影響を受けづらい場合が多いです。

市場の相場に左右されない

市場取引の場合、需要と供給のバランスによって価格が自動的に決定されますが、相対取引は市場の受給に左右されることなく、売買価格を自由に決定できます。

市場取引で大量の株式を集めようとすると、株価が上昇して、あらかじめ用意した資金では予定株数を取得できなくなる恐れがあります。相対取引なら市場価格に関係なく価格を決めることができるため、事前に予算が立てやすくなります。

ただし、相場に左右されない分、当事者間の交渉が大きなポイントとなります。

株式市場に影響しない

市場取引の場合、大量の買い・売りの注文が入ると、株価が大きく変動してほかの投資家がパニックに陥る恐れがあります。そのようなリスクを避けるために、大口投資家が相対取引を行うこともあるのです。

相対取引なら当事者同士で取引できるため、その取引が直接的に株式市場に影響を及ぼすことはありません。そのため、大きな価格変動のリスクを抑えて、取引を成立できます。

M&A DXのサービスはこちら
相談先を迷っている方はM&A DXへ!
資料ダウンロード
M&A DXのメルマガ登録する
セカンド オピニオン

相対取引のデメリット

相対取引のデメリット

相対取引は当事者同士で交渉して価格などを決めていくため、少なからずデメリットも存在します。

詐欺に遭うリスクがある

不特定多数の投資家の売買によって価格が決まる市場取引と異なり、相対取引では取引相手との交渉次第となってしまいます。価格や決済方法も当事者同士が自由に決められるため、慎重に判断しないと詐欺に遇う等の可能性があるのです。

例えば、株式を渡した後で対価を支払う決済方法にした場合、対価を支払わずに株式だけ受け取って逃げられることも考えられます。

相対取引は市場の相場に左右されないメリットがある一方で、不当に高い価格で買わされるリスクがあることを考慮しておかなければなりません。

取引完了までに時間がかかる

相対取引では当事者同士が直接交渉して価格などを決めるため、交渉が難航すれば取引成立に時間がかかる恐れがあります。市場取引なら短期間で成立する取引でも、相対取引だと取引が完了するまでに数ヶ月かかることも珍しくありません。

取引に時間がかかると資金面や精神面での負担がかかったり、状況の変化等により取引が不成立となる可能性もあります。

不公正な取引が成立する可能性がある

相対取引は相場の影響を受けない分、不当な価格で取引が成立するリスクがあります。買手と売手に情報の非対称性が存在している場合、不当に高い価格で買わされるといったトラブルが起きる恐れがあるのです。

その点、市場取引なら需要供給のバランスによる合理的な価格での取引が可能になります。

相対取引vsオークション方式

相対取引vsオークション方式

M&Aを行うにあたり、相対取引とオークション方式のどちらを選択しようか迷うこともあるのではないでしょうか。両者の違いを把握しておくと、取引内容や状況に応じてより良い選択ができるようになります。

オークション方式とは?

オークション方式とは、売却案件に対して複数の企業が入札を行い、最も良い条件を提示した企業が交渉権を得るM&Aの一つの進行方法です。

参考:みずほ証券 ファイナンス用語集

オークションと比較した場合のメリット・デメリット

オークション方式で提示する条件には、買収金額だけでなく、買収後の経営方針やスキームなども含まれる場合があります。そのため、最高価額を提示した企業が必ずしも落札できるわけではありません。

しかし、相対方式と比べて高い価額で決まる場合が多いです。業績の良い企業をより良い条件で売却したいなら、オークション方式を選択したほうが良いでしょう。

一方で事業の価値の説明がしにくい場合や、特定の買手と短期間で交渉したい場合は、相対取引のほうが向いています。取引相手次第では、交渉時間を節約することも可能です。

M&A DXのサービスはこちら
相談先を迷っている方はM&A DXへ!
資料ダウンロード
M&A DXのメルマガ登録する
セカンド オピニオン

M&Aで相対取引を行う方法

M&Aで相対取引を行う方法

M&Aにおける相対取引には、取引者同士による直接取引とOTC取引の2種類の方法があります。どちらの方法にもメリット・デメリットが存在するため、慎重に判断しましょう。

取引者同士が直接取引する

仲介業者を一切介さずに実施する場合は、当事者同士が取引の場所や時間を自由に設定可能ですが、現物の引き渡しや代金の振り込みなどの手続きはすべて取引者が行います。

当事者同士で取引を行う場合、仲介会社への手数料を節約できるメリットがある一方で、思わぬトラブルが起こりやすいデメリットも。リスクをどう回避するかが、大きなポイントです。

専門業者を介して取引する

専門業者を介して取引する場合、一定の手数料が発生しますが、多数の相手と安全に交渉・取引が可能です。相対取引でのトラブルのリスクを軽減するため、多くの場合、専門業者を介入させる方法が採用されています。

より安全でリスクの少ない取引を実現したい場合は、多少のコストがかかっても、専門業者を介して取引したほうがいいでしょう。

まとめ

まとめ

相対取引は少しアナログな取引方法ですが、市場の相場に左右されず、価格や決済方法を自由に決められるメリットがあります。。実際のM&Aでも相対取引が用いられるケースも多く、覚えておくと役に立ちます。市場取引、相対取引、オークション方式をうまく使い分け、納得いく取引を実現させましょう。

M&A DXでは、大手会計系M&Aファーム出身の公認会計士や金融機関等出身の専門家が、豊富なサービスラインに基づき、最適な事業承継をサポートしております。事業承継でお悩みの方は、まずはお気軽にM&A DXの無料相談をご活用下さい。

関連記事はこちら「株式譲渡契約書取り交わしの流れと契約書の作成方法【雛形・テンプレート付き】」
関連記事はこちら「廃業する会社を買うには?メリット・デメリット・買い方・注意ポイントをM&A専門家が解説」

株式会社M&A DXについて

M&A DXのM&Aサービスでは、大手会計系M&Aファーム出身の公認会計士、 M&A経験豊富な金融機関出身者や弁護士が、豊富なサービスラインに基づき、最適なM&Aをサポートしております。セカンドオピニオンサービスも提供しておりますので、M&Aでお悩みの方は、お気軽にM&A DXの無料相談をご活用下さい。 無料相談はお電話またはWebより随時お受けしておりますので、M&Aをご検討の際はどうぞお気軽にお問い合わせください。


相談先を迷っている方はM&A DXへ!
資料ダウンロード
M&A DXのメルマガ登録する
セカンド オピニオン

SHARE

M&Aセカンドオピニオン

セカンドオピニオンとは、M&Aを検討する中で生じる不安や迷い・懸念を第三者視点で全体を俯瞰しながら、個々の状況に寄り添ってアドバイスするサービスです。
こんなお悩みの方におすすめです。

✓ M&A業者が進めるスキームで適切なのか知りたい
✓ M&A業者と契約したが連絡が途絶えがちで不安だ
✓ 相手から提示された株価が妥当なものか疑問に感じる
✓ 契約書に問題がないか確認したい
✓ M&A業者が頼りなく感じる

どんな細かいことでも、ぜひ【M&A DXセカンドオピニオンサービス】にご相談ください。
漠然とした不安や疑問を解消できます。

無料会員登録

会員の皆様向けに週1回、M&A・事業承継・相続に関わるお役立ち記事、動画などをお知らせするメールマガジンを配信させていただきます。
お役立ち記事はこちらからピックアップしてお届けいたします。
動画はM&A DXチャンネルからピックアップしてお届けします。
配信を希望される方はメールアドレスをご登録の上、お申し込みください。登録料は無料です。

LINE登録

LINE友達登録で、M&A・事業承継・相続に関わることを気軽に専門家に相談できます。
その他にも、友達の皆様向けに、動画などをお知らせするメールマガジンを配信させていただきます。
相談を希望される方は、ぜひお気軽にLINE友達登録へお申し込みください。

M&A用語集

M&A DX用語集では、M&Aに関する専門用語についての意味や内容についてご紹介しております。
M&Aや事業承継は英語を使うケースが多く、初めて聞くと意味が分からないまま会話が進み、後で急いで意味を調べるような経験がある方もいらっしゃると思います。M&Aの用語に関しては、一度理解してしまえばその後の会話で使えるようになるため、辞書代わりにご利用下さい。
※会計士の当社代表牧田が、動画で解説している用語もあります。

まんがでわかる事業承継

すべての人を幸せにするM&Aを、まんがでわかりやすく解説します。
「事業承継は乗っ取りではないのか?」と不安に思う社長に対し、友好的事業承継のコンセプトをわかりやすく解説します。

~あらすじ~
社長は悩んでいた。
創業して40年、生涯かけて取り組んだ技術も途絶えてしまうことに。
何より、社員を裏切る訳にもいかない…

そんな折、真っ直ぐな瞳の男が社長を訪ねてきた。
内に秘めた熱い心を持つ彼は、会計士でもある。
「いかがなさいましたか?」
この青年が声をかけたことにより、社長の運命が劇的に変わっていく。

資料請求

あなたの会社が【M&Aで売れる会社になるための秘訣】を徹底解説した資料を無料で提供しております。
下記のお悩みをお持ちの方は一読ください。

✓ M&Aを検討するための参考にしたい
✓ 売れる会社になるための足りない部分が知りたい
✓ 買手企業が高く買ってくれる評価基準が知りたい

【売れる会社になるためのコツを徹底解説】一部ご紹介します。

✓ 解説 1 定性的ポイント

業種、人材、マネジメント体制などの6つの焦点

✓ 解説 2 定量的ポイント

財務的に価値がある会社かどうか、BS・PLの評価基準

✓ 解説 3 総合的リスト

売れる会社と売れない会社を表にまとめて解説

詳細は無料ダウンロード資料「M&Aで売れる会社と売れない会社の違い」にてご確認ください。