コールセンター業界について
コールセンターとは、顧客にかかってくる電話対応業務の代行を、事業として請け負っている企業のことをいいます。電話対応の種類は電話を受ける「インバウンド」と、電話をかける「アウトバウンド」にわかれているのが特徴です。
近年は電話対応のほか、メールの問合せやホームページ対応まで行うこともあり「コンタクトセンター」とも呼ばれています。まずはこのコールセンター業界について、業界の特徴や市場規模を紹介します。
コールセンター業界の特徴
コールセンターはインバウンドとアウトバウンドのどちらも行う企業と、どちらかを専門に行う企業に分かれます。これまでは首都圏を拠点とすることが多くありましたが、現在は経費削減のため地方への移動が起こっています。
また、電話以外の対応が増えている点も注目です。チャットやSMSなどのテキストによるコミュニケーションが使用されており、特にユーザー数が多い「LINE」対応の需要・供給が増加しています。
コールセンター業界の市場規模
派遣売上を加えたコールセンター業界の市場規模は2019年度で9065億円です。2020年には9310億円となる見込みであり、前年比102.7%の成長。また2022年度には1兆円超え、2024年度には1兆1560億円市場になると予想されています。
近年の人材不足が大きな要因となり、コールセンター業務を外注する企業が増加。また、売上上位の事業者は海外にも事業を展開し、売上好調である点も市場規模拡大の要因となっています。
コールセンター業界の課題
次に、コールセンター業界の課題について紹介します。成長著しいコールセンター業界ですが、もちろん課題もございます。課題をいかに解決できるかが企業としての成長、ひいては市場規模全体の拡大にも繋がります。
M&Aをご検討の際にはこれらの課題にどう向き合っているかがポイントとなりますのでぜひご参考にしてください。
オペレーターの質にムラがある
コールセンターは個人個人が対応しているため、能力にも差が出ます。もちろん、コールセンターごとに教育は行っていますが、それでも対応に差が出ているのが現状です。
また、優秀なオペレーターを育成するには時間がかかります。しかし、スタッフの離職率が高くスタッフが定着しないため、優秀なオペレーターを育成しにくくなってます(傾向がございます)。
離職率が高い
コールセンターの職種は離職率が高いと言われています。理由は個人によっても違いますが、以下のような理由が多くなっています。
・顧客からのクレームにストレスがたまる
・社内でのスタッフ評価基準があいまい
・仕事内容と報酬の額が釣り合っていない
・商品への理解が浅く対応が難しく感じる
これらの理由からスタッフの定着率が低くなり、オペレーターの質低下やムラの発生に繋がっています。
顧客を長時間待たせる
オペレーターのスキル不足や人材不足が起こり、コールセンターが問い合わせに対応しきれない事態が発生します。事実コールセンターに電話をかけた顧客を長時間待たせている企業も少なくありません。
顧客が電話をかけても繋がらず、「いつも混雑していて繋がらない、問題が解決せずかける意味がない」と思われれば、企業のイメージを下げビジネスにも悪い影響を与えるでしょう。
コールセンター業界のM&A動向
次に、M&Aの観点から、コールセンター業界の動向に注目してみましょう。課題の多いコールセンター業界ではありますが、M&Aの立ち位置としては、活況な業界の1つです。
以下の項目ではコールセンター業界が活況な理由のほか、買手がM&Aを行う目的や譲渡価格の相場なども詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
圧倒的な売手市場
コールセンター業界は今後も市場規模の拡大が予想されていることから業種問わず買収を検討する企業が多い状況です。そのため、別業種で同規模の企業より売買価格が高く設定されているケースもあり、売手にとっては売却のメリットがある市場環境です。。
M&Aの目的としては、同業種で行われる拠点拡大や人材確保のみならず、IT企業などの異業種間で行われる新しいスタイルでの顧客対応なども挙げられます。
昨今の新型コロナウイルスを主因に様々なビジネスシーンで非対面での対応が求められているため異業種の買手も多いと考えられます。
コールセンター業界の譲渡価格相場
前述した通りコールセンター業界は売手市場のため、他の業種に比べ高い価格での売買が期待できます。具体的な相場や売却価格は会社の規模や人材の質・数、拠点の数などによっても大きく異なりますが、需要が高いため小規模の企業でも1000万円以上の売買価格になると予想できます。
しかし、事業の一部を売買する場合と会社全体を売買する場合や取引先の規模や売上によっても価格は変動するため注意が必要です。
最もベストな条件での企業売却を行いたいのであれば、M&Aの仲介会社に相談しましょう。M&A DXでは企業価格の無料簡易診断を行っていますので、こちらもぜひお試しください。
コールセンター業界でM&Aをする売り手のメリット
売手市場と言われるコールセンター業界のM&Aでは、売却価格が高くなるほかにも後継者問題の解決や事業の発展、知名度の向上などさまざまなメリットが考えられます。
そこで次にコールセンター業界の企業経営者が、M&Aで企業を売却する際のメリットについて、具体的にどのようなことが考えられるか詳しく見ていきましょう。
後継者問題を解決できる
少子高齢化により人口が減少傾向にある日本では、コールセンター業界に限らず後継者不足が問題となっています。事業自体の経営は良好であるにも関わらず、後継者が見つからないために廃業を迫られるケースも少なくありません。
M&Aは買手である企業が後継者を選出してくれるため、後継者を見つけるという課題がクリアできます。事業や雇用継続のためにM&Aは有効な手段と言えるでしょう。
有力グループの傘下に入れる
M&Aの買い手が大手企業であれば、有力グループの傘下に入れます。そうすれば、企業のアピール力や競争力アップが狙えるでしょう。また、大手の取引先から業務委託を受けることなども可能になります。
さらに、知名度が上がればスタッフの応募者も増え、優秀な人材を確保できるため、オぺレーターの質を向上させることも可能です。
新システムの導入で事業の発展ができる
IT企業や新サービスを実施している同業種とM&Aを行えば、新しい技術を使った効率的な業務ができます。電話以外での対応が増えているコールセンター業界は、IT技術との親和性も高く、業務効率化や改善に繋げられるでしょう。
また、WebやLINEなどの多様な手法を活用すれば、、クレーム対応によるスタッフのストレスも軽減できます。そのため、コールセンター業界で問題となっている離職率についても改善が期待できるため、売り手にとっても大きなメリットです。
株式の売却で資金を確保できる
M&Aでは、株主の持つ株式を売却することで買手から資金が得られます。もちろん、価格は企業によりさまざまですが、ある程度まとまった金額が得られることは間違いありません。
また、創業時に家や不動産を担保に入れ個人保証を行っていた場合、会社の売上が下がれば自宅を失うこともあります。しかし、M&Aで企業を売却すれば、個人保証も解除できるため、引退後の不安も減らせるでしょう。
コールセンター業界でM&Aをする買手のメリット
売手市場なコールセンター業界ですが、もちろん買手側にも大きなメリットはあります。買手側のメリットは大きく分けて「経営資源の確保」と「事業規模の拡大」の2つです。
次の項目で、これらのメリットについて詳しく紹介します。どちらも経営を行うためのポイントとなりますのでぜひチェックしてください。
従業員などの経営資源が獲得できる
コールセンター業界の課題の1つが深刻な人材不足です。しかし、M&Aで企業を買い取れば、その企業に所属する従業員も確保できます。専門性を持った人材は、人材不足が起こっている日本では貴重な経営資源であり、メリットです。
事業の規模拡大や拠点の増加が狙える
売手企業から引き継げるのは人材だけではありません。全国の拠点や企業が抱えていた顧客も引き継げます。1から拠点を作ることや、一気に顧客を増やすには大きなコストがかかりますが、M&Aで拠点を引き継げば低コストで事業の拡大が狙えるでしょう。
また、海外の企業や拠点を買収すれば、海外の企業を相手にコールセンター業務の委託を受けることもできます。
まとめ
今回はM&Aにおけるコールセンター業界の動向や、実際にM&Aを行う場合の買手・売手それぞれのメリットについて紹介しました。コールセンター業界のM&Aは売手が有利ですが、買手にも大きなメリットがありますのでぜひ検討してください。