会社売却後に社員の流出が起きる理由
会社売却によって社員の流出が起きる理由は複数あります。たとえば、配置換えなどによる勤務地の変更や給与・待遇面の変化です。また、社員が新しい組織文化になじめないと退職のリスクが高まります。社員の流出につながる理由をチェックして、できるかぎり対策をとりましょう。
配置換えなどの不安
会社売却後には、勤務地が買い手側のオフィスに変わることで社員の労働環境が悪化することがあります。慣れ親しんでいた場所を離れるだけでなく、新たな業務を覚える必要があったり、上司や同僚が変わったりするのは精神的負担が大きいものです。
家族がいる場合、勤務地の変化は生活に大きな影響を与えるでしょう。自宅から通える距離ではない場合、選べるのは引っ越しか単身赴任です。どちらも難しい場合、退職して新しい職場を探すことになります。
給与・待遇面での不満
会社の売却後に給与が下がってしまうと、社員のモチベーションも大きく下がることがあります。給与が下がってしまうと、家計をやりくりするのが難しくなることもあるでしょう。退職金が減ると、より給与や労働環境の良い会社を求めて転職する方もいます。
労働環境や給与面のみならず、役職変更に対する不満も社員流出につながりやすい要素です。有能で影響力のある方を役職から外してしまうと、会社全体の生産性が下がるといったケースもあります。
組織文化についていけなくなること
組織文化の違いも社員に大きなストレスやプレッシャーを与える要素です。たとえば、年功序列制の会社と成果主義を重んじる会社が合併した場合、新たな組織文化に慣れるまで時間がかかるでしょう。
日本の会社を海外の会社に売却する場合、海外の文化や英語でのコミュニケーションになじめない方もいます。社員同士が仲よくしていた会社なら、売却後に人間関係がドライな社風に変わると違和感を覚えるでしょう。
人材の流出を防ぐためのコツ
大切な社員をつなぎとめるためには、働きやすい環境を整えたり、給与など待遇を見直したりする必要があります。会社売却後のプランを明確に提示することも大切ですし、場合によっては子会社を作るという方法もよいでしょう。以下で、人材の流出を防ぐための具体的なコツを解説します。
社員が働きやすい環境を整える
社員のモチベーションを下げないために、会社売却後も売却前と同じか、より魅力的な労働環境を整える必要があります。勤務地は同じオフィスをそのまま使うことが望ましいですが、もし変更の必要があるなら社員の引っ越しなどが必要ない範囲で検討するのが良いでしょう。勤務時間は以前と同じ条件にすると、社員の負担が増えなくて済みます。
もし、買い手側企業でサービス残業の習慣があるなら、残業を減らすよう働きかけるなど社員が働きやすい環境を整える努力をしましょう。有給休暇が残っている場合は、引き継げるように取り決めることも大切です。
会社売却後のプランを明確に提示
会社売却の話を聞くと、社員は将来の勤務内容や待遇について不安を覚えます。社員の不安をなくしてモチベーションを保つために、会社売却後のプランを明確に提示することは大切です。プランを提示する際は、魅力的に伝えることも意識しましょう。
会社を売却しても雇用を維持するなら、その旨をハッキリ伝えないと社員が転職先を探し始める恐れがあります。社員の生活に大きな影響を及ぼす、勤務地や労働条件の変更も伝えるべき内容です。部署や職務の変更などの人事異動がある場合も、決まり次第迅速に伝えます。
待遇面は、社員が特に気にかける内容です。給与はもちろん、各種手当や福利厚生についても明確に伝えましょう。
ただし、それらを伝えるタイミング、言葉選びは極めて重要です。M&Aの専門家とよく相談の上で決めた方が良いでしょう。
組織文化の尊重
会社を売却したからといって、買い手側が一方的に自社のスタイルを押し付けるのは好ましくありません。会社ごとに考え方が違うため、売り手側の社風を尊重しつつ新たな組織文化を作っていくのがよいでしょう。
そのためには、お互いの組織文化をよく理解する必要があります。人事評価の基準や個々の社員がもつ裁量の範囲、重要事項の決め方などの違いを確認し、お互いのよい点を取り入れながら調整していきましょう。
ただし、真逆の組織文化をもつ会社がひとつになった場合はうまく統合するのが難しいこともあります。会社売却の失敗を避けるためには、売却前にお互いの組織文化をある程度理解しておくことが大事です。
子会社を作る
会社の事業の一部を売却するような場合には、譲渡する事業のみを集約させた子会社を作り、売却する事業に属する社員の労働環境を確保することもひとつの方法です。売り手側と買い手側の会社の労働条件や組織文化などに大きな違いがあると、お互いが新しい環境になじむのが難しくなります。しかし子会社を作れば、親会社とは別の労働条件や組織文化を取り入れられるので、社員が働きやすい環境を作りやすくなるでしょう。
子会社を作るもうひとつのメリットは、売却の前後で経営陣が変わらないケースもあることです。経営者が変わらなければ安心して仕事を続けられるという社員もいるので、会社売却時の選択肢として検討してみましょう。
給与など待遇の見直し
給与が下がるといった待遇の悪化は、社員のモチベーションに大きく影響する恐れがあるため待遇の維持は重要なポイントです。給料自体は変わらなくても、各種手当がなくなって手取りの金額が下がることもあります。社員流出を防ぐためには、会社の売却によって社員が不利益を被らないよう努めることが重要です。
人事評価制度の変化によって社員の給与が変わることもあります。たとえば、もともとは成果に応じたインセンティブ給があったのに、売却後は一律の手当に変更されるといったケースです。
しかし、こうした変更によって給与が下がることで不満を覚える社員がいる一方、安定した給与体系になることを歓迎する社員もいるでしょう。社員の価値観に合わせた待遇の見直し、個別の説明が必要です。
会社売却を考えたときにするべきこと
社員の流出防止は、会社売却を成功させるためのひとつの要素に過ぎません。会社売却でよい結果を得るためには、ほかにも多くのことを考える必要があります。たとえば、会社売却の目的を明確にしないと、後々の失敗リスクが高まるでしょう。専門家に相談することも重要なポイントです。ここからは、会社売却を成功させるために必要なことを解説します。
会社売却の目的を明確にする
会社の方向性を決めた上で実務面の整備を進めるためには、まず会社売却の目的を明確にします。たとえば、後継者不在が理由で会社を売却する場合の主な目的は、既存の業務内容やサービスを維持しつつ社員が働き続けられる環境を作ることです。
コア事業に集中することが目的なら、利益率の悪い事業を手放すことでより効率的な経営ができます。資金調達を目的としている場合、利益率のよい事業を手放すことも選択肢のひとつでしょう。
上記は売り手側の目的ですが、買い手側にとっても目的の明確化は重要です。事業規模の拡大や多角化、海外進出など目的によって計画の進め方や重視すべきポイントが異なります。
人材流出を防ぐ対策をとる
会社売却後の人材流出を防ぐには、新たな雇用契約を結ぶ際の待遇面への配慮が重要です。給与や各種手当・労働条件をできるかぎり維持し、社員のモチベーションを下げないようにします。人事評価制度が大きく変わると、戸惑う社員がいることも覚えておきたいポイントです。
組織文化が変わるとストレスに感じる社員もいるので、もともとの組織文化を可能なかぎり引き継ぐことは有効な方法と言えます。好ましくないと思える慣行があった場合でも、急に変えようとすると変化を受け入れられない社員が出ることがあります。労働条件や組織文化を変える必要があるときは、丁寧に説明した上で各社員の理解を得るよう努めることが大切です。
専門家に相談する
自分の会社の状況を的確に判断し、会社売却をはじめとしたM&Aの目的に沿う会社を探すには専門家に相談するのがおすすめです。専門家は買い手・売り手側の会社に関して調査し、M&Aによるシナジー効果を得るのにふさわしい会社をすすめてくれます。社員のやりがいがアップする条件の会社を探せるなら、人材流出などの失敗を回避してM&Aを成功させやすくなるでしょう。
売却額の計算も専門家に依頼したほうがよい内容です。売却したい事業や部署がもつ資産や利益をもとに計算する売却額は、客観的な立場にいる専門家が的確に計算してくれます。
会社売却を進める際の実務面でも的確なアドバイスをもらえるので、相手との交渉や契約内容などの相談もできるでしょう。
まとめ
会社売却は売り手側・買い手側の両方が利益を得るためのものですが、社員の流出などトラブルが起こることもあります。待遇や組織文化を維持・改善して、社員が流出しない環境を整えることが大切です。M&Aの専門家に相談すれば、社員流出を避けるためのアドバイスを得ることができるでしょう。
会社売却について悩んでいる方は、株式会社M&A DXにご相談ください。大手監査法人系M&Aファーム出身の公認会計士や税理士などが多数在籍し、M&A・相続・事業承継のサポートを専門に行っています。