事業ポートフォリオとは
事業ポートフォリオとは、企業が行っている事業を一覧にしてわかりやすく可視化したものを指す言葉です。
事業ポートフォリオは、競争激化や市場変動の中で企業が成長を遂げるために、限られた資源の中でどの事業に資源を投下するかを決めるツールであり、持続的な成功を収めるための重要な要素です。適切なポートフォリオの作成と定期的な評価により、企業は市場の要求に応えながら成長し、競争優位を確立することができます。
事業ポートフォリオを作成するメリット
事業ポートフォリオを作成するメリットは、下記の4点です。
経営リスクに対処できる
M&Aに活用できる
競合との比較分析ができる
一つひとつ解説します。
迅速に経営判断を下せる
事業ポートフォリオは、企業の製品、サービス、戦略的ビジネスユニットをまとめ、目標を達成するためのものです。事業ポートフォリオを作成することにより、目標を達成するために適切なタイミングで適切な戦略実行をできるようになります。
事業ポートフォリオの価値を高めるためには、誰が何をしているのか、何がいつ提供されるのかなどについてチーム全体の意識を共有することが重要です。これにより、組織内の大規模な取り組みの価値が最適化されます。
経営リスクに対処できる
事業ポートフォリオを作成するメリットには、リスク管理があります。事業ポートフォリオを作成することで、健全な経営に影響を及ぼす可能性のあるリスクを特定、分析、軽減できます。
万が一、不採算となっている事業が見つかれば、適切なタイミングで改善や事業撤退などの選択肢をとることが可能です。
M&Aに活用できる
事業ポートフォリオの作成は、企業の戦略的M&Aの活用に有用です。企業が他の企業を買収するか、あるいは他の企業と合併するかを決定する際、その決定が企業の全体的なポートフォリオとどのように一致するかを理解するためのツールとして事業ポートフォリオが使用されます。
また、事業譲渡や事業継承をする際にも、事業ポートフォリオがあれば譲受側に対して自社の特徴や強みなどをスムーズに伝えられます。結果として、M&Aのプロセスがスムーズに進んでいきます。
競合との比較分析ができる
事業ポートフォリオを用いると、自社の製品、サービス、戦略を事業毎に他社と比較することが可能になります。これにより、競合他社と比較した自社の強みや弱み、市場での位置付け、成長の機会などを明確に理解することができます。
さらに、競合他社が取り組んでいる戦略的な取り組みや新製品開発の傾向を見て、自社の事業戦略に適応させることも可能です。事業ポートフォリオは、競争環境を理解し、市場での優位性を維持するためにも重要なツールとなります。
事業ポートフォリオの作成方法
事業ポートフォリオの作成は、下記の流れで行います。
メイン事業の決定
自社の強みを明確にする
ビジネスモデルを決まる
順を追って解説します。
現状を把握する
事業ポートフォリオの作成において、最初にやるべきことは、自社の現状を把握することです。現状分析は、ビジネスの内部と外部の要素を評価し、現状の優位性や直面している課題を明らかにします。
現状分析をするためにはさまざまな方法があります。SWOT分析、5C分析、5フォース分析などが現状分析を行うための一般的な手法です。現状を把握することは、事業ポートフォリオを作成するプロセスとして欠かせません。
メイン事業の決定
事業ポートフォリオの作成には、ビジネスのメイン事業を決定します。事業の目的と目標を明確に定義し、事業がどのように利益を生み出し、どのように成長するかを考慮に入れる必要があります。また、事業の目的と目標を達成するために必要なリソースやスキルについても考慮する必要があります。
メイン事業を決めることで、積極的に投資すべき事業が明らかになり、必要以上の多角化を防げます。メイン事業の決定には、CFT分析というフレームワークを活用します。
CFT分析 | |
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Customer(顧客) | 年齢・性別・地域・嗜好性といった点から、ターゲットとなる顧客を明確にする |
Function(機能) | 自社の商品・サービスが顧客のどのような課題を解決しているかを明確にする |
Technology(技術) | 自社がどのような技術によって事業を展開しているかを明確にする |
自社の強みを明確にする
事業ポートフォリオの作成には、自社の強みを明確にするプロセスも必要です。自社にしかない強みがあれば、その強みを活かした事業が主力事業となる可能性があります。
自社の強みは、コア・コンピタンスとも表現されます。コア・コンピタンスは、顧客に対して何らかの利益をもたらすことのできる能力、競合他社が真似できない能力、複数の市場や製品にアプローチできる能力の3つによって構成されます。
上記の3つを満たす事業を主力事業として、事業ポートフォリオに組み込むことが大切です。
ビジネスモデルを決める
事業ポートフォリオの作成において重要なステップがビジネスモデルの決定です。自社の主力事業と強みを踏まえて、適切なビジネスモデルを選択します。
例えば、自社が技術革新に強い場合、製品開発型や技術ライセンス型のビジネスモデルが適しています。一方で、高品質な顧客サービスに強みを持つなら、サービスプロバイダ型のモデルが適しています。
ビジネスモデルの選択には市場調査も重要です。市場の競争状況や業界の成長性、顧客のニーズや行動、そして規制環境などを検討することが必要です。市場調査は、事業の成功と持続可能性を決定する上で、必要不可欠なフローです。
事業ポートフォリオを最適化するポイント
事業ポートフォリオを最適化するポイントは、下記となります。
CFOの役割を強化する
コーポレート組織を設置する
定期的に分析・評価をする
一つひとつ解説します。
主力事業を明確にする
事業ポートフォリオを最適化するためには、主力事業を明確にすることが不可欠です。主力事業とは、企業の成長と収益性を牽引し、競争優位を築くための中心となる事業を指します。主力事業を明確にすることで、経営資源をどのように配分するべきか、どの事業領域を強化するべきかといった戦略的な決定を効率的に行うことができます。
主力事業を明確にするためには、現在の事業を一つひとつ評価し、収益性、成長性、市場の競争状況、自社の競争力等を総合的に把握する必要があります。また、主力事業を明確にした後、市場環境の変化に対応するために定期的な見直しを行うことも重要です。
CFOの役割を強化する
CFOは企業の財務戦略を統括し、資本配分、リスク管理、事業の収益性と効率性を向上させるといった業務を担当するため、CFOの役割強化も事業ポートフォリオの最適化において重要です。
近年では、CFOの役割は単に数字を管理するだけでなく、企業全体の戦略立案における中心的な役割を果たすように変化しています。特に、事業ポートフォリオの最適化においては、CFOが全体像を把握し、各事業のパフォーマンスを評価し、資源を最も効果的に活用できるように戦略を練る必要があります。
CFOの役割を強化するためには、財務以外の領域、例えば市場分析や事業戦略の策定などについても深い理解を持つことが求められます。これによりCFOは、事業の収益性とリスクをバランス良く把握し、最適な資本配分を行い、企業の成長戦略に貢献できるようになります。
コーポレート組織を設置する
事業ポートフォリオの最適化を進めるためには、企業全体の視点で戦略を立案し実行するための組織、つまりコーポレート組織の設置が必要です。コーポレート組織は、計画の管理や業績評価を行い、各事業部や機能部門と連携する役割を果たします。
コーポレート組織を設置することで、事業ポートフォリオ全体を最適化するための一貫した戦略が策定できます。また、コーポレート組織は企業全体の視野を持ち、各事業部のパフォーマンスを評価し、必要に応じて経営資源の再配分を行います。これにより、企業全体としての最適な資本効率と事業成果を達成することが可能となります。
定期的に分析・評価をする
事業ポートフォリオは、定期的な分析・評価が重要です。ビジネス環境や市場状況、技術の進化などが絶えず変化しているため、企業の戦略もそれに応じて柔軟に変化させる必要があります。このため、定期的に事業ポートフォリオの分析・評価を行うことが重要です。
分析・評価のプロセスは、各事業のパフォーマンスを評価し、その事業が企業全体の戦略にどの程度寄与しているのかを見極めるためのものです。評価結果は、既存の事業ポートフォリオの改善や新たな事業機会の探求、そして必要に応じて不採算となっている事業の切り離しにつながります。このプロセスは、企業の競争力を維持し、市場環境の変化に対応する能力を高めるために必要です。
事業ポートフォリオとは?作成するメリットや手順を解説のまとめ
この記事では、事業ポートフォリオの概要や作成するメリット、作成の流れなどを解説しました。
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