企業が合併するメリット
企業の合併には、組織力の面でさまざまなメリットがあります。ひとつの組織として大きくなれるだけでなく、他者との関係性や業界内の優位性などにもよい影響を与えるでしょう。組織内をよりよい方向に改善できる可能性が高いことも、企業合併の大きなメリットです。具体的にどのようなメリットがあるのか、代表的なものを以下にご紹介します。
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企業スケールが大きくなる
企業が合併すると企業規模が大きくなり、双方の利点を合わせたさまざまなスケールメリットが得られます。たとえば、合併前の双方が抱える販売網をすべて利用できるため、より広い範囲で販売ネットワークを構築できるでしょう。各所からの大量仕入も可能になり、コストダウンが図れます。
また、製造部門がひとつになることで、商品の大量生産ができるようになるケースもあります。大量生産によるコスト削減も、合併で得られるメリットのひとつです。
仲間の結びつきを強くできる
企業合併は、異なる企業文化を融合する出来事です。株式取得による子会社化や提携などと異なり、合併後は完全にひとつの企業になります。互いに刺激し合い、従業員の士気を向上させるきっかけとなるでしょう。
合併前に取引先同士であった場合は、同じ環境で働くことで一体感がより強まることが期待できます。企業の規模が大きくなること自体が、従業員が自身の存在価値をあらためて強く意識するきっかけです。企業や仕事に対する誇りや忠誠心が高まる可能性もあるでしょう。
競合他社との合併でライバルが減る
合併相手が同じ業界内の競合他社であれば、ライバルが減ることになります。業界内での順位が上がり、競争力はさらに高まるでしょう。
業績にそれほど差がない相手との合併なら、企業力が大幅に強化する可能性があります。しのぎを削ってきた相手がいなくなり、企業力をほぼ2倍に向上することで業界内での優位性は格段に上がるでしょう。自身の会社のほうが高い業界順位で、合併相手との力に差がある場合でも合併により一定レベル以上の効果は期待できます。
事業シナジーのメリットを得られる
企業合併により、事業シナジーの効果を得られることもメリットです。多くの国内大手企業が、合併により新しい事業を増やしたり、川上・川下へ進出したりしています。多角化に成功し、成長を続けている企業も少なくありません。シナジー効果のメリットを、存分に享受している例といえるでしょう。
事業シナジーの特徴は、単に事業規模が拡大する以上の効果を生み出す可能性があることです。売上が倍になるなどの単純な足し算ではなく、1+1が3にも4にもなるような企業の発展が望めます。そのため、事業シナジーは企業合併で得られる大きなメリットととらえられています。
企業内部の統制を強化できる
合併により各企業の従業員がひとつの企業に集まるため、統制をより強化できることもメリットです。株式取得による子会社化や提携のような関係の場合は、それぞれの企業が個別の組織として存在します。そのため、トップの意思が各従業員に伝わるまでに時間がかかってしまいます。
統制の強化は、組織全体が事業に対してひとつの目的意識を共有することにもつながるでしょう。経営が合理化し意思決定が円滑に進むようになれば、組織がよりシンプルにまとまり無駄な部門なども削減できます。
人件費・設備費のコストを削減できる
合併で組織をひとつにまとまると、人件費や設備費のコスト削減が可能です。企業合併にあたり、それぞれの人材や設備が重複することは往々にして起こりえます。
重複した人材は他部門に異動してもらったり、設備に関しては新たな部署を立ち上げて利用を検討したりするなど、単にカットするだけでなく効率的な配置転換もできるでしょう。特に、事業承継を目的とした合併で得やすいメリットです。
ブランド力を強化できる
ブランド力のある企業同士の合併であれば、さらにブランド力を高められます。ブランド力が高まると資金調達がより容易になり、上場企業であれば株価にもよい影響を与えるでしょう。双方の知名度を生かすことは、優秀な人材の確保という面でも有利です。国内の大手企業では、合併前のブランド名をそのまま新企業名に残すケースも多くみられます。
また意外な2社が合併したケースなどでは世間の話題を集め、さらなるブランド力の強化へとつながるでしょう。
資金移動が簡単にできる
たとえ同じグループに属する企業同士であっても、企業間の資金移動には手間のかかる手続きが少なからず必要です。しかし、合併後は同一法人になるため、資金移動の際に面倒な手続きが必要ありません。
資金移動が楽になる点は、グループ企業同士の合併でのメリットとして特に際立ちます。合併により口座がひとつになることで、より流動性の高い取引が可能になるともいえるでしょう。資金移動にかかる手間や、コストの大幅な削減にもつながる可能性があります。
組織コントロールが容易にできる
合併により企業運営のスリム化も図れます。合併前の各会社で個別に存在していた指揮系統や社内システム・管理体制などが一本化し、組織コントロールが容易にできるようになるでしょう。
組織コントロールが容易になれば、迅速な意思決定が可能となったり、業務が効率化したりといった効果が期待できます。別々の会社同士であれば行わなければならない、情報の共有や連携といった手間のかかる作業が省略できます。多くの業務がスムーズに進むでしょう。
企業が合併するデメリット
企業の合併には、メリットだけでなくデメリットもあります。容易に想定されるものから簡単には思いつかないようなものまで、デメリットの種類はさまざまです。
合併によるデメリットやリスクは、そのほとんどに関し対策を講じることでダメージを軽減できます。以下に挙げる主なデメリットについて理解を深め、リスクを回避・軽減する方法を考えてみましょう。
経営統合に時間がかかる
合併は、複数の企業をひとつに統合するプロセスです。単に子会社化する株式譲渡などとは異なり、統合にはある程度の時間を要します。組織の改変をはじめ重複している人材や部門の削減・業務のすり合わせ・給与体系の見直しなど、統合にあたりすべきことは様々です。
必要なのは時間だけではありません。作業に費やす時間が増える分、従業員の負担も増加します。時間や労力がかかる問題について、事前に協議しておくことが重要です。
社内ルールの統合が必要になる
合併の際に困難となりがちな業務のひとつが、社内ルールの統合です。それぞれの組織で慣れ親しんできたルールを、大幅に変更しなければなりません。従業員のストレスや不満が増幅する大きな要因です。
合併の際に不満を感じたこととして、社内制度の統合という声が、実際の現場では多く聞かれます。合併を実施するにあたっては、合併後のマネジメント計画も専門家の意見を取り入れながら十分に構築しておくことが重要です。
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人員増加でコストが増える
合併することで人員が増え、結果的に人件費が大幅に増加することも考えられます。人員整理を目指すべき企業合併において、人員増加によるコスト増は大きなデメリットといえるでしょう。
人件費の負担が増加する原因には、外部会社同士の合併では従業員の雇用維持や待遇維持が条件になることが多いことが挙げられます。また、多くのケースで合併後の給与水準は高い方にあわせることも、人件費が増加する要因です。
従業員が流出する可能性がある
優秀な人材が流出するというリスクは、合併に限らずすべてのM&Aにおいて懸念されるデメリットです。異なる企業文化の融合は、組織内部の士気を高める効果が期待できる一方で、新しい価値観になじめない従業員が去る原因にもなりえます。
従業員の流出は、単に頭数が減るというデメリットだけではありません。情報や技術・ノウハウ等の流出の危険にもつながります。また、企業を離れる従業員が組織の中核を担う立場であった場合は、事業価値の大幅な低下を招くだけにとどまらず、事業が立ち行かなくなることも考えられます。
新たな人間関係の構築でストレスが起こる
合併により従業員が抱える不満で多いのが、新しい人間関係において感じるストレスです。特に、合併前にライバル意識や差別意識をもっていた場合は、これらの意識がそのまま相手に対する不当な扱いなどの行動に表れるおそれがあります。
親会社と子会社の合併においても、同様に差別意識がはたらくケースが考えられます。元親会社の従業員が上から目線で振舞うだけでなく、元子会社の従業員が自ら差別されている意識をもってしまうケースもあるでしょう。
業務量の増加で混乱が起きる
合併前後には、ほとんどの場合で合併に関連する業務量が一気に増加します。普段の業務に加えて、合併時にしか行わない慣れない業務も同時進行しなければなりません。合併への不安も重なり、従業員にとっては大きなストレスとなるでしょう。
合併を頻繁に行っている企業では、合併専門の部署が設けられている場合もあります。しかし、ほとんどの企業では、合併に関連する業務は一時的です。専門性も必要とされる不慣れな業務の追加は、組織の混乱を引き起こすおそれがあります。
責任の所在が曖昧になる可能性がある
合併により事業が統合されると、事業に関する責任の所在が曖昧になる可能性も出てきます。特に複数の事業を行っているケースでは、責任あるポストについている者の責任感が薄くなってしまいがちです。
合併にあたり事業を統合する際には、事業ごとに部門や数字などを明確にし、責任の所在をはっきりと定めておくことが重要です。可能であれば、これらの作業は合併後に行うのではなく事前に進めておきましょう。
業績をまとめにくい
別々に進められていた事業が統合すると、事業ごとの業績をまとめにくいケースがたびたび発生します。たとえ類似した事業であっても、別会社であれば細かい点はそれぞれのルールで行われていることがほとんどです。
業績がうまくまとまらないことで、経営陣は事業に対する正確な評価をくだすことが困難になります。このようなデメリットを発生させないためには、合併前にしっかりと会計を整理しておき、合併後に業績をうまくまとめられるようにしておくことが重要です。
合併コストがかかる
合併にはさまざまな費用がかかります。一般的に、合併の際に発生するコストは小規模な合併でも数百万円、中規模以上の合併になると数億円かかるといわれています。一時的なコストではあるものの、事前に想定しておくことが重要です。
主な合併コストとしては、株主や債権者への対応にかかる費用、合併の専門業者へ支払う費用、組織内のシステム整備費用などが挙げられます。合併ごとにさまざまなケースが考えられるほか、事前に予測できなかったコストが発生することも念頭に置いておきましょう。
株価への悪影響がある
合併の成果が出るまでには多くの場合、一定の期間を要します。業績が上向くまでの期間は、合併により発生したコスト増加が原因となり一時的な業績の低下も予想されます。業績が低下すれば、株価への一時的な悪影響は避けられないでしょう。
また、合併により会計上の株価が下がるケースもあります。合併を行う際には、株主・取引先・従業員などのステークホルダーに対し、合併の目的や将来性をしっかりと説明しておくことが重要です。
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企業規模の変化で税負担が増える
資本金1億円以下の中小企業は、大企業と比較して税制面での多くの優遇措置がとられています。軽減税率の適用・留保金課税の停止・交際費の損金算入・貸倒引当金の特例など、恩恵を受けられる優遇措置の種類はさまざまです。
しかし、合併により資本金が大きくなり、大企業のカテゴリに属してしまうとこれらの優遇措置が受けられなくなってしまいます。合併を行う際は、税負担の増加も意識しておくことが大事です。
【買い手側】企業合併のメリット
企業の合併にも、売り手と買い手が存在します。一般的には、企業規模が大きい方が買い手で、小さい方が売り手です。企業合併における売り手と買い手には、それぞれにメリットとデメリットが存在します。ここでは、企業合併における買い手側におけるメリットを確認しましょう。
現金の準備をしなくていい
企業が合併する際は、合併の対価として売り手が買い手に何らかの対価を求めます。合併対価として一般的なものが株式です。合併により売り手側が自社株を手放す代わりに、買い手から株式という対価を受け取ることで等価交換とします。
買い手は対価として現金を用意する必要がないため、資金集めに苦労している間にM&Aのタイミングを逃してしまったというような失敗を避けられます。
資産償却で節税効果に期待できる
合併により売り手企業から引き継いだ固定資産を、買い手企業は減価償却できます。計上できる固定資産は、土地や建物・設備などの有形固定資産だけはありません。のれん(営業権)も無形固定資産として計上できます。のれん(営業権)とは、ブランドなど売り手企業がもっている目に見えない価値を金額として表したものです。
減価償却により固定資産を複数年にわたり経費にできるため、節税効果が期待できます。会計上、のれんは取得後20年を上限として耐用年数を決めます。
買収後リスクを売り手と分担できる
買い手が売り手を買収してひとつの企業になった後は、さまざまなリスクの発生が想定されます。しかし、買収後も売り手は買い手のパートナーとして存在しているため、発生しうるすべてのリスクを分担することが可能です。
この場合のリスクとは、内部リスクと外部リスクの両方を対象としたものです。売り手と買い手との間に発生したトラブルだけでなく、企業の外側から影響されて起こりうるリスクに対しても、買い手だけが責任を負わずに済むでしょう。
【買い手側】企業合併のデメリット
合併をもちかける側の買い手には、いくつかのデメリットも発生します。いずれも、合併後の事業運営に支障をきたしかねないものばかりです。合併後も健全な企業運営を継続できるようにするためには、合併により発生するデメリットを理解しておくことも大切です。買い手側に考えられる代表的なデメリットを以下にご紹介します。
引き継いだ債務の責任を負う
合併によりM&Aを行う場合、売り手企業をそのまま買収できることはメリットです。しかし、同時に負の遺産も引き継いでしまうことはデメリットといえます。引き継いだ債務などの責任は、買い手側が負うこととなります。
また、簿外債務など売り手側のマイナス要素が買収後に発覚するおそれもあります。売り手側に隠された簿外債務や不法行為がないか、合併前にしっかりチェックできる体勢を整えることが重要です。
売り手の抵抗感がある
売り手は企業としての存在が消滅します。実質的な機能は残るものの、企業が消滅することに対し、売り手側の従業員に何らかの抵抗感が残ってしまうことは否めません。
売り手側に抵抗感がある状態では、少なからず事業運営にも悪影響を与えるおそれがあります。買い手側としては、売り手側の抵抗感を察する意識を常にもち、ともに手を取り合う一体感が得られるようなケアを怠らないことも大切です。
【売り手側】企業合併のメリット
企業合併においては、売り手にもメリットがあります。買い手に誘われる形で自社を売却する売り手は、多くの部分で買い手に依存することが大きな特徴です。
買い手が慎重に売り手を選択しなければならないのと同様に、売り手も買い手を正しく選ぶことで、さまざまな恩恵を受けられます。合併における売り手のメリットを以下で確認しておきましょう。
買収後に価値が上昇する
自社を吸収される形になる売り手側は、形式上は買い手側のベネフィットを享受します。合併後に買い手の価値が上昇すれば、それに引っ張られるような形で売り手側の価値も上昇することになるでしょう。
このような恩恵を受けることは、売り手における大きなメリットのひとつといえます。売り手になることを検討する際は、合併により受け取れる一時的な対価だけでなく、長期的な恩恵を受けられる買い手を選ぶことが重要です。
株式のみで合併した場合は株式売却まで課税が発生しない
合併の際に売り手が受け取る対価に株式が含まれる場合、株式を売却することで受け取る譲渡所得に対して所得税が課税されます。合併対価が株式のみの場合は、売り手側の利益は株式売却でしか発生しないため、株式を売却しない限り課税は発生しません。
【売り手側】企業合併のデメリット
買い手企業に依存する傾向が強い売り手企業には、いくつかのデメリットもあります。そのほとんどが、買い手との関係性において発生するものだといえるでしょう。売り手であることのリスクやデメリットを認識することは、合併がうまくいくための大きな要素です。売り手側における合併のデメリットの中で、代表的なものをご紹介します。
会社が消滅する
売り手側の企業としての存在は、合併することにより消滅します。買い手のデメリットでご紹介した合併による売り手のさまざまな抵抗感は、そのまま売り手側のデメリットにあてはまる要素です。
会社がなくなることによるデメリットは数多く考えられます。中でも、売り手企業の従業員がこれまで自社に対して抱いてきた希望を失い、士気が下がることには、特に注意しなければなりません。経営者は、合併の目的などをしっかりと内向きにも説明する必要があるでしょう。
買い手企業の価値変動リスクを負う
売り手側の合併後の実質的な価値は、買い手の価値に大きく依存します。買い手側の価値が下がれば、それにともない売り手側の実質的な価値も下がり、リスクを負う形となります。
買い手の価値変動にともなうリスクを軽減するためには、買い手の価値低下を防ぐよう、売り手の努力も重要です。売り手は買い手の価値変動に依存するという考え方を捨て、買い手側にも大きな影響を与える存在であるという意識をもつことが大事といえるでしょう。
入手した株式の現金化が困難な場合がある
日本企業の99%以上は非上場企業ですが、非上場株式の売却は簡単なものではありません。株式を売買するための市場がないため、買主を探す必要があります。合併における買い手が非上場企業であれば対価が株式であった場合、現金化が困難であり大きなデメリットです。
また、株式を売買する市場がないことは、その株式をどのくらいの値段で取引するのが妥当なのかが分かりにくいという点もポイントです。株式に対する明確な目安がない状況で、株式の売買価格を決める必要があります。
企業が合併する目的
企業の合併の多くは、グループ企業の再編を目的として実施します。たとえば、子会社が製造と販売の企業に分かれていたり、複数の子会社が類似商品を取り扱っていたりするような場合に効率化を求めて子会社同士を合併させます。
また、業界再現を促すために、大企業同士の大型合併もしばしば行われます。業界が停滞気味のような状態にあるときに、業界におけるリーダー的な存在の企業同士が合併することで業界全体の活性化を促進する意味をもちます。
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企業合併は、仲介をはさまずに企業同士のみで行うことも可能です。しかし、手続きなどに時間や労力がかかるうえ、合併成立後のトラブルにも当事者同士で解決を図る必要があります。そのため、企業合併を行う際はM&A業者と連携して行うのがおすすめです。
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まとめ
企業合併はうまくいけば、業績を大きく伸ばすメリットがあります。しかし合併を成立するには手間がかかり、従業員にも負担がかかるというデメリットも無視できません。合併のメリットを最大限に生かし、デメリットを最小限に抑えるためには経験豊富な専門業者が頼りになります。
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