事業承継とM&Aの違いは?3分でわかる動画
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事業承継とM&Aの違いについて
M&Aというと大企業同士の買収劇というイメージが根強くあります。自分の子どもに事業を譲る事業承継と結びつかない方も多いかもしれません。事業承継について考えていくためには、M&Aについても把握していくことが重要です。
事業承継はM&Aの手法のひとつです。近年は中小企業の事業承継において、M&Aを活用する企業が増えています。ここからは、事業承継とM&Aそれぞれの特徴や違いを紹介していきます。
事業承継とは
事業承継というのは、会社の経営を次の後継者に引き継ぐことを指します。特に中小企業では、次の経営者が誰になるのかは非常に重要なポイントです。会社が長く存続していくためには、経営者の手腕が問われます。
事業承継を実行する際には、親族に譲るのか従業員で後継者を探すのかなど、考えられる選択肢は会社によって異なります。身近に後継者がいない場合は、株式上場やM&Aによる第三者への事業承継も検討する必要があります。事業承継と一言でいっても、注目しなければならないポイントはいくつも存在しているのです。
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M&Aとは
M&Aというワードは会社経営に興味がない方でも、ドラマやニュースで聞き覚えがあるかもしれません。M&Aは「Mergers(合併)」と「Acquisitions(買収)」の頭文字をとった言葉です。企業の合併や買収の総称として使用します。
ドラマでは「大企業による強引な買収劇」というイメージで描かれることが多いですが、実際のM&Aでは売り手側にも相応のメリットがあります。M&Aをすることで、潤沢な資金を調達したり、コア事業にリソースを集中できたりするのです。
近年ではM&Aを取り入れる企業が増えており、特に中小企業では後継者問題を解決する方法としてM&Aを多く活用しています。中小企業の経営者にとって、M&Aは重要な選択肢のひとつとなっているのです。
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事業承継でM&Aを選択するメリットは多い
事業承継をM&Aで行うと、優れたノウハウ・顧客網等を持った企業とのマッチングが可能になります。以下では、事業承継でM&Aを選ぶメリットについてご説明します。
事業承継者の選択肢が増える
事業承継でM&Aを実施することは、事業承継先の選択肢を増やすことにつながります。自分の子どもが別の仕事をしていて家業を継ぐ予定がない、といった会社の後継者候補がいない場合でも、身内以外の企業が事業承継先となれば廃業を避けることができます。
ノウハウや経営資源が豊富で、事業への理解が深い事業承継先と出会うことも可能です。M&Aを行うことで全国の企業に選択肢を広げ、双方にメリットをもたらすことができる企業と出会える可能性が高まります。
事業承継後に事業が拡大する可能性もある
業績好調な企業に事業承継を行うことで、結果として事業承継前よりも事業が拡大することもあります。自社にない力を持った企業と出会うことができれば、親族に事業承継するよりもよい結果をもたらすことは十分にあり得るのです。
ただし、他社に事業承継を行うと社風が変わり、在籍していた従業員との間で軋轢を生じさせる恐れもあるためご注意ください。
事業承継後も継続して収入が得られる可能性がある
M&Aで自社を売却することで、創業者利潤を得ることができます。廃業を選択した場合には廃業費用がかかるうえに、収入を得ることもできません。
創業者利潤を元手に新たなビジネスや投資を始めたり、M&A後も顧問として関与することで、老後資金に充てたりすることも可能です。
事業承継にかかる税金が少ない
事業承継をM&Aで行う場合には、かかる税金の額が少なく済むというメリットがあります。M&Aは株式の売却という形になるため、支払う税金は分離課税の「株式譲渡益課税」のみで済みます。
なお、事業承継ではなく会社を清算する場合には、法人課税と個人課税をそれぞれ支払う必要があります。
清算(廃業)よりもM&Aのほうが会社の価値が上がる
廃業することを前提とした場合、企業の価値が本来よりも低く見積もられてしまいます。結果として、これまで積み上げてきた企業の歴史や信頼、実績が、正当に評価されなくなります。
M&Aで事業承継を行えば、企業の価値が低く見積もられるというよりは、場合によっては営業権という無形の価値として評価されることがあります。その結果、事業承継により、価値が上がることもあります。
【関連記事】M&Aを行うメリット・デメリットとは?売り手側・買い手側目線で解説!
事業承継をM&Aにした際に起こりうる問題点もある
事業承継をM&Aで実施すれば、「節税対策」や「事業拡大」などメリットがあります。しかし、デメリットがあることにも注意が必要です。
第三者に会社を引き継ぐため、これまでとは仕事のやり方が変わることで退職者が出ることもあります。また、私的な資産の処理も必要です。M&Aが締結するまでに、ある程度の時間がかかることも避けられません。
以下では、事業承継をM&Aで実施した際に起こりうる問題点についてご紹介します。
既存の社員と新たな社員との軋轢
上述したとおり、M&Aによりこれまで第三者であった会社とグループになることで、社風が変わるおそれがあります。その場合、既存の社員と新たな社員との間で仕事の進め方や考え方などが異なり、既存社員が退職する事態に発展することも考えられます。
会社の資産でありながら私用で用いてきたものをどうするか
会社の資産として購入した車や土地、家などをオーナー一族が個人的に使用していた場合、会社の資産のままにしておくと、事業承継した後使用することができなくなる可能性があります。
個人的に使用してきたものがある場合には、買取か処分か事業承継時に決めておいたほうがよいでしょう。
M&A先を探す時間やコスト
M&Aによる事業承継の場合、相手先の選定だけでなく、交渉にも時間がかかります。また、M&Aの仲介会社に依頼する場合には、依頼費用も必要になります。M&Aで事業承継を行う場合、ある程度の時間とコストがかかることを覚えておいてください。
ただし、M&Aの仲介会社によっては、短い期間でM&Aを成功できることもあります。
M&Aをする情報が先行し社員が勘違いし離れて行ってしまう
世間では、「M&A=乗っ取り」という間違ったイメージが蔓延しているのが現状です。社員が正しく理解できていないと、「会社が乗っ取られてしまった」と勘違いした社員が退職してしまうこともあります。
M&Aを検討している段階では社員に情報が漏れないよう徹底し、M&Aが決まり次第、社員が納得できるような説明を行うことが大切です。情報だけが先行してしまった結果、社員に不安や不信感を与えてしまう事態は避けるように努めましょう。
思っていた方向に事業が進まない可能性がある
M&A後は、企業風土や文化の異なる第三者が経営に関わるようになるため、経営者の理念や方針が大きく変化する場合があります。結果として、経営者の理想と齟齬が生まれてしまう可能性も出てくるでしょう。ギャップが大きくなると、思っていた方向に事業が進まなくなったり、従業員が会社を辞めてしまったりする事態に陥ります。
このような事態を避けるためには、事前のマッチングが非常に大切です。できるだけ同じような企業風土の企業を探すなど、自社の事業を託す相手は慎重に見極める必要があります。
【関連記事】M&Aのリスクはいくつある?回避する方法を徹底解説!
事業承継でM&Aを選択する経営者は増えている
実際に、M&Aで事業承継を実施する経営者はどのくらいいるのか気になっている方もいるのではないでしょうか。また、M&Aによる事業承継と廃業以外に、経営者が引退する際にはどのような選択肢があるのか知りたい方もいるのではないかと思います。
経営している会社や事業を手放すことになった時、家族や従業員に継がせるほか、第三者に譲るという方法もあります。黒字経営であっても、後継者不在の場合には会社を畳むことを考える人もいるでしょう。
以下では経営者が引退する時の方法と、M&Aで事業承継をする会社の現状についてご説明します。
経営者が引退するときの選択肢は5つ
経営者が引退する際の選択肢には、以下の5つがあります。
・親族内承継
自分の子どもや親族に経営権を譲る方法です。関係性が近いため、承継は比較的しやすい傾向にあります。
ただし、経営経験や事業経験が浅い場合には、十分な後継者教育が必要です。
・従業員承継
自社の役員や、社員に経営権を譲る方法です。身内に後継者がいない場合でも、社内をよく知る人物に任せることができます。
ただし、M&AやIPO等による創業者利潤の獲得が出来なかったり、承継後に社風を変えづらいという注意点があります。
・IPO(新規公開株式)
株式公開により、株式に時価(換金性・流動性)を持たせる方法です。株式公開には準備や費用がかかるほか、手続きにも手間がかかり、企業(事業)の成長性や会社規模も必要になるため、全ての企業が実施できる方法ではありません。
・M&A
他社株式の過半数超を取得したり、2つ以上の会社をひとつに合併したりする方法です。事業拡大や創業者利潤などのメリットがある一方で、相手先の選定に時間がかかったり、コストが発生したりといったデメリットもあります。
・清算(廃業)
廃業は短い期間で事業を停止できるため、今後事業を続ける意思がない場合には円滑に進みます。廃業すると、社員の雇用が失われたり、会社の価値がM&A等より低く評価されやすい点(手許に残るキャッシュが少なくなる)がデメリットになります。
事業承継M&A数の推移
日本M&Aセンターが2019年に発表した「FACT BOOKデータ編-日本国内における中堅・中小企業M&A増加の背景-」によると、M&Aの件数は2018年には過去最高の3850件を記録しています。また、昔は親が息子や娘などに会社を継がせる親族承継が一般的でしたが、現在では親族外承継の割合が全体の約6割という結果です。
中小企業のM&Aの事例が増えたり、実際にM&Aを実施した企業が成長したりすることで、中小企業でM&Aを行うメリットが広まり、廃業せずM&Aを選ぶ経営者が増えています。
個人事業でもM&Aで事業承継が可能
個人事業では、後継者不足は避けてはとおれない問題です。事業が黒字であっても、後継者がいないことで廃業を選択するケースも珍しくないのです。このような個人事業をM&Aで事業承継することを「スモールM&A」といいます。
近年は一から事業を起こすよりも、すでにある事業を買収して事業を始めるというケースがメジャーです。ゼロから物件や設備を準備する必要がないだけでなく、顧客や信用も最初から得られるのが買い手側のメリットです。売り手側も後継者問題が解決したうえで、さらなる事業拡大の可能性を追い求めることができるのです。
個人事業を運営している方で事業の成長や負担を軽減することを考えている場合には、M&Aでの事業承継も検討してもよいでしょう。
【関連記事】個人事業をM&Aをする前に知っておきたいポイントと実例
事業承継でM&Aが選ばれる背景
M&Aによる事業承継が成功すると、さまざまな恩恵を得られたり、事業承継前よりもよい結果が生まれたりすることがあります。しかし、M&Aによる事業承継を実施する経営者が増えているのは、それだけが原因ではありません。現代の日本が抱えるさまざまな問題が、経営者にM&Aによる事業承継を選ばせています。
以下では、事業承継でM&Aが選ばれている背景についてご説明します。
M&Aとは何か
M&Aは、事業を買収したり企業同士を合併したりするビジネスの手法です。買い手側にとっては事業拡大や新規事業の開始ができ、売り手側はノンコア事業の切り離しや経営再建ができます。M&Aを実施することで後継者に会社を引き継がせる事業承継もできるため、後継者がいなかったり第三者に会社を譲りたいと考えていたりする場合にも活用できます。
なお、大企業や中小企業だけでなく、個人事業でもM&Aによる事業承継は可能です。
後継者が決まらず廃業を余儀なくされる企業が多い
日本M&Aセンターが2019年に発表した「FACT BOOKデータ編-日本国内における中堅・中小企業M&A増加の背景-」によると、1995年には8,716万人だった生産年齢人口が、2050年には4,418万人にまで減少することが予測されています。
中小企業の後継者不在率は、全国で66.4%と6割以上を占めています。また、廃業をした中小企業の約半数が、黒字経営をしていたにもかかわらず廃業を余儀なくされています。本来であれば継続できたはずの事業が、後継者がいないことで廃業に追い込まれた可能性が高いといえます。
M&A後の満足度が高い
M&Aで事業承継を実施した結果、従業員の雇用を守ることができたり、創業者利潤を得ることができたりと、M&A後の満足度は高くなります。
廃業や親族承継、従業員承継を選んでいたら実現できなかったことも、M&Aであれば可能になることもあります。事業承継先に資金力や営業力がある場合、自社では成し得なかった事業の拡大や新規事業の取り組みなどができることも、M&Aによる事業承継を選ぶ利点です。
【関連記事】中小企業が抱える事業承継問題とは?対策方法も含め徹底解説!
事業承継でM&Aを行う際の流れ
M&Aによる事業承継が成立するまで、どのような流れになるのか気になる経営者の方もいらっしゃるかと思います。自社のM&Aを検討したら、まずは自分の会社や事業にどの程度の価値があるのかを計算したり、どのような形でM&Aを実施するかを決めたりする必要があります。
事業承継を成功させるためには、買い手側との信頼関係が重要です。交渉の決裂を避けるためにも、M&Aによる事業承継に至るまでの流れを知っておきましょう。
自社の企業価値を明確にする
M&Aを行う場合、まずは経営資源やノウハウ、人脈、商品力など、自社が持つ価値を明確にすることが大切です。事業承継先に対して自社の魅力を正しく伝えることで、M&Aが成功する可能性が高まります。
自社の強みと弱みを把握することで、必要以上に価値を高く見積もったり低く見積もったりすることも避けられます。
どのような形でM&Aを実施するのか決定する
M&Aの手法には、主に以下のような形があります。
株式譲渡
株式の売買により経営権を譲渡する方法です。買い手は、売り手の株式を現金で買い取ります。手続きが簡単なため、中小企業でもよく利用しています。時間をあまりかけたくないケースや、現金を早急に手にしたいケースに向いている手法です。
事業譲渡
事業譲渡では、事業のすべてもしくは一部のみを譲渡します。売り手側は手放したい事業だけを売却でき、買い手も必要な事業のみを引き継げます。会社をまるごと引き継ぐ形ではないため、買い手としても比較的安心して引き継ぎやすい方法です。
会社分割
会社分割には、2種類の方法があります。1つ目は、会社の事業のすべてまたは一部を、新たに設立する会社に移す方法です。2つ目は、会社の事業のすべてまたは一部を、すでに存在する他社に移す方法になります。
会社分割の特徴として、M&Aの対価を株式で支払えることが挙げられます。現金があまり用意できない状況であっても実行しやすいのが、注目するべきポイントです。
M&A先を検討する
売り手・買い手ともに、まずはM&Aアドバイザーとの面談を実施します。面談は以下の流れで行われます。
1.売り手側は提案資料を作成し、自社の情報を買い手に公開します。
2.売り手側の希望条件と合致し、買い手側が興味を持った場合には、売り手側のより詳細な情報が渡されます。
3.買い手・売り手双方の意向に大きな開きがなく、ともにM&Aする方向性の場合には、経営者同士の会談(トップ面談)になります。
トップ面談によって両社が合意する
トップ会談では各社の紹介や質疑応答により相手先への理解を深め、M&Aプロセスを進めてもよいかどうかの重要な検討材料とします。双方がM&Aプロセスを進めることを希望するか、M&Aアドバイザーが調整して準備が進められます。
トップ面談後に、双方が希望する条件面をM&Aアドバイザーが調整します。そして、双方が合意出来た場合、その内容・条件等を記載した基本合意契約書を締結します。締結後は、買い手側は財務調査や法務調査などを実施します。その結果をふまえ、M&Aを最終的に行うかどうかを検討したり、どのような条件の交渉を行うかを判断します。
買い手側からのデューデリジェンス実施
デューデリジェンスというワードは、「デュー」「デリジェンス」という2つの言葉から成り立っています。デューには「義務」、デリジェンスには「努力」という意味があり、この2つが合わさると「行為者がその行為に先んじて払ってしかるべき正当な注意義務・努力」を意味します。
デューデリジェンスの目的は、対象企業の価値を調査し、どのくらいのリスクがあるのか把握することにあります。デューデリジェンスには「事業」「財務」「税務」「法務」「労務」「環境」「IT」などさまざまな種類の調査が存在します。
買収前にはすべての種類を実行するのが一番確実ですが、体力的にも時間的にも費用的にも負担が大きくなってしまいます。そのため、必要なデューデリジェンスを取捨選択したり、財務や法務など専門知識が必要なデューデリジェンスは専門家に委託したりすることが大切です。
最終譲渡契約書の取り交わし
取締役会や株主総会で役員や株主の承認を得たら、最終譲渡契約書を取り交わします。最終譲渡契約書には、条件面や具体的な内容が記載されています。経営者が個人的に利用している会社の車や不動産などは処分方針を話し合ったうえで、場合によっては売り手側で買取や処分するケースもあります。
M&Aで事業承継をするのにかかる期間
M&Aで事業承継を実施するためには、3か月~1年程度の期間が必要になります。親族承継や従業員承継の場合、後継者教育に数年が必要になるため、M&Aの方がかかる時間は短いともいえます。
【関連記事】M&Aの流れをどこよりもわかりやすく解説!手続きにおける注意点とは?
事業承継M&Aで企業価値を向上させるために今からできること
M&Aを成功させるためには、買い手側に売り手側が魅力的な企業だと思わせることが大切です。「信用できない」「不明瞭な部分が多く不安」と買い手側に思われてしまっては、売却価格が実態よりも低くなってしまうことや、最悪の場合M&Aの実施に至るのが困難となります。M&Aの事業承継を実施する前に、企業価値を上げる取り組みを行いましょう。
以下ではM&Aによる事業承継を成功させるために、企業価値を向上させる方法についてご紹介します。
節税を緩和して企業価値・営業権評価の向上を目指す
会社運営を行ううえで、節税対策を重視する経営者は多数おります。ただし、M&Aを行う場合には、過度な節税対策は買い手側からの評価を下げてしまうことにつながる恐れがあります。
過度な節税対策は著しい利益の減少となり、表面上業績が芳しくないよう見えます。これは、営業権評価が低くみられることに繋がります。買い手側は実際の数字を見て判断する傾向にあるため、低い評価を受ける原因になることはしない方が得策ともいえます。
ただし、従前節税対策をしていたとしても、プロのM&Aアドバイザリーが介入することにより、節税対策を実施しつつも、正当な営業権を買い手側に訴求する手段もあります。そのため、節税対策をしっかりとされている経営者様は、M&Aの際は公認会計士が多数在籍する株式会社M&A DXまでご相談下さい。
重要書類や必要書類をしっかりと整理する
M&Aで事業承継を実施する場合、各種契約書や議事録、帳簿などを用意する必要があります。特に、株主総会と取締役会の議事録は、現株主を明確化するためにも必要不可欠です。重要な書類が揃っていなければ、株式価値が下がることにもつながります。
土壌汚染の有無や隣の土地との境界線など、不動産や土地について気にする買い手も少なくありません。事前に調査報告書を用意しておくなど、買い手側に安心感を与える対策を取りましょう。建物と土地の所有者が違う場合などに備えて、賃借関係や権利関係の確認をすることも重要です。
チェックしておきたい主な重要書類
事業承継のM&Aでは、チェックするべき重要な書類がいくつか存在します。たとえば、株主総会議事録・取締役会議事録・定款・就業規則・各種規程(従業員退職金規程・役員退職金規程など)・各種申告書(税務報告書控え・決算報告書など)が挙げられます。
事業承継をスムーズに進めていくためにも、重要な書類に関してはしっかりと確認しておきましょう。
社内人事の整理と明確化
中小企業や小規模事業では、経営者の妻や子ども、親族などが役員・従業員として在籍はしているものの、実際にはその会社では働いていないというケースがあります。処遇をそのままにしておくことは実質的に不可能であり、放置してM&A後のトラブルにつながったりする場合があるためご注意ください。
人事に関するトラブルを回避するためにも、売り手側の企業は事前に社内の人事を整理・調整しておき、雇用に関して不信感を与えないような準備をしましょう。
不必要な資産や簿外負債を明確化する
売り手側の企業は、必要のない資産や簿外負債を明確にしておくことが大切です。たとえば倉庫や社内にある現在販売していない商品や、所有しているが稼働していない機械、未払で簿外となっている残業代などです。
買い手・売り手の双方で基本合意が締結された後、買い手側は売り手側企業の調査を実施します。財務・税務調査や法務調査の中で薄外負債が判明すると、会社への評価が下がることもあります。不必要な資産や簿外負債が大きい場合は買い手側の不信感を招くだけではなく、M&Aが破断になることもあります。そのため、もし不必要な資産や簿外債務がある場合は、M&Aプロセスの序盤で明確化し正直に開示することが重要となります。
ブランド力を強化する
売り手側が自社の企業価値を上げる方法のひとつとして、ブランド力を強化することがあります。無形資産を磨くことで、結果として買い手側からの評価が上がって高く売ることができたり、買い手が見つかりやすくなったりします。
一方で、特許出願や特許係争を実施している場合には、M&Aを実施する前に解決しておくことが望ましいです。また、何らかの訴訟を行っている場合も同様です。M&Aを実施するうえでは、買い手側に極力不安を与えないように注意しましょう。
事業承継のタイミングを見極める
事業承継の成功には、タイミングが大切です。M&Aの交渉には時間がかかる可能性があるほか、興味を持った企業が現れても、スムーズに契約を締結できるかどうかはわかりません。
経営者が高齢になったり健康状態が悪化したりした場合、M&Aの準備や手続きが困難になり、そもそもM&Aプロセスを継続させることが難しくなる場合もあります。さらには事業を継続させることができなくなり、廃業せざるを得なくなってしまうことも起こり得ます。事業承継をM&Aで行いたい場合は、タイミングを逃さないようにしましょう。
事業承継はいつまでに完了させるのがよいか
M&Aによる事業承継は、一朝一夕でできるものではありません。承継先の企業探しに始まり、後継者の指導や従業員の就労環境を整えるまでにはある程度の時間がかかります。そのため、事業承継を完了させたい時期から逆算して、事業承継の準備を進めることが大切です。目安としては、トップが70歳になるまでに完了するのが望ましいでしょう。
スムーズに事業承継を進めるには計画表を作成するのがおすすめです。スケジュールをはじめやるべきことを洗い出します。いつまでにどの項目を完了させるのか、関係者と進捗を共有しながら進めていくことがポイントです。
事業承継M&A成功のカギはパートナーの見極め
事業承継をM&Aで成功させるためには、信頼できるパートナーを作ることが大切です。主な相談先としては、事業引継ぎ支援センターとM&A仲介業者の2つがあります。それぞれにメリットがありますが、M&Aに特化していて数多くの実績を持つM&A仲介会社は、M&Aに不安のある方でも安心して相談できます。
以下では、事業承継のM&Aを成功させるためのパートナーについてご説明します。
国が全国に設置している事業引継ぎ支援センター
国が設置する事業引継ぎ支援センターを利用し、事業承継のM&Aについて相談ができます。事業引継ぎ支援センターは全国にあり、後継者不在の中小企業の事業承継をサポートするための機関です。必要に応じて、M&A仲介会社を紹介していただけます。
M&Aのエキスパートである仲介業者
M&Aで事業承継を成功させたい場合には、M&Aのエキスパートである仲介業者に依頼することがおすすめです。専門家に相談することで、理想的なM&Aが実現し、売り手・買い手ともに満足できる事業承継ができます。
株式会社M&A DXでは、事業承継支援業務を実施しています。基本合意締結や調査、クロージングなど、M&Aに必要なプロセスをワンストップでご提供しております。M&Aで事業承継をお考えの方は、ぜひ株式会社M&A DXにご相談ください。
事業承継で補助金が出るケース
中小企業庁は、中小企業が事業承継をしやすいよう「事業承継補助金」という制度を整備しています。事業承継補助金では、地域の需要や雇用を支える事業や、事業再編・事業統合を実行する中小企業などが対象です。
補助金の額は年度によって異なりますが、2018年度は小規模企業者・個人事業者の場合で対象経費の2/3、それ以外の業者の場合対象経費の1/2が支払われました(上限あり)。
補助金を申請するには、準備しなければならない書類があります。事業計画書・住民票(先代と後継者の両方)・認定経営革新等支援機関の確認書・応募資格を有していることを証明する後継者の書類・添付書類が応募に必要です。
補助金を受けるために準備するべきものは多く、ある程度の知識も必要になってきます。自社ですべて行うことが難しい場合は、専門業者と連携するのがおすすめです。
M&A仲介業者の選び方
M&Aを検討する際には、仲介業者の選び方を知っておくことが非常に重要です。仲介業者を選ぶポイントとしては、実績や経験はもちろん、アドバイザーの人柄も重要でしょう。
まずは、公式サイトなどで仲介業者の得意な業種や分野を確認します。大企業同士のM&Aが得意な業者もあれば、スモールM&Aに特化している会社もあります。公式サイトではこれまでのM&A実績を確認できるサイトもあるため、自社に近い事例を探しましょう。
候補の業者が見つかったら、直接コンタクトをとります。M&Aは成立までに時間がかかるため、担当者の人柄や相性も重要なポイントです。実際に話をしてみて信頼できそうな人物か、M&Aに対する知識は十分かを見極めます。
M&A仲介を依頼した場合の費用
仲介業者に依頼する場合には、費用がどのくらい必要になるのかも把握しておきましょう。M&A仲介費用は業者によってさまざまですが、数百万円~数千万円かかるケースが一般的です。
株式会社M&A DXではM&Aや事業承継に関する事前相談を無料で行っております。正式に業務をお引き受けした際も、M&Aを行う企業規模に応じて費用を設定しておりますのでご安心ください。ほとんどの費用は成功報酬という形で頂戴するため、事前相談時に詳しく説明いたします。
事業承継M&A事例
事業承継M&Aの事例としてオリックス株式会社(オリックス)と株式会社ディーエイチシー(DHC)の事例を紹介します。2022年11月に発表され2023年1月にオリックスによるDHCの子会社化が完了した、この事例ですが日本国内の事業承継目的でのM&Aとして過去最大級と言われています。DHCとオリックスはそれぞれのニーズ理解や戦略構築に十分に時間を掛けて本取引を協議し、M&Aを実施したとのことです。
まとめ
事業承継を行う際にプロの力を借りると、時間と労力の節約になります。自力でも事業承継を行うことは可能ですが、事業承継後にトラブルが起こったり、思わぬ支出が発生したりする可能性もあります。
M&Aで事業承継を実施するために大切なことは、顧客満足度が高く信頼できるM&Aの専門家をパートナーとして選ぶことです。M&Aをご検討中の経営者の方は、豊富な実績を持つ株式会社M&A DXへぜひご相談ください。