再編とは
もともと、再編とは新たに編成しなおすことを意味します。近年では「組織再編」「事業再編」「銀行再編」「病院再編」のようにビジネスやニュースの現場で用いられることが多くなりました。
再編する背景
再編という言葉が多く用いられるようになった背景には、社会情勢の変化があります。現在日本では、市場の成熟化、国内人口の減少、グローバル化などが進展し、企業にはそれに対応するための変革が求められております。
さらに、中小企業では経営者の高齢化や後継者不足も課題となっています。それゆえ、これまでの体制を維持することが難しくなる企業が出てきており、企業を存続させるための手段を講じた結果、再編につながるケースが増えております。
統合によるシナジー
統合のように企業同士が一体となることで、各企業が単独で活動するよりも売上や生産量が伸びる場合があります。再編によって、このようなシナジー効果が生まれることも、企業が再編を選択する理由の一つです。
組織再編と事業再編の違い
企業の再編を表現する際、「組織再編」や「事業再編」といった用語が使われます。どちらも意味することはほとんど同じですが、会社法上は「組織再編」と表現されます。「組織再編」とは、自社と他社(又は他社事業)との関係で行われる自社組織の再編行為を指します。
組織再編の代表的な4つの手法
一般的に「組織再編」は、合併・会社分割・株式交換・株式移転などを指します。M&Aをで用いられることの多い中心とする手法ですが、中小企業庁が発表している「中小企業白書2018」では、資本提携や業務提携といった各種提携も含めて整理されています。
それぞれの特徴やメリットデメリットについては後ほど解説します。
銀行再編や病院再編にも使われる
「銀行再編」とは競争緩和や経営の効率化のために、銀行同士での提携や合併を進めたことです。近年は地方の人口減少や金利の低下を要因として、地銀の経営が圧迫されていることから、地銀再編の動きが活発化しています。
「病院再編」は主に医療費抑制に向けた公的病院の再編のことです。2019年9月に厚生労働省が「再編や統合について特に議論が必要とされる公的病院」を公表したことにより、病院再編への関心が高まっています。
業界再編との違い
「業界再編」は同じ業界の企業間で組織再編が行われることです。社会・経済などの情勢変化により、生じることが多く、新型コロナウィルスの流行によって今後さらに業界再編が進むと言われています。
M&Aと再編の関係
すでに述べたように、中小企業では経営者の高齢化が深刻で休廃業や解散するケースが多く存在します。少子高齢化や人手不足の影響から後継者選びは容易ではなく、東京商工リサーチが発表した2020年の企業の「後継者不在率」は57.5%(前年比+1.9ポイント)でした。
そこで、近年注目されているのがM&Aによる事業承継です。M&Aとは、買収や合併などをまとめた総称で、組織再編の一種です。
今後、中小企業での再編はM&Aが鍵を握ると思われます。
再編のメリットデメリット
ここから組織再編の4つの手法のメリットデメリットを解説します。
合併のメリットデメリット
合併とは、2社以上の会社が1つの会社になることを言います。会社を新たに設立して承継させるか、一方の既存会社に承継させるかによって新設合併と吸収合併に分類されます。
双方で重なる部門を統一することでコスト削減できるなどのメリットがありますが、一方で、組織が大きくなることで社員間や経営陣とのコミュニケーションが取りづらくなる場合もあります。
株式交換のメリットデメリット
株式交換とは、A社がB社の全株式を取得する際、B社の株主に現金を交付するのではなく、B社株をその価値に見合った数量のA社株に交換する手法です。
買手にとってのメリットは、現金交付なしにM&Aが可能という点です。ただし、A社の株主に旧B社の株主が加わるため、株主構成が大幅に変化する可能性があります。
株式移転のメリットデメリット
株式移転は、既存の1社もしくは複数の企業(ここではA社・B社と仮定)の株主が、新たに設立するC社にA社・B社株式を移転し、その対価としてC社株式の割り当てを受けることで、A社・B社をC社の子会社とする手法です。持株会社設立や経営統合を目的にこの手法が取られます。
合併と異なり、A社とB社の法人格を残したまま再編を進めることができるため、既存の体制を維持できることや顧客の認知度が保てる点がメリットです。ただし、新たにもう一つの企業(C社)を設立しなければならないため、設立・維持等のための費用が発生します。
会社分割のメリットデメリット
会社分割とは、A社の一部の事業を切り離し、B社に承継させることです。合併と同じように、会社分割のために新たに会社を設立するか既存企業に承継させるかによって新設分割と吸収分割に分けられます。
例えば、自社で不採算事業がある場合、それを切り離すことで、経営の効率化を進めることができます。一方で、切り離した事業に属している優秀な人材や技術も承継した会社に引き継がれます。
提携を再編のひとつに含むこともある
冒頭で紹介したように、事業再編と表現する際には提携も含めるケースがあります。
提携の種類
提携は資本移動の有無によって資本提携と業務提携に分けることができます。ただし、広義の資本提携にはすでに紹介した組織再編の手法と重なる部分も多いため、ここでは主に主に業務提携について紹介します。
業務提携は複数の企業が連携して事業を運営することを指し、、代表的なものに共同開発のような「技術提携」、生産や製造の工程を一部依頼する「生産提携」、技術力がある企業の製品を販売力がある企業が販売する「販売提携」があります。
提携することのメリット
お互いの強みや経営資源を活用することができ、シナジー効果が期待できます。また、合併などに比べると比較的緩やかな結びつきのため、自社の独立性を保つことができます。
提携することのデメリット
提携によってシナジー効果が発揮できたとしても、利益の配分が問題になることがあります。また、他社に技術が流出してしまう懸念もあるでしょう。
さらに、資本的な結びつきがないことで提携解消が容易なため、一方が前向きでも相手の意向次第で容易に提携が解消されてしまう可能性があります。
再編事例を紹介
ここから、実際に日本でどのような再編がおこなわれてきたのかを3つのケースを通してみていきましょう。
イオン北海道とマックスバリュ北海道
2020年1月に、イオン北海道が同年3月にマックスバリュ北海道と経営統合することを発表しました。イオン北海道側は、国内における食環境の変化や異業種・Eコマースとの競争激化を統合に至った主な理由としています。
なお、帝国データバンクが発表している「2018年度 北海道内スーパーストア売上高ランキング」によると、イオン北海道は売上高2,042億3,300万円で道内2位、マックスバリュ北海道は1,292億8,000万円で道内3位です。今後さらに北海道におけるスーパーストアの寡占化・再編が進む可能性があります。
出典:帝国データバンク札幌支店「2018年度 北海道内スーパーストア売上高ランキング」
楽天経済圏の形成
楽天はインターネット・ショッピングモール「楽天市場」からスタートしましたが、その後金融業や通信業など異業種にも進出しています。
楽天が提供するさまざまなサービスで構成された経済圏が「楽天経済圏」です。楽天経済圏は楽天の数々の組織再編によって形成されたと言っても過言ではありません。
まず2003年にディーエルジェイディレクト・エスエフジー証券株式会社を子会社化します(現楽天証券)。続いて、2004年にはあおぞらカードを子会社化し、楽天カードが誕生しました。
さらに、2009年には楽天が保有していたイーバンク銀行の優先株式を普通株式に転換することで子会社化し(現楽天銀行)、銀行業にも進出しています。
福岡銀行
地銀再編で注目を集めたのが、福岡銀行の持株会社であるふくおかフィナンシャルグループの動向です。ふくおかフィナンシャルグループは、今後の人口構造の変化を踏まえて、長崎県の十八銀行との統合を2018年10月に発表しました。
この統合で誕生したのが十八親和銀行です。長崎県にはふくおかフィナンシャルグループ傘下の親和銀行もあったことから、当初独占禁止法抵触の懸念がありましたが、融資先企業が競合金融機関から借り換えて融資シェアを下げることにより、公正取引委員会が本件統合を認めるに至っています。
2021年2月に実施された「九州・沖縄地区のメインバンク調査」では、ふくおかフィナンシャルグループ傘下の福岡銀行と十八親和銀行はそれぞれ1位、3位でした。また、十八親和銀行は長崎県内で84.9%のシェアを占めています。
出典:帝国データバンク福岡支店「九州・沖縄地区のメインバンク調査(2021年2月調査)」
まとめ
再編は、情勢の変化に対応し生き残りを図るための手段としても有効です。
例えば、組織再編の一環でM&Aを実施することにより、中小企業の後継者不足の問題を解決することも可能です。しかし、M&Aを成功させるためには知識や経験を要する専門家のアドバイスを受けなければなりません。
M&A DXのM&Aサービスでは、大手会計系M&Aファーム出身の公認会計士や金融機関出身者等が多数在籍しています。事業承継でお悩みの方は、まずはお気軽にM&A DXの無料相談をご活用下さい。