新規事業立ち上げの目的とは?成功させるポイントや活用すべきフレームワークを解説

会計士 牧田彰俊

有限責任監査法人トーマツ入所、各種業務の法定監査、IPO支援に携わる。その後、ファイナンシャルアドバイザリーサービス部門にてM&A アドバイザリー業務・財務デューディリジェンス業務・企業価値評価業務等に従事。組織再編によりデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社に異動し、主に国内ミドルキャップ案件のM&Aアドバイザリーとして、豊富な成約実績を収める。2018年、これまで以上に柔軟に迅速に各種ニーズに応えるべく株式会社M&A DXを設立し、現在に至る。

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「経営の軸を増やすために、新規事業の立ち上げ検討している」
「新規事業立ち上げの流れや具体的な手法を知っておきたい」

今回はこのような考えを持つ方に向けた記事です。収益源の確保やリスクヘッジなど、新規事業の立ち上げはさまざまな目的の元に行われます。

この記事では、新規事業を立ち上げる目的や立ち上げの流れ、成功させるポイントなどを解説します。

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新規事業を立ち上げる目的

ここからは、新規事業を立ち上げる目的について解説します。

新たな収益源をつくるため

新規事業を立ち上げる主な目的は、新たな収益源をつくるためです。企業が販売している商品やサービスには必ず衰退期が訪れることが想定され、段階において戦略をたてる必要があります。特に近年では消費者のニーズや企業の時流への対応スピードが非常に速いため、どの企業も常に準備をしておく必要があります。新しい事業を始める際には、収益増加や持続的な成長を目指すために、既存の事業とは異なる分野や市場に進出することが多く、既存事業よりもより準備が必要となります。

そして、既存の事業のほかに新たな収益源を確保することにより、企業の収益の多様化が可能となります。これにより、市場の変化や競争の激化によるリスクを分散し、安定した成長を追求できます。

さらに、新規事業は未開拓の市場や新しい顧客層にアプローチするチャンスとなります。これにより、企業は新たな需要を見つけ出し、既存の顧客ベースの拡大が狙えます。

長期的なリスクヘッジを図るため

新規事業を立ち上げることで、長期的なリスクヘッジを図ることが可能です。

ビジネス環境は常に変化しており、市場の需要や競合状況、技術の進化など、さまざまな要因が事業に影響を及ぼします。これらの変化によって、従来の事業がリスクにさらされる可能性がありますが、新規事業を立ち上げることでそのリスクに対処できます。

新規事業を立ち上げれば収益の多様化が実現され、既存の事業に依存しない体制が整います。1つの事業が不振に陥った場合でも、他の事業が補完し、全体的な収益に安定性をもたらします。

新規事業の立ち上げには初期投資や市場調査、実行のリスクも伴いますが、将来の変化や不確実性に対処するためには、これらのリスクを冒す必要がありますが、長期的にみるとリスクヘッジとなります。長期的なリスクヘッジを図ることで、企業は持続的な成功を追求し、安定した成長を実現できます。

人材を育成するため

新規事業を立ち上げる目的として、人材育成も挙げられます。

新規事業の立ち上げは、これまでに取り組んでこなかった新たなビジネスに挑戦する機会です。従業員にとっても新たな学びと成長の機会となり、新しい市場や技術に対応するために、自らのスキルをアップデートし、新しい知識やノウハウを身につける必要が出てきます。結果的に、従業員のスキルアップが促進され、組織の競争力も強化されます。

また、新規事業は不確実性やリスクを伴いますが、失敗や試行錯誤を経験することで、従業員は自己成長し、柔軟性や適応力を身につけます。失敗した場合でも、得られた教訓を次の挑戦に活かせます。

新規事業立ち上げの流れ

ここからは、新規事業立ち上げの流れについて解説します。立ち上げのプロセスには「ステージゲートシステム」という方法論があり、アイデア発想から事業化までのプロセスをステージに分割し、次のステップに移行する前に「評価」のゲートを設け、最終的に事業化・商品化にするというものです。

自社のビジョンを明確にする

まずは、自社のビジョンを明確にすることは新規事業立ち上げの第一歩です。ビジョンがなければ目指すべき方向が定まらず、事業の成功が難しくなります。

ビジョンを策定する際には、現状の課題や市場のニーズを踏まえ、独自性と実現可能性を考慮します。そのうえで社内のステークホルダーや関係者とコミュニケーションを図り、共通のビジョンを築くことが重要です。

事業アイデアを見つける

ビジョンを明確にしたら、そのビジョンを実現するための事業アイデアを見つけます。

そのためには、社内外でのブレインストーミングや市場のトレンド分析を行う必要があります。他社との差別化や独自の強みを持つアイデアが、成功の鍵となるのです。
アイデアは既存のアイデアと組み合わせたり、世の中の「課題」に注視見つかりやすくなります。

また、アイデアの優先順位付けを行い、実現可能性を考慮した選定プロセスも重要です。

事業領域を決める

アイデアが固まったら、どの事業領域に進出するかを決定します。

市場の成長性、競合状況、自社のリソースとの整合性を考慮して決めていきます。その際は、選定した事業領域における具体的なビジネスモデルや収益化戦略を検討し、リスクとリターンを見極めることが重要です。

事業領域の選択は将来の成功に大きな影響を与えるため、慎重な分析と計画が求められます。また、事業領域の明確化は組織全体のリソースの最適化や経営戦略の方向性を定める重要なステップとなります。

市場調査を行う

市場調査は新規事業を立ち上げる上で欠かせない取り組みです。成功するためには、市場の現状やトレンド、競合他社の動向などを把握することが不可欠です。

市場調査によって、事業の市場適合性や潜在顧客のニーズを把握し、事業戦略の基盤が築かれます。また、市場調査はリスクを最小限に抑え、迅速な市場参入を実現するための戦略の立案にも有効です。データの収集方法や調査範囲を慎重に選定し、客観的なデータを元に市場の全体像を把握することが重要です。

事業計画を立てる

市場調査を終えたら、調査結果を踏まえて、具体的な事業計画を立てていきます。

事業計画には、事業の目標と戦略やターゲットとする顧客、マーケティング戦略、組織体制と運営計画、資金調達計画などが含まれます。事業計画は事業の方向性を明確にし、各関係者の理解と協力を得るために重要です。計画は柔軟性を持たせ、市場の変化やフィードバックに対応できるようにすることも重要です。

事業計画は経営陣や投資家にとっても事業の実現可能性を示す重要な評価基準となるため、信頼性のある計画作成に努めることが必要です。

事業立ち上げに必要な環境を整える

事業計画が完成したら、次は事業立ち上げに必要な環境を整える段階です。具体的には、必要な人材の採用や教育、必要な設備や技術の整備、必要な資金の調達などが考えられます。

また、事業立ち上げのスケジュールを策定し、各段階での進捗を管理することで、計画通りのスムーズな立ち上げが可能となります。環境の整備は事業の成功に直結するため、慎重な計画と適切なリソースの配置が求められます。

事業の実施・検証を行う

事業が立ち上がったら、実際にビジネスを展開し、市場にサービスや商品を提供します。

この段階では、計画通りに進行しているかどうかを定期的にモニタリングし、目標達成に向けて調整を行うことが重要です。市場の反応や顧客のフィードバックを入念に分析し、適宜改善を加えることで事業の成長が促進されます。

また、事業の実績を評価する指標を設定し、目標達成に向けた進捗状況を把握することで、戦略の修正や追加投資の判断が容易になります。

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新規事業立ち上げを成功させるポイント

ここからは、新規事業立ち上げを成功させるポイントについて解説します。

既存事業の強みやリソースを活かす

新規事業立ち上げを成功させるポイントは、既存事業の強みやリソースを活かすことです。既存の事業が持つ強みやリソースをうまく活用することで、新規事業の成功率が高まります。

たとえば、既存事業で培ったブランド価値を新しい事業に拡張することで、新規事業の立ち上げ初期から安定した需要を確保できる可能性が高まります。顧客の信頼や既存の取引パートナーとの関係を活かせば、新規事業の市場進出をスムーズに行えます。

また、既存事業で培った経験や知識を新規事業に活用することで、リソースの効率的な活用が可能となります。経験豊富な従業員や管理体制を新しい事業に組み入れることで、事業運営のノウハウを有効活用できます。

メンバーのモチベーションを高める

メンバーのモチベーションを高めることは、新規事業立ち上げの成功に欠かせない要素です。

モチベーションを高めるためには、ビジョンを共有し、目標に一体感を持たせることが重要です。そのためには、ビジョンの魅力や重要性をメンバーへ説明する必要があります。そのうえで、成長機会を提供し、取り組みがいのあるプロジェクトにアサインすると意欲が高まります。

また、適切な報酬を用意することで、メンバーの働く意欲が向上し、成果に対するモチベーションが高まります。

市場調査を入念に行う

新規事業立ち上げを成功させるためには、市場調査を入念に行うことが不可欠です。市場調査は新規事業の戦略策定や市場進出の際に、正確な情報を得るための重要な手段です。

市場調査によって、市場の現状やトレンドを把握できます。競合他社の動向や顧客のニーズを調査することで、新規事業がどのような位置づけにあるのかを把握可能であり、新規事業の差別化や競争優位性の確立に役立ちます。

顧客の意見やフィードバックを収集すれば、新規事業が提供する商品やサービスの設計や改善点を把握し、マーケットフィットを高められます。顧客のニーズに応えることができる商品やサービスを提供することで、市場での優位性が高まり、競争力が向上します。

撤退ラインを明確にする

新規事業立ち上げを成功させるポイントは、撤退ラインを明確にすることです。

撤退ラインとは、新規事業が一定の期間や条件を満たさない場合に、事業を撤退するかどうかを判断する基準や目標のことを指します。撤退ラインを明確にすることにより、リスクマネジメントが向上し、失敗した場合にリソースの無駄な浪費を防ぎ、他の有望なプロジェクトにリソースを注力する戦略的な意思決定が可能となります。

撤退ラインの設定には慎重な検討が必要であり、リスクとリターンを考慮し適切なバランスを見極めることが重要です。撤退ラインを厳しく設定しすぎると、有望な事業の成長の可能性を逃してしまう恐れがあるため、柔軟な見直しも必要です。

新規事業立ち上げ時に活用したいフレームワーク

ここからは、新規事業立ち上げ時に活用したいフレームワークについて解説します。

PEST分析

PEST分析とは、新規事業立ち上げ時に活用される戦略的な分析フレームワークの一つです。PESTは、以下の要素を指します。

政治的要因 (Politics)法規制・規制緩和、税制の見直し、政府の政策や規制、政治的な安定性など
経済的要因 (Economy)経済成長率、インフレーション率、為替、日銀短観、失業率など
社会的要因 (Society)人口構成、消費者の嗜好や行動、文化、社会の価値観など
技術的要因 (Technology)技術の進化やイノベーション、インフラの整備など

PEST分析は、これらの要因を分析することで、新規事業が展開する市場の全体像を把握し、市場適合性やリスクを判断するための手法となります。

SWOT分析

SWOT分析とは、強み・弱み・機会・脅威の4点から分析を行うフレームワークです。

Strength (強み)企業や新規事業が持つ内部的な強みや利点
Weakness (弱み)企業や新規事業が持つ内部的な弱みや課題
Opportunity (機会)企業や新規事業にとって有利な要因や機会を与える外部環境の要素
Threat (脅威)企業や新規事業にとって不利な要因や脅威を与える外部環境の要素

自社の内部状況と外部環境を客観的に把握することで、新規事業のポジショニングやビジネスモデルの構築、リスクマネジメントなどにおいて戦略的なアプローチを可能とします。

4P分析

4P分析とは、Product(製品・サービス)、Price(価格)、Place(販売場所・提供方法)、Promotion(販促活動)の4点から分析を行うフレームワークです。

Product (製品・商品)新規事業が提供する製品やサービスについての戦略
Price (価格)事業の製品やサービスの価格戦略
Place (流通・販売チャネル)新規事業の製品やサービスを顧客に提供するための流通や販売チャネル
Promotion (プロモーション・販促)新規事業の製品やサービスを顧客に広く知ってもらうためのプロモーション戦略

4P分析は、これらの要素を総合的に検討することで、新規事業のマーケティング戦略を立案する手法です。

3C分析

3C分析とは、新規事業立ち上げ時に活用される戦略的な分析フレームワークの一つです。3Cは、以下の要素を指します。

Company (会社)新規事業を展開する企業自体の内部要因を指します。企業の強みや弱み、リソース、能力、ビジネスモデルなど
Customer (顧客)新規事業のターゲットとなる顧客についての要因を指します。顧客のニーズや要求、購買行動、嗜好など
Competition (競合他社)新規事業が直面する競合他社についての要因を指します。競合他社の強みや弱み、市場シェア、戦略など

会社の強みと顧客のニーズをマッチさせることで、市場での受け入れやすさを高められます

まとめ

この記事では、新規事業を立ち上げる目的や立ち上げの流れ、成功させるポイントなどを解説しました。新規事業を立ち上げる際には、入念に計画を立て、成功の道筋が立ったうえで進めていきましょう。

もし新規事業の立ち上げを検討中であれば、ぜひM&A DXにお任せください。M&A DXのM&Aサービスでは、事業ポートフォリオに関するさまざまなアドバイスも大手会計系M&Aファーム出身の公認会計士など実戦経験豊富なスタッフが行っています。どうプロジェクトを進めていくべきかの相談も乗っていますので、お気軽にご連絡ください。

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