事業承継ラボ立ち上げの経緯を教えてください
元々はインターネット代理店、今は一部上場になった企業の創業メンバーとして、インターネットの広告及び、マーケティングをずっとやっておりました。
自分の経緯から簡単に説明しますと、地方の営業所を設立・創業に携わったことがありまして、新潟県で営業所を作った2011年から2013年までの二年間、インターネットのマーケティングの支援に携わり、おかげさまで多くの経営者の方にお会いをする機会を頂きました。
その中で、後継者の不足であったりとか、人材系のお悩みを抱える経営者の方々と多く話すことがありまして、事業承継というのがこれから課題になるんじゃないかという風に感じたのが、2016年ぐらいです。
自分自身がネットのマーケティングという比較的先端を行くような事業に携わっていたので、真逆の業態・業種の事業を自分でも作ってみたいという風に思いまして、事業承継ラボ及び、事業承継に携わるようになりました。
2017年に事業承継士という資格を取得しまして、税金や会社法みたいなところから改めて勉強をし、事業承継の成り立ちについて学ぶ機会を貰えましたのが、そもそもの事業承継との接点になります。
元々携わっていたネットのマーケティングが強みになると気づき、自分自身でもメディアを構築したいと、事業承継ラボというメディアを開発したという経緯になっております。
事業承継ラボの特徴と強みを教えてください
僕自身は士業の人間ではないので、専門的な相続のサポートを0からやっていくことは、正直考えていないです。
当時、新潟県で感じた後継者不足について、後継者のスキルアップになるべく寄り添っていくことに携わっていきたいなと思っていました。
事業承継ラボを作って一年半くらいになりますが、メディアを動かしていくと、そもそも経営者の方に事業承継の情報だったりとか、はたまた後継者の方々が事業を改めて生み、引き継いだ後の事業を変えていく・変革を与えていくということに対しての情報が足りないなという風に見えてきました。
事業承継ラボは後継者向けのメディアという立ち位置として、第三者承継の情報(2019年12月改定)など、より良い情報を後継者・これからの後継者候補が取得していくための、有益な情報をしっかりと世の中に出していく為のメディアとして、役割を担えればと思っております。
事業承継ラボの利用者についてお聞きします
事業承継ラボへの問い合わせはどのユーザー層が多いでしょうか
高齢の方より、どちらかというと事業を引き継ぐ若手(30代半ば~40歳くらい)が多いです。
後継者候補の方々から事業承継ラボへ、相談という形の問い合わせをいただいたりします。
その問合せからM&Aや事業承継まわりのサポートはされますか?
サービスを作って提供しているという感じではなく、比較的フレキシブルに対応させていただいてます。
事業承継ラボにとっての競合企業についてお聞きします
競合として意識しているメディアを教えていただけますでしょうか
全く無いです。
そもそもメディアという媒介だけでいうと、競合というものを変に作ってもしょうがないのかなと思っています。
事業承継をしなければならないという国の大きな課題に、一緒に向き合ってくださるような企業様を仲間と思ってますので、競合とは捉えてないですね。
では、今後一緒に向き合いたい企業を教えてください
事業承継士という資格を持っていることもあり、埼玉県の事業承継協会の理事・法政大学の中小企業診断士協会の特別会員になっています。
そのため士業者さんとの繋がりも比較的多く持っており、いざ後継者の方々が事業承継をしたいとのお話しをいただいた場合は、いつでもチームを組成してサポート出来る体制があります。
後継者の方々が本気で事業を変革したいという気持ちに対して、一緒に取り組んでくれるパートナーと仲間として取り組んで行きたいですね。
事業承継士という資格について
事業承継士について詳しく教えてください
事業承継士って今600~700人ぐらい資格ホルダーがいます(2020年現在)。私は150人目ぐらいの資格ホルダーです。
事業承継士という資格だけでは飯が食えないと思っている部分はあります。事業承継士はあくまで一般社団法人の協会であり、国家資格でもなんでも無いんですよね。
実は、中小企業診断士の資格も取ろうと二年くらい努力した期間がありまして「中小企業診断士だけでは飯が食えない」って良く聞く話で、事業承継士と同じような課題にぶち当たったんです。
ただ、事業承継士を目指すことで、「日本のいい企業を残したい」という思いを持った人たちと繋がれるというのは、有益なコミュニティだと思っております。
事業承継士を取ると何が出来るようになるのでしょうか
親族内承継がメインとして、まず事業承継の入り口、課題解決や整理から始まります。
その一連の流れを、分かり易く把握できるフォーマットとしてご提供できます。
例えば相続税の税金や、退職金の算出などの細かいところで、税理士さんや会計士さんのスキルが必要になってくることもあります。そういうときはコミュニティとしての機能を取り、アセットを持ってチームを組んで解決に向かうことができます。
事業承継士として支援をする中で、代表者様、創業者様の方々の思いをしっかり受け止めて、それをより良い形で提供することを経験できるということが、とても魅力的な資格だと思います。
事業承継士を目指した理由を教えてください
事業承継がこれから活況になっていくなと思ったのが、2016年です。
自分はIT・マーケティングしかスキルセットとして持っていなかったので、全く別のスキルを取得したかったというのが、事業承継士という資格を取ろうと思った理由です。
2014年ぐらいに、中小企業診断士の資格を取ろうと思っていました。それが道半ばで挫折してしまったというところがありまして。中小企業診断士と同じような、企業の支援が出来る資格・スキルを手に入れたかったという思いもあります。
葛谷さんのお仕事、具体的にどんな事をしているのか教えてください
来月(2020年9月現在)、起業家ないしは新規事業創造を加速させるエコシステムの競争というフューチャーカンファレンスがあって、事業承継という文脈で登壇する機会をいただきました。
表舞台にも一部出れるものがあれば、リレーション組んだりしています。
例えば今回、株式会社M&A DXの代表の方をメディアに出させていただきました。
メディア自体のライターだったりとか、ポストみたいなところはスタッフが手伝ってくれているので、お任せしたり協力しながらやっています。
後継者の方々が、より良い正確な情報を取得して事業承継をするのか、はたまたその会社自体を終わらせてしまうかとの判断も含めて、メディアの役割だと感じています。
ただのブロガー、アフィリエイトのメディアとは一線を画すして、違いを出したいと常に思っています。
M&Aでポジティブ・ネガティブだと思うことを教えてください
結果としてM&Aを望む経営者の方がいる、そもそも事業承継の中にM&Aというやり方があると、僕自身は捉えています。
M&Aはあくまで手段だと思っているので、ポジティブでもネガティブでもないといいますか、存在自体が重要なスキームだと強く思います。
M&Aをどう捉えることがベストなのかというと、事業を後世に残したい会社が多くある中で、金銭的なジャッジメントに限らない、より発展性の高いM&A、より事業が発展するスキームでのM&Aというのを見つけていくというのが、M&A・事業承継の界隈でビジネスをやっている人間の宿命かなと。
創業者の思いを鑑みると、作った会社が金銭だけでジャッジメントされて買われる、売られるというということよりも、本来、もっと大きく言うと国単位で残した方がいいビジネスをよりいいものに変えて、後世に残していくための手段として、M&Aというものがあればより良いかなと個人的には思っています。
綺麗事のように聞こえるかなと思うんですけど、そうであって欲しいなと。
国の課題と、菅総理のメッセージ(2020年現在)、国全体の生産性を上げていくためにも、M&Aというのを加速していくことは、すごく重要なものだと思います。
事業承継ラボの立ち上げ時と今で、市場が変化したと思うところを教えてください
事業承継士を取ったのが2017年の2月なので、おおよそ丸三年半ぐらい携わっていて、ラボ立ち上げからは一年ぐらい経っています。
メディアを運営する立場としては、検索数というもので露骨に数値化出来るので、M&A・事業承継という大きなキーワードに関する需要といいますか、すごく調べている人が増えたなと感じています。
国策としての第三者承継という取り組みも然りですし、コロナでより必要性に駆られたという事があるのかなと思います。
M&A業界・事業承継の界隈について気になっているという観点についてお話をさせて頂くと、コロナになってから「廃業 タイミング」などのキーワードで検索していただくと、事業承継ラボが検索ページの一番最初に出てくるんですね。
コロナの影響で廃業関連のキーワードがすごく増えていて、以前と比べ5倍くらいに検索数があり、サイトへの流入数がすごく増えています。
廃業ってやっぱり相談しづらいものですし、士業関連の人たちが見ても継続的に費用を貰うことが難しいじゃないですか。大きな金額を頂くのも難しいですと思うんですね。M&Aと違って。
廃業を検討したい小規模事業者さんたちにM&Aを使ってですね、支援をしっかりしてあげれるようになるといいなという風に強く思いますね。
廃業がダメとは全く思っていませんが、本意じゃない状態で廃業を余儀無くされる事業者さんがもしいらっしゃれば、それを救ってあげられる手立てとして、スモールM&Aであれ、M&Aでもう少し深く介在が出来ると、創業者の方々にとってはすごく誉れになるのかなと、結構気になっておりますね。
飲食とかヘアサロンなど居抜き物件で売るみたいなイメージがありますがいかがでしょうか
そうですね、そのパターンは多いと思います。
まだ創業者ないしは経営者の方々が足りてないので、まずスタッフの皆様の生活を守る事を最優先に考えられると思います。
そういう時に、おそらく物件だったりとか、そういった所を解消していくってことがあると思うんです。
けど、もう少し立ち止まったらいい形で、スタッフ、従業員の皆様の生活を守りながら、社長が当時作った思いを継続させてあげられないかなと思ったりしますね。
そのヒントがもしかしたらM&A、スモールM&Aの界隈にあるのではないのかなと思っています。
最近注目したM&A・事業承継の事例を教えてください
実はM&A界隈で興味深いというか、期待しているという言い方が正しいのかわからないですけど、それがPMIなんですね。
ポスト・マージャー・インテグレーション(PMI)、売業後の事業の推進、垂直立上げないしはV字回復といわれる領域というのは、M&A自体が活況になっていくと必要とされるアセットだと思っております。
M&A仲介会社の中でも、PMIがすこぶる強い会社がまだ無いと僕は思っているので、これからのM&A界隈の本種の値付けも含めて、違いが出てくるポイントなのかなと。
不動産で例えると、いわゆる家を不動産として売るだけじゃなくて、そのあとのアフターケアがすごく重要になるっていう、マッチング及び仲介という事で完結しない、M&Aならではのマーケットであり課題なのかなと思います。
そこはこれだけM&A仲介会社が増え、プレイヤーが出てくる中では、重要なのかなと思っています。
昨今のTOBについてM&A業界や事業承継へのインパクトはどう思いますか?
アークランドサカモトがリクシルホームズを買ったり、結構大きいTOBが行われています。
大戸屋ブロマイドは実は中がドロドロだったとか、NTTとドコモでいうと、ドコモ自体が自由にすること自体がNTTにとってはすごくストレスだったという話もあったりします。
強いて言えばこのトピックにおいてのコメントを私なりの見解として述べさせていただくとすれば、今回大戸屋ブロマイドもそうですしNTTドコモないしはアークランドサカモトとリクシルもそうだと思うんですけど、買収をした後、いかにして綺麗に事業を更にV字に上げてくのかっていうことが問われます。
いわゆる日本電算の永守さんみたいに、いろいろな会社を買っては再生していくご経験のあるプロの経営者の方がいるので、そういう形でどんどん旧来あった事業がシャープになって拡大していくっていうのがもし増えるのであれば、すごくそれは国にとって有益なことだと思います。
やっぱり大手同士だと、どうしても腰が重いっていうのがあると思うんです。
それでも更に拡大されていくのであれば、今かなり窮地に陥られてる家電メーカーさんとか、ああいった所もどんどん改めて、日本らしい生まれ変わりが行われるのかなと。
そういう意味合いでは、期待はあるのかなと思います。
M&Aの仲介会社が増えていることに関しての所感を教えてください
事業承継・M&Aマーケットへの関心が上がってきたことに関して言うと、日本にとって良いことだということを、前提として思っています。
M&Aの仲介会社が違いを出す一つの手法としては、PMIみたいにより伴奏型で、事業の垂直立ち上げみたいなところを出来る会社が今後選ばれてくるのかなと思いますね。
不動産売買のような形態で終わらないことを祈っていますが、マーケットが拡大していくことに対してすごく期待をしています。
事業承継ラボについて
日本の伝統ある勇敢な企業をもっと後世に残し、日本に貢献したい。そのために、未来を背負うすぐ先の経営者のためのウェブマガジンです。
◆ 事業承継ラボ
URL:https://jigyoshokei-labo.com/
運営:葛谷篤志