持分法適用会社とは?連結子会社との違いや会計処理方法について解説

税理士 安江一将

会計コンサルティング会社・税理士法人及びベンチャー企業2社に勤務。会計コンサルティング会社・税理士法人では税務顧問・税務申告のほかに、事業承継支援業務、組織再編業務、IPO支援業務、M&A業務を数多く実行。ベンチャー企業では管理部長・経営企画室を歴任し、上場のための体制構築・実行支援を推進する。大手コンサルティング会社名古屋支社副支社長を経て2019年8月に安江一将税理士事務所として開業した後、さらにM&A業務を推進することを目的として株式会社M&A DXに参画し、現在に至る。

本記事の監修を務める。メンバーの紹介はこちら

この記事は約5分で読めます。

「会計処理を楽にするための方法として、関連会社に対して持分法の適用を検討している」
「持分法適用会社のメリットを具体的に知りたい」

今回はこのような考えを持つ経営者の方に向けた記事です。連結子会社と持分法適用会社の違いなどについて知っておくと、経営判断がスムーズに進みます。

この記事では、持分法適用会社の概要や連結子会社と持分法適用会社の違い、持分法の適用範囲、持分法を適用するメリットなどを解説します。

  目次  【閉じる】

相談先を迷っている方はM&A DXへ!
資料ダウンロード
M&A DXのメルマガ登録する
セカンド オピニオン

持分法適用会社とは

持分法適用会社は、連結財務諸表上において持分法の適用対象となる関連会社です。原則として、親会社が保有する議決権の比率が20%以上50%以下である非連結子会社及び関連会社を指します。ただし、重要性が低いものについては持分法を適用しないことも可能です。

持分法では、連結財務諸表に持分法適用会社の財務諸表を合算させることはなく、持分法適用会社の純資産および損益を、投資会社の持株比率に応じて反映させる修正が行われます。このため、全てを合算する「全部連結」とは異なり、「一行連結」と呼ばれます。

しかし、持分法適用会社の扱いについて覚えておくべき重要な点は、最終的な連結財務諸表上の当期純損益および純資産への影響は、全部連結を適用した場合と同じであることです。

持分法とは

持分法は、非連結子会社と関連会社への投資に適用される会計方法です。この会計方法では、投資会社が被投資会社に対する投資額を連結決算日ごとに修正します。この修正は被投資会社の純資産や損益の変動のうち投資会社に帰属する部分に対して行われます。

通常、連結決算では企業グループ全体の業績を明確にするため、子会社の財務諸表が合算され、企業間の取引や債権債務は消去されます。しかし、企業グループに影響を与える可能性のある非連結子会社や関連会社の場合、親会社に帰属する部分の純資産および損益だけが連結に取り込まれます。これが持分法です。

持分法は、非連結子会社と関連会社に主に適用され、持分法が使用される被投資会社を持分法適用会社と言います。

連結子会社と持分法適用会社の違い

連結子会社と持分法適用会社は、その名称が似ているものの、会計上の適用と議決権所有比率に関しては異なります。

連結子会社とは、親会社が議決権の50%超を所有し、または特定の要件を満たす子会社のことを指します。これは親会社が子会社の財務及び営業、または事業の方針を決定する機関(株主総会その他これに準ずる機関)を支配している企業を指します。そのため、連結会計が適用され、親会社は子会社の全ての項目を連結財務諸表に取り込むことが求められます。ただし、支配が一時的であると見られるケースなどは連結対象外とすることもあります。

一方、持分法適用会社とは、原則として議決権所有比率が20%以上かつ50%以下の非連結子会社や関連会社のことを指します。持分法適用会社の場合、連結財務諸表に反映する純資産と損益は、親会社の所有比率に応じて計算されます。なお、議決権比率が15%以上20%未満であっても、代表取締役の派遣や事業上の重要な取引を行っている場合には持分法の対象となることがあります。

したがって、主な違いは所有する議決権の割合と、それに基づく連結財務諸表への反映方法にあります。ただし、これらの分類は議決権の保有比率だけでなく、親会社が子会社の経営を実質的に支配しているかどうかなど、他の要素も考慮されます。そのため、実際にどの会計処理が適用されるのかは、個々の会社の具体的な状況によります。

M&A DXのサービスはこちら
相談先を迷っている方はM&A DXへ!
資料ダウンロード
M&A DXのメルマガ登録する
セカンド オピニオン

持分法の適用範囲

持分法の適用範囲は、投資対象である関連会社や非連結子会社に対してです。(持分法会計基準第6項)。さらに適用範囲は、企業が他の企業の財務、営業、または事業の方針に対して「重要な影響を与える」能力を持つか否かによって行われます。この判定は、単純な議決権所有比率だけではなく、実質的な影響力を考慮したものとなります。

重要な影響を与えるとは、例えば、投資会社が関連会社の議決権の20%以上を所有している場合や、議決権所有比率が15%以上20%未満であっても、投資会社が役員を派遣したり、重要な融資を行ったりしている場合等を指します。

持分法を適用するメリット

ここからは、持分法を適用するメリットについて解説します。

会計処理が簡単

持分法を適用するメリットは、全部連結と比べて会計処理が簡単であることです。

連結子会社は、その財務情報を親会社と合算し、その後で連結修正を行わなければなりません。しかし、持分法を用いると、被投資会社の利益や損失の一部を投資会社の財務諸表に組み込むだけで済むため、会計処理が容易になります。

これは、持分法では「投資有価証券」と「持分法による投資損益」の2つの勘定科目だけを使用して関連会社の利益や損失を投資会社の財務諸表に反映するためです。さらに、持分法の採用により、投資会社は連結決算日に、持分法適用会社の資本や利益の変動に応じて投資額を修正することになります。

ブランド力の向上の可能性

持分法を適用することでブランド力が向上する可能性があります。

持分法適用会社は、投資会社がその経営に一定の影響力を持つことを示しています。そのため、投資会社が業界で高い評価を持つ場合や、信頼性や知名度が高い場合、そのブランド力は持分法適用会社にも間接的に影響を与える可能性があります。

ただし、これらは必ずしも全ての企業に当てはまるものではなく、各企業の特定の状況や戦略によります。

収益機会の拡大の可能性

投資会社と持分法適用会社が業務提携や技術提携を行うことで、収益機会の拡大につながる可能性があります。

投資会社と持分法適用会社の双方の強みやリソースを最大限に活用することで、新製品開発やサービスの向上、生産効率の向上などに繋がり、結果として売上が増加する可能性があります。

また、投資会社が持分法適用会社を通じて新たな市場や業界に進出することもあります。これにより、投資会社の製品やサービスの顧客層が広がり、売上が増加する可能性があります。

M&A DXのサービスはこちら
相談先を迷っている方はM&A DXへ!
資料ダウンロード
M&A DXのメルマガ登録する
セカンド オピニオン

持分法の会計処理

持分法の会計処理では、最初に投資を行った時点では仕訳は発生しません。持分法適用会社が利益または損失を発生させた時点で、会計処理が必要となります。

具体的には、関連会社や非連結子会社に対する投資額は、持分法により算出された評価額で連結貸借対照表に計上されることになります。

例えば、持分法適用会社で発生した利益を投資会社の評価に反映させる仕訳では、借方に「投資有価証券」、貸方に「持分法による投資損益」となります。

借方投資有価証券具体的な金額貸方持分法による投資損益具体的な金額

損益の区分は「営業外損益」となります。また、持分法による投資の利益と損失が同時に生じている場合には、相殺して表示されます。

まとめ

この記事では、持分法適用会社の概要や連結子会社と持分法適用会社の違い、持分法の適用
範囲、持分法を適用するメリットなどを解説しました。

もし会計処理をスムーズに進めるための施策にお悩みであれば、ぜひM&A DXにお任せください。M&A DXのM&Aサービスでは、会計に関するさまざまなアドバイスも大手会計系M&Aファーム出身の公認会計士など実戦経験豊富なスタッフが行っています。持分法についての相談も乗っていますので、お気軽にご連絡ください。

無料相談も実施しており、お電話やWebにていつでもお問い合わせを受け付けています。

関連記事「グループ会社・関係会社・関連会社・子会社はどう違う? それぞれの定義をご紹介

株式会社M&A DXについて

M&A DXのM&Aサービスでは、大手会計系M&Aファーム出身の公認会計士、 M&A経験豊富な金融機関出身者や弁護士が、豊富なサービスラインに基づき、最適なM&Aをサポートしております。セカンドオピニオンサービスも提供しておりますので、M&Aでお悩みの方は、お気軽にM&A DXの無料相談をご活用下さい。 無料相談はお電話またはWebより随時お受けしておりますので、M&Aをご検討の際はどうぞお気軽にお問い合わせください。


相談先を迷っている方はM&A DXへ!
資料ダウンロード
M&A DXのメルマガ登録する
セカンド オピニオン

SHARE

M&Aセカンドオピニオン

セカンドオピニオンとは、M&Aを検討する中で生じる不安や迷い・懸念を第三者視点で全体を俯瞰しながら、個々の状況に寄り添ってアドバイスするサービスです。
こんなお悩みの方におすすめです。

✓ M&A業者が進めるスキームで適切なのか知りたい
✓ M&A業者と契約したが連絡が途絶えがちで不安だ
✓ 相手から提示された株価が妥当なものか疑問に感じる
✓ 契約書に問題がないか確認したい
✓ M&A業者が頼りなく感じる

どんな細かいことでも、ぜひ【M&A DXセカンドオピニオンサービス】にご相談ください。
漠然とした不安や疑問を解消できます。

無料会員登録

会員の皆様向けに週1回、M&A・事業承継・相続に関わるお役立ち記事、動画などをお知らせするメールマガジンを配信させていただきます。
お役立ち記事はこちらからピックアップしてお届けいたします。
動画はM&A DXチャンネルからピックアップしてお届けします。
配信を希望される方はメールアドレスをご登録の上、お申し込みください。登録料は無料です。

LINE登録

LINE友達登録で、M&A・事業承継・相続に関わることを気軽に専門家に相談できます。
その他にも、友達の皆様向けに、動画などをお知らせするメールマガジンを配信させていただきます。
相談を希望される方は、ぜひお気軽にLINE友達登録へお申し込みください。

M&A用語集

M&A DX用語集では、M&Aに関する専門用語についての意味や内容についてご紹介しております。
M&Aや事業承継は英語を使うケースが多く、初めて聞くと意味が分からないまま会話が進み、後で急いで意味を調べるような経験がある方もいらっしゃると思います。M&Aの用語に関しては、一度理解してしまえばその後の会話で使えるようになるため、辞書代わりにご利用下さい。
※会計士の当社代表牧田が、動画で解説している用語もあります。

まんがでわかる事業承継

すべての人を幸せにするM&Aを、まんがでわかりやすく解説します。
「事業承継は乗っ取りではないのか?」と不安に思う社長に対し、友好的事業承継のコンセプトをわかりやすく解説します。

~あらすじ~
社長は悩んでいた。
創業して40年、生涯かけて取り組んだ技術も途絶えてしまうことに。
何より、社員を裏切る訳にもいかない…

そんな折、真っ直ぐな瞳の男が社長を訪ねてきた。
内に秘めた熱い心を持つ彼は、会計士でもある。
「いかがなさいましたか?」
この青年が声をかけたことにより、社長の運命が劇的に変わっていく。

資料請求

あなたの会社が【M&Aで売れる会社になるための秘訣】を徹底解説した資料を無料で提供しております。
下記のお悩みをお持ちの方は一読ください。

✓ M&Aを検討するための参考にしたい
✓ 売れる会社になるための足りない部分が知りたい
✓ 買手企業が高く買ってくれる評価基準が知りたい

【売れる会社になるためのコツを徹底解説】一部ご紹介します。

✓ 解説 1 定性的ポイント

業種、人材、マネジメント体制などの6つの焦点

✓ 解説 2 定量的ポイント

財務的に価値がある会社かどうか、BS・PLの評価基準

✓ 解説 3 総合的リスト

売れる会社と売れない会社を表にまとめて解説

詳細は無料ダウンロード資料「M&Aで売れる会社と売れない会社の違い」にてご確認ください。