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労働契約承継法とは?会社分割との関連についてわかりやすく解説

善利友一

弁護士 善利友一

弁護士登録後、大手法律事務所に入所。企業法務、一般民事、刑事事件等の幅広い分野の案件に携わる。パートナー弁護士に就任後、企業法務、不動産法務、相続法務に注力し、顧問業務、法務デューディリジェンス業務に携わるとともに、多くの企業訴訟、不動産訴訟、相続紛争を解決に導く。クライアントによりマッチした法的サービスを提供すべく、善利法律事務所を開所し、代表弁護士に就任。 2017年からは、上場企業及び上場を目指す企業の社外監査役に就任し、弁護士としての経験を活かし、コーポレート・ガバナンスの一翼を担う。 2019年、株式会社すばるの社外監査役に就任し、現在に至る。

労働契約承継法はM&Aや企業再編などを行う際の手法である「会社分割」に関連する法律です。同法では、会社分割によってこれまで働いていた会社とは別の会社に転籍することになる労働者及び会社分割後に承継会社へ移籍しない労働者が、転籍後も会社分割前と同じ雇用契約の条件が保護されるように定めています。
労働契約承継法を遵守しないと労働者の転籍時にトラブルに発展する可能性があり、最悪の場合には会社分割手続きが無効となり、M&Aや企業再編が失敗するリスクも含んでいます。

そこで今回は、労働契約承継法と会社分割の関係や労働契約承継法の手続きの流れ、注意したいポイントや罰則について解説していきましょう。

本記事のポイント

  1. 会社分割の実務担当者や会社分割をおこなう企業の経営者向けの記事です。
  2. 会社分割をする上で必要となる労働分割承継法の概要や注意点について解説しています。
  3. 労働契約承継法に違反した場合には会社分割の効果が無効となる可能性もあるため、その点について説明しています。
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労働契約承継法は会社分割に関わる法律

労働契約承継法は会社分割に関わる法律

会社分割手続きの概要と労働契約承継法の関係性について解説していきましょう。

会社分割とは

会社分割は、今ある会社や事業の一部を他の会社に承継させることです。会社分割については「会社法」によって手続きに関する必要事項が明記されており、会社法第757条から第766条で定められています。会社分割はM&Aや企業再編、事業承継を行う場合に用いられます。

会社分割を行う場合、4つの分割方法があります。会社分割には吸収分割と新設分割の2つの方法があり、さらに分割対象によって「人的分割」と「物的分割」の2種類があります。それぞれの分割方法について確認しておきましょう。

1、吸収分割と新設分割

会社分割を行う場合には吸収分割と新設分割という2つの分割方法で分割を行います。吸収分割とは、既存の会社へ分割した事業等を承継させる手法です。一方の新設分割とは、会社分割を目的とした新たな会社を作り、その会社に分割する事業等を承継する手法です。

M&Aや事業承継の場合は承継会社が存在することが多いため、吸収分割を用いるのが一般的です。一方、グループ会社の再編や多角化した事業を整理するなど企業再編を行う場合には新設分割が用いられることが多いです。

2、人的分割と物的分割

会社分割について理解するために、「人的分割」と「物的分割」について紹介しておきましょう。会社分割を行う場合、分割会社事業等を承継する企業に譲渡します。この時、誰が株式を受け取るかで人的分割と物的分割が分かれます。
人的分割とは、株式の譲渡相手が分割会社の株主である分割方法です。一方の物的分割は分割会社に対して株式を譲渡します。

分割方法はこれらの分割方法を組み合わせて

・人的吸収分割
・人的新設分割
・物的吸収分割
・物的新設分割

の4つの方法のいずれかで行われます。

人的吸収分割の場合、承継会社に分割会社の株主が加わることになるため、株主構成に変動が生じるため、株主の関係性によっては企業の方針を巡って意見の対立が発生する可能性があります。一方の人的新設分割の場合は分割会社の株主がそのまま新設企業の株主となるため、株主構成に変動はなく、企業の方針を一致させることは、人的吸収分割と比べると容易です。

また物的吸収分割についても、分割会社が承継企業の株を会社として保有することになります。この場合も株主構成に変動が生じ、承継会社の既存株主との間で意見の対立が発生するリスクが存在します。物的新設分割の場合は新設会社の株を分割会社が保有することになるため、どの分割方法を選択すると良いかは個々の会社の状況に応じて検討していきましょう。

会社分割手続きの流れ

会社分割を行う場合は、以下の流れで手続きを行っていきます。吸収分割と新設分割の2つの方法の手続きについて解説していきましょう。

1、吸収分割の手続の流れ

吸収分割の手続きの流れは以下の通りです。

・吸収分割の計画立案をする。
・基本合意・秘密保持契約の締結をする。
分割会社にて労働者の過半数で組織される労働組合、これがない場合は、労働者の過半数の代表者との間の会社分割について理解と協力を得るための協議をし、労働協約中の吸収分割契約書記載部分の労使合意をする(以下、5条協議として説明)
・吸収分割契約承認取締役決議
・吸収分割契約を締結する
・吸収分割に関する契約書を登記上の所在地に置き、株主への通知や買取請求、債権者を保護するための手続きなどを進める
・労働者からの異議申立期間内に異議申し立てがないか確認する。
・吸収分割の効力発生日の前日までに、それぞれ吸収分割契約について株主総会の特別決議による承認を得る。
・吸収分割の効力が発生してから2週間以内に分割登記申請を行う

吸収分割の場合は承継会社が既に存在しているため、吸収分割契約を締結するための交渉が発生します。契約内容の合意に至ったら契約書を取り交わし、株主への通知又は告知や反対株主の買取請求を受けます。そして株主総会での特別決議を経て、吸収分割の効力が発生してから分割登記申請を行います。

2、新設分割の手続きの流れ

新設分割の手順は吸収分割契約の手続きと基本的に同じです。新設分割は既に受け入れ相手がいる吸収分割と比べると、契約締結までの手続にやり取りが少ないためスムーズに進む傾向にあります。特に新設分割契約に関する交渉はほぼ省略できるでしょう。ただし、分割手続きとは別に新会社を設立することになります。会社設立には早くとも半月はかかるので、新設分割と同時並行で会社設立の手続きを進めていきましょう。

従業員を守る労働契約承継法

労働契約継承法は分割会社の権利や義務が承継会社に承継される際、労働者と取り交わした労働契約の承継を徹底するための法律です。会社分割を行うと分割会社の労働者は新たな環境に転籍または元の会社に残ることになります。分割会社から転籍する場合でもそうでない場合でも、どちらにしても会社の形が大きく変わるため、労働者を取りまく環境が一変するでしょう。場合によってはこれまでの労働条件とは異なる働き方や雇用形態になる可能性があります。そこで労働者を保護する目的から、会社分割後も受け入れ企業や分割企業が労働者と取り交わした労働契約を承継し、安心して働ける環境を作るためにするために定められた法律です。

労働契約承継法が制定される前は、会社分割にともなう転籍によって労働環境や労働契約の内容が悪くなり、仕事を続けられなくなるケースもありました。労働契約承継法によって労働者が不利にならないように分割会社と労働者が十分に協議することが義務付けられており、従業員を守るための法律といえるでしょう。

労働契約承継法とは

労働契約承継法とは

労働契約承継法は会社法に関する特例法として制定され、会社分割に関わる労働者や労働組合への通知や手続きについて定めています。会社分割を行う場合は必ず労働契約承継法の規定に沿って手続きを進めていきましょう。

労働契約承継法で定められている対象は分割する会社が雇用している労働者全員を指しています。正社員だけでなく契約社員やパート、アルバイトなど雇用形態に関わらず全ての労働者に対して労働契約承継法の規定に沿った手続きを行います。

労働契約承継法は正式には「会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律」といい、全8条で構成されています。条項は主に以下の内容です。

・労働者や労働組合への通知(2条)
・承継される事業に従事する労働者に関する労働契約の承継(3〜5条)
・労働協約の承継等に関する規定(6条)
・労働者の理解と協力を得るための手続きに関する規定(7条)

前提として、会社分割に当たっては労働者の理解と協力を得なければならないことが明文化されており、どのように理解と協力を得る努力をしたかがトラブル発生時には問題となるでしょう。

また労働契約承継法では、会社分割にあたって労働者や労働組合に書面で通知しなければならないと定め、労働契約が承継会社に承継される旨を記しています。また、労働者からの異議の申出も可能で、異議申出がなされた場合の法律効果も定められています。

労働契約承継法のポイント

労働契約承継法のポイント

労働契約承継法に則って会社分割を進める場合、どのような点に注意したらよいでしょうか。ここでは手続きを進めるうえで理解しておきたい条項やポイントを解説してきましょう。

7条措置・5条協議・2条通知

労働契約承継法で押さえておきたい条項は「7条措置」「5条協議」「2条通知」の3つの条項です。それぞれの内容について解説していきます。

(1)7条措置

7条措置とは労働契約承継法第7条に定められている「分割会社は、当該分割に当たり(中略)労働者の理解と協力を得るよう努めるものとする」というもののことです。対象は分割する会社が雇用している全労働者であり、正社員だけでなく契約社員やパート、アルバイトなど雇用形態に関わらず7条措置を行います。会社分割手続きの前提を定義している条項でもあり、労働者の協力なしに会社分割を進めないように明文化されています。

(2)5条協議

5条協議は正式には「平成12年商法等改正法附則第5条」に定める協議のことです。会社分割における労働者との協議について記されており、労働契約承継法の手続きとセットで取り扱われるのが一般的です。条文には「会社分割をする会社は(中略)規定による通知をすべき日までに、労働者と協議するものとする」とあり、労働者と協議することが定められています。労働者に会社分割を協議する場合には、十分な説明を行ったうえで労働者の希望を聴取することになるため、協議の進行方法については内容を検討しておきましょう。

協議を行った場合、合意書の取り交わしといった手続きは不要ですが、トラブルを防ぐためにも書面によって合意形成を図ることでトラブル発生のリスクを軽減できます。

(3)2条通知

2条通知は労働契約承継法第2条によって「通知期限日までに、当該分割に関し、当該会社が当該労働者との間で締結している労働契約を当該分割に係る承継会社等が承継する旨の分割契約等(新設分割にあっては新設分割計画)における定めの有無、(中略)を書面により通知しなければならない」と定められています。2条通知を行うためには、あらかじめ7条措置と5条協議を経る必要があるため、通知を行う順番を間違えないように注意しましょう。

業務が変わる労働者は異議申し立てが可能

会社分割によって労働者が不利益を被ることになる場合、労働者は異議申し立てが可能となります。異議申し立てができる労働者は以下のいずれかに該当する場合です。

・主従事労働者を分割会社に残留させる場合
・非主従事労働者を承継会社等に承継させる場合

異議申し立てを行う場合には、分割会社に対して書面によって提出します。異議申し立てを行うと申立書は法的根拠を持つことになります。主従事労働者を分割会社に残留させる契約等だった場合に、異議申出がなされた場合には、労働条件が維持されたまま、承継会社等に当該労働契約が承継されることになります。非主従事労働者を承継会社等に承継させる契約等だった場合に、異議申出がなされた場合には、労働条件が維持されたまま分割会社に残留することになります。

労働組合がある場合の2条通知について

会社に労働組合がある場合、分割する会社は2条通知に従い、承継会社等が承継する労働協約を記載した書面によって労働組合に通知します。これを事前通知といいます。労働契約承継法上、分割会社との間で労働協約を締結している労働組合に対しては、2条通知をおこなわなければなりません。他方、分割会社との間で労働協約を締結していない労働組合であっても、通知後の団体交渉の進展によって労働協約が締結される可能性もありますから、通知することが望ましいとされているため、通知をする前提で対応する方が良いでしょう。

分割会社は、労働組合より会社分割によって発生する労働条件の変更等に関する団体交渉の申入れがあった場合には交渉に応じなければなりません。この時に分割会社は「労働組合と誠意をもって交渉に当たらなければならない」という旨も承継指針に明記されています。

労働契約承継法に違反した場合

労働契約承継法に違反した場合

会社分割は労働契約承継法に則って進めます。しかし万が一、労働契約承継法に違反してしまった場合にどのような影響があるかを紹介していきましょう。

7条に記された措置違反の場合

7条に記された措置違反は労働契約承継法の「分割会社は、当該分割に当たり(中略)労働者の理解と協力を得るよう努めるものとする」に違反した場合に適用されます。つまり、会社分割に当たって労働者の理解を求めることを怠った場合に7条に記された措置違反と判断されるでしょう。

しかし、7条に記された措置はあくまで分割会社に対する努力義務であり、7条に記された措置に違反したことを理由に労働契約継承の法的効力に変化を与えるものではないと解釈されています。従って罰則も特には設けられていません。

5条に記された協議違反の場合

5条協に記された協議違反とは、会社分割にあたって労働者と十分に協議しなかったことが明らかな場合に適用されます。裁判所によって5条に記された協議違反と判断されてしまうと、場合によっては分割手続全体が無効になる可能性もあるでしょう。

5条に記された協議違反の基準は明確に示されておらず、どんな内容で、どれだけの時間をかけて協議をすれば5条に記された協議違反に該当しないかはケースバイケースといえるでしょう。5条に記された協議が十分に行われたかを検討するには、7条に記された措置の内容に関しても考慮します。5条に記された協議は労働者からの合意を取ることが必須ではありませんが、トラブルを防止するためには協議が完了した段階で労働者から合意書を取るのも有効です。

2条に記された通知違反の場合

2条は、会社分割の内容に関して期日迄に通知しなければならない旨を定めています。2条に記された通知違反となった場合、通知を受けなかった労働者は会社分割後に受け入れ会社に対して地位の保全や確認を求めることができます。また、転籍する予定ではない労働者は、分割会社に対して、転籍しない旨や地位の保全に関する確認を求めることが可能です。

まとめ

まとめ

会社分割によってM&Aや企業再編を進める場合、労働契約承継法に則って労働者への協議や通知を行います。労働契約承継法は会社分割によって労働環境が大きく変わる労働者を保護するための法律です。同法では会社分割や個々に結んでいる労働契約が承継されること等を十分に説明することを求めており、労働組合等の団体に対しても通知や協議をすることになります。

会社分割の手続きそのものは、分割会社と事業や会社を受け入れる会社との交渉や会社新設の手続きをスムーズに進めれば大きな問題は発生しません。しかし、労働者にとっては新たな環境に身を置くことになるので、その不安を払拭して新たな会社に転籍するようにフォローすることが欠かせないでしょう。労働契約承継法については努力義務が中心なので厳しい罰則は設けられていません。しかし全労働者に黙って会社分割を強引に進めるなど、5条協議違反であることが明らかな場合には会社分割手続自体が無効となり、M&Aや企業再編が失敗に終わるリスクもあります。

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