リクルートが買収した企業10選!買収戦略も解説

会計士 牧田彰俊

有限責任監査法人トーマツ入所、各種業務の法定監査、IPO支援に携わる。その後、ファイナンシャルアドバイザリーサービス部門にてM&A アドバイザリー業務・財務デューディリジェンス業務・企業価値評価業務等に従事。組織再編によりデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社に異動し、主に国内ミドルキャップ案件のM&Aアドバイザリーとして、豊富な成約実績を収める。2018年、これまで以上に柔軟に迅速に各種ニーズに応えるべく株式会社M&A DXを設立し、現在に至る。

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人材業界のトップを走る企業といえば、株式会社リクルートです。採用サイトや就職支援などを筆頭に、不動産住宅サイトや結婚情報誌の発刊、旅行予約サイトなど、多角的に事業を展開し、世に知られる多くのサービスを提供しています。

そのようなリクルートは、実は買収によって事業を展開してきた企業の1つでもあり、興味深い戦略を採っています。この記事では、リクルートの買収戦略や、これまで買収してきた企業などを紹介します。

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リクルートの基本情報

まず、リクルートとはどのような会社なのか、次から紹介します。

企業概要

リクルートの企業概要は、以下のとおりです。

項目内容
企業名株式会社リクルート
最高経営責任者北村 吉弘
創業日1960年 3月 31日
設立日2012年 10月 1日
(リクルートホールディングスの分社化により設立)
資本金3億5千万円
従業員数19,836人
(2023年4月1日時点、アルバイト・パート含む)

企業理念

リクルートの企業理念は、以下のとおりです。

“私たちは、新しい価値の創造を通じ、社会からの期待に応え、一人ひとりが輝く豊かな世界の実現を目指す”

リクルートは、1人ひとりが素直に、自分で決める、自分らしい人生を送ることを経営ミッションとしています。

事業分野

リクルートは、人材業を軸としつつ、多岐にわたる事業を展開しています。

新卒・中途採用サービス
就職・採用・労務支援
住まい
マリッジ&ファミリー
自動車
旅行
ビューティー など

代表的な商品・サービス

リクルートの代表的な商品・サービスを紹介します。

リクナビ…新卒採用の就職情報サイト。掲載企業へのプレエントリーや説明会・面接の予約、企業とのやり取りなどができる
リクナビNEXT…中途採用の就職情報サイト。転職活動を丁寧にサポートする。
SUUMO…不動産・住宅サイト。物件を借りる・買う・建てる・売る・リフォームといった、幅広いニーズに応えている。
ゼクシィ…ブライダル情報サービス。ホテルや専門式場、チャペル、レストランなど、ブライダルに関する情報が豊富に掲載されている。
カーセンサー…日本最大級の中古車情報サイト。様々な切り口から、ぴったりの中古車を探せる。

リクルートの買収戦略

過去にリクルートが買収した企業を例に、リクルートの買収戦略を見ていきましょう。

海外企業を積極的に買収する

リクルートは、海外企業を積極的に買収しています。2009年以降、リクルートは海外企業を中心に買収を加速させています。

リクルートは、海外企業の買収については、2段階でアプローチする戦略を採っています。フェーズ1では、海外展開可能性の検証や、少額投資・マイノリティ出資などから始めます。フェーズ2で、買収を通じて海外展開の加速を狙い、また買収した企業の価値最大化を図ります。

また、リクルートは海外企業を買収する際に「EBITDA」を重視することでも知られています。EBITDAは、国際的な企業の価値指標として用いられるものです。

既存事業で毎期1桁中後半での伸び率を目標としています。買収後にはリクルートの既存事業のノウハウを活かしつつ、買収によってEBITDAを伸ばせる企業に絞って、買収先を選定しています。

オンライン事業に注力する

リクルートは、オンライン事業を軸に買収を進めています。たとえば、ヨーロッパで事業を展開する採用サイトや美容院予約サイトや飲食店予約サイトなど、オンライン事業に力を入れている企業を積極的に買収しています。

というのも、リクルートが国内で展開する事業と同様のものを買収しており、リクルートの既存事業でのノウハウを活かしやすい利点があります。オンライン事業の幅広い分野で、リクルートはグローバルNo.1を目指しています。

買収後は現場にマネジメントを委ねる「ユニット経営」を採用

リクルートの戦略の特徴として、ユニット経営を採用している点が挙げられます。ユニット経営とは、社内を小さな組織(ユニット)に細分化し、各ユニットに目標を管理させる「ユニット経営」を採用しています。つまり、買収後も現場にマネジメントを委ねるのが、ユニット経営です。

ユニットごとに自由裁量を高めることで当事者責任を向上させ、質が高く素早い意思決定を可能としています。ユニット経営を通じて、EBITDAマージンの改善を図っています。

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リクルートが買収した企業

リクルートがこれまで買収した企業を10社紹介します。

①Indeed

リクルートの買収の中でも最大級の買収案件であったのが、アメリカ創業のIndeed買収です。Indeedは、世界最大のユーザー数を誇る求人検索エンジンサービスを提供しています。買収金額は約10億ドル(1130億円)にも及んだと報じられています。

Indeedは「人材募集のGoogle」と言われるほど大規模なサービスで、10億ドルにも及ぶ買収金額にも納得がいく大型M&A案件です。リクルートは本M&Aを機に、人材領域でグローバルNo.1になることが狙いとされています。

②ファイテル

1987年、当時の株式会社日本リクルートセンターは、国際株取引のオンライン決済を手がけていたベンチャー企業「ファイテル」を買収しました。

1984年に日本で通信が自由化されたことを受け、民間事業者が通信事業に参入できることを機に、ファイテルの買収に踏み切りました。

実はこの時、交渉に来ていたのが、ベンチャー企業のファイテルで働いていた、Amazon創業者のジェフ・ベゾスです。買収によって、当時の社長である江副浩正氏がジェフ・ベゾスの上司だった期間があったのです。

③Glassdoor

2018年5月、アメリカの未上場企業Glassdoor, Inc.(グラスドア社)の発行済み株式のすべてを、リクルートが設立する買収目的子会社を通じて買収した。買収金額は12億ドル(約1300億円)の大型買収案件となりました。

グラスドア社は、オンライン求人サービスを提供する会社です。求人企業に関するレビューや給与情報などに関する膨大なオンラインデータベースを求職者に提供することで、求人企業の透明性を高めたことで知られています。

Indeedに続き、さらにグローバルの人材領域で成長を加速させたいのが狙いとされています。

④Hotspring

2015年5月、ヨーロッパでオンライン美容院予約サイト「ワハンダ」を運営する、イギリスの企業「Hotspring」を買収しました。買収金額は約210億円です。

本案件は、リクルートにとって初めての本格的な海外美容市場の参入となっています。ホットスプリングの美容室予約サイトは「掲載店舗数」「ユニークビジター数」「予約数」でNo.1であり、またヨーロッパの美容市場には急成長が見込まれる市場です。

ホットスプリングは競合を大きくリードしている企業でもあり、本案件によって、海外の美容市場への参入を加速させるのが狙いです。

⑤Treatwell

2015年6月、ヨーロッパで美容室予約サイトを提供するオランダの企業「トリートウェル・ホールディングス」を買収しました。買収金額は約50億円です。

同年5月に買収した、同じくヨーロッパの美容室予約サイトを運営する、イギリス・ホットスプリングベンチャーズを通じて、トリートウェルの株式の100%を取得しました。

ホットスプリングに続いて、美容室予約サイト企業の海外展開を加速させています。

⑥Quipper

2015年、リクルートは、ヨーロッパでオンライン学習サービスを提供するイギリスの企業「Quipper(クイッパー)」の全株式を取得し、買収しました。買収金額は47.7億円です。

買収したクイッパーとスタディサプリとの連携を図ります。

⑦Quandoo

2015年、ヨーロッパを中心に飲食店向けオンライン予約プラットフォームを運営している、ドイツのQuandooを買収しました。買収金額は271.1億円です。

クアンドゥーは、ヨーロッパで飲食店予約サイトを提供している会社です。リクルートは海外の飲食店予約サイトの成長加速を見込み、買収しました。なお、2014年のEBITDAは約13億円の赤字であり、赤字企業の買収となりました。

⑧TrustYou

2017年、リクルートは世界最大のクチコミ・プラットフォームを提供する「TrustYou(トラスト・ユー)」の全株式を取得し、買収しました。

トラスト・ユーは、世界のホスピタリティ・旅行業界の顧客やパートナーに、独自のクチコミ・プラットフォームを提供しています。本案件によって、リクルートはトラスト・ユーの世界への事業拡大を目指すとのことです。

【売却済】⑨ゆこゆこ

2006年、リクルートは、シニア向け宿泊情報雑誌を手掛ける株式会社ゆこゆこの株式を取得し、買収しました。ゆこゆこは、無料温泉情報誌「名湯ゆこゆこ」の発行や、 WEBサイト「ゆこゆこネット」を運営しており、50代以上のシニア層から高い評価を得ていました。

本案件によって、両社ともに利用者やサービスを拡充することが狙いでした。その後、シニア層を含むじゃらんnetのユーザー数が順調に増加したことを受け、投資ファンドなど4社に、ゆこゆこの全株式を売却しました。

【売却済】⑩Movoto

2013年、リクルートは中古不動産情報サイトを運営するアメリカの企業Movoto LLCの全株式を取得し、買収しました。リクルートは元々、アジア圏内を中心に不動産や旅行の領域において、メディア事業の事業拡大を行っていました。

アジアに留まらず、他地域にメディア事業を拡大していく第一歩として、本買収に至っています。しかし、その後アメリカでの競争環境を考慮した結果、2017年に堀口雄二氏に全株式を譲渡しています。

まとめ

人材業界No.1のリクルートは、買収によって事業を展開してきた企業でもあります。オンライン事業を軸に買収してきたほか、積極的に海外に投資する戦略を採っています。これらの買収戦略から見るに、リクルートは国内のみならず、グローバルでもNo.1を目指している姿勢がうかがえます。

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