相続時精算課税制度とはどんな制度?申請方法や制度の内容、相続税との関連を解説

会計士 山田武弥

有限責任監査法人トーマツ入所。金融業及び卸売業を中心とした各種業務の法定監査業務に携わる。 その後、大手税理士法人及びコンサルティング会社にて事業承継・事業再生・法人顧問業務に従事。 組織再編税制を活用した事業承継スキームの構築や株価対策、事業再生計画の立案やその後のモニタリング及び金融機関対応等に豊富な経験を有する。 山田武弥公認会計士・税理士事務所として独立後、株式会社M&A DXに参画し、現在に至る。

本記事の監修を務める。メンバーの紹介はこちら

この記事は約9分で読めます。

相続時精算課税制度は、60歳以上の父母や祖父母から、20歳以上の子や孫などに財産を贈る場合に適用される贈与税の制度です。最大2,500万円までが非課税となり、贈与税の対象から外される特例が適用されます。この記事では、実際の申請方法や制度の内容、そして相続税との関係について詳しく紹介します。

  目次  【閉じる】

相談先を迷っている方はM&A DXへ!
資料ダウンロード
M&A DXのメルマガ登録する
セカンド オピニオン

本記事のポイント

  1. これから相続時精算課税制度を使い、子や孫に財産を贈与しようとする方を対象にした記事です。
  2. 相続時精算課税制度についてわかりやすく解説しています。
  3. 特に相続税はどうなるのかという点に詳しく触れています。

相続時精算課税制度について詳しく解説

相続時精算課税制度について詳しく解説

相続時精算課税制度は、60歳以上の父母や祖父母が子や孫に財産を贈与する際に使われる制度です。この制度を用いると、2,500万円以下の財産を贈与した場合に贈与税が発生しません。また、相続税を支払う際、制度に利用した時期の財産価値から金額が算出されるため、財産価値の低い時期に利用した場合には節税対策にもつながります。

ここでは、どのような状況であればこの制度が利用できるのか、対象者はどうなるのかを解説します。

相続時精算課税制度は子や孫への生前贈与について選択できる

相続時精算課税制度は、生前贈与を選択することができます。開発予定の土地など、将来確実に価値の上昇が見込まれる財産があれば、相続時精算課税制度を利用して、生前贈与を行うことが相続税対策になります。いつ自分の身に何かあっても、大切な子や孫に財産を残したいと思っている方は、何かある前に制度を利用しておくと安心して過ごせるでしょう。

相続時精算課税制度の対象

贈与する側の対象者は、基本的には贈与した年の1月1日時点で60歳以上である父母や祖父母です。対して、受け取る側は、贈与された年の1月1日時点で20歳以上の子もしくは孫という条件も必要です。

例を挙げると以下のようになります。
● 75歳の父親が、40歳の息子に居住用の家を生前贈与
● 80歳の祖父が、20歳の孫に自身が所持する預金を贈与

逆に適用されない対象者の例は以下のとおりです。
● 40歳の父親が、16歳の息子に自身が所持する預金を贈与
● 59歳の祖父が、12歳の孫に自身が所持する預金を贈与

ポイントは、贈与を行おうとした年に贈与をしようとする者が60歳を超えていること、そして受け取る対象者が20歳を超えていることです。

相続時精算課税制度の具体例

具体例を使って解説します。

例えば、5000万円の財産を持っているAさんがいたとします。
Aさんは相続時精算課税制度を使って、息子に2500万円を贈与しました。
この時は2500万円まで非課税となるため、贈与税は1円もかかりません。
贈与した後、Aさんの手元には2500万円が残ります。

その後、Aさんが亡くなった際に残っている財産は2500万円です。
贈与した人が亡くなってしまった時には、手元の財産だけではなく、相続時精算課税制度を使って贈与した財産も含めて相続税を計算しなければいけません。

つまり、Aさんの場合は手元の財産2500万円と、相続時精算課税制度で贈与した財産2500万円を足した、5000万円に対して相続税が課税されることになります。

「2500万円まで非課税」と表現されているので一見お得に見えますが、最終的には相続税が課税される点に留意が必要です。

M&A DXのサービスはこちら
相談先を迷っている方はM&A DXへ!
資料ダウンロード
M&A DXのメルマガ登録する
セカンド オピニオン

相続時精算課税制度の申請方法とは?

相続時精算課税制度の申請方法とは?

相続時精算課税制度を利用するには、税務署に申請をする必要があります。どのような方法で申請を行っていくか、手続きの方法と必要な書類について詳しく紹介します。

手続きの方法

相続時精算課税制度を利用する際には、管轄の税務署に必要書類と添付書類を提出する必要があります。申請期間は贈与を受けた年を基準として翌年の2月1日〜3月15日です。

必要な書類について

相続時精算課税制度の申請に必要な書類は大きく分けて、提出書類と血縁関係や年齢を証明するために必要となる添付書類です。どれか1つでも漏れがあると申請を正常に受け付けてもらえないため、必ず申請前に確認しましょう。

提出書類

提出書類は、贈与税の申告書と相続時精算課税選択届出書の2つがあります。贈与税の申告書で贈与があったことを申告して、相続時精算課税選択届出書を出すことで贈与税を非課税にしてほしいという申請を出す流れです。

どちらか1つが欠けてもいけないので注意しましょう。特に、贈与税の申告書は第1表と第2表があるので、作成したあとは、書類に漏れや不備がないか最後まで確認することが大事です。

添付書類

添付書類は以下の3つです。
● 受贈者の戸籍謄本または戸籍抄本
● 受贈者の戸籍の附票
● 贈与者の住民票または戸籍の附表

これらの添付書類は、制度の利用可否のポイントとなる以下を確認するために必要になります。

● 贈与者の親族であること
● 受贈者が20歳以上であること
● 贈与者が60歳以上であること

提出書類を揃えたら、添付書類にもれがないか確認しましょう。

相続時精算課税制度のメリットとデメリット

相続時精算課税制度のメリットとデメリット

相続時精算課税制度は、2,500万円まで非課税で贈与ができる制度ですが、制度を適用する場合、必ずしもメリットだけではなくデメリットもあるため、これから紹介します。

相続時精算課税制度のメリット

相続時精算課税制度のメリットとして、以下の3点が挙げられます。

2,500万円まで非課税 で贈与できる

相続時精算課税制度の基本ともなる内容ですが、2,500万円までならば申請手続きをすることで、本来かかる贈与税が発生しません。

財産を送りたい人に確実に移行できる

条件として贈与者は60歳以上の父母や祖父母、受贈者は20歳上という条件はありますが、確実に財産を贈与したい人に生前に移行可能です。そのため、財産の承継について贈与者の意向を明確にすることができます

相続財産の価値の上昇が抑えられ相続税の節税になる

この制度を用いて贈与した財産は、相続税の節税対策にも用いられます。その理由として、対象となる財産は、相続時に発生する税金が贈与された時の価値を元に算出されるためです。今の価値が底値であり、今後価値が高まると予想されるようなものを譲り受ける場合には、相続時清算課税制度を用いると良いでしょう。

相続時精算課税制度のデメリット

相続時精算課税制度はメリットばかりというイメージがありますが、実はデメリットもあります。具体的には以下の4点が挙げられます。

贈与ですべて完了するわけではない

相続時精算課税制度を利用する場合に注意しておくことは、贈与を受ける度に、贈与税の申告手続きが必要なことです。もし、申告を正当な理由なく怠った場合は、たとえ非課税の対象となる2,500万円以内だったとしても贈与税が加算されます。

いったん贈与が終わって、手続きが済んだら2,500万円までなら非課税と思い込んで、贈与税の申請を怠らないようにしましょう。

制度を選択すると暦年課税が受けられない

年間110万円までなら非課税にできる暦年贈与がありますが、相続時精算課税制度を利用した場合、暦年贈与が利用できなくなります。毎年110万円ずつ贈与したほうが良かったというケースもあるため注意しましょう。

小規模宅地等の特例が適用されない

亡くなった人が自宅または事業用に使用していた宅地等のうち、一定面積までの部分については、相続税評価額を80%まで減額できる小規模宅地等の特例制度というものがあります。相続時精算課税制度を利用すると、この特例が適用されなくなります。理由としては、特例の対象が相続した土地であるため、まだ亡くなっていない方の土地を譲り受けても対象外となるためです。あまりにも高い土地や家屋の場合、相続時精算課税制度を利用することで逆に損することもあるため注意しましょう。

財産の価値が下がると余計な税金を払うことになる

贈与者が亡くなったあとの相続時には、土地や家屋などが贈与時の価額で再評価されます。もし、贈与時と比べて再評価した段階で財産の価値が下がってしまうと、本来の財産価値と比較して高い税金を支払うことになります。また、変動率が高いものを生前に贈与してしまうと、贈与者が亡くなった後に損する可能性も出てくるので注意が必要です。

まとめ

まとめ

相続時精算課税制度は、2,500万円までなら税金を非課税にできる制度のため、生前に財産を大切な子や孫に譲るために利用されます。しかし、想定しないことが起こった場合、どのようなことが起こるのかを事前に把握しておくことも大切です。制度の特徴から見ると、利益が出る不動産を譲ることで子や孫に安定した収入を残せるという面もあり魅力的ですが、注意すべき点を押さえておき、もしもの時に対応できるようにしましょう。

M&A DXでは、大手会計系M&Aファーム出身の公認会計士や金融機関等出身の専門家が多数在籍しています。相続や税金対策でお悩みの方は、まずはお気軽にM&A DXの無料相談をご活用下さい。

株式会社M&A DXについて

M&A DXでは、大手会計系ファーム出身の公認会計士や税理士、金融機関等出身の専門家が、豊富なサービスラインに基づき、最適な相続をサポートしております。相続や事業承継でお悩みの方は、気軽にM&A DXの無料相談をご活用下さい。
無料相談はお電話またはWebより随時お受けしておりますので、相続をご検討の際はどうぞお気軽にお問い合わせください。


相談先を迷っている方はM&A DXへ!
資料ダウンロード
M&A DXのメルマガ登録する
セカンド オピニオン

SHARE

M&Aセカンドオピニオン

セカンドオピニオンとは、M&Aを検討する中で生じる不安や迷い・懸念を第三者視点で全体を俯瞰しながら、個々の状況に寄り添ってアドバイスするサービスです。
こんなお悩みの方におすすめです。

✓ M&A業者が進めるスキームで適切なのか知りたい
✓ M&A業者と契約したが連絡が途絶えがちで不安だ
✓ 相手から提示された株価が妥当なものか疑問に感じる
✓ 契約書に問題がないか確認したい
✓ M&A業者が頼りなく感じる

どんな細かいことでも、ぜひ【M&A DXセカンドオピニオンサービス】にご相談ください。
漠然とした不安や疑問を解消できます。

無料会員登録

会員の皆様向けに週1回、M&A・事業承継・相続に関わるお役立ち記事、動画などをお知らせするメールマガジンを配信させていただきます。
お役立ち記事はこちらからピックアップしてお届けいたします。
動画はM&A DXチャンネルからピックアップしてお届けします。
配信を希望される方はメールアドレスをご登録の上、お申し込みください。登録料は無料です。

LINE登録

LINE友達登録で、M&A・事業承継・相続に関わることを気軽に専門家に相談できます。
その他にも、友達の皆様向けに、動画などをお知らせするメールマガジンを配信させていただきます。
相談を希望される方は、ぜひお気軽にLINE友達登録へお申し込みください。

M&A用語集

M&A DX用語集では、M&Aに関する専門用語についての意味や内容についてご紹介しております。
M&Aや事業承継は英語を使うケースが多く、初めて聞くと意味が分からないまま会話が進み、後で急いで意味を調べるような経験がある方もいらっしゃると思います。M&Aの用語に関しては、一度理解してしまえばその後の会話で使えるようになるため、辞書代わりにご利用下さい。
※会計士の当社代表牧田が、動画で解説している用語もあります。

まんがでわかる事業承継

すべての人を幸せにするM&Aを、まんがでわかりやすく解説します。
「事業承継は乗っ取りではないのか?」と不安に思う社長に対し、友好的事業承継のコンセプトをわかりやすく解説します。

~あらすじ~
社長は悩んでいた。
創業して40年、生涯かけて取り組んだ技術も途絶えてしまうことに。
何より、社員を裏切る訳にもいかない…

そんな折、真っ直ぐな瞳の男が社長を訪ねてきた。
内に秘めた熱い心を持つ彼は、会計士でもある。
「いかがなさいましたか?」
この青年が声をかけたことにより、社長の運命が劇的に変わっていく。

資料請求

あなたの会社が【M&Aで売れる会社になるための秘訣】を徹底解説した資料を無料で提供しております。
下記のお悩みをお持ちの方は一読ください。

✓ M&Aを検討するための参考にしたい
✓ 売れる会社になるための足りない部分が知りたい
✓ 買手企業が高く買ってくれる評価基準が知りたい

【売れる会社になるためのコツを徹底解説】一部ご紹介します。

✓ 解説 1 定性的ポイント

業種、人材、マネジメント体制などの6つの焦点

✓ 解説 2 定量的ポイント

財務的に価値がある会社かどうか、BS・PLの評価基準

✓ 解説 3 総合的リスト

売れる会社と売れない会社を表にまとめて解説

詳細は無料ダウンロード資料「M&Aで売れる会社と売れない会社の違い」にてご確認ください。