M&Aの高額買収企業の事例と最近の市場動向

山下正太郎

メガバンクに入行し、M&Aを含む各種ファイナンス業務に従事した後、大手M&Aブティックに入社。中小企業の事業承継問題に対するソリューションとしてのM&A取引を推進。その後、上場企業および大手コンサルティング会社の企画部門にて投資責任者を歴任。キャリアを通じて多数のM&A案件の成約に携わった他、PMI担当として買収先とのスムーズな経営承継を実現した経験を多数持つ。

この記事は約17分で読めます。

企業の成長戦略としてM&Aは有効な手法です。M&Aによる買収金額は、数百万円から数千億円と案件によって様々です。

この記事では、M&Aにおける高額の定義を5億円以上と定め、買収事例を5億円以上、10億円以上、50億円以上、100億円以上と金額ごとにまとめました。また、2021年のM&A市場動向も、併せて紹介します。

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本記事のポイント

  1. M&Aの高額取引事例や市場動向を知りたい方向けの記事です。
  2. 買収金額別で企業のM&A事例をまとめています。
  3. 2021年のM&A市場動向も紹介します。

M&A高額事例 5億円以上

M&A高額事例 5億円以上

ここでは、買収金額5億円以上でM&Aが成立した事例を紹介します。

買収金額買 手売 手対象会社・事業
5億200万円UUUM株式会社石橋 尚也氏などレモネード株式会社
5億 500万円 株式会社ユーザーベース麻生 要一氏
平尾 譲二氏
株式会社アルファドライブ
8億2,500万円駅探株式会社マーベリック株式会社株式会社サークア

M&A高額事例 UUUM株式会社によるレモネード株式会社の子会社化

YouTube上でのインフルエンサーマーケティングを支援するUUUMは、レモネードの全株式を5億200万円で取得し子会社化しました。UUUMがレモネードを取り込むことによりクリエイターの領域を広げるという効果を期待しています。

レモネードはInstagram特化型の、インフルエンサーとマーケターをマッチングさせるプラットフォームを提供しています。多くのインフルエンサーを抱えるUUUMの強みとインフルエンサーとマーケターをつなぐレモネードの強みとのシナジーを期待したM&A事例です。

出典:レモネード株式会社の株式の取得(子会社化)及び吸収合併(簡易合併・略式合併)について

M&A高額事例 株式会社ユーザーベースによる株式会社アルファドライブの子会社化

株式会社ニューズピックスを子会社に持つ株式会社ユーザーベースが株式会社アルファドライブを5億500万円(アドバイザリー費用を含む)で取得し、子会社化しました。

アルファドライブ社は、企業の新規事業開発支援に特化した価値と仕組みを創造する企業です。ユーザベースグループおよび 株式会社ニューズピックスが持つSaaS 領域におけるサービス開発のノウハウと、アルファドライブ社が持つ企業内新規事業開発支援における豊富な人材・ノウハウをかけ合わせることで、法人に特化した「NewsPicks for Business」事業の加速を期待したM&A高額事例です。

出典:株式会社ユーザベース「NewsPicks for Business の強化、および企業内新規事業を推進する新 SaaS 開発を目的とした、株式会社アルファドライブの株式取得(子会社化)、および当該株式取得対価の一部とするための第三者割当による新株式発行に関するお知らせ

M&A高額事例 駅探株式会社による株式会社サークアの子会社化

経路検索などを提供する駅探は、マーベリックのスマートフォン向けインフィード広告事業を譲受する新設分割会社の株式会社サークアを8億2,500万円で取得しました。

このM&Aにより、自社サービス「駅探ドットコム」の収益拡大や、経路検索を行ったユーザーデータの活用を期待しています。

また、今後も市場拡大が見込まれる「アドテクノロジー」を取得することで、ビジネスリスクの分散や駅探グループ全体のポートフォリオを強化するM&A事例です。

出典:駅探株式会社「株式譲渡契約締結(子会社の取得)に関するお知らせ」

M&A高額事例 10億円以上

M&A高額事例 10億円以上

ベンチャー企業やスタートアップ企業でも、買手側が事業拡大などのシナジーを期待し、10億円以上で売却できるケースもあります。ここでは、10億円以上で売却に成功した企業の事例を3つ見ていきます。

金額買手売手対象会社・事業
13億2500万円株式会社マネーフォワード  高山 知泰有氏
高山宗一郎氏
株式会社ラクスなど
株式会社アール・アンド・エー・シー
19億8150万円株式会社じげん 望月佑紀氏株式会社リジョブ
43億円グリー株式会社B Dash Fund 2号投資事業有限責任組合
細川 潤 氏
gumi ventures 2号投資事業有限責任組合
石倉 壱彦 氏
株式会社3ミニッツ

M&A高額事例 株式会社マネーフォワードによる株式会社アール・アンド・エー・シーの子会社化

個人向け家計簿アプリと法人向けの会計・人事クラウドを展開する株式会社マネーフォワードは株式会社アール・アンド・エー・シーの株式を13億2500万円で追加取得し、子会社化しました。
アール・アンド・エー・シー社は国内NO1の入金消込・債権管理特化型ソリューションサービスを展開し、中堅規模以上の企業へ付加価値の高いサービス提供が強みです。

マネーフォワード社が、中堅規模以上のプロダクトラインアップ強化、並びにマネーフォワード社のネットワーク及び顧客基盤を活用したアール・アンド・エー・シー社のソリューションサービス利用者拡大を期待したM&A高額事例です。

出典:株式会社マネーフォワード「株式会社アール・アンド・エー・シーの株式の追加取得(子会社化)及び 特別利益(段階取得に係る差益)の計上に関するお知らせ

M&A高額事例 株式会社じげんによる株式会社リジョブの子会社化

求人・住まい・車などのライフイベントに直結するメディアを運営するじげんは、リジョブの全株式を19億8,000万円で取得し完全子会社化しました。リジョブは業界最大級を誇る、美容ヘルスケア業界に特化した求人サイトを運営しています。

じげんは、成長が見込まれる美容業界への進出と、既存事業へのシナジーを期待してM&Aを行いました。現在リジョブは、美容・ヘルスケア・介護に特化した案件数&求職者数No.1の求人メディア、PRメディアを運営しております。

出典:株式会社じげん「株式会社リジョブの株式取得(子会社化)について

M&A高額事例 グリー株式会社

スマートフォン向けのゲームアプリを開発するグリーは、3ミニッツの株式を43億円で取得し子会社化しました。3ミニッツは動画マガジンや動画マーケティング、インフルエンサーマーケティングを手がける企業です。

このM&Aによりグリーは、3ミニッツの動画企画制作力やプロデュース力を取得し、今後の動画広告市場において更なる成長を期待しています。

出典:グリー株式会社「株式会社3ミニッツの株式取得(子会社化)に関するお知らせ

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M&A高額事例 50億円以上

M&A高額事例 50億円以上

50億円を超えるM&Aの場合、海外企業を買収するケースがあります。

ここからは、50億円以上のM&A事例を紹介していきます。

金額買 手売 手対象会社・事業
50億円太陽誘電株式会社エルナー株式会社
(第三者割当増資)
エルナー株式会社
 
54億円
 
文化シヤッター株式会社
Crescent Capital Partners III LPなどArcPac Garage Doors Pty Ltd
91億6,000万円アウトソーシング株式会社 STICHTING ADMINISTRATIEKANTOOR OTTO HOLDINGOTTO Holding B.V.

M&A高額事例 太陽誘電株式会社によるエルナーの子会社化

スマートフォンやパソコンに搭載する電子部品大手の太陽誘電は、エルナーを株式交換により50億で子会社化しました。エルナーは車載向けのアルミ電解コンデンサなどの開発に注力する企業です。

太陽誘電はエルナーの強みである車載機器や産業機械向けのコンデンサー製品における、製品の強化や生産拠点の活用と、グローバルでの販路の拡大などを期待しています。

出典:太陽誘電株式会「エルナー株式会社との資本業務提携契約の締結及び第三者割当増資の引受けによる子会社の異動に関するお知らせ

M&A高額事例 文化シヤッター株式会社によるArcPac Garage Doors Pty Ltdの子会社化

シャッターや住宅建材の製造から販売までを手がける文化シヤッターは、ArcPac Garage Doors Pty Ltd(以下、アークパック・ガレージドアーズ)の全株式を54億円で取得し、完全子会社化しました。

アークパック・ガレージドアーズは、傘下のスチールライン・ガレージ・ドアーズを中心に新築戸建て住宅向けガレージドア製造・販売を行う企業です。文化シヤッターは海外事業の拡大を中期計画の目標に定めており、オーストラリアの住宅市場が安定的に伸びているという点が、今回のM&Aの決め手となりました。

出典:文化シヤッター株式会社「ArcPac Garage Doors Pty Ltd の株式取得(子会社化)に関するお知らせ

M&A高額事例 株式会社アウトソーシングによるOTTOの子会社化

地域にて製造・サービス・技術分野の事業を中心に幅広い人材サービスを提供しているアウトソーシングは、オランダで人材サービス業を展開するOTTO Holding B.V.を91億6000万円で子会社化しました。

このM&Aによりアウトソーシングが、OTTOグループとのシナジーにより欧州における人材採用ネットワークを確立し、グローバルにおける業容拡大を期待した事例です。

出典:株式会社アウトソーシング「オランダOTTO Holding B.V.の株式取得(子会社化)に関するお知らせ

M&A高額事例 100億円以上

M&A高額事例 100億円以上

100億円規模の高額なM&Aは市場に与えるインパクトが大きく業界の勢力図が変わる場合もあります。
ここからは、100億円超のM&A高額事例を紹介します。

金額(円)買 手売 手対象会社・事業
114億小林製薬株式会社創業者一族が保有する信託Alva-Amco Pharmacal Companies, Inc
242億グローリー株式会社アクレレック社の創業者らの持株会社などAcrelec Group S.A.S.
470億株式会社新生銀行ANZ Bank New Zealand LimitedUDC Finance Limited

M&A高額事例 小林製薬によるAlva社の子会社化

医薬品や衛生雑貨の企画・製造・販売を行う小林製薬株式会社は、アメリカのAlva-Amco Pharmacal Companies, Incを108百万米ドル(約114億円)で子会社化しました。

Alva社は主力製品として水虫薬、利尿薬、吐き気止め、酒さ(しゅさ)改善薬、内服消炎鎮痛剤などの一般用医薬品を、全米のドラッグストア、スーパーマーケットなどで販売しています。

このM&Aにより小林製薬は、Alva社が保有する米におけるブランド力、マーケティング力、販売力を取得します。米における一般用医薬品ビジネスのさらなる展開、拡大を目指す事例となりました。

出典:小林製薬「米国における子会社取得に関するお知らせ

M&A高額事例 グローリー株式会社によるAcrelec Group S.A.Sの子会社化

銀行を中心とした金融機関向けの通貨処理機や、情報処理機などの開発・製造及び販売・メンテナンスを行うグローリーは、Acrelec Group S.A.S(以下、アクレレック・グループ)の株式80%を202 百万ユーロ(約242億円)で取得し子会社化しました。

アクレレック・グループは、代金決済を自身で行うセルフサービスキオスク機器の製造・販売を手がける会社で、欧州を中心に19カ国に拠点を持つ会社です。

このM&Aによりグローリーが、両社の販売網を相互活用し、世界規模で飲食店などへの販売拡大を目指した事例です。

出典:グローリー株式会社「フランス Acrelec Group S.A.S.の株式取得(子会社化)に関するお知らせ

M&A高額事例 株式会社新生銀行

先進的なIT技術を駆使したDX戦略に基づいた個人向けのリテール業務や、専門的な商品開発力を活かした法人向け業務を展開する新生銀行は、ニュージーランドで最大手のノンバンクUDC Financeを659百万ニュージーランドドル(約470億円)で買収しました。

新生銀行が、国内で培った知見を活かしつつ、先進国では比較的高いGDP成長率を誇るニュージーランドにおける事業成長が期待したM&A高額事例です。

出典:株式会社 新生銀行「UDC Finance Limited の株式取得(子会社化)完了について
UDC Finance Limited の株式取得(子会社化)に関する合意について

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2021年のM&A市場動向

2021年のM&A市場動向

2021年のM&A市場は新型コロナウイルスによる経済環境の激変がM&A市場にとって追い風になると予測がなされています。

2021年1~6月のM&A件数は447件と、同期間比3年連続で増加しています。これは2008年以来13年ぶりの高水準となっています。
Business Lawyersによると、「新型コロナウイルスの感染拡大や企業の選択と集中の加速を背景に、企業の事業売却が増加した。企業による生産性向上や規模拡大の動きもあり、M&A市場は活発となっている。」と分析しています。

出典:Business Lawyers「2021年1~6月(上期)M&A件数、13年ぶりの高水準

まとめ

まとめ

スタートアップやベンチャー企業でも、買手の事業拡大などのシナジーが見込める場合にはM&Aが成立するケースもあります。高額なM&A事例は企業のIRニュースなどで開示されているものもあるため、興味のある方はチェックすることをおすすめします。

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