事業承継ファンドはどんな時に有効?活用事例も紹介

山下正太郎

メガバンクに入行し、M&Aを含む各種ファイナンス業務に従事した後、大手M&Aブティックに入社。中小企業の事業承継問題に対するソリューションとしてのM&A取引を推進。その後、上場企業および大手コンサルティング会社の企画部門にて投資責任者を歴任。キャリアを通じて多数のM&A案件の成約に携わった他、PMI担当として買収先とのスムーズな経営承継を実現した経験を多数持つ。

この記事は約12分で読めます。

事業承継ファンドは、後継者不足を解決できる方法の1つとしてさまざまな企業で活用されています。そこで今回は、事業承継ファンドがどのような企業で有効なのか実際の事例も交えて紹介します。

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本記事のポイント

  1. 現在事業承継を検討している経営者向けの記事です。
  2. 事業承継ファンドについて注目された背景や活用方法を詳しく解説しています。
  3. 実際に事業承継ファンドを運営する組織や事例も紹介しているため、より具体的にイメージがしやすい記事になっています。

なぜ今事業承継ファンドが注目されているのか

なぜ今事業承継ファンドが注目されているのか

事業承継ファンドは、多くの投資家から集めた資金で後継者問題に悩む中小企業の株式を買取り、そこから得られた利益を投資家に再分配します。この事業承継ファンドが現在注目を集める背景としては、中小企業の深刻な後継者不足が影響しています。

帝国データバンクの2019年調査によれば、後継者が不在と回答している企業は65.2%とのことです。また後継者問題が解決しない場合、2025年頃までに最大約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われるとも言われ、その解決方法の1つとして事業承継ファンドが活用されています。

出典:全国・後継者不在企業動向調査(2019年)

事業承継ファンドはどんな時に有効?

事業承継ファンドはどんな時に有効?

中小企業がどのような状態にある時に事業承継ファンドが有効に働くのでしょうか?ここでは中小企業の事業承継を4つのパターンに分け、ファンドがどのような役割を果たすのかを詳しく解説します。

また後継者候補がいる場合でも、事業承継ファンドは有効に働きます。そのため後継者の有無に関わらず、事業承継を検討している方はぜひ参考にしてください。

身内や社内に後継者の候補がいない

まず、親族や自社従業員に後継者候補がいない場合です。この場合の対応としては、廃業にするか、M&Aにより第三者へ会社や事業を譲渡するという選択肢が上がります。第三者へ譲渡するという選択をする場合、譲渡先として事業承継ファンドを候補先の一つとして加えることができます。事業承継ファンドの場合、従前の企業理念や社風を尊重しながら事業を拡大を目指すところが多く、その点では安心して引継ぎが行えるでしょう。

身内に後継者がいるがまだ頼りない

次に、親族に後継者はいるものの、まだ若く経験も乏しいため、すぐに事業を引き継ぐわけにはいかない場合です。この場合、当面の間は第三者に経営を任せることになるでしょう。。

しかしその第三者に心当たりがない場合、事業承継ファンドの活用が有効です。事業承継ファンドでは株式取得後に経営者の派遣を含む経営支援が可能であるため、より事業を成長させることも可能となります。

社内に経営者として推したい人物がいる

続いて、会社に長く従事した人材を後継者候補として推挙したい場合です。この場合、事業承継はスムーズに行きますが、その人物が会社の株式を買い取らなければならないという問題が残ります。

株式の買取には多額の資金を要する場合も多く、その資金を用意できないことが事業承継のハードルとなりますが、この場合にも事業承継ファンドは有効です。事業承継ファンドは一旦株を買い取りますが、一定期間経過後に株式を譲り渡すといった対応も検討可能であるため、この方法であれば資金を調達する時間が確保できます。

経営陣が引き続き経営を行う意思がある

最後に、現在の経営陣が引き続き当面の間、経営に携わる意思を持っている場合です。この場合、株式譲渡により事業自体は事業承継ファンドに引き継ぐものの、経営陣メンバーに発行済株式の一部を保有(再出資)してもらうことで経営に携われます。

株式の売却により一定の現金化が可能な場合もあり、大きなメリットが得られる可能性があります。

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事業承継ファンドの紹介

事業承継ファンドの紹介

後継者不足問題を解消し、会社経営においても大きなメリットを出せる可能性がある事業承継ファンドですが、具体的にはどのようなファンドがあるのでしょうか。

そこで次に事業承継ファンドを運営している主な組織について紹介します。事業承継ファンドは、民間企業はもちろん独立行政法人なども参加しており、幅広い選択肢がありますのでぜひチェックしてください。尚、ここで挙げているのはごく一例であり、より多く詳細に知りたいという方は、是非当社へご相談ください。

日本プライベートエクイティ株式会社

中堅・中小企業を対象とする事業承継ファンドの草分け的存在で、累計1,000件を超える案件相談の実績を持っている企業です。国内の金融機関が資金運用を目的として資金を拠出しています。

投資対象は後継者問題などを含め事業承継に悩む企業の株式です。社員の自立を促し、オーナー経営から組織経営に移行するためのサポートを得意としています。

中小企業基盤整備機構(中小機構)

中小企業者の方々に対する投資事業を行う民間機関などとともに投資ファンドを組成します。成長ステージや、経営課題に応じた支援メニューでサポートしています。

ベンチャー企業や、成長期の中小企業への投資はもちろん、新事業の創出や事業拡大などの支援も依頼可能。

株式会社日本投資ファンド

M&A仲介の最大手である日本M&Aセンターと、投融資のノウハウが豊富な日本政策投資銀行が共同で設立した企業です。中堅・中小企業の成長基盤になることを掲げています。

業日本M&Aセンターが持つ卓越した開拓力、オーナー経営者とのコミュニケーション力、自らが成長を遂げてきた成長実現力と、日本政策投資銀行が持つ豊富なファンド事業経験、資金力、地域活性化支援力、地域ネットワーク力とを融合させ、地方銀行各行との連携も踏まえ、日本の中堅中小企業の成長発展と地域活性化を担う社会インフラを目指すとしています。

SBI地域事業承継投資株式会社

SBIホールディングスの子会社で、SBIグループが推進する「地方創生」プロジェクトの一環として2019年に設立した企業です。地銀などと連携し、全国の事業承継問題を抱える中小企業に投資を行っています。

一般的な事業承継ファンドとは違い、比較的小規模な企業にも投資を行っていることがポイントで、比較的新しい事業承継ファンドです。

東京都が行う事業承継ファンドの活用事例3つ

東京都が行う事業承継ファンドの活用事例3つ

先ほど紹介した日本プライベートエクイティ(JPE)株式会社は、東京都が最大の出資者となり事業承継を支援する「TOKYOファンド」の運営をしています。

そこで次にTOKYOファンドを活用した企業の事例を3つ紹介します。事業承継の具体的なイメージがしやすくなりますので、ファンドの利用を検討している方はぜひ参考にしてください。

株式会社アソシエ・インターナショナル

アソシエ・インターナショナルは、認可保育園や学童保育クラブなど子育て支援施設を運営する会社です。同社には親族外で後継者がいましたが、株式の継承ができていなかったことからTOKYOファンドを活用しました。

JPEは同社の運営実績や行政・地域住民との信頼関係などの強みを評価し、創業オーナーの保有する株式を譲り受けることで株式の譲受を実現しました。

株式会社コミュニティセンター

コミュニティセンターは、マンションの管理人・清掃員・コンシェルジュの代行業務を提供する企業です。同社では事業承継と事業基盤の強化の2つで課題を抱えていました。

これに対しJPEは今後の市場の伸びや需要を考え投資を実行。事業承継スキームのファイナンス支援者として各銀行や信用金庫などが参加することで会社の信用度を上げました。また外部から経営に適した人材を迎え入れ、現在は新しい社長の元経営を行っています。

株式会社ニック

ニックは病院や学校、ビルなどの清掃・警備保安・設備管理業務を行う会社です。同社は後継者不足や組織運営への移行について問題を抱えていました。

これに対しJPEは同社の地域企業としての発展性や事業の将来性を評価し投資を実行。外部から経営に適した人材を迎え、株式の承継と経営の承継を行い組織運営へ移行しました。

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事業承継ファンドのQ&A

事業承継ファンドのQ&A

ここまで事業承継ファンドを紹介してきましたが、実際に利用を検討する上で不安に感じる点も多くあるかと思います。そこで最後に事業承継ファンドを検討している方に向けて、気になる疑問をいくつかピックアップし、回答を用意しました。

手数料や会社の価値の決め方なども解説していますので、検討されている方はぜひ参考にしてください。

事業承継ファンドの手数料や費用は?

株式や事業の買い手となるファンドに対する手数料や費用は発生しません。ファンドは企業価値を高め株式を売却することで利益を得るため、買収検討時にその対象企業に対して費用を請求することはまずないでしょう。

ただし、売買をする際にM&Aに関するアドバイザーを起用する場合は、そのアドバイザーに対して報酬が発生しますので注意してください。

事業承継ファンドは何をしてくれる?

ファンドは経営者が保有する株式を譲り受け、新しいオーナーとして人材などの経営資源やノウハウを提供することで企業価値を高めます。

単に後継者候補を選定するだけに留まらず、売上利益を伸ばし会社が成長していくための支援を行うことが特徴です。特にオーナー経営から脱却し組織運営へと移行することに重きを置いています。

会社の価値はどう評価される決ま?

主に企業の収益力や実績、現預金・借入がどの程度あるかなど、財務状況をメインとして算出されます。不動産などの資産や会社としての将来性なども加味しますが、基本的にはどの程度収益が上げられているかで判断します。

細かな算定基準は買い手によりマチマチです。交渉も勿論可能ですが、双方が納得できる金額にならなければ交渉はまとまりません。

従業員等へ通知するタイミングは?

従業員に通知するタイミングは、株式の売買が完了した後に速やかに行うことが多いです。ただし、管理担当の役員など一部の役員にはそれよりも早く知らせることもあります。

幹部社員など社内のキーマンには疎外感を与えないよう配慮しましょう。また取引先との契約などで、事前に株主の変更について相手方の了承が必要な場合は、それぞれ契約の内容を吟味して判断します。

まとめ

まとめ

今回は事業承継ファンドについて、有効となる条件やファンドを運営する組織、また実際に活用された事例などを紹介しました。ファンドというとマイナスのイメージを持つ方もいますが、事業承継ファンドは社風を重んじ事業の継続をサポートしてくれるところが大半です。気になる方はぜひ検討してください。

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