相続登記とは何?
相続登記とは土地や建物などの不動産を有していた人がが亡くなった際に行う名義変更のことです。
現行法では相続登記は登記の期限や登記を忘れたことによる罰則もありません(ただし、後述のとおり民法改正により相続登記の義務化及び罰則の付加が予定されています)。一方で、相続登記を忘れると、被相続人が所有していた不動産を相続人は売却できません。
被相続人が所有していた不動産をすぐに売却をしたい場合でも、まずは相続登記が必要です。また不動産を担保にした融資も、相続登記をしていない場合、承認を受けられません。
不動産の所有者が亡くなった際に、相続人が認識しておらず相続登記しないケースが存在します。
法務局が管理する不動産登記簿のうち所有者の所在が確認できない土地は約2割です。これを受け、2021年に相続登記の義務化を記した法律が成立し、相続人は相続を知った日から3年以内の相続登記が義務付けられます。
参考:法務省:所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)
相続登記にかかる4つの費用とは?
相続登記を行う際は「登記に課される登録免許税」「登記を司法書士に依頼する際の手数料」「書類を取得するための費用」「遺産分割する場合は別途手数料」の費用がかかります。これら4つの費用がどのようなものかをみていきましょう。
1.登記に課される登録免許税
相続人が相続登記に支払う税金は、被相続人の名義から相続人の名義に変更する際の「登録免許税」です。相続登記で名義を変更する際に発生し、法務局に納付します。
相続登記では必ずかかる費用です。登録免許税は不動産の所有権に加え、抵当権(住宅ローンの返済が困難になったときに、その土地や住宅を担保とする権利)取得も課税の対象となります。
登録免許税の計算式は、以下の通りです。
固定資産税評価額×0.4%=登録免許税
ただし、登録免許税は2021年度の税制改正によって、税率の軽減措置がとられています。土地の売買にかかる登記は2023年3月31日まで、その他の登記には2022年3月31日まで適用される予定です。
関連記事:「登録免許税とは?計算方法や軽減させるためのコツを紹介」
2.相続登記を司法書士に依頼する際の手数料
相続登記を司法書士に依頼すると、手数料が発生します。依頼する際は相続人の状況と、どの手続きを司法書士に依頼するかを確認しましょう。
司法書士に見積書作成を依頼することで、おおよそ手数料を確認できます。司法書士連合会の報酬アンケートによると、司法書士に発生する手数料は、平均は6万~7万円程度です。(地域により変動します)
参考:報酬に関するアンケート
3.相続登記に関わる書類を取得する費用
相続登記をする際には、一般的に以下の書類を集めます。
●登記事項証明書
●住民票
●固定資産評価証明書
●印鑑登録証明書
これらの書類を揃える場合、費用は数千円程度発生します。
他にも提出しなければならない書類がある場合があります。例えば、遺言書によって相続人が決定している場合、事実関係を確認するためにその遺言書と検認証明書が必要です。
関連記事「相続登記の必要書類を確認!一人で行うためのガイド」
4.遺産分割する場合の手数料
遺産分割をして相続登記をする場合、遺産分割協議をおこない「遺産分割協議書」を作成します。
遺産分割協議書は、相続人同士でどのような発言があり、遺産分割がどう決定したかを記します。弁護士や行政書士などの専門家に作成を依頼することをおすすめします。
遺産分割協議書の作成にかかる手数料は、司法書士や遺産総額によって異なるため見積を依頼することをおすすめします。
関連記事「遺産分割するための手続きとは!各手続きのポイントを解説」
相続登記にかかるケースごとの費用負担
相続登記は「特定の人物が不動産を取得する」「他の相続分と公平に分けられない」「不動産を共有名義で相続する」といったケースごとに誰が費用を負担するか変わります。特に相続人が複数人いる場合、相続登記の流れを理解しておくことをおすすめします。
特定の人物が不動産を取得するケース
不動産を取得する人が決まっている場合、その相続人が相続登記の費用を負担します。相続登記の書類取得費用は、相続人が用意するか、それぞれの相続人に用意してもらうか事前に決めておくとトラブルを避けられるでしょう。
また不動産登記の費用は、預貯金や証券の名義変更よりも費用がかかります。そのため、書類を取得する費用の分割ができれば、相続登記の負担が軽減できます。
他の相続分と公平に分けられないケース
不動産や証券など、現金以外の遺産を相続する場合、遺産を平等に分割できず、相続トラブルになるケースがあります。例えば、Aさんは5,000万円の価値がある土地の相続人です。一方、預貯金を相続したBさんは1,000万円の価値を相続します。AさんとBさんが相続分に4,000万円の差があります。この場合はAさんが自分の財産から差額分を渡すか、5,000万円の土地を売却して得た現金を相続人で分割します。
相続人が土地を売却して得た金額を分配することを「換価分割」と呼びます。AさんとBさんの2人が相続人の場合は、土地が5,000万円で売れたとすると、Bさんが相続した預貯金1000万円を、AさんとBさんで分割します。
不動産を共有名義で相続するケース
共有名義で相続登記をする場合は、換価分割が有効です。また遺産分割協議決まらない場合に、法定相続割合によって分割します。
共有名義による不動産の相続はデメリットがあります。共有名義の土地は売却や建物の取り壊しなどをする際に名義人全員の同意が必要です。不動産の処分に対する相続人全員の意見が一致しないと不動産を処分できません。
また相続人のうち誰かが亡くなった場合、亡くなった人の持ち分を誰が相続するのかを決めなければなりません。相続が複雑化されるため、混乱を招く可能性があります。
自分で相続登記するメリットとデメリット
相続人が自分と決まっており、遺産分割協議の必要もない場合は自分で相続登記できます。自分で相続登記するメリットには「手数料を抑えることができる」といった点がある一方、「手間と時間がかかる」というデメリットがあります。ここでは自分で相続登記する際のメリットとデメリットについて詳しく紹介します。
相続登記を自分で行うメリット「手数料を抑えることができる」
自分で相続登記するメリットは、専門家に相続登記を依頼するコストがなくなる点です。相続人が少なく、遺産分割協議の必要がなければ相続登記の書類も少なく済みます。
相続登記を自分で行うデメリット「手間と時間がかかる」
自分で相続登記するデメリットは、相続登記するための書類を揃えたり、作成したりするのに手間と時間がかかることですえ相続人が少なければ書類が少なく済みますが、1つ1つ揃えたり、他の相続人に取得を促したりと時間がかかるケースが多いでしょう。
また会社で働いている人にとって、役所が開所している時間に書類を取りに行くのは、難しい場合もあります。書類の記入に不備があると、それを書き直す時間も要します。相続登記に手間をかけたくない人は、司法書士へ依頼することをおすすめします。
相続登記を専門家に依頼したほうが良いケース
相続登記を専門家に依頼したほうが良いケースとして、「相続する不動産の数や種類が多い」「相続の内容が複雑」「相続人の数が多い」などが挙げられます。ただし、相続登記を弁護士や司法書士などの専門家に依頼する場合は、費用が生じます。
相続する不動産の数や種類が多い
相続する不動産の数や種類が多い場合は、専門家に相続登記を依頼することをおすすめします。不動産は大きく分けて「土地」と「建物」に分かれます。
建物であれば「単独の所有物件なのか」「共有物件の持ち分の相続なのか」によっても登記の手続きは変わります。また不動産の相続登記先は、不動産の所在地を管轄する法務局または登記所となります。
不動産が遠方にあったり、不動産が点在したりする場合は、郵送やインターネットでの手続き可能ですが、多くの時間を要します。不動産の数や種類が多く手続きが複雑で手間がかかる場合は、専門家に相談することが有効です。
相続の内容が複雑
不動産相続の内容が複雑な場合も、専門家への依頼をおすすめしますえ先ほど紹介した共同名義での不動産相続の場合、相続人の間で問題が発生する可能性があります。
専門家に介入してもらえば、トラブルの防止にもつながります。また相続登記の際に複数の書類の用意が必要になるため、手間がかかります。
専門家へ依頼する際は、どこまでの手続きを依頼するかを事前に決めておくことが肝要です。専門家へ依頼を確定する前に依頼内容について相談をしてからお願いするようにしましょう。
相続人の数が多い
相続人が多かったり、遠方に住んでいたりすると、書類を集めるのに手間と労力を使います。専門家に依頼したほうが、スムーズに手続きが進むでしょう。
第三者である専門家が介入することで、相続人同士では進まなかった手続きを進めてくれることが期待できます。自分たちで相続登記を進められなくなったら、専門家への依頼をおすすめします。
遺産分割協議書の作成が必要
遺産分割協議書の作成が必要になった場合も専門家に依頼することをおすすめします。相続人全員で、誰がどの相続をするのかを話し合いで決定した際には、遺産分割協議書にその内容を記します。
遺産分割協議書は指定された様式がなく、自分で作成も可能です。しかし相続の内容が多岐にわたる場合、書類の作成が手間になります。
また遺産分割協議がスムーズに進まないこと場合もあります。
まとめ
相続登記はさまざまな費用がかかり、手間と時間もかかる手続きです。相続登記の義務化に備え、当事者の間で事前に話し合うことをおすすめします
しかし相続人の意見が合わなかったり、非協力的な人がいたりすると、相続登記の手続きが先延ばしになりかねません。
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