事業承継の特徴や目的
事業承継は何のために行われるのか、どのような特徴があるのかを確認します。混同しやすい言葉として「事業継承」があります。厳密にいうと「事業承継」と「事業継承」の2つは異なります。それぞれの違いについても押さえておきましょう。この項目では、4つのポイントに分けて事業承継の基本を解説します。
会社の経営を後継者に引き継ぐのが事業承継
事業承継とは、会社の事業や経営を後継者に引き継ぐことを示す言葉です。企業は事業に加え、不動産やキャッシュなどの資産を有していますが、あくまでも会社の事業自体を次の後継者に引き継ぐことがポイントです。
中小企業庁によると承継方法として(1)親族内承継、(2)従業員等への承継、(3)M&Aに分類されています。親族に経営を引き継ぐ場合もありますし、既存従業員のような親族外に引き継がせることや、M&Aによって第三者の会社に承継することもあり、オーナーの意向や周辺環境により承継先が異なります。
参考:中小企業事業承継ハンドブック 26問26答 平成21年度税制改正対応版
事業承継と事業継承はニュアンスが異なる
事業継承という言葉と混同されることが多いことも事業承継の特徴です。国語辞典を見ると、「承継」と「継承」は、次の意味と記載されています。
承継:前の代からのものを受け継ぐこと。
継承:前代の人の身分・仕事・財産などを受け継ぐこと。
承継は、受け継ぐ対象が抽象的なもので企業の理念を含めたものと捉えられ、継承は、受け継ぐ対象が具体的なものと捉えられます。
事業承継を行う目的は2つある
実行される主な目的としては、後継者を確保し事業を継続させるという理由が挙げられます。経営者や現経営陣が永遠に経営を持続することはできません。次世代に向けて会社を残すために事業承継が実施されます。
それ以外には、事業や企業のさらなる発展を目的として事業承継が行われます。経営者の年齢や体力面に余力がありながらも、会社そのもののレベルを引き上げるために、次世代の力が必要と経営者が意思決定する場合です。
事業承継による後継者の傾向
中小企業庁によると今後10年の間に、70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万(日本企業全体の1/3)が後継者未定であり、現状を放置すると、中小企業廃業の急増により、2025年頃までの10年間累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性があるとしています。
現経営者と先代経営者の承継については「親族以外の役員・従業員」、「社外の第三者」への事業承継が増加しており、特に、中規模企業でその傾向が顕著に表れています。
事業承継を行う3つの手段
事業承継は、主に3つの手段によって実行されます。どの方法を選択するかは企業や経営者の状況により異なります。また、従業員の将来、得意先との関係も考慮すると、清算(廃業)はおすすめしません。
親族への承継
子どもを始めとする親族への承継は、中小企業から大企業まで幅広い規模の会社で親族内継承が行われてきましたが、昨今では親族内承継の割合には減少傾向です。
この方式によるメリットは、既存従業員からの理解を得やすい点です。また、事前に計画を立てることにより、後継者に先代の意向を学ばせるための時間を取りやすい傾向があります。
デメリットとしては、後継者候補が複数人存在する場合に選定が困難になりやすいことで、親族内で争い事となるリスクがあります。また、経営者が後継者を指名したくても、当人が事業承継を希望しないため、事業継承が実現できない場合もあります。
社内の後継者候補に承継する
社内に適任と見られる従業員が存在する場合、その従業員に事業承継することで次世代へと引き継ぐことが可能です。多くの社内候補者から人材を選定できることがメリットです。
また、長期間に渡って勤務している人物への承継を実施すれば、会社の歴史やフィロソフィーを深く知る人物に経営を引き継がせられます。既存取引先との関係性、社内の納得感の醸成や教育にかける時間が短い傾向があるなどのメリットがあります。
ただし、株式を引き継がせる場合には、承継する候補人が株式を取得する資金を持ち合わせていない可能性もあります。
M&Aで承継先を探す
他の会社に企業や事業を買い取ってもらうM&Aであれば、身近に後継者候補が見つからなくても事業承継を実行できます。また、現経営者が株式を現金化できる点もメリットです。
理念や理想がまったく異なる企業から買収される可能性があり、その他の承継方法と比較すると、M&A後の統合プロセス(PMI)によっては現場の負担が増える可能性があります。
また、従業員の雇用に関する考え方や、売却価格など、売手側が希望する条件に合意する企業を見つけることが難しい場合があるため自力で相手先を探すのではなく、仲介会社を経由することをおすすめします。
承継が難しい場合は清算(廃業)を検討する
清算は事業継承とは異なりますが、承継が難しい場合、検討します。廃業であれば後継者探しを行う必要がなく、買い手を見つけるための手間がかかりません。
一方で、会社として存続することができず、株主が受け取れる金額が少なくなったり、ゼロとなることもあります。事実上の消滅という形になりますので、雇用している従業員の将来も不透明なものとなってしまいます。
事業承継を成功させるための5つのポイント
ここからは、事業承継を成功させるためのポイントを5つお伝えします。
後継者候補がいる場合は教育に時間をかける
親族や社内に後継者候補がいる場合は、後継者候補の教育に時間をかけることをおすすめします。会社経営の知識に加えて、既存従業員からの信頼度を高めることにより、承継後の安定した経営が期待できます。経営者の育成にかける期間を考慮に入れて事業継承のタイミングを検討することをおすすめします
M&Aを利用する場合は両者が合意する条件で引き継げる相手を見つける
M&Aによる事業承継を検討する場合、経験値が豊富な仲介会社に依頼することをおすすめします。好条件の相手を見つけるために、時間的余裕を持って相手先企業の開拓に着手しましょう。
M&Aの準備期間中は情報流出に気を配る
M&Aを検討していることが社内に広まると従業員が将来への不安を抱き、従業員のモチベーションが下がる可能性があります。M&A専門仲介業者やM&Aのコンサルタントとよく相談をしてから、良いタイミングで話し合いの場を設けるようにしましょう。
会社の業績を上げる
より魅力的な企業になれれば、後継者になりたいと考える人物が社内で増える場合や、M&Aを実施する場合はより好条件を提示する企業に出会える可能性があります。
経営を工夫し、業績を向上させ、不要資産を処分することなどできる限り魅力的な企業となる方法を模索しましょう。
専門家に相談や依頼をした上で進める
自力で事業継承を行うこととには、ある程度限界があり、後継者不足という課題を放置した結果、清算(廃業)となる場合があります。企業の価値を保ち、次世代につなぐためには、専門家への相談や依頼を行うことをおすすめします。
専門家によるサポートを受けることにより、後継者の育成やM&Aの相手先探し、関連する契約の仲介など、さまざまなメリットを得られます。
後継者選定前に知っておきたい事業承継税制とは
ここでは事業承継税制についてご紹介します。日本では、国が中小企業における事業承継を税制面で支援しており、税制優遇を受けることが可能です。事業承継にあたっては税金が発生しますので、事業承継税制について知り税制優遇を検討することをおすすめします。
国が中小企業の事業承継を支援している
中小企業庁は「中小企業・小規模事業者は雇用の担い手、多様な技術・技能の担い手として我が国の経済・社会において重要な役割を果たしています。将来にわたり、その活力を維持していくためには、円滑な事業承継によって事業価値をしっかりと次世代に引き継ぎ、事業活動の活性化を実現することが不可欠といえます。」と考えています。
参考:事業承継ガイドライン
中小企業庁は中小企業の円滑な事業承継を支援するための施策等についてご案内します。中小企業が技術、あるいは事業そのものを廃業せずに維持し、次世代へと承継することを目的とした支援策です。これを適用することにより、贈与税や相続税の納税猶予などによるサポートを受けられ、より円滑に事業承継を進められます。
経営承継円滑化法とは
経営承継円滑化法は、事業承継に伴う税負担の軽減や⺠法上の遺留分への対応をはじめとする事業承継円滑化のための総合的⽀援策を鑑みた中⼩企業における経営の承継の円滑化に関する法律です。
以下の基本的枠組みを盛り込んだ事業承継円滑化に向けた総合的⽀援策の基礎となる法律です。
(1)遺留分に関する⺠法の特例
(2)事業承継時の⾦融⽀援措置
(3)事業承継税制
のます。
たとえば事業⽤資産(個人事業者の場合)や⾮上場株式(法人の場合)等に係る相続税・贈与税の納税猶予が受けられます。また、生前贈与を行った自社株については、遺留分の対象外とすることも定められました。
参考:経営承継円滑化法
事業承継税制で関連の納税が猶予措置または免除に
「事業承継税制」は、後継者が非上場会社の株式等(法人の場合)・事業用資産(個人事業者の場合)を先代経営者等から贈与・相続により取得した際、経営承継円滑化法による都道府県知事の認定を受けると、贈与税・相続税の納税が猶予又は免除される制度です。
法人版事業承継税制は、非上場株式等に係る贈与税・相続税について、納税が猶予され、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除されます。また、平成30年度税制改正では、納税猶予の対象となる非上場株式等の制限(総株式数の3分の2まで)撤廃や、納税猶予割合の引上げ(80%から100%)などの変更がありました。
参考:法人版事業承継税制
個人版事業承継税制は、不動産貸付事業等を除く、青色申告係る事業行っていた事業者の後継者が、個人の事業用資産を贈与又は相続した場合において、贈与税・相続税の納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除されます。
参考:個人版事業承継税制
また、認定等に係る申請書・報告書の提出に関するお問い合わせ先は、都道府県に担当の窓口があります。
事業承継に多角的アプローチが可能なM&A DXに相談を
事業承継を自社のみで進めることは難しくで、専門家に支援を依頼することをおすすめします。この場合の依頼先としては公的機関、金融機関、M&A仲介会社、弁護士や会計士、マッチングサイトといった5つを挙げられます。
この中で最も多角的なアプローチを行えるのはM&A仲介開始社です。M&Aを専門的に支援する株式会社M&A DXには、相続などの税制に詳しい専門家が在籍しており、M&Aの実績も豊富であるため、多角的に事業承継にアプローチできます。
M&A DXでは、基本合意締結プロセスを筆頭に、各種調査から最終合意締結、クロージングまでを一貫してサポートしています。PMIプロセスもワンストップで提供しております。
まとめ
事業承継は、事業や企業そのものを次世代に承継することを示す言葉です。これまでは子どもなどの親族に向けた承継が盛んに行われてきましたが、近年では多角化が進み、M&Aによる事業承継を選択する企業が増加しています。
株式会社M&A DXでは、愛知県名古屋市を地場として、日本全国対応のM&Aサービスの専門家として、円滑な事業承継をサポートします。相続からM&Aまで豊富な実績と経験のある専門家が多数在籍しておりますので、事業承継を控えた際にはぜひM&A DXまでご相談ください。