M&Aにおける「PMI」とは?
M&Aでの企業買収後、PMIがおこなわれます。まずはPMIとはどのようなものなのか、その概要と重要性について解説します。
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M&A後の統合実行のためのプロセスである
「PMI(Post Merger Integration、ポスト・マージャー・インテグレーション)」とは、M&Aで会社を買収した後におこなわれる経営統合プロセスです。「Merger(マージャー)」とは「合併」という意味ですが、合併に限らず株式譲渡等のM&AでもPMIは統合という意味で用いられています。
M&Aのプロセスの中でも、PMIは最も重要なものとされています。日本におけるM&AではPMIがきちんとおこなわれないことも少なくないといいますが、PMIはM&Aの成功の鍵を握るものとして認識されています。
最大限のシナジー効果を発揮させて企業価値を高める
PMIが重要といわれる理由の一つが、最大限の「シナジー効果」を発揮させられる点です。シナジー効果とは、企業が統合することにより得られる相乗効果のことです。M&Aにおけるシナジー効果は、事業の安定的な成長や企業価値向上に寄与します。
M&AのプロセスにおけるPMIは、企業価値を高めるために重要であることに加え、製品やサービスの質向上やシェア拡大などの目的を持っておこなわれます。
PMIはM&Aの成否に大きく関わる
M&Aをおこなっても、統合が失敗したり遅れたりすることが起こり得ます。この場合、企業価値の低下や従業員のモチベーションの低下を招いたり、優秀な人材が流出することも考えられるでしょう。
PMIでは、異なる企業の文化を乗り越えてシナジー効果を実現するために、長期的なマネジメント構築が必要とされます。自社の成長のための重要なプロセスであるPMIは、M&Aの成否にも大きく関わるといえます。
PMIを実施するメリット
上記のように、PMIとはM&Aの成功を左右する大事なプロセスです。なぜPMIがそこまで重要な要素を持っているのかというと、以下で紹介するメリットがあるからです。
経営戦略や企業理念、ビジョンを浸透させられる
複数の企業が統合されるM&Aでは、それぞれの企業が持つ経営戦略や企業理念、ビジョンが異なることは珍しいことではありません。これらの違いは、双方の企業の従業員単位でも認識が異なることから、従業員同士の対立や不満の原因に繋がることがあります。
そこでPMIをおこない、経営戦略やビジョン、企業風土などを周知しつつ、従業員間でのコミュニケーションを促進させます。これにより、従業員の不安を取り除き、双方の従業員の意識を一致させることができるのです。
経営統合で生じるリスクの軽減
PMIでは、先述の従業員同士の意識のほか、経営統合で生じると予想されるリスクを軽減できます。
PMIは企業の統合前から実施することが望ましく、統合の阻害要因を統合前に洗い出して対応することで、統合後に起こり得るリスクを最小限に留められることが期待できます。もし統合後に問題が発生したとしても、スピーディーに問題を解決しやすくなるでしょう。
生産性向上・コスト削減
M&A後のPMIは、企業の経営だけではなく、生産体制や2つの企業間で重複する事業や部門などを統一するケースがあります。生産体制も統合することにより、効率性が向上して生産性もアップするでしょう。また、販売網や生産拠点、営業ノウハウなども統合することで、コスト削減にもつなげられます。
PMIでおこなわれるプロセスとは
では、実際にPMIではどのようなことがおこなわれるのでしょうか。具体的なプロセスとして、主に以下に挙げる3種類の統合プロセスがあります。
経営統合
M&Aとは、元々違う複数の会社を統合するものです。そのため、どちらか一方の企業の体制に合わせてしまうと、双方の従業員間で認識の違いが生まれたり、亀裂が生じたりする事態が起こり得ます。そこで、PMIでまずおこなうべきプロセスとなるのが、経営統合です。
複数社の経営理念や企業理念、経営戦略は、そもそも異なるものであることの方が多いでしょう。M&Aで統合する際にはこれらを複数社の間ですり合わせて、統合戦略を策定します。ブランド戦略やマーケティング戦略、ビジネスモデルの見直しなどを通し、新しい会社で目指す方向を示します。経営に関しては、M&A前から買手または売手企業の経営状態を把握しておくことも必要です。
経営理念や企業理念は、従業員のスキル向上やモチベーション維持などにもかかわるポイントなので、今後の経営にとって重要であることがわかるでしょう。
業務統合
複数社が1つの企業(グループ)として円滑に事業を進めるために、PMIでは経営や人事、オペレーションなどの統合をおこないます。自社の顧客や製品などの情報を分析して重複する点を解消、業務効率化を目指します。
また、現場でしかわからない点も多々出てくるでしょう。営業や財務など、複数社それぞれの部署から分析をし、経営統合に向けて意識を一致させる必要もあります。
人材配置やシステム・インフラ統合もおこなう
業務統合には、人材配置も含まれます。適材適所に必要な人材を配置することは、人事において重要なポイントです。M&Aでは「売手」と「買手」の2者がありますが、この2者間で極端な上下関係が生まれてどちらか一方の企業の人材ばかり偏った配置をしてしまうと、2者の間で亀裂が生じる原因となってしまいます。そのため、両社の人材を平等に配置することも大事です。
システムやインフラなども、PMIで再構築・統合を実施します。企業のシステムやインフラは会社の基本となるものですが、異なる2社のシステム・インフラ統合は簡単なことではありません。しかし、統合をしっかりと進めないと各部署への負担が増え、従業員の不満や混乱の原因になりかねないため、PMIのプロセスできちんと指示が出せるように統合する必要があります。
意識統合
それぞれで働く従業員の意識を統合することも、PMIにおける重要なプロセスとされています。元々まったく違う企業だった会社が統合されることになるため、従業員の意識を統一させるためにおこないます。
人や企業文化の統合も重要
企業文化や業務の進め方などは、企業によって大きく異なることは珍しくありません。同じ企業(グループ)として業務を進めるためには、経営者が話し合い、お互いの企業の文化を受け入れる、企業文化に対する認識を一致させて企業文化を統合させる必要があります。
人の意識は従業員同士の関係性にも大きく影響し、相違が生じるとコミュニケーションが上手に取れず、連携できなくなってしまうでしょう。これが原因で、人材流出につながる可能性があるため、意識統合は必ずおこなっておきたいものとされています。
PMIを成功させるためのポイント
M&Aの成功のために重要とされるPMIですが、ではそのPMIを成功させるためにはどのようなことをおこなえばいいのでしょうか。
M&A前から専門家によるPMI計画を策定
PMIを成功へ導くために必要不可欠とされるのが、「PMI計画の策定」です。PMIは、M&Aによる統合後すぐに開始されます。しかし、PMIは短期間で完了できるものではなく、基本的に長期間かかるプロセスになります。そのため長期的な視点を持ち、かつ迅速なPMI計画策定が求められます。
PMIを成功させるためには、買手・売手双方の企業で統合のための企業内での調整を細かくおこなって、計画を策定する必要がありますが、M&A成立までのプロセスだけで労力を使ってしまうことも多く、PMIまで細かく策定することが難しいこともあります。そのような場合は、PMI計画をM&A前の段階で専門家に依頼をし、策定するのも1つの方法となるでしょう。
意思決定プロセスを確定する
M&Aによる統合後、経営陣はもちろん、従業員も新しい体制にすぐに慣れることは難しいものです。統合後の組織の中で意思決定プロセスが曖昧のままでは、現場が混乱に陥り、意思伝達もスムーズにおこなわれなくなってしまうでしょう。すると、PMIも滞ってしまいかねません。
意思決定プロセスは、統合のためのプラン確定と同時に確定させておきましょう。そのためには、統合前の時点でM&A後の組織がどのような体制になっているかを想定した上で、最適な意思決定プロセスをあらかじめ組んでおくのが、PMIを成功させるために重要です。
PMIでも人材配置が含まれていますが、PMI成功のためにも人材確保や人材の適材適所への配置はポイントとなります。統合のプロセスを確実に進めるために、経営側が目標とする統合プランを正確に理解して適切に実行する能力がある人材を、総務や経理などのバックオフィス担当の部署も含めて確保しましょう。
このような優秀な人材がいれば、社内の意思決定プロセス決定もスムーズに進みやすくなるでしょう。逆に有能な人材が不足した場合、会社からの人材流出のリスクが想定されます。
まとめ
M&A後におこなうPMIは、異なる2つの企業の統合を進める上でとても重要なプロセスにあたります。M&Aの効果を最大限に発揮させるためには、PMIのメリットや成功に導くためのポイントを押さえながら実行を進めることが大事といえるでしょう。
M&A DXには、大手会計系M&Aファーム出身の専門家や大手コンサルティング会社出身の公認会計士や税理士が多数在籍しています。M&AプロセスやPMIプロセスをご検討の方は、お気軽にM&A DXまでご相談下さい。