株式贈与をする手順とは?発生する税金の計算方法や節税のコツも紹介

会計士 山田武弥

有限責任監査法人トーマツ入所。金融業及び卸売業を中心とした各種業務の法定監査業務に携わる。 その後、大手税理士法人及びコンサルティング会社にて事業承継・事業再生・法人顧問業務に従事。 組織再編税制を活用した事業承継スキームの構築や株価対策、事業再生計画の立案やその後のモニタリング及び金融機関対応等に豊富な経験を有する。 山田武弥公認会計士・税理士事務所として独立後、株式会社M&A DXに参画し、現在に至る。

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株式贈与により節税できたりスムーズに事業承継が行えたりするケースが少なくありません。この記事では株式贈与を行う手順について具体的に詳しく解説します。また贈与の際に発生する税金や、それらの税金を抑えるコツについても紹介ますのでぜひご覧ください。

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本記事のポイント

  1. 株式贈与や事業承継を考える方向けの記事です。
  2. 株式贈与の手順や発生する税金、節税のコツについて解説しています。
  3. 株式贈与か株式譲渡で迷ったときは、それぞれの税負担について考えることがポイントです。

株式贈与の事例

株式贈与の事例

株式贈与が起こるシーンをいくつか紹介します。

● 相続税節税のため、毎年少しずつ相続人に株式を贈与する
● 株価が上昇傾向にあるので早めに贈与し、節税する
● 財産を早期転移する
● 社員に自社株をプレゼントする

死後に財産を渡すことになると相続税が発生しますが、生前であれば贈与税が生じます。株式の価格によっては相続税よりも贈与税のほうが税率が低いこともあるので、節税につながることもあるでしょう。また、贈与税は贈与する金額が低いほど低率になるため、何年かに分けて贈与することでさらに節税できることがあります。

保有している株式が上昇傾向にあるときも、株式贈与のタイミングです。上場株式を贈与する場合、株価は贈与した日の終値か贈与月の終値の平均額、前月の終値の平均額、前々月の終値の平均額のうちのもっとも低い値で評価するので、株価が上昇し、なおかつ今後も上昇すると考えられるときは、早めに贈与することで贈与税の軽減を図れるでしょう。

また、特定の人にいずれ渡そうと思っている株式がある場合には、死後ではなく生前に渡す株式贈与を選ぶこともできます。死んでからでは喜んで受け取っているのか確かめるすべはありませんが、贈与するならばその場で喜ぶ顔を見られるというメリットもあるでしょう。

企業の中には業績が上がったときなどに、社員に社長が保有している自社株をプレゼントすることもあります。ボーナスとして受け取ると所得税等が発生しますが、株式の価値が110万円以内でなおかつ社員がその年にほかの贈与を受けていない場合は全額非課税になるという点も特徴です。また、社員が自社株を保有することで、より企業に愛着を持ち、株価上昇のためにも仕事に励むようになるという効果も期待できるかもしれません。

相続税の計算方法

相続税の計算は下記手順にて行います。
1.相続や遺贈などにより財産を取得した人ごとに、課税の対象になる遺産の価格(課税価格)を次のように計算します。

財産の価額+みなし相続財産-非課税財産の価額+贈与財産の価額ーマイナスの費用=純資産価額

2.1で算出した金額を全員分足して合計を出して計算します。

3.次に、2で求めた課税遺産総額を法定相続分で分けます。

4.上記3で計算した相続税の総額を財産を取得した法定相続人の相続税額を算出します。
各人の遺産総額×税率-控除額=仮相続税額

5.相続人全員で納める相続税の総額が分かれば、財産を取得した人の課税価格に応じて割り振り、法定相続人ごとの税額を計算します。

株式を受け取らない親族や贈与後のことも考慮する

株式の評価額は高額になることもあるため、株式を特定の親族だけに贈与し、他の親族に渡す財産との間に金額の不均衡があると、相続後に「特別受益」や「遺留分侵害」の問題が生じる可能性があります。

特別受益

一部の相続人だけが被相続人から生前贈与などを受けた場合の、その相続人が受け取った利益のこと。相続人間の不公平をなくすよう、遺産分割の際に調整計算がされることがある。

遺留分

兄弟姉妹以外の法定相続人が最低限相続財産の一定割合を取得できる法定の権利のこと。遺留分を侵害された相続人は、一定の期間、侵害者に対し遺留分侵害額請求を行うことができる。

相続税の計算の仕組み

相続税の基準となっているのが「基礎控除額」です。財産を受け継ぐ場合はこの基礎控除額以上であれば、相続税が発生します。しかし、相続したからと言って、すべての人が相続税の対象になる訳ではありません。
相続税の基礎控除額は基本的には3,600万円が最低金額になっています。つまり、相続する遺産が「3,600万円以下」の場合、相続税は発生しません。この「3,600万円」を相続税の基準となります。

また、保険金や不動産、預貯金を入れると3,600万円以上になっても、必ずしも相続税がかかる訳ではないです。

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贈与時の株式の評価方法

上場株式

贈与を受けた上場株式の評価額は、以下のうち最も低い価格になります。
1 贈与日の最終価格
2 贈与月の最終価格の平均額
3 贈与月の前月の最終価格の平均額
4 贈与月の前々月の最終価格の平均額
所有する株式が高額である場合は、相続時精算課税制度を活用します。ただし、一般的には暦年贈与により多くの人に、長い年月をかけて贈与を行うことが有効です。

非上場株式

非上場株式の評価額の算定方法は複雑であるため詳細な説明は割愛します。
非上場株式の場合は上場株式の株価、対象会社の決算内容、税制改正などによって、大きく変動することがありますので定期的に専門家による株価算定を行うことをおすすめします。

株式贈与をする手順

株式贈与をする手順

上場株式を贈与する場合は、株式を保有する証券会社に贈与したい旨を伝え、証券会社が発行する所定の依頼書と贈与者が用意する贈与契約書を提出することで手続きが完了します。不明な点がある場合は、株式を保有する証券会社に問い合わせましょう。

一方、非上場株式を贈与する場合は、株式を証券会社に預けているわけではないので、贈与者(贈与を行う人)自身が手続きを進めて行くことになります。以下の手順で贈与を実施してください。

1.株式贈与契約書の発行

贈与するという事実を証明するためにも「株式贈与契約書」を作成します。株式贈与契約書には、贈与者が贈与する意思を持ち、受贈者(贈与を受ける人)が受贈する意思を持っていることを明確に記載しましょう。

株式贈与契約書は印紙不要

契約書には印紙を貼ることが多いですが、株式贈与契約書に関しては印紙の貼り付けは不要です。なお、現金を贈与する場合の贈与契約書も印紙不要ですが、不動産の贈与契約書は印紙を貼ります。

2.会社に対して株式譲渡の承認を申請する

譲渡制限がある株式を贈与する場合は、会社に株式譲渡の承認を申請しましょう。取締役会がある場合は取締役会で、ない場合は株主総会で譲渡承認決議を行います。譲渡承認を得られた場合は、株主名簿に受贈者の氏名や住所、株数などを記載すれば手続きは完了です。

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株式贈与によって発生する税金

株式贈与によって発生する税金

株式贈与を行う際に税金が発生することがあります。個人が保有する株式を贈与する場合の税金の種類と税額計算について見ていきましょう。

【個人への贈与】受贈者に贈与税が課税

個人に株式贈与を行う場合、受贈者に贈与税が課税されます。

贈与税は受贈者が1年間に得た贈与額全体から求めていきましょう。今回贈与を受けた株式の価値が800万円で、その年は他に受贈したものがなかったとします。

贈与税の基礎控除額110万円を差し引いた690万円が贈与税の課税対象額です。贈与税の税率は「親もしくは祖父母から20歳以上の子や孫への特例贈与」と「一般贈与」では異なるので注意しましょう。

この場合は親から成人した子への特定贈与とすると、690万円に対する贈与税率は30%、控除額は90万円なので、以下のように贈与税額を計算できます。

● 690万円×30%-90万円=117万円

なお、同じく800万円を一般贈与した場合は、課税対象額690万円に対する贈与税率は40%、控除額は125万円なので、以下のように贈与税額を計算できます。

● 690万円×40%-125万円=151万円

贈与者は課税されない

贈与は「無償で渡す行為」です。そのため贈与者が受け取ったものはなく、よって、課税もありません。

【法人への贈与】受贈者に法人税が課税

法人に他社株式の贈与を行う場合、受贈者である法人には「法人税」が課税されます。 但し、株式を発行している会社にその株式を贈与した場合には、法人税は課税されません。

贈与者にはみなし譲渡所得税が課税

法人に無償で株式を贈与した場合には、贈与者に譲渡所得があるものとして考えます。そのため、法人に贈与した場合の贈与者には「みなし譲渡所得税」が課税されることになります。

贈与税を節税するコツ

贈与税を節税するコツ

個人に贈与するときには、贈与者自身は課税されませんが、受贈者は受け取った価値に従って課税されることになります。少しでも贈与税が少なくなるためにも、贈与のタイミングや節税制度の利用を検討しましょう。

次の3点に留意すると贈与税を節税できることがあります。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

利益が低く株式評価額が低いときに贈与する
暦年贈与を利用して非課税枠内で贈与する
相続時精算課税制度を利用して贈与する

利益が低く株式評価額が低いときに贈与する

株式は評価額に対して税金が発生するので、少しでも株式評価額が低いときに贈与するようにしましょう。上場株式の場合なら株価が低いとき、ただし贈与する前月や前々月の終値の平均でも評価できるので、株価が上がってきたタイミングで贈与することで、以前の株価が低かった頃の価値で贈与税を計算することができます。

非上場株式の場合は、会社の規模や経営権を有しているかどうかでも株価の評価方法が変わるので、株式譲渡や事業承継の専門家に計算を依頼するほうが良いでしょう。

暦年贈与を利用して非課税枠内で贈与する

年間の贈与税を計算する際には贈与税の基礎控除額110万円を差し引きますが、この基礎控除額を活用するためには、複数年にわたり複数人に贈与をするのが効果的です。

「暦年贈与とは、毎年1月1日から12月31日までの一年間(暦年)の贈与額が110万以下であった場合に、贈与税がかからないというしくみを使った贈与の方法です。」

例えば2,200万円の価値のある株式があり、1人の子どもに全額をまとめて贈与するとしましょう。この場合は、2,200万円から110万円を差し引いた2,090万円が課税対象額となり、贈与税率は45%、贈与税額は675.5万円となります。

しかし、5人の子どもや孫に110万円ずつ4年間にわたって贈与したとしましょう。受贈者各自がほかに贈与を受けたものがないとすれば、贈与税額は0円になります。

死亡前3年間の暦年贈与は相続税計算の対象となる

贈与税の110万円の非課税枠を利用した暦年贈与で、贈与税額を大きく削減することは可能です。しかし、贈与者の死亡前の3年間における暦年贈与は相続税の対象内となるため、課税対象となることがあります。贈与を思い立ったときは、健康なうちから早めに少しずつ実施するほうが良いでしょう。

定期贈与とみなされるときも控除は無効

また、毎年定期的に贈与を繰り返していると、本来はまとめて贈与する財産なのではないかと判断されて一括で贈与税が課せられることがあります。定期贈与とみなされないための対応が必要となります。

相続時精算課税制度を利用して贈与する

贈与する株式の評価額が高く、暦年贈与では時間がかかりすぎるという場合には、「相続時精算課税制度」の利用も検討できるでしょう。この制度の控除額は2,500万円と大きく、また、控除額を超えた金額には超過累進税率ではなく一律20%の税率が適用されるので、通常の贈与一定額を一括で贈与する場合に贈与税額の過度な負担を軽減することができます。

贈与時には贈与財産に対する軽減された贈与税を支払い、その後、相続時にその贈与財産とその他の相続財産を合計した価額を基に計算した相続税額から、既に支払った贈与税額を控除して精算します。そのため、相続税の計算対象となってしまうものの、株価が大幅に下がるタイミングで精算贈与をすることで、相続財産の圧縮を図ることが可能となります。

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株式贈与と株式譲渡はどちらが節税できる?

株式贈与と株式譲渡はどちらが節税できる?

無償で株式をわたす「株式贈与」であれば、贈与者には税金は発生しません。しかし有償で株式をわたす「株式譲渡」を選ぶときは、所得税は発生するものの譲渡による利益も入るので、トータルで見れば譲渡のほうが渡す側にはメリットになることもあります。

受贈者に関しては、贈与と譲渡のどちらが負担が少ないかはケースバイケースです。事業承継の専門家に相談し、具体的にシミュレーションしてもらうことをおすすめします。

まとめ

まとめ

株式贈与をするときは、贈与のタイミングや金額などにより贈与税が大きく変わることがあります。少しでも受贈者の税負担減を考えるのであれば、定期贈与に該当しないように工夫しつつ早めに暦年贈与を開始することができるでしょう。また、相続時精算課税制度を利用することでも、節税を実現できることがあります。

株式の評価額などによっては、贈与ではなく譲渡のほうが受贈者の税負担が軽減されるケースも少なくありません。ぜひ事業承継の専門家に相談し、税額をシミュレーションしてみましょう。

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関連記事はこちら「株式譲渡を無償で行う場合の税金は?契約書や注意点を解説!」
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