プロラタ方式とは
プロラタ方式とは、元々は返済額を借入金額に応じて比例的に決めて返済額を決定するために用いる方法です。複数の借入先から資金調達している場合、特定の借入先に対して優先的に返済していては借入先によっては不公平感を強くいだくことにつながります。特定の基準をベースに比例的に借入先への返済額を算出して返済する「プロラタ方式」を用いることで、借入先ごとのの不公平感を解消することができるでしょう。
借入先ごとの返済の時期や返済金額についてを「調達」の時点で考えることで、より計画的な資金調達が実現できるようになります。プロラタの考え方を活用して確保した資金を、M&Aの買収資金として使うこともできるでしょう。
プロラタの語源は比例按分を意味する英語
プロラタとは、比例配分するという意味の英語「proratable」に由来します。比例するもしくは按分するという意味のラテン語「Pro rata」を語源とするともいう説もありますが、元々英語はラテン語の影響を強く受けた言語のため、どちらが正しい語源か区別する意味はあまりありません。
プロラタ方式による返済・出資の考え方
プロラタ方式とは複数の金融機関等に返済する際に、返済額を比例按分して算出する不公平感の少ない方式ですが、「どのような基準で比例按分するのか」によって方法が異なります。そのなかでも利用されることが多い「残高プロラタ方式」と「信用プロラタ方式」について見ていきましょう。
もっともシンプルな按分は残高プロラタ方式
プロラタ方式のなかでも、もっともシンプルに計算できるのが「残高プロラタ方式」です。これは、返済額を計算し直す時点での借入金残高を基準として、各借入先への返済額を求めることを指します。
例えば現時点でのA社への借入金残高は5,000万円、B社は2,000万円、C社は1,000万円あるとしましょう。それぞれ借入時には毎月の返済額を設定しましたが、経営状態が思わしくなく、返済に充当できる金額は毎月200万円しか出せないと仮定します。
借入金残高の合計は8,000万円なので、A社からは全体の62.5%、B社からは25%、C社からは12.5%の資金を借入をしていると計算できるでしょう。返済に充当できる200万円をそれぞれの借入金残高比率に比例して振り分けると、A社への返済は月々125万円、B社への返済は50万円、C社への返済は25万円となります。この金額を各金融機関に伝え、残高プロラタ方式での支払に同意を得てからリスケジュールをしていきます。
担保を考慮する信用プロラタ方式
「信用プロラタ方式」は、返済額を計算し直す時点での借入金残高だけでなく、借入金に対して設定した担保も考慮して算定する方式です。それぞれの金融機関への借入金残高から担保の評価額を差し引いた金額をベースとして、返済に充当できる金額を振り分けています。
先程の例から見ていきましょう。A社から融資を受ける際に3,000万円の価値のある担保を提供していたとします。B社から融資を受ける際には1,000万円の価値のある担保を差し入れ、C社からは無担保で借りていたとしましょう。
万が一、破産をしてどの借入先へも返済不可となった場合でも、A社とB社は担保を現金化して返済額の一部として充当することができます。その場合、A社の実質的な借入残高は2,000万円、B社の実質的な借入残高は1,000万円、C社は担保の設定がなかったため1,000万円全額が貸し倒れになります。
信用プロラタ方式では、この万が一のケースをもとにリスケジュール後の返済額を計算していきます。担保すべてが返済に充当されたならば全体の借入残高は8,000万円-3,000万円-1,000万円=4,000万円となり、A社の実質的な借入金残高は全体の50%、B社は25%、C社は25%です。この割合に比例按分して毎月の返済額を算出すると、それぞれ100万円、50万円、50万円となります。
信用プロラタ方式は「万が一担保を返済に充当したら」という仮定をもとに計算する方法です。そのため、担保の有無又はその担保の評価額に応じて、返済額をリスケジュールをすると、残高プロラタ方式の場合と比べ、リスケジュール後の返済額が減ったり、無担保で融資している金融機関はリスケジュール後の返済額が増えたりすることにご注意ください。
プロラタ計算後にリスケジュールを実施
プロラタ方式を用いて月々の返済額を算出したら、毎月の返済額についてのリスケジュールを実施します。残高プロラタ方式では、理論上はすべての借入先への返済が同時に終了することになるでしょう。一方、信用プロラタ方式では担保を現金化しない場合は、担保設定額が大きな金融機関ほど完済までの期間が長くなります。
リスケジュールの交渉は専門家に相談
リスケジュールを行うということは、金融機関にとっては毎月の返済額が当初の設定と比べ少なくなり、返済期間が長引くこととなります。そのため、借入先によっては受け入れがたいものとなるでしょう。
交渉に悩んだ際には、リスケジュール交渉の専門家に依頼するのも有用です。交渉が成功するならば、経営改善に取り組みやすくなるでしょう。
プロラタ方式のメリット・デメリット
プロラタ方式を採用するメリットとデメリットを紹介します。
条項にプロラタを明記すると信用を得やすい
契約の条項にプロラタ方式を採用することを明記することで、出資者からの信用を得やすくなります。万が一のケースに備えて、付け加えておきましょう。
付き合いの長さなどは無関係で公平感がある
プロラタ方式は残高や担保をもとに返済額を算出する方式です。付き合いの長さなどは無関係のため、公平感があります。
出資者からの駆け引きや不安感を抑制できる
融資先が経営不振に陥ると、出資者は「他の借入先を優先して返済したらどうしよう」と不安になるかもしれません。プロラタ方式を採用することを最初に明記することで、余計な駆け引きや不安感を抑制できます。
残高プロラタは担保なしの出資者には不利
残高プロラタ方式は、担保なしの出資者には不利な計算方式です。万が一、返済途中に融資先が破産した場合、借入残高全額が回収不能になってしまいます。
信用プロラタは担保ありの出資者には不利
反対に信用プロラタ方式は担保有の出資者に不利な計算方式です。万が一、返済途中に融資先が破産した場合、多くの借入残高が未回収のまま残ることになります。また、担保の評価額が実際価格よりも低い場合も、不利益を被りかねません。
合理的な説明に基づくリスケジュールの交渉が必要
リスケジュールを行う場合には、まずは専門家の協力のもと経営改善計画書等を作成ののち、遅滞なく返済可能な返済額を算定します。その後、出資者に対し合理的な説明を行う必要があります。根拠のない返済額に基づくリスケジュールを行ってしまうと、合意したリスケジュールを遂行することができず、再度リスケジュールの検討等行う必要が出てきてしまいます。。また金融機関との交渉についても専門家に依頼し、スムーズにリスケジュールが進むようにしましょう。
まとめ
プロラタ方式は公平感のある計算方式ですが、かならずしもリスケジュールの交渉がうまくいくとは限りません。企業間交渉の専門家に依頼し、お互いが納得できる形でリスケジュールを実現させましょう。
M&A DXでは、大手会計系M&Aファーム出身の公認会計士や金融機関出身者等が多数在籍しています。リスケジュールの交渉でお悩みの方は、まずはお気軽にM&A DXの無料相談をご活用下さい。