【2023年版】太陽光業界の現状や課題など|M&A動向も紹介

栗原史明

メガバンクに入行、主にM&A、買収ファイナンス、マネジメントバイアウト投資業務に従事、円滑な事業承継や出資先のIPOを支援。外資系ベンチャーキャピタルの海外拠点に単身出向後、中国拠点にて営業、アドバイザリーチームのマネジメント業務を歴任。その後、ファンド会社に転身しグロース、ベンチャー投資を多数実行、取締役としてバリューアップに従事。大手流通小売企業でのDX業務推進や新規事業開発を経て、現在に至る。

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太陽光業界は、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(FIT法)」で定められた「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)」 の対象となり、FIT法の規制強化や競争激化により、太陽光発電設備の新規開発は減少傾向にあり、既存の太陽光発電設備のM&Aを進めるケースが見られます。
この記事では、太陽光業界の現状や課題、M&Aの動向などを紹介します。

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太陽光業界の定義

太陽光業界は、太陽光発電設備を用いて発電を行う事業を営む業界です。太陽光業界の企業は、おもに「売電事業者」「施工事業者」「メンテナンス・管理事業者」の3つに分類されます。

太陽光業界の特徴として、FIT法のような、国の政策の影響を受けやすい点が挙げられます。特に、2017年の改正FIT法により、事業計画の提出が義務付けられるなど安全規制の強化が図られました。さらに、太陽光発電の買取価格は年々低下しており、今後業界再編が求められる業界の1つでもあります。

太陽光業界の現状や課題

太陽光業界の現状と、業界全体で抱える課題について解説します。

住宅用太陽光の導入件数はピーク時より半減

住宅用太陽光発電システムの導入件数は、過去のピーク時に比べると半減しています。
第78回調達価格等算定委員会の資料によると、住宅用太陽光発電の設備導入量は、以下のように推移しています。

住宅用太陽光の導入件数はピーク時より半減
※資源エネルギー庁「国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案(2022年10月)」の資料をもとに作成
※2012年7月~2013年度は、平均値で算出

2012年7月~2013年度の住宅用太陽光発電の平均設備導入量約272,330件に比べると、2021年の住宅用太陽光発電設備導入量が141,551件となっています。このように、ピーク時に比べると、住宅用太陽光発電の設備導入量は半減しているのです。

また、国土交通省の「新設住宅着工戸数の推移(令和3年度)」によると、新設住宅着工数も過去から減少傾向にあります。

新設住宅着工戸数の推移(令和3年度)

出典:国土交通省「令和3年度 新設住宅着工戸数の推移(総戸数、持家系・借家系別)

新築住宅に住宅用太陽光発電の設置が多いことを考慮すると、新設住宅着工数の減少傾向が続く以上、住宅用太陽光発電の設備導入量も減少傾向が続くことが予想されます。

事業用太陽光発電のFIT認定量は2020年度で1GW未満まで減少

事業用太陽光のFIT認定量、つまり経済産業省からFIT制度の認定を受けた発電設備の総容量は、年々減少傾向にあります。第78回調達価格等算定委員会の資料によると、事業用太陽光発電のFIT認定量は以下のように推移しています。

事業用太陽光発電のFIT認定量は2020年度で1GW未満まで減少
※資源エネルギー庁「国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案(2022年10月)」の資料をもとに作成

2020年度についてはコロナ禍による経済悪化の打撃を受けたこともありますが、発電事業者による新規開発の意欲が少ないことも影響しています。

実際に、一般社団法人太陽光発電協会の「太陽光発電の現状と自立化・主力化に向けた課題(2021年10月29日)」によると、2022年度の発電事業者の新規案件開発見込みは「新規なし」と「前年比半減」が大半という結果でした。

新規開発が少ない背景として、資材コストの高騰や、FIP制度(フィードインプレミアム、Feed-in Premium:発電事業者が卸市場などで売電したとき、その売電価格に対して一定のプレミアム(補助額)を上乗せすることで再エネ導入を促進うる制度 )の不透明さなどが挙げられます。

システム費用でコスト低減が進む

企業努力により、太陽光発電のシステム導入費用はコスト低減が進んでいます。
一般社団法人太陽光発電協会の「太陽光発電の現状と自立化・主力化に向けた課題(2021年10月29日)」によると、太陽光発電事業者15社を対象としたシステム費用に関する調査で、50kW以上において2022年度にコスト低減傾向が見られる見込みだとわかっています。

特に住宅用太陽光発電においては、工事技術の発達や、大量生産による工事単価の低下などにより、低コスト化が進んでいます。住宅用太陽光発電の低コスト化が寄与して、太陽光発電は市民にとっても馴染みの深いものとなってきました。

事業用太陽光発電についても、コスト低減は進んでいます。一般社団法人太陽光発電協会は、トップランナーについては2025年までに、業界平均は2030年までに7円/kWh(調達価格相当:8.5円/kWh程度)までのコスト低減を目指しています。

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太陽光業界の市場規模

太陽光業界の市場規模については、太陽光発電設備の年間の設置PV容量から推定可能です。国際エネルギー機関(IEA)の資料によると、日本の年間設置PV容量については2015年をピークに減少しており、市場規模もそれに比例して縮小していることがわかります。

太陽光業界の市場規模
※「Trends in PV Applications 2022」の資料をもとに作成

一方で、世界全体で見れば、2012年以降右肩上がりで設置PV容量は増加しています。世界的には再生エネルギー設備は拡大し、それに伴って太陽光発電への需要が高まっています。

太陽光業界のM&A動向

近年、太陽光業界で見られるM&Aの動向やその特徴を紹介します。

FIT法改正や市場価格低下による収支悪化で売却が進む

太陽光業界では、FIT法の規制強化により収支が悪化し、事業を譲渡するケースが見られます。2017年の改正FIT法により、設備認定が「事業計画認定」に変更され、売電するには事業計画が審査されることになりました。設備をもたず売電のみの認可をもつ企業は設備投資を迫られ、「メンテナンスできない会社」や「売電権利のみをもつ会社」を事業譲渡するケースも見られます。

また、競争激化によって特に中小企業で採算の合わなくなったこともあいまって、太陽光発電業界でM&Aを進めるケースが増加しています。

過去の高い固定価格に取引ニーズがある

太陽光発電の新規FIT認定を受ける場合、FIT制度発足当初の固定買取価格から20円以上安い水準で売電を行う必要があります。一方、2012年や2014年頃にFIT認定を受けた稼働済みの太陽光発電設備を取得した場合、FIT認定年の高い固定買取価格で売電を始めることが可能です。
つまり、高い売電価格の太陽光発電設備をもつ会社は、太陽光業界のM&Aにおいて魅力的です。また、譲受側にとって、新たに設備投資をする必要もなく、固定価格買取制度の期間中は売上がある程度保証されることになります。
そのため、高い売電価格をもつ企業のM&Aのニーズは高いのです

再生可能エネルギー分野への新規参入を狙う

近年、環境保護への動きが高まっている中、別業種の企業が再生可能エネルギー分野への新規参入を狙う動きが見られます。その方法として最適な手段の1つが、M&Aです。

M&Aであれば、新たに設備投資することなく、太陽光発電設備を取得できます。また、売電権利のそのまま譲り受けることができるため、太陽光業界におけるM&Aは加速しています。

まとめ

太陽光業界では、規制強化や競争激化により、住宅用太陽光発電の新規着工数の減少や、事業用太陽光発電のFIT認定量低下などの課題を抱えており、事業を譲渡するケースが増加しています。

高い売電価格の太陽光発電設備をもつ企業を中心に、M&Aのニーズは高まっています。太陽光発電のM&Aを検討している企業様は、ぜひM&A DXへご相談ください。

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