0120-061-279 M&A・有効的承継はすばるへ!お気軽にご相談ください。

M&A・相続・事業承継のすばる

すばるM&Aリサーチ

Subaru M&A research

事業譲渡における契約上の地位の移転とは?協議で進める移転手続きの数々

善利友一

弁護士 善利友一

弁護士登録後、大手法律事務所に入所。企業法務、一般民事、刑事事件等の幅広い分野の案件に携わる。パートナー弁護士に就任後、企業法務、不動産法務、相続法務に注力し、顧問業務、法務デューディリジェンス業務に携わるとともに、多くの企業訴訟、不動産訴訟、相続紛争を解決に導く。クライアントによりマッチした法的サービスを提供すべく、善利法律事務所を開所し、代表弁護士に就任。 2017年からは、上場企業及び上場を目指す企業の社外監査役に就任し、弁護士としての経験を活かし、コーポレート・ガバナンスの一翼を担う。 2019年、株式会社すばるの社外監査役に就任し、現在に至る。

契約上の地位の移転とは、平成29年民法改正によって新設された規定の一つです。事業譲渡に大きく関わる規定ですが、どういうものかを知らずに、事業譲渡を検討している方もいるのではないでしょうか。事業譲渡で取引されるものには、有形無形とさまざまです。契約上の地位の移転に関して正しい知識がなければ、契約上の地位が伴わずに事業や資産だけを引き継いでしまい、正常に機能しなくなるといったトラブルになってしまうことも考えられます。

そこでこの記事では、事業譲渡における「契約上の地位の移転」について解説します。契約上の地位の移転を行うべきかの判断に役立て、正しく手続きが進められるようにしましょう。事業譲渡のメリット・デメリットについても紹介します。

お問い合わせの電話番号0120061279

要注意!事業譲渡は包括承継ではない

要注意!事業譲渡は包括承継ではない

事業譲渡とは、事業の一部あるいは全部を第三者に譲渡することを言います。譲渡対象とするものを選別して承継する個別承継のひとつです。譲渡対象となるものは、事業を行うのに必要な有形、無形の財産、債務、ノウハウ、取引先との契約、従業員などあらゆる事業、資産が含まれます。
契約に関する事柄は、ひとつひとつ対応しなければいけません。例えば、取引先との契約や雇用契約も譲受企業と取引先または従業員双方の同意が必要です。その一方で、獲得する事業や資産を選択できることから、不要な部分までも受け入れるリスクを避けられます。

株式譲渡と比較した事業譲渡のメリット、デメリット

M&Aの手法である株式譲渡と事業譲渡は、それぞれ目的、メリット・デメリットが大きく異なります。違いを比較してみましょう。

  譲渡対象 目的 メリット デメリット
株式譲渡 株式 経営権の獲得 手続きが比較的容易
・許認可を引き継げる
・ダメージを及ぼす可能性がある契約や簿外債務を引き継ぐ可能性がある
事業譲渡 事業の一部または全部 事業の獲得 ・獲得したい事業を選択できる
・ダメージを及ぼす可能性がある契約や簿外債務を引き継ぐリスクが減る
・手続きが煩雑
・許認可は原則取り直し

包括承継に該当する株式譲渡は、企業を丸ごと引き継ぐことから許認可を取得するなどの手間が省けます。一方で、負債など企業にダメージを与える可能性がある部分も引き継ぐことになる点に注意しましょう。事業の再生を考える場合は、事業価値が下がる前に事業を譲渡することで、事業の存続を図り、譲渡対価を債務の返済に充てる事業譲渡のほうが、会社にとって大きなプラスになる可能性があります。

事業譲渡では「契約上の地位」の移転手続きが必要

事業譲渡では「契約上の地位」の移転手続きが必要

事業譲渡では、「契約上の地位」を移転する手続きをしなければなりません。初めてこの言葉を聞く方もいるかもしれませんが、手続きを怠ればトラブルに発展することもあります。スムーズに手続きを進めるためにも、事前に基礎知識を身につけておきましょう。

契約上の地位とは

契約上の地位とは、売買や不動産賃貸借といった契約で発生する権利義務を保有する契約上の立場(売主または買主、賃貸人または賃借人)を指します。

この立場を第三者へ移転するのが、「契約上の地位の移転」です。債務に関して譲渡人から譲受人に債務者を変更する「免責的債務引受」と似ていますが、債務が移るだけではなく、契約当事者としての地位そのものを移すという点で異なります。

(参考: 『法務省 民法(債権関係)部会資料 民法(債権関係)の改正に関する論点の検討(10)』)

同意を得ないと承継されない

事業譲渡によって、特定の契約を移す場合、原則としてその契約の相手方の承諾が必要です(民法第539条の2)。なぜなら、契約内容次第では相手方が不利益を被る可能性があるからです。契約上の地位移転は、譲受企業と契約当事者双方の合意を得ていることが前提です。

譲渡する資産・負債・契約上の地位の移転はセットになっています。場合によっては、契約上の地位の移転が必要です。

厚生労働省による指針

労働者との労働契約に関しても個別で対応するのが基本となります。従業員の権利を保護する目的で、平成28年に厚生労働省は指針を示しました。譲渡対象となる事業で働いていた従業員は、譲渡企業との契約を終了して譲受企業と契約を結ぶことになります。しかし、譲渡企業と全く同じ待遇で働ける保証がないことから以下の指針を示しました。

第2「事業譲渡に当たって留意すべき事項」 指針第2-1(1) 従業員にかかる労働契約を譲受企業で承継する場合には、労働者個別の承諾を得る必要がある
指針第2-1(2) ・事業譲渡に関する全体の状況(譲渡企業及び譲受企業の債務の履行の見込みに関する事項等)
・譲受企業の概要及び労働条件等(従事することを予定する業務の内容及び就業場所その他の就業形態等)
について十分に説明する必要がある

(参考: 『厚生労働省・都道府県労働局 「事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針」の概要』)

従業員の承継も同意が必要

事業譲渡を行う際、ある程度の譲渡手続きを踏むまで従業員に伝えられない場合もあるでしょう。そのため、決定後の限られた時間の中で、譲渡企業は従業員ひとりひとりに対して不備のないよう説明や協議を行い、スムーズに契約の承継手続きを進めることが重要です。

不誠実に対応すれば、事業譲渡が失敗に終わってしまう可能性も高くなるでしょう。説明とは違った条件で従業員が働くことになれば、不満を持って退職してしまうことも考えられます。

事業譲渡には「資産の所有権」移転手続きも必要

事業譲渡には「資産の所有権」移転手続きも必要

個別承継となる事業譲渡では、譲渡企業との交渉を踏まえた上で引き継ぎたい資産を譲受企業が選択できます。資産によっては所有権の移転手続きが必要です。ここでは、対象となる財産とそれぞれの留意点について解説します。トラブルを予防するためにも、内容をきちんと把握しましょう。

譲渡される資産とは

譲受企業が選択した資産を、譲渡企業は個別に譲渡します。資産の所有権が変更されることから、移転手続きが必要です。不動産が含まれる場合は、所有権移転登記の申請も忘れてはいけません。併せて、譲渡後に債務を債権者に対して引き受けないことを示す免責登記についても理解しておくと、万が一のときに役立ちます。

対象1. 動産

機械装置、製品、貯蔵品、現金、無記名証券などの動産は譲渡対象となり得ます。事業譲渡契約を締結する場合、所有権などの権利関係を明白にしなければいけません。特に、備品や什器などは手続きを見落としてしまいがちであることから、細部まで確認しましょう。

譲渡後に想定されるトラブルとしては、保有する権利が使用権だけであったり、使用品がリースであったりすることです。この場合、リース会社などから承諾を得て契約上の地位の譲渡を受けることになります。

対象2. 不動産

不動産を譲渡する場合は、移転登記の手続きを進めましょう。抵当権を抹消する場合は、抵当権者に協力を得ることになります。以下に手続きの内容をまとめました。

不動産の譲渡 移転登記(抵当権や地上権が付いている場合も含む)
工場財団 工場財団の移転登記

対象3. 労働者

労働者の承継は、個別承継となることから個別の承諾が必要です。論点になりやすいのが労働者への給与が未払いの場合です。どちらが支払う責任があるのかを、事業譲渡時に明白にしなければいけません。

対象4. 事業に関わる取引契約

契約上の地位の移転にあたって、その後も引き続き契約を保持できるよう、取引相手から事前に承諾を得ることが前提となります。

現時点で交渉中の契約は、現在の進捗状況や成約までのスケジュール、譲渡前後の責任の所在などについて話し合っておきます。その契約が、どれくらいの価値を有するかも確認しておくと安心です。収益性が判断しやすくなることから、計画的に事業譲渡に向けた準備ができます。

対象5. 知的財産

特許権などの知的財産権も事業譲渡の対象となるのが一般的です。移転登録を行うことで効力が発生します。ポイントは、譲渡する権利の内容をはっきりと明確にしておくことです。
知的財産権を複数の会社で共有している場合は、共有している会社からの同意も必要です。

ノウハウを譲渡する場合においても、契約書上で内容を明白に記載するのがポイントです。事業とともに譲渡する旨を契約内容に明記します。

対象6. 車両など登録が必要なもの

車両など登録が必要な資産は、所有者が誰なのか確認しましょう。所有権留保やリースなど、譲渡企業が所有権を保有していないこともあります。

支払い途中の場合、費用を全て支払ってから譲受企業へ渡すかどうかが論点となる可能性があります。契約を引き継ぐ際は、所有権を保有する人やリース会社から承認を得なければいけません。継続的に発生する代金はどちらが負担するかも明白にしましょう。

対象7. 債権

事業譲渡における債権の移転は、通常の債権譲渡と同じように、対抗要件が必要となります。事前に譲渡企業が債務者に対して通知するか、債務者から債権譲渡に関する承諾を得ることで、債務者への対抗要件は満たされます。また、第三者への対抗要件を満たすことが必要です。例えば、債権譲渡において複数の譲受者が発生した場合、1つの債権に対して複数人の債権者が存在することになります。債権を譲り受けた者が、他の者に対して自身の債権譲渡を主張するために、第三者対抗要件が満たす必要があります。この第三者対抗要件というのは、確定日付のある証書による通知または承諾です。確定日付としては、公証人役場での私署証書への確定日付の付与や内容証明郵便がよく使われます。確定日付のある証書による通知または承諾により、第三者に対して対抗要件を満たすことができます。トラブルを避けるためにも、通知の見落としがないようにしましょう。

対象8. 債務

債務を引き継ぐ場合には、譲渡企業が債権者に承諾を得なければなりません。。

対象9. のれん

事業譲渡したことで、のれんが生じるケースもあります。事業を著しく低い価額で譲渡すると、場合によっては、譲渡企業の債権者などから詐害行為取消しを請求される恐れもあるでしょう。

適正な事業譲渡価格を算定するために、数ある方法の中から評価に相応する方法を使用することが望ましいといえます。適切な方法を用いるためには、専門家に相談するとよいでしょう。

事業譲渡では「債権者保護」も協議

事業譲渡では「債権者保護」も協議

債権や債務の移転は、企業に貸付などをする債権者にとって、利害に大きな影響を与える出来事です。ここでは、金融機関や仕入れ先の利益を守るための債権者保護について解説します。

債権者保護の目的と意義

債権者は、事業譲渡により利害に影響を受けやすいポジションです。そのため、決定内容に対して、金融機関、仕入先といった債権者は一定期間内であれば意見を述べるチャンスが与えられています。

優良事業を廉価で譲渡すると大きな影響を受けることから、債権者を守る法律が作られました。それが、民法の詐害行為取消権(民法424条)です。債権者の債権を侵害する場合は、事業譲渡の取り消しができます。

(参考: 『民法424条』)

事業譲渡では法定化されていない

債権者保護手続きは、事業譲渡では法定化されていません。債権者保護手続きが定められている会社分割とは違い、事業譲渡では基本的に債権者保護手続きは不要です。しかし、債務を承継する場合は債権者への通知を行い、個別同意が必要です。個別に契約を進め、相手の合意を得なければ次のステップに進むことができません。

トラブル回避に役立つ「覚書」

どのようなことに合意したのかを書面化するときに役立つのが覚書です。契約書を作る前の段階で、内容を記録したいときに役立ちます。新たに記録したいことが増えた場合は、契約書作成後でも覚書を追加可能です。当事者間の合意事項であれば、覚書にも法的な効力があります。ここでは、事業承継する際の覚書の必要性を確認しましょう。

事業承継で「覚書」が必要な理由

当事者間で協議する機会が多い事業譲渡では、細かなことでも記録しやすい覚書が役に立ちます。交渉の間は、認識のズレからトラブルに発展する可能性もあるため、覚書を作成して契約書作成前に双方の意見を覚書として記録することで、合意の証拠にもなります。組織編成、雇用状況などは移り変わりやすいことから、法的効力を持つ覚書に記録するとよいでしょう。

覚書に記載する内容

以下の内容は、覚書に記載しておくとよい内容です。甲を譲渡企業、乙を譲受企業とします。

事業譲渡 甲は、××地域に展開する○○という事業を、乙に事業譲渡する。
事業譲渡の時期 甲および乙は、令和○年〇月〇日を目処に事業譲渡する。
譲渡条件 1.甲は、乙に○○社の事業の一部である○○を譲渡する。
2. 乙は、当該事業における各店舗の従業員を可能な限り継続雇用する。
資産等の譲渡 甲の事業に関する資産全てを譲渡対象とする。
負債の譲渡 乙は、甲の事業に関する買掛金・リース・借入金・その他負債の全てを引き受ける。
調査と資料提供 乙は事業を引き受けるにあたり、必要な調査を甲に行うことができる。

円滑な事業譲渡での承継は専門家との連携がおすすめ!

個別に資産や契約の承継手続きが必要である事業譲渡では、企業間での交渉が多くなったり手続きが煩雑となる場合が考えられます。円滑でスムーズな事業譲渡を求める場合は、専門家と連携して進めるとよいでしょう。すばるは、M&Aの仲介業務を含むさまざまなM&Aサービスをワンストップで提供いたします。実績とスキル、どちらも兼ね備えたすばるへお任せください。

まとめ

まとめ

契約上の地位を移転する際には、譲渡側と譲受側だけではなく、契約の相手方を含めた三者の承諾が必要です。会社法では事業譲渡における債権者保護の規定はありません。しかし、事業譲渡の際に債権者にもリスクが及ぶ可能性があることから、民法の詐害行為取消権によって取り消しを求めることができる点も把握しておきましょう。

企業間で協議する機会が多い事業譲渡を円滑に進めるには、M&Aの仲介サービスを提供する業者に相談するとよいでしょう。すばるでは、業界大手で経験を積んだ公認会計士・税理士などが担当いたします。大手水準のサービスを割安で利用できる上に、初回相談料は無料です。事業譲渡でお困りの企業様は、すばるへご相談ください。