事業展開とは
デジタル大辞泉によると、展開には「広くひろげること」「物事をくりひろげること」「次の段階に進めること」などの意味があります。「事業展開」は既存の事業にこだわらず、時代の変化に対応し、積極的に新たな市場への参入や新たな事業への取り組みを意味する、企業の成長戦略の1つです。少子高齢化や人口減少などによる消費の低迷や需要構造の変化、国際競争の激化、インターネットやAIなどの技術革新、企業を取り巻くビジネス環境が年々変化する中で、生き残り、成長し続けるためには「事業展開」が非常に重要になります。特に財政基盤が弱い中小企業にとっては、その機動性や柔軟性を活かして新しい事業分野や事業領域へ進出する事業展開は成長に不可欠な戦略です。
事業展開を行う目的
事業展開を行う目的は、事業ライフサイクルによって異なります。「成長期」には事業規模拡大のための新たな領域への進出、「成熟期」には市場競争力の向上、「衰退期」には成長事業への展開が、事業展開の重要な目的となります。
新たな分野/市場への進出
近年の日本のように、少子高齢化、平均年収の停滞、物価上昇などによって国内市場が伸び悩んでいる場合、「成長期」にある企業がさらに成長し、次のステップに進むためには事業展開が必要となります。事業展開によって、新たな分野に進出し事業領域を拡張する、あるいは海外市場へ進出し事業規模の拡大を図ることは、非常に有効かつ現実的な成長戦略です。
市場競争力の向上
「成熟期」にある企業が持続的に事業を成長させるためには、市場競争力を高める必要があります。例えば、サプライチェーンの上流や下流の事業を展開することで、コスト削減や商品の差別化が可能です。また営業拠点や技術が活かせる事業を展開することで既存事業とのシナジー効果によって、営業コストや研究コストの削減、新規顧客の獲得、新たな商品・サービスの開発などが期待できます。
成長事業への転換
「衰退期」にある企業が、現状維持では徐々に事業が縮小し、経営が悪化する可能性があるので、従業員の雇用を維持し、株主の財産を損なわないためにも、体力があるうちに成長が期待できる新たな事業を育成しなければなりません。事業展開によって、新事業の立ち上げや事業の多角化を図り、将来的に会社の中核となり得る事業を育成することは、衰退期にある企業の経営者にとって非常に重要な課題です。
事業展開の5つの戦略
事業展開の戦略は、米国の経営学者イゴール・アンゾフが提唱する成長マトリクスが示す「製品」と「市場」の組合せによる4つの成長戦略と事業転換戦略の5つに分類することができます。
市場浸透戦略
市場浸透戦略とは、既存の市場で既存の製品やサービスを展開し、市場のシェアを高める戦略のことです。ライバルとの競争に勝ち抜くために、広告などによりブランドの認知度を高め、営業拠点・営業部員を増やし、細かな顧客ニーズにも対応できる製品ラインナップを揃え、アフターサービスを充実させるなどして、より深く市場に浸透することによって市場競争力を高めます。
新市場開拓戦略
新市場開拓戦略とは、新しい市場で既存の製品やサービスを展開し、事業の拡大を図る戦略ことです。既存の製品やサービスを、海外展開や従来とは異なるチャネルで展開する、あるいは用途やターゲットが異なる別の市場で展開することで、事業の拡大を図ります。新市場開拓戦略を成功させるには、営業力や販売ネットワークが非常に重要な要素となります。
新製品開発戦略
新製品開発戦略とは、既存の市場で新しい製品やサービスを展開し、事業の拡大を図る戦略のことです。ライバル企業との差別化を促進し競争優位性を強化するためには、既存の市場における顧客ニーズを分析し、既存の製品やサービスに新たな機能を付加する、あるいは、他社にない新しいコンセプトの製品やサービスを開発することが重要なポイントになります。
多角化戦略
多角化戦略とは、新しい市場で新しい製品やサービスを展開し、事業の拡大を図る戦略のことです。他の戦略と異なり、知識や経験の少ない市場に向けて新しい製品やサービスを開発しなければならないため、市場調査や製品・サービスの開発に必要な費用と時間がかかるところがリスクとなりますが、成功した場合には既存の主力事業に加えて新しい収益源を獲得することができます。
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事業転換戦略
事業転換戦略とは、市場環境の変化や顧客のニーズの変化などによって衰退期に入った既存の主力事業を徐々に縮小しながら、新しい市場で新しい製品やサービスを展開し主力事業の転換を図ることです。既存の主力事業をそのまま存続させる多角化戦略と比べて、リスクの高い戦略になります。
事業展開のビジネスモデル
事業展開を考える際に、どのようなビジネスモデルを採用するかによって成否が分かれることがあります。ビジネスモデルは、企業が収益を得るための仕組みのことで、誰に(Who)、何を(What)、どうやって(How)提供し収益を得るかによって、いくつかの類型に分類できます。本稿では、インターネットの普及で登場した新しいビジネスモデルも含め、7つの類型を紹介します。
販売モデル
販売モデルは、商品やサービスを販売することで収益を得るビジネスモデルで、製造者から仕入れたものを小売業者に販売する卸売業、卸売業者などから仕入れたものを消費者に販売する小売業、あるいは自社で製造した商品やサービスを直接消費者に販売する製造小売業などが含まれます。具体的には、百貨店、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、ドラッグストア、ネットショッピングサイト、ファーストフード、カフェ、ファミリーレストラン、ヘアサロン、エステティックサロンなど、さまざまな商品やサービスを販売する業態があります。
サブスクリプションモデル
サブスクリプションモデルは、商品やサービスを一定期間、定額で提供することで収益を得るビジネスモデルで、インターネットを通じて広がりを見せている新しい販売手法のモデルです。具体的には、音楽配信サービスの「Spotify」「Apple Music」、動画配信サービスの「Amazon Prime Video」「Netflix」、ソフトウエアの「Microsoft 365」「Adobe Creative Cloud」、クラウド会計ソフトの「freee」「Salesforce」、衣料品レンタルの「メチャカリ」「airCloset」など、非常に多くのサブスクリプションモデルの事例があります。
フリーミアムモデル
フリーミアムモデルは、インターネットによって広がりを見せている、新しい販売手法/課金方法のモデルです。基本サービスを無償で提供することにより、多くの新規ユーザーを取り込むことが可能となり、ユーザーがより高度な機能や特別な機能を利用するため、有料プランに移行したときに収益を得るモデルです。具体的には、ビデオミーティングの「Zoom」、オンラインコミュニケーションの「Slack」「ChatWork」、オンラインストレージサービスの「Dropbox」「Evernote」、動画配信サービスの「YouTube」など、一般消費者から企業向けまでさまざまな事例があります。
レンタルモデル
レンタルモデルは、商品の使用権を販売することで収益を得るモデルです。前述のサブスクリプションモデルとの相性が非常に良く、衣料品レンタルの「メチャカリ」や「airCloset」などはこのビジネスモデルにも含まれます。従来から存在するものとして、CDやDVDなどのレンタルを行う「TUTAYA」「GEO」、レンタカーの「ニッポンレンタカー」「トヨタレンタカー」などの他に、最近では新品家具、家電製品、ペットなどまで多様な広がりを見せています。
ライセンスモデル
ライセンスモデルは、特許権や著作権などを二次利用させることで収益を得るモデルです。ミッキーマウス、機動戦士ガンダム、ハローキティなど、漫画やアニメーションの人気キャラクターをライセンスするビジネスは古くからありますが、近年ではソフトウエアの使用に関するライセンスビジネスが拡大しており、前述の「Microsoft 365」や「Adobe Creative Cloud」のように、一定期間の二次利用を定額制とするサブスクリプション・システムを採用する企業が増加しています。
広告モデル
広告モデルは、商品やサービスなどの広告によって収益を得るモデルです。自社の広告メディアを利用するケースと、第三者が運営する広告メディアを利用するケースがあります。具体的には、従来からある新聞や雑誌などのメディアの利用や、近年主流となっているインターネットを利用した広告です。パソコンやスマートフォンなどのブラウザで圧倒的なシェアを誇るGoogleは、今や世界最大の広告企業です。電通が公開している調査レポート「2022 日本の広告費」でも、マスコミ4媒体(新聞・雑誌・テレビ・ラジオ)の広告費合計よりも、インターネット広告費が上まっているのが分かります。
マッチングモデル
マッチングモデルは、需要と供給をマッチングし収益を得るモデルです。マッチングする対象は「人と人」「人と物・サービス」「人と企業」「企業と企業」などさまざまな組合せがあります。人材紹介業、不動産業、介護業、製造業など、インターネットの普及でマッチングモデルはさまざまな業界で採用されていますが、近年、特に注目されているのは譲渡企業と譲受企業を結びつけるM&Aマッチングサービスで、事業展開の実現方法の1つとして利用されています。
事業展開の手順
事業展開には多くの資金・労力・時間を費やすことになるので、正しい手順で進めることが事業展開を成功させるためのポイントになります。そこで、事業展開の実施プロセスを5つのステップに整理し、その手順を解説します。
⒈ 事業展開の目標設定
事業展開で最も重要なのは、会社が目指している将来の姿「経営ビジョン」を実現させるために必要な目標を設定することです。効率よく目標設定を行うには、次の4項目(3W1H)に従って考えを整理すると良いでしょう。
When(いつまでに):目標を達成するまでの期限
Where /Who(どこで/誰に):対象とする市場や顧客
What(何を):商品やサービス
How much(どれ位):目標とする収益やシェアなど
⒉ 自社の現状分析
自社の現状分析というと、一般的には自社の強み・弱みなどを対象とする「内部環境分析」を指しますが、事業展開を行うためには、自社を取り巻く政治・経済・社会・技術などを対象とする「マクロ環境分析」や、事業展開でターゲットとする市場内の競争やリスクなどを対象とする「ミクロ環境分析」を加えた、3つの視点における現状分析が必要です。実際に現状分析を行う際に役立つフレームワークは後段で解説します。
⒊ 事業展開戦略の決定
目標の設定と現状分析が完了した後は、先に紹介した5つの事業展開戦略の中から自社にとって最適な戦略を選択します。特に重要となるのは、①自社が置かれている現状と目標との距離、②資金・人材・技術などの会社のリソース、③解決しなければならない課題やリスクの3点です。また、収益を得る仕組み「ビジネスモデル」も事業展開戦略の一部として検討する必要があります。
⒋ 事業展開計画の策定
事業展開戦略を策定した後は、それを元に収支予測、資金計画、部門目標などに落とし込み、「事業展開計画書」を作成し、取締役会で承認を受けます。加えて合併や分割など組織再編を伴うM&Aの場合には株主総会の特別決議による承認を受けて実行に必要な資金や人員などのリソースを確保します。また事業展開計画書を通じて従業員と、目標・課題・役割分担・スケジュールなどを共有することで、組織的に遂行できる体制を構築しなければならず、取引先や株主などの同意や協力を得るためのプロセスも必要不可欠です。
⒌ 事業展開計画の実施
事業展開計画を予定通りに進めるためには、実行方法が重要なポイントとなります。次の5Stepに従って実行すると良いでしょう。
Step1 重要性や緊急性を基に課題の優先順位を決定する
Step2 優先順位に従って従業員の行動計画を作成する
Step3 目標達成に最も必要とする要素を数値化「KPI(重要目標達成指標)」を設定する
Step4 行動計画に従って実行する
Step5 KPIの達成度を評価し問題点を改善・修正する
事業展開におけるM&Aのメリット
M&Aは事業展開の実行に有効な手段の1つです。M&Aがもたらす効果は事業展開においても非常に重要な要素となります。その中で、M&Aの大きなメリットとして、次の3つをあげることができます。
事業展開をスピーディに行える
M&Aは「時間をお金で買う戦略」と言われています。新たな領域へ参入する場合に、その領域で既に事業実態がある企業や事業をM&Aによって買収できれば、ゼロからスタートするよりも短い期間で事業展開を行うことができます。特に、IT分野などでは他の産業と比べて技術の進歩が早いため、市場に参入するには、スピードが非常に重要になります。
事業展開のリスクを軽減できる
事業を行うには、資金、人材・技術・設備などの経営リソース、許認可、取引先・顧客などが不可欠ですが、既に事業実態のある企業や事業をM&Aによって買収できれば、事業に必要な要素をそのまま利用できます。過去の売上実績から将来の収益を予測することも可能です。また、事前に対象企業や事業を分析し、課題・問題点を洗い出し、改善策を講じることで事業展開のリスクを軽減できます。
既存事業とのシナジー効果が期待できる
既に事業実態のある企業や事業をM&Aによって買収すると、当該企業や事業が持っている調達先、開発体制、営業拠点、技術基盤、生産インフラ、物流などが利用可能になるため、既存事業との多面的なシナジー効果が期待できます。
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事業展開の成功例
ミライトHDによる西武建設の買収
2022年3月31日、ミライト・ホールディングスが西部建設の株式95%を約620億円で取得し連結子会社化しました。ミライトグループは、NTTなどの通信キャリア向けに通信設備の施工や保守を中心として事業拡大を進めていましたが、少子化による通信需要の低迷や事業環境の急速な変化に対応するために、都市開発に関する施工に強みを持つ西武建設を傘下に持つことで、事業展開の多角化を実現することができました。
楽天によるマイトリップ・ネットの買収
2003年9月17日、インターネットショッピングモール「楽天市場」を運営する楽天は、当時、日本最大の宿泊予約サイトであった「旅の窓口」を運営するマイトリップ・ネットの全株式を、323億円で買収し完全子会社化しました。「旅の窓口」が楽天グループに加わることで、「楽天市場」などとのシナジー効果が期待できるとともに、宿泊予約サイトにおける国内シェアが約7割となり、市場浸透戦略を進めることができました。
大正製薬によるドクタープログラムの買収
2017年4月1日、大手製薬メーカーの大正製薬は、機能性基礎化粧品「トリニティーライン」を中心にスキンケア領域で事業展開するドクタープログラムの全株式を取得し完全子会社化。ドクタープログラムの販売チャネルは通信販売がメインで、通信販売分野においては健康食品中心だった大正製薬にとっては、新しい顧客を取り込む(新市場開拓戦略)ことができるとともに、通信販売事業の拡大・強化(市場浸透戦略)が図れました。
事業展開の失敗例
丸紅によるガビロンの買収
2013年、米国で穀物メジャーを目指していた丸紅は、米穀物大手のガビロンを36億ドルで買収することで、穀物メジャーの仲間入り(市場浸透戦略)を果たしました。しかし、ガビロンの収益は穀物価格に左右されることに加えて、米中の貿易摩擦により輸出量が減少したため、丸紅は2020年3月期に過去最大の赤字を計上し、2022年にガビロンをオランダのバイテラに売却しました。
キリンHDによるスキンカリオールの買収
2011年11月、大手飲料メーカーのキリンホールディングスは、ブラジルのビール・清涼飲料水メーカーであるスキンカリオールの全株式を取得し総額3,000億円を超える資金を投じて完全子会社化。少子化による人口減少で国内市場が縮小している中、キリンホールディングスはブラジルという新しい市場に進出し事業拡大(新市場開拓戦略)を目論みましたが、ブラジルの景気低迷により売上が低下し、2017年にオランダのハイネケンに約770億円で売却することになりました。
GoogleによるMotorola Mobilityの買収
2012年5月、米Googleは、デバイス事業を軌道に乗せるために携帯電話メーカーのMotorola Mobilityを過去最大の125億ドルで買収しました。しかし、デバイス事業の強化はSamsungなどの他のデバイスメーカーと競合する事になり、Android搭載端末のシェア拡大は困難でした。Motorola Mobilityは、Googleの元で数種類のAndroid端末を発売しましたが、業績悪化は止まらず、2014年1月、中国Lenovoに29億1,000ドルで売却することになりました。
事業展開に活用できるフレームワーク
事業展開の手順の項で説明した「自社の現状分析」を行う方法にはいろいろな手法がありますが、広く用いられているフレームワークの中から代表的なものを4つ紹介します。
PEST分析
PEST分析は、外部環境(マクロ環境)の分析に適したフレームワークで、「政治(Politics)」「経済(Economy)」「社会(Society)」「技術(Technology)」の4つの視点で事業への影響を分析するため、頭文字をとり「PEST分析」と呼ばれています。外部環境は、事業と直結する部分は少ないかも知れませんが、長期的に見ると大きな影響を及ぼすため市場環境(ミクロ環境)と共に重要な要素になります。
ファイブフォース分析
ファイブフォース分析は、米国の経営学者マイケル・ポーターが提唱した事業戦略におけるフレームワークで、外部環境(ミクロ環境)の分析に適しています。分析する視点が、参入を計画している市場に存在する「新規参入の脅威」「業界内の競争」「代替品の脅威」「売り手の交渉力」「買い手の交渉力」という5つの脅威(フォース)によるところから、ファイブフォース分析と呼ばれています。
SWOT分析
SWOT(スウォット)分析は、「内部環境」と「外部環境」をバランスよく分析するのに適したフレームワークです。分析する視点が、内部環境では「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」、外部環境では「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4項目によることから、頭文字をとって「SWOT」分析と呼ばれています。ポイントは、自社の「強み」を活かせる「事業機会」を先に割り出した後、「弱み」や「脅威」などの課題解決を検討することです。
3C分析
3C分析は、SWOT分析と同様に「内部環境」と「外部環境」の効率的な分析に適したフレームワークです。分析する視点が「自社(Company)」「顧客・市場(Customer)」「競合企業(Competitor)」の3項目によることから、頭文字をとって「3C分析」と呼ばれています。SWOT分析は、新市場開拓戦略や多角化戦略のように異分野への事業展開に向いていますが、3C分析は市場浸透戦略のように、既存事業の市場競争力を高める場合に向いています。
事業展開における注意点
事業展開を成功させるためには、いくつかのポイントがあります。その中でも、次にあげる3つの点は非常に重要ですので、実際に事業展開を検討する際には必ずチェックしてください。
経営理念に合致しない事業展開は持続できない
経営理念とは、会社が何のために存在するのか、根底にある価値観や理想像のことです。事業展開によって新たに行う事業経営理念に合致しない場合には、既存事業が持っている価値観や方向性などとズレが生じ、いずれ持続することが難しくなる可能性があります。そのため、事業展開を考える際は、収益性などのビジネス面の検討だけではなく、経営理念に合致している事業かどうかの考察も必要になります。
既存事業と関連性が低いとリスクは増大する
事業展開には「多角化戦略」のように、新しい市場で新しい製品やサービスを展開し、事業の拡大を図る戦略もありますが、既存の技術や営業拠点などのリソースが活用できなければシナジー効果が期待できずリスクは増大します。市場か製品のどちらかが既存事業と関連性があれば、それまで蓄積してきた経験やノウハウを活かすことができるので、リスクの抑制を重要視するのであれば既存事業と関連性が高い「市場浸透戦略」「新市場開拓戦略」「新製品開発戦略」を選択すると良いでしょう。
経営資源の確保が不十分だと成功は難しくなる
事業展開は、前述したように資金・人材・技術などの会社のリソースが必要で、特にM&Aによって事業展開を行う場合には、デューデリジェンスの費用や買収費用など、多額の資金が必要なため、M&Aのスキームに合った資金を確保しなければなりません。また、事業展開を実施する際は、人材や技術なども重要な要素となります。
事業展開とは?目的、戦略、手順、M&Aの活用、成功例・失敗例を解説 まとめ
事業展開は、企業が持続的に成長し生き残るために非常に重要な経営判断ですが、事業のライフサイクルによって目的や具体的な戦略が異なります。事業展開を失敗しないためには正しい手順で進めることが必要であり、その中でも本稿で紹介した事例に見られるように、自社の内部環境と自社を取り巻く外部環境の現状分析が甘いと失敗に終わる可能性があります。特にM&Aの活用による事業展開はメリットが多い反面、手続きが複雑なので知識や経験が豊富な専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。