通信工事業界の業界動向やM&A事例をご紹介!

会計士 牧田彰俊

有限責任監査法人トーマツ入所、各種業務の法定監査、IPO支援に携わる。その後、ファイナンシャルアドバイザリーサービス部門にてM&A アドバイザリー業務・財務デューディリジェンス業務・企業価値評価業務等に従事。組織再編によりデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社に異動し、主に国内ミドルキャップ案件のM&Aアドバイザリーとして、豊富な成約実績を収める。2018年、これまで以上に柔軟に迅速に各種ニーズに応えるべく株式会社M&A DXを設立し、現在に至る。

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通信工事業界は、通信技術の発展に伴って成長を続けています。有線電気通信工事やデータ通信工事、無線電機通信工事、情報制御設備工事などの工事を担っています。これらの工事は、デジタル機器やインターネットの普及によって大きく発展していく可能性を秘めています。

そんな通信工事業界は発展の可能性を秘めているのですが、景気の影響を比較的受けやすい業界です。そのため、人材の確保などが難しいという現状があります。景気の影響を受けやすいということは、それに対応できる準備をしておかなければいけないため、M&Aを行うケースが増えています。

今回は、通信工事業界の特徴やM&Aの傾向、M&Aの事例、目的などを解説していきましょう。通信工事業界のM&Aの実態について詳しく知りたい方はぜひ目を通してみてください。

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通信工事業界の特徴

通信工事業界の特徴

通信工事業界は、スマートフォンなどのデジタル機器の進化やインターネットの普及、高速情報通信の実現などといった通信技術の発展に伴って成長してきました。大きな成長を遂げている業界ではありますが、通信会社の設備投資関連の動向に左右されてしまうという特徴を持ちます。特に、NTTなどの大手通信会社の設備投資に変化があった時には大きな影響を受けてしまいます。

通信工事の市場規模は国土交通省の建設工事施工統計調査の結果によると、完成工事高で約2.3兆円となっています。固定通信向け設備投資を抑制する傾向が強くなっていますが、大手通信会社を中心に展開していることには変わりません。

そんな通信工事業界は、無電柱化推進法が成立したことによって埋設工事の投資が拡大すると見込まれるようになりました。無電柱化推進法は、2016年12月に成立した法案で、防災や円滑な交通確保、安全、景観形成、観光振興などの観点から電柱をなくす方向へと推し進めていくものです。無電柱化が必要だと考えられている道路は全国各地にあるため、今後は通信工事業界の企業に電柱の埋設工事依頼が来る可能性は高まっていくと言えるでしょう。

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通信工事業界のM&A傾向

通信工事業界のM&A傾向

通信工事業界では、景気に左右されやすい業界なので様々な問題に直面するリスクが高いと言えます。そんな通信工事業界では、M&Aを行うことによって経営基盤の安定などを求める動きが見られるようになってきました。続いては、通信工事業界のおけるM&Aの傾向についてご紹介していきましょう。

関連している業界によるM&Aが多くなっている

通信工事業界では、関連している業界によるM&Aが多くなっています。電気工事会社が管工事会社を子会社化することによって、営業基盤を強化できる可能性が高まるからです。また、設備工事に関連がある会社同士でM&Aを行うことで、より影響力を高めていこうとする動きが見られるようになってきました。

しかし、2020年に開催される東京オリンピック以降に市場規模が縮小してしまうことを考慮し、異業種へのM&Aを進めているケースは少なくありません。M&Aによって、異業種へ新規事業参入を行う理由は、万が一市場規模が縮小してしまった場合でも、経営基盤を崩さないための対策だと考えられます。

後継者問題を考慮した事業譲渡も増えている

通信工事業界でも後継者問題に悩んでいる会社が増えています。通信工事業界全般で人手不足に悩まされていることが背景にあります。問題を解決するためにM&Aによる事業承継を行い、会社を存続させようという動きが目立つようになってきたと言えるでしょう。

国内の需要が低下することを視野に入れた海外M&Aも

通信工事業界の会社が提供しているサービスや商品の需要は、2020年の東京オリンピックを境に低下していくと考えられています。需要が低下するということは経営にも大きな影響を与えてしまうため、海外市場に目を向けたM&Aを行うケースが増え始めています。海外の企業をM&Aによって買収することができれば、海外市場でも収益を得られるというメリットがあるためです。

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通信工事業界のM&A事例

通信工事業界のM&A事例

通信工事業界におけるM&Aはこれまでにも積極的に行われてきました。続いては実際の事例を見ていきながら、通信工事業界におけるM&Aがどのような目的で行われているのか解説していきましょう。

コムシスホールディングスとNDS株式会社の事例

コムシスホールディングスは、NTTグループ向けの電線構築事業や通信インフラネットワーク構築事業を行っている会社です。対応エリアの拡大と事業分野の拡大を図るために、東海地方と北陸地方でNTTグループ向けのサービスや電気通信工事事業などを行っているNDS株式会社と株式交換をすることで完全子会社化しました。

エア・ウォーターと丸電三浦電機の事例

エア・ウォーターグループの1つである北海道エア・ウォーターは、札幌をメインとした通信工事事業などを行っている丸電三浦電機をM&Aによって子会社化しています。丸電三浦電機が発行している株式を取得したのです。このM&Aは、広い範囲にわたる設備工事の受注や病院設備に関する総合監視業務などが見込まれると考えられたため、実施されています。

ミライト・テクノロジーズと西日本電工株式会社の事例

ミライト・テクノロジーズはNTTグループ向けの通信インフラネットワークを構築する事業などを行っています。空調設備工事や電気通信工事、太陽光発電設備工事などの新規事業を展開するために、西日本電工株式会社の株式を取得し子会社化しました。

関電工と佐藤建設工業の事例

関電工株式会社は電気設備工事をはじめとした設備工事関連の事業を行っています。送電工事を行える作業員不足を解消するために、佐藤建設工業の株式取得をして子会社化しました。つまり、このM&Aの目的は優秀な人材と技術の獲得だと言えるでしょう。

協和エクシオとレングエイクエンジニアリンググループの事例

シンガポールで電気工事や総合設備工事などを行っているレングエイクエンジニアリンググループを協和エクシオが完全子会社化しています。協和エクシオは、シンガポールの市場へ参入することによってアジアにおけるシステムソリューション事業や都市インフラ事業の拡大をするためにこのM&Aを行ったのです。

きんでんとアンテレック社の事例

きんでんは、インドで電気通信工事事業を行っているアンテレック社をM&Aによって子会社化しています。アンテレック社が発行している株式の51%を株式取得したのです。このM&Aの目的は、きんでんが海外の事業体制を構築していくために実施しています。

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通信工事業界のM&Aを行う目的

通信工事業界のM&Aを行う目的

通信工事業界におけるM&Aの事例は数多くあります。M&Aを行う目的は様々ですが、共通している部分は多いです。続いては、通信工事業界のM&Aを行う目的とはどのようなものなのか確認していきましょう。

売却する側の目的

・後継者問題を解決するため

多くの業界で人材不足は深刻化しており、後継者問題に悩まされている会社が多くなっています。通信工事業界も例外ではなく、人材不足や後継者問題に悩んでいる会社は増加傾向にあります。通信工事業界の雇用環境はマイナスなイメージを持たれているため、若手の雇用が難しくなっていることが大きな原因の一つです。

人材不足の状態が続くと後継者候補の育成ができずに、最終的には廃業を余儀なくされてしまう可能性もゼロではありません。そのような中でM&Aによる会社売却が成功すれば、次期経営者候補となる人物に承継できます。

・従業員の雇用を安定させるため

M&Aによって会社を売却すると、従業員の雇用を安定させることができます。若手が不足している通信工事業界では、経営者の高齢化も進んでいます。後継者がいれば問題ありませんが、後継者がいない会社は廃業という選択肢しかなくなってしまうでしょう。廃業することによって従業員は職を失うことになってしまいます。

しかし、M&Aによって会社を売却できれば従業員を引き継ぐこともできるため、雇用の確保が可能になります。人手不足や後継者問題の解決が悩みの種になる現代だからこそ、M&Aによって得られるメリットは大きくなるでしょう。

・廃業コストを削減するため

通信工事業界の中小企業は、人材不足や後継者問題を理由に廃業しなければいけないケースも少なくありません。廃業するためには清算手続きを進める必要がありますが、手続きには時間やコストがかかってしまいます。M&Aで会社を売却できれば廃業コストを削減できるというメリットが得られるため、M&Aを選択する会社が増えているのです。

買収する側の目的

・新規事業参入のコストを抑えるため

通信工事業界の会社が異業種の会社をM&Aで買収すると、新規事業参入のコストを抑えることができます。新規事業に参入するためには、事業についてのノウハウなどを身に付けるための人件費や時間などがかなりかかってしまうでしょう。しかし、異業種の会社をM&Aで買収できればノウハウなども引き継げるのでコストを抑えられます。

・若手従業員や有資格者を確保するため

人材不足が深刻化している通信工事業界では、M&Aで買収した会社の従業員を引き継ぐことで若手従業員や有資格者を確保しようと考えています。電機通信主任技術者や工事担当者、電気通信施工管理技士などの資格を持つ人材を獲得できるチャンスでもあるため、積極的にM&Aを行おうとしている会社は少なくありません。

・商材やノウハウを充実させるため

M&Aで会社を買収すると、買収した会社が持っている商材やノウハウの獲得もできます。既存の経営資源と組み合わせることによって、シナジー効果も期待できるでしょう。また、事業拡大につながる可能性もあるため、M&Aを行うメリットはかなり大きいと言えます。

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通信工事業界のM&Aを成功裏に進めるために

通信工事業界のM&Aを成功裏に進めるために

通信工事業界のM&Aは、人材不足の解消や新規事業への参入など様々な側面でメリットをもたらしてくれます。最後に、通信工事業界のM&Aを成功させるために知っておきたいポイントについてご紹介しましょう。

財務状況を確認する

M&Aを成功させるためには、財務状況の確認が必須です。特に簿外債務や粉飾決算の不正、赤字受注比率、工事の原価管理、借入状況(長期と短期)、重機などの設備保有状況の確認は大切です。きちんと確認しておくことによって、M&Aの経営もスムーズに行えるだけではなく、リスク回避にもつながります。

過去の実績を確認する

M&Aによって会社の売却をする場合、売り手側も買い手側もお互いの実績を確認しておくようにしましょう。買い手側は、できるだけ工事の実績や受注記録が多い会社を買収したいと考えています。そのため、売り手側は買い手側に実績をアピールできるようにしておくことがより良いM&Aへとつながると言えます。

M&Aの専門家と相談して決める

M&Aを成功させるためには、専門的な知識が必要不可欠です。M&Aの専門知識を持つ人は多くないため、M&Aの専門家と相談して決めることも重要なポイントになるでしょう。専門家に相談すると、条件の見極めをしっかりとできたり、引き継ぎをスムーズに行えるようになったりします。そのため、専門家と相談して決めた方が成功する可能性は高くなります。

まとめ

まとめ

通信技術の発展に伴って成長を続けている通信工事業界は、デジタル機器などの発達によりさらなる発展の可能性を秘めています。しかし、若者が思い浮かべる業界全体のイメージがあまり良くないため、若手の採用が難しい現状にあります。それは、後継者問題にもつながる大きな問題で、通信工事業界の会社が存続できるかどうかにも関わってくるでしょう。

そのような状況にある通信工事業界では、後継者問題による廃業を防ぐなどの目的でM&Aが積極的に行われるようになってきました。関連している業界によるM&Aがもちろんですが、新規事業に参入するために異業種からのM&Aも多くなっています。また、グローバルな視点を持っている会社の場合は、国内需要の低下を視野に入れた海外M&Aも行っています。

通信工事業界のM&Aを成功させるためには、財務状況を確認や過去の実績を確認が重要なポイントになるため、M&Aを検討しているのであれば必ず覚えておきましょう。また、M&Aの専門家に相談することで的確なアドバイスをしてもらえるため、M&Aの専門家に相談しながら株式取得などを行うことも、成功へつながるポイントになります。通信工事業界でM&Aを成功させるポイントを押さえ、専門家に相談すれば成功する可能性は高まるでしょう。

株式会社M&A DXには、大手会計系M& Aファーム出身の公認会計士や税理士等が多数在籍しています。通信工事業界のM& Aをお考えの方は、株式会社M&A DXの仲介サービスの利用をぜひご検討ください。

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