事業継承の支援はある? 支援方法を紹介!特徴や申請の手順を解説!

MBA 清水淳史

阪和興業株式会社、株式会社紀陽銀行を経て、2018年フロンティア・マネジメント㈱に入社。紀陽銀行では、法人営業業務を経て、本部部署にて、事業承継・M&A業務を担当。フロンティア・マネジメントでは中堅・中小企業向けの事業承継型M&A業務、事業承継支援業務、組織再編業務に従事。製造業、飲食業、卸売業、小売業、不動産業など幅広い業界の事業承継型M&Aを多数経験。

この記事は約10分で読めます。

中小のオーナー企業の場合、かつてはオーナー経営者の子どもが2代目、3代目として会社を引き継ぐ「親族内承継」が一般的でした。しかし、現在では少子化の影響、若い世代の意識変化などから、後継者不在の中小企業が増えています。
しっかりと地域に根付き、雇用をして利益も出している企業が後継者不在のために廃業となってしまうことは、地域経済ひいては日本経済全体にとっても大きな損失です。
そこで、後継者不在の中小企業でも、事業承継をスムーズに進められるように、さまざまな支援方法が整備されてきました。
本記事では、後継者不在の中小企業オーナーが活用できる、事業承継に関する具体的な支援方法をご紹介していきます。

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事業承継にかかわる支援体制について

中小企業の事業承継にかかわる支援には、大きくわけると以下の2つのタイプがあります。

(1)事業承継を成立させるための支援
(2)事業承継に関する経費の補助や税制に関する支援

(1)事業承継を成立させるための支援

ここでの事業承継を成立させるための支援とは、第三者承継(M&A)による事業承継を成立させるための各プロセスにおける支援を指します。
これには、公的支援と民間の事業者による支援の2種類があります。

(2)事業承継に関する経費の補助や税制に関する支援

事業承継において、売手や買手が負担する経費を補助したり、税制面で優遇したりすることにより、事業承継を促進させることを目的とした支援です。くわしい内容については後ほど述べます。

事業承継を成立させるための3つの公的支援

第三者による事業承継を成立させるために用意されている公的支援の代表として、以下の3つがあります。

事業承継・引継ぎ支援センター
よろず支援拠点
事業承継ガイドライン

公的支援その① 事業承継・引継ぎ支援センター

中小企業庁の外郭団体である独立行政法人中小企業基盤整備機構が、事業承継支援のための窓口機関として全国47都道府県に設置しているのが、「事業承継・引継ぎ支援センター」です。

事業承継・引継ぎ支援センター ホームページ

親族内・外の事業承継だけでなく、創業を目指す起業家と後継者不在企業をマッチングさせる人材バンクサービスや、事業承継の障害となる経営者保証の解除に向けた支援など、事業承継をサポートする幅広い支援をおこなっています。

事業承継に対する知識が少ない経営者向けに、解説動画コンテンツを充実させるなど、啓蒙的な情報発信に力を入れていることも特徴です。

なお、具体的な支援の窓口は、各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターになります。上記ホームページは、いわばポータルサイトのようなものなので、トップページの地図から、ご自身がお住まいの都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターのホームページにアクセスして、ご確認ください。

公的支援その② よろず支援拠点

よろず支援拠点とは、事業承継・引継ぎ支援センターと同じ中小企業基盤整備機構が経営者向けに全国に設置した相談窓口です。

よろず支援拠点全国本部

「よろず」という名の通り、経営にまつわるさまざまな相談をなんでも受け付けているのが特徴です。事業承継以外にも売上拡大や経営改善、事業再生などのさまざまな相談を受け付けています。
相談は、対面での実施の他、オンラインでも実施可能です。

なお、事業承継・引継ぎ支援センターと同様、実際の相談窓口になるのは、各都道府県に設けられたよろず支援拠点です。上記のホームページから、自身がお住まいの地域のよろず支援拠点ホームページにアクセスして、ご確認ください。

公的支援その③ 事業承継ガイドライン

「事業承継ガイドライン」は、円滑な事業承継をおこなうための情報や考え方、ノウハウなどをまとめた冊子です。初版は2006年に作成されましたが、2016年に改訂版が作成され、2022年3月に、最新版が公表されました。

「事業承継ガイドライン」を改訂しました(経済産業省ホームページ)

一般の書籍でも事業承継を解説しているものはたくさん刊行されていますが、無料で入手でき、内容の信頼性も高いため、まずはこのガイドラインに目を通してみるとよいでしょう。

最新版では、データなどが更新されているほか、増加しつつある「従業員承継」や「第三者承継(M&A)」に関する説明を充実させているのが特徴だとされています。

140ページほどのボリュームの中に、経営者向けの内容と経営者を支援する金融機関や士業者などに向けの内容が混在しているため、最初から最後まで通読する必要は低いですが、必ず役に立つ部分があるはずです。

 内容この支援がおすすめの人
事業承継・引継ぎ支援センター事業承継に向け公的支援窓口が全国に設置されている事業承継の話をまずは無料で聞いてみたい人
よろず支援拠点事業承継をはじめ経営者が抱えるさまざまな問題に対応してもらえる経営など事業承継以外も相談してみたい人
事業承継ガイドライン事業承継の内容がコンパクトにまとめられている事業承継についてまずは自分で読んで理解してみたい人
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事業承継を成立させるための民間支援は3つ

次に民間の事業者による支援について確認しましょう。事業承継を成立させるために支援をおこなっている民間事業者は、主に以下の3つがあります。

M&A仲介会社
FA(ファイナンシャルアドバイザー)
M&Aマッチングサイト

民間支援その① M&A仲介会社

現在、ある程度の規模がある中小企業の第三者承継(M&A)は、その多くがM&A仲介会社の支援を受けて実施されています。
M&A仲介会社の特徴は、日本中の幅広い業種に関する買手の候補企業のリストやネットワークを有しているため、マッチング能力が高いことです。

また、実績の豊富なM&A仲介業者は、M&Aを成約させるためのマッチングノウハウも充実しています。当初の相談から、マッチングプロセス、契約プロセス、そしてマッチング後まで、基本的にM&Aのあらゆるプロセスをサポートしてもらえるため、依頼する側も安心して任せることができます。

ただしその分、費用はかかる点がデメリットです。もし費用面がネックになるのであれば、必要な要件を満たした上で後述する補助金の利用を検討するといいでしょう。

民間支援その② FA(ファイナンシャルアドバイザー)

FA(ファイナンシャルアドバイサー)も企業のM&Aをサポートする業務です。しかし、M&A仲介会社とは異なり、売手か買手どちらか一方の立場に立って、事業承継の成立(マッチング)よりも、事業承継で得られる利益を最大化することを目的にアドバイスをするのがFAの特徴です。当然、報酬も依頼者である売り手か買い手のどちらか一方からしか受け取りません。

M&A仲介会社が売手と買手の間に立ち、それぞれの立場を考慮しながらマッチングの「落とし所」を調整していくのとは対照的に、一方の立場の利益最大化を図ることは、逆にいうと、マッチング成立の可能性は低めることにもつながります。
中小企業の事業承継は売手と買手の双方がそれなりに歩み寄らなければ成立しにくいため、通常FA業務の主戦場は上場企業や非上場でもある程度大規模な企業同士のM&Aなどに限定されます。

民間支援その③ M&Aマッチングサイト

民間支援の最後は、インターネットを用いたM&Aマッチングサイトです。M&Aマッチングサイトは、ここ数年で急速にその数が増えています。サイト専業の会社が運営しているものもあれば、M&A仲介会社が事業の一部として運営しているものもあります。
多くは登録無料で売手や買手の企業の情報をある程度閲覧することができるため、M&A仲介会社に普通に依頼する場合と比べると、低コストで事業承継の準備をはじめられるメリットがあります。
また、M&A仲介会社に直接依頼する場合と比べると、比較的小規模な案件が多いため、どちらかというと小規模企業の事業承継に向いているといえるでしょう。

サイトによっては、自社の状況に応じて必要なサポートをオプションとして選択して受けることができるものもあります。ただし、受けた分だけ費用は高くなるため、手厚いサポートを希望する方は最初から仲介会社を選択する方が良い場合もあるでしょう。

 この支援の特徴この支援がおすすめの人
M&A仲介会社事業承継の実績が豊富で、あらゆるサポートが受けられる・安心して事業承継を済ませたい人
・早期の事業承継をしたい人
FA(ファイナンシャルアドバイザー)依頼者の利益を最大化するための支援をおこなう・大企業中心。最低でも中規模以上の企業の事業承継。
・利益を最大化したい人
マッチングサイト低価格でコンパクトなサポートが受けられる・小規模企業などの事業承継を検討してる人
・費用を抑えたい人

事業承継に関する補助金と税制支援

次に、事業承継に関する補助金などの支援制度と税制面での支援制度について解説します。

事業承継に関連する補助金

事業承継を支援するための補助金として、多くの方に活用されているのが「事業承継・引継ぎ補助金」です。この補助金は大きく以下の3つにわかれています。

・経営革新事業:事業承継やM&Aによる経営革新等の補助
・専門家活用事業:仲介会社などの専門家等へ手数料の補助
・廃業・再チャレンジ事業:既存事業を廃業するための費用の補助

補助の対象は幅広く、下図のように事業承継のための費用の多くが対象となる経費に含まれています。

経営革新の補助内容

類型対象となる経費補助率補助上限(※)
創業支援型人件費・外注費・委託費・設備費・謝金など補助対象経費の2/3以内600万円
経営者交代型
M&A型

専門家活用の補助内容

類型対象となる経費補助率補助上限
買い手支援謝金・旅費・外注費・委託費・システム利用料・表明保証保険料など補助対象経費の2/3以内600万円
売り手支援

廃業・再チャレンジの補助内容

対象となる経費補助率補助上限
廃業費(廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費など)補助対象経費の2/3以内150万円

(※補助上限額については、計画における生産性向上要件を満たした場合の例)

申請にあたっては細かな応募条件などが定められているので、公式ホームページに掲載されている公募要領をよく確認しましょう。

事業承継・引継ぎ補助金 公式ホーム-ページ

事業承継に関する税制支援

事業承継を促進するための税制面での支援策は、主に以下の2つです。

(1)事業承継税制
(2)経営支援集約化税制

(1)事業承継税制

後継者の負担を少なくし、親族内での事業承継を促進していく目的で設けられている制度です。
事業承継税制とは、後継者が事業承継のために非上場会社の株式等を先代経営者から贈与や相続により取得する際に、一定の要件を満たした場合、贈与税もしくは相続税の納税が猶予または免除される制度のことをいいます。

なお、事業承継税制を活用するための条件は以下の通りです。

先代経営者が満たすべき条件

・会社の代表であったこと
・相続・贈与の直前に株式等の過半数を有する筆頭株主であったこと
など
後継者が満たすべき条件
・相続・贈与により株式等の過半数を取得すること
・贈与時に18歳以上で、贈与の直前3年以上役員としての経験があり、代表者であること(贈与の場合)
・相続開始の直前に役員であり、開始5か月後に代表者であること(相続の場合)
など
会社が満たすべき条件
・中小企業であること
・従業員が1人以上いること
・資産管理会社等には該当しないこと
など

なお、制度の適用を受けた場合、後継者は、その後最低5年間は事業を継続して、毎年都道府県への報告や税務署への届出をする義務があったり(その後は3年ごとの報告)、自由に株式を売却できなかったりするなどの制限も生じます。

後継者にとっては、メリットばかりではなくデメリットもある制度なので、適用の検討に当たっては、制度にくわしい税理士などに十分相談することが必要です。

(2)経営支援集約化税制

M&Aによって他企業の事業を引き継いで、事業承継をおこなう「譲受希望企業(買手)」を支援する税制です。
経営力向上計画の認定を受けた中小企業が計画に基づいて、事業承継を実施した場合に、以下の2つが活用できます。

設備投資減税

M&A後に取得した資産のうち、M&Aの効果を高める一定の設備に対して投資額の10%を税額控除または全額即時償却することができます。

準備金の積立

M&A後の簿外債務などのリスクに対し投資額の70%以下を準備金として積み立て、全額を損金算入することができます。また措置期間として5年間経過後に、さらに5年間かけて均等額で準備金を取り崩すこととなり、取り崩し金は益金算入となります。

M&Aの買い手企業にとってはこれらの活用によって節税すれば、M&A後のキャッシュフロー悪化を防ぐ効果も得られます。

まとめ

事業承継を支援する制度などは、必要十分とはいえないかもしれませんが、ある程度用意されています。
ただし、特に公的な支援や補助金、税制などは随時改廃される可能性があります。日頃から関心をもって情報を収集するとともに、最新の制度は必ず公式ホームページで確認してください。

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