M&Aの基本的な流れを解説!プロセスや必要書類を把握しよう

山下正太郎

メガバンクに入行し、M&Aを含む各種ファイナンス業務に従事した後、大手M&Aブティックに入社。中小企業の事業承継問題に対するソリューションとしてのM&A取引を推進。その後、上場企業および大手コンサルティング会社の企画部門にて投資責任者を歴任。キャリアを通じて多数のM&A案件の成約に携わった他、PMI担当として買収先とのスムーズな経営承継を実現した経験を多数持つ。

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近年、特に中小企業を中心にM&Aを検討する企業が増えています。
そこでこの記事では、売却に至るまでのM&Aの基本的な流れやプロセス、必要書類について解説します。

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M&Aの歴史的背景と現状

M&Aの歴史的背景

日本におけるM&Aの歴史は古く、1800年代から財閥系がM&Aにより事業を拡大していきました。政府から官業を安く譲り受けることで、炭鉱や造船、金属などの事業を拡大しています。高度経済成長を経て、1980年代後半にはバブル景気や円高をきっかけに日本企業が海外企業の買収を盛んに行いましたが、バブルが崩壊すると日本国内における不良債権処理や企業再編に向けたM&Aが増加することになりました。2000年代に入ると金融ビックバンを背景とした外資系投資銀行の進出や、M&Aサービスの多様化や法整備が進み、特にベンチャー企業によるM&Aが盛んに行われます。2005年以降になるとライブドアや楽天などの敵対的買収が世間の注目を集めています。

M&Aの現状

2010年以降には景気の減退や、大規模な震災の影響もありM&Aは低調に推移しますが、2014年に施行された改正会社法も後押しとなり、従来のシナジー効果を期待するM&Aに加え、中小規模のM&Aも盛んになっています。中小規模のM&Aが盛んになったのは、中小企業経営者の高齢化や後継者問題、廃業を回避するための選択肢としてM&Aが注目されるようになったことにもよります。そのほか、特にIT分野ではM&Aをイグジットと認識し、短期間の成長を図り高額売却をすることによって投資資本の回収を目指す、といったスタートアップ・ベンチャー企業のM&Aも増えています。

M&Aの基本的な流れ

M&Aは、以下の流れで手続きを行います。

①M&Aの目的・方針を決める
②M&A仲介会社を選定する
③M&Aに必要な書類を準備する
④トップ面談の実施
⑤基本合意書を締結する
⑥デューデリジェンス(DD)の実施
⑦最終条件交渉・契約
⑧PMI

それぞれのプロセスについて解説していきます。

M&Aの目的・方針を決める

M&Aの流れとして最初に行うべきことは、M&Aの目的や方針を明確にすることです。

M&Aの目的は企業が抱える課題によって異なります。「後継者を確保して事業を継続したい」「選択と集中により経営基盤を強化したい」「シナジー効果により事業拡大を目指したい」など、さまざまなケースがあるでしょう。また、いつまでにM&Aを実行させたいのか、どのような企業と組んで事業を行っていきたいか など、ある程度の方針も定めておく必要があります。

M&A仲介会社の選定

M&Aの目的や方針を考えたら、次にM&Aの仲介会社を選定しましょう。
M&Aには専門知識や交渉力が必要になるため、M&Aを行う場合は仲介会社に依頼するのが一般的です。

M&Aに必要な書類の準備

仲介会社を選定したあとは、選定した仲介会社とアドバイザリー契約を結び、その後M&Aに必要な書類を準備します。必要となる書類は、①定款や株主名簿などの会社概要が分かる資料 ②決算書等の財務関連資料 ③事業関連資料 ④不動産関連書類 ⑤人事労務関連資料 ⑥金融機関やリース会社、主要取引先との契約関連資料などがあります。それらの資料を受領した仲介会社はそれらの資料を基に「企業概要書」を作成します。
また、それと同時に候補先企業が一覧で書かれたロングリストを仲介会社に提出してもらい、売主の判断で打診先を決定していきます。

トップ面談の実施

仲介会社が、秘密保持契約書締結後に企業概要書を提示し、譲受に関心を持った企業とトップ面談を実施します。トップ面談では、資料だけでは伝わりにくい経営者の想いやビジョン、会社の社風・特徴などを伝え合い、相互に理解を深めることが大切です。

基本合意書の締結

トップ面談後に質疑応答や追加資料の受け渡しなどを行い、売り手・買い手ともに大まかな条件に合意したら、基本合意書を締結するのが一般的なM&Aの流れです。基本合意書によって譲渡対象の範囲や価格を確認するとともに、デューデリジェンスへの協力についても確認します。
M&Aの最終契約は、デューデリジェンスおよび最終交渉を経て行いますので、基本合意書には法的拘束力を持たせないことが一般的です。(独占交渉権、秘密保持等の一部の条項を除く)

デューデリジェンス(DD)の実施

デューデリジェンス(DD)とは、買収監査のことをいいます。
特に買収や合併のような包括承継の場合、買い手側企業は売り手側の権利だけではなく、債務などの義務も負うことになります。そのため、M&Aの最終契約を締結した後に、思わぬトラブルや簿外債務等が発覚することがないように、財務や法務などさまざまな面から調査を行います。デューデリジェンスは後述のPMIを進めるにあたっても重要なプロセスであり、必ず実施することをお勧めします。

最終条件交渉・契約

デューデリジェンスの結果を踏まえて、買い手側で条件調整および買収実行の判断を行います。買収を実行する判断をされた場合は、M&Aの最終条件の交渉を行い、最終契約の締結を行います。最終契約は、基本合意書の締結とは異なり法的拘束力が発生するものです。

PMI

PMIとは「Post Merger Integration(ポスト・マージャー・インテグレーション)」の略で、M&Aにより統合された会社や事業を統合し、買い手が期待していたシナジーを発揮できるようにしていく一連のプロセスのことです。
M&Aが実行されると、別々の企業で働いていた従業員が同じ企業で働くことになります。経営理念や戦略はもちろん、仕事のやり方も評価の仕方など、異なる企業文化を持つ人が統合を求められるため、M&A実行直後は混乱が起こりがちです。これらを統合し、M&Aによる効果をより早く得るためにはPMIがとても重要です。PMIがうまくいかなければ、M&Aを行う前よりも経営状態が悪化してしまう恐れもあるため注意が必要です。

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M&Aの手続きに必要な書類

M&Aの手続きを行うためには、以下のような書類が必要になります。

【売り手企業・アドバイザー間】

必要書類概要
秘密保持契約書知りえた情報を第三者に開示しないことを約束する書類
アドバイザリー契約書M&A仲介会社にアドバイザリー業務を依頼する際に締結する契約書

【買い手企業・アドバイザー間】

必要書類概要
秘密保持契約書知り得た情報を第三者に開示しないことを約束する書類
企業概要書売り手側企業の事業内容や業績などの詳細情報を記載した書類
ノンネームシート買い手候補に初期的に開示する書類

【売り手企業・買い手企業間】

必要書類概要
意向表明書買い手側企業が売り手側企業に、譲り受けの意向を示すために提出する書面
基本合意書売り手と買い手が、M&Aに向けて現時点での基本的な諸条件の合意事項を確認するための契約書
最終契約書DD後に作成される、M&Aの最終的な合意を示す契約書
クロージング書類売り手と買い手がそれぞれ準備するクロージング(決済)に必要な種々の書類

秘密保持契約書

M&Aを進めるにあたって、相手企業に自社の機密情報を開示することになるため、まずは秘密保持契約書を交わし、知りえた情報を第三者に開示しないことを約束します。(一方が義務を負う差入式、双方で義務を負う双務式があります)

アドバイザリー契約書

アドバイザリー契約書は、M&A仲介会社に正式に依頼する際に交わす契約書です。成功報酬の取り決めや、直接交渉の禁止、免責事項などが記載されています。アドバイザリー契約書にサインする前に、契約書の内容を細かく確認しておきましょう。(※アドバイザリー契約書は、仲介会社により、「業務委託契約書」「提携仲介契約書」のように名称が異なることもあります)

企業概要書

企業概要書とは、売り手側企業の事業内容や保有資産、従業員関連情報、財務関連情報などが記載されている書類です。企業概要書は、売り手企業から受領した書類や、売り手オーナーからヒアリングしたことを基に仲介会社が作成し、秘密保持契約締結後に買い手候補企業に提出します。

ノンネームシート

ノンネームシートとは、秘密保持契約を締結する前に買い手候補企業に提示する簡易的な資料のことです。ノンネームシートには企業が特定できるような具体的な内容は記載せずに、事業内容や売上規模などの概要がまとめられています。(ノンネームシートはTeaser(ティーザー)という言い方をされる場合もあります)

意向表明書

意向表明書とは、買い手側企業が売り手側企業に譲り受けの意向を示すために提出する書面のことです。売り手側企業は、買い手側企業の意向を知ることで、その買い手候補とM&Aを進めるかどうかを判断していきます。尚、意向表明書は省略されるケースも多いです。

基本合意書

基本合意書は、売り手側企業と買い手側企業がこれまでの交渉で合意してきた内容の整理を行い、確認するための書類です。M&Aの基本的な流れの項目で紹介したように、基本合意書は原則として法的拘束力はありません。(独占交渉権、秘密保持等の一部の条項を除く)

最終契約書

最終契約書とは、M&Aの最終的な合意を示す契約書です。株式譲渡であれば株式譲渡契約書、事業譲渡であれば事業譲渡契約書が最終契約書にあたります。

クロージング書類

M&Aのクロージングで用いる書類は個々のM&Aごとに様々ですが、株式譲渡の場合は一般的に以下の資料等が必要になります。

【売り手企業側で用意】

※取締役会非設置会社、譲渡制限株式の場合

●株式譲渡用クロージング書類
・株主名簿の写し(会社実印押印済みのもの)
・株式譲渡承認請求書
・株主総会議事録の写し(譲渡承認)
・株式譲渡承認通知書
・株主名義書換請求書
・売主の印鑑証明書
●前提条件充足用クロージング書類
・役員辞任届(代表取締役・取締役・監査役)※役員の辞任が伴う場合
・印鑑証明書(譲渡対象となる企業)
・株主総会招集通知の写し
・(臨時)株主総会議事録の写し(役員改選)※役員改選がある場合
・(臨時)株主総会議事録の写し(役員退職金支給)※必要ある場合
・役員退職慰労金の領収書の写し

【買い手企業側で用意】

※取締役会設置会社の場合を想定

・クロージング書類の受領書
・取締役会議事録の写し(株式譲受の決定)
・印鑑証明書(買い手企業)

M&Aは株式会社M&A DXにご相談ください

まとめ

今回はM&Aの流れやプロセス、必要書類について解説してきました。M&Aは、目的に合わせて適切なスキームを選択する必要があるだけではなく、円滑にM&Aを進めるための手続きや交渉が複雑です。また、選択するスキームによっては、M&Aに必要な資金や税額が大きく変わるケースもあります。
株式会社M&A DXでは、M&Aサービスの専門家として円滑な事業承継をサポートします。相続からM&Aまで豊富な実績と経験のある専門家が多数在籍しておりますので、M&Aによる事業承継をお考えの際はぜひ株式会社M&A DXにご相談ください。

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